出産・産後 出産・産後
2021年06月23日 20:10 更新

【医師監修】後産とは?胎盤が出ない原因や痛みについても解説

出産は赤ちゃんが生まれて終わりではありません。まだ後産があります。後産で胎盤がきちんと排出されないと、原因によっては命に関わることもあります。この後産について、しくみや胎盤が出ない原因、処置について説明します。

後産とは

生まれたての赤ちゃん

後産は「あとざん」と読みます。ほかに「のちざん」「こうさん」という読み方もあります。

後産ってどんなもの?

赤ちゃんが誕生したあと、軽い陣痛が起こり、胎盤が出てくるまでを後産といいます。分娩は3期にわけられ、陣痛が始まり子宮口が10cm開くまでが分娩第1期、子宮口が開いてから赤ちゃんが生まれるまでが分娩第2期になります。後産は分娩第3期にあたります。初産婦(しょさんぷ)は10〜30分ほど、経産婦(けいさんぷ)は10〜20分ほどで後産が終わります。

後産ですること・起きること

後産のとき、どんなことが起こるのか知っておきましょう。

胎盤の排出

出産直後の母親

赤ちゃんが生まれると子宮が収縮して子宮内の容積は急激に小さくなります。しかし胎盤は小さくなりません。そのため、子宮壁と胎盤が付着していた部分との間にずれができ、胎盤がはがれていきます。

はがれた胎盤は子宮口から腟内へ下りて体の外に出てきます。それと一緒に、卵膜や臍帯(さいたい:へその緒)も出て、分娩が終了します。このとき、子宮内に胎盤や卵膜が一部でも残っていると出血や感染が起こるため、医師や助産師はすべて出ているかを確認します。

出血

胎盤がはがれると、胎盤に繋がっていた血管から多少の出血があります。分娩第1期、第2期にはほとんど出血はなく、出産による出血量の大半は後産で起こるものです。ふつうは200〜400mLほどで、500mL以内が正常範囲です。

胎盤が出たあとは、子宮が収縮することで血管がふさがれ、出血が止まります。このとき子宮が十分に収縮できていないと、出血が止まらず大出血になることもあります。これを弛緩出血(しかんしゅっけつ)といいます。また、前置胎盤や癒着胎盤によって出血することもあります(これらについて詳しくはこのあとの「胎盤が出ないときの医療処置」で説明します)。

産後の異常出血は事前に予測することができないケースも多く、急激に出血が増えることや全身状態が悪くなることもあるため、分娩後2時間は子宮の収縮の状態や出血の経過が慎重に確認されます。

後産の痛みについて

生まれたての赤ちゃんと母親

後産は痛いのかどうかも気になりますね。赤ちゃんを産むときのような痛みがあるのでしょうか?

後産は痛い?

後産の際は、再度陣痛が起こります。陣痛といっても軽いもので、痛みを感じることはほとんどありません。

後産と後陣痛は違うもの?

産後の痛みのひとつに「後陣痛(こうじんつう)」があります。後産の際にも陣痛は起こりますが、これとは別のものです。

後陣痛は後産のあとから産後2~3日までの間に起こります[*1]。これは子宮が元の大きさに戻るために収縮して起こる痛みで、胎盤がはがれたところの血管を収縮させて止血するはたらきもあります。間隔は不規則で痛みの程度も弱いですが、感じ方には個人差があります。初産の人よりも経産婦のほうが強く痛む傾向にあります。

また授乳の際に強くなることもあります。子宮の収縮を促すオキシトシンというホルモンは母乳を出す作用もあり、授乳によって分泌が促されるためです。

後産で胎盤が出ないとき

胎盤が出ない理由やその場合の処置について解説します。

後産では自然に胎盤が排出される

処置

胎盤は通常、自然にはがれ落ちて体外に排出されます。医師や助産師は赤ちゃんが産まれたあと、胎盤が剥離する(はがれる)兆候をチェックしています。胎盤の剥離徴候が認められると、医師や助産師は臍帯をゆっくり引っ張って胎盤が出てくるのを誘導し娩出させる、というのが通常の流れです。

胎盤が出ないときの医療処置

胎盤の剥離兆候がない場合、お腹を圧迫しながら臍帯を引いて剥離する方法を試して様子を見ます。赤ちゃんが生まれて30分以上経っても胎盤が出ないときや出血が多い場合は、医師や助産師が子宮内に手を入れて胎盤をはがす胎盤用手剥離(たいばんようしゅはくり)をします[*1]。

胎盤が自然に出てこない原因として、胎盤は正常に子宮からはがれているが何らかの理由で出てこない場合と、胎盤と子宮がくっついてしまっている場合の大きく2つがあります。

前者には、外に出す力が弱いためになかなか出てこない「胎盤娩出遅滞」と、子宮が異常に収縮して子宮口が閉じてしまって出てこない「胎盤嵌頓(たいばんかんとん)」があり、いずれも処置は難しくありません。

後者には「付着胎盤」と「癒着胎盤」があります。付着胎盤は胎盤用手剥離ではがれるので問題ありませんが、癒着胎盤のほうは胎盤用手剥離ではがすことができません。

癒着胎盤とは

癒着胎盤は胎盤の一部が子宮の筋肉に入り込んでいる状態です。出産前に発見することが難しく、胎盤用手剥離をしても胎盤がはがれないことで判明します。大量に出血が起こり止めることも難しいため、場合によっては輸血や子宮摘出が必要になります。

前置癒着胎盤は帝王切開と子宮全摘出を行う

癒着胎盤の原因として多いのが前置胎盤です。これは胎盤が正常より低い位置で子宮壁に付着し、胎盤が子宮の出口の一部もしくはすべてを覆っている状態を指します。前置胎盤の人の5〜10%が癒着胎盤を併発した「前置癒着胎盤」だといわれます[*2]。

前置癒着胎盤では子宮全摘出となることがほとんどです。たいていは予定帝王切開で出産し、そのまま子宮を取る手術をします。

次の妊娠を希望する人には子宮を取らずに胎盤が自然に吸収されるのを待つ方法を試みることもありますが、大出血をして命に関わる可能性もあります。そのため、前置胎盤の位置から出血が多いことが予想される場合や多量に出血した場合などには適用されません。

このように、後産がうまく進まないときにはその要因に応じて医療処置が施されることになります。

前置胎盤などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎胎盤ってどんなもの? 前置胎盤など、胎盤のトラブルとは?

まとめ

手を握る赤ちゃん

後産では胎盤が出たあとに出血が起こるほか、胎盤が出ないトラブルもあるため、赤ちゃんが出てもまだまだ安心できない状況です。特に初めての出産では何が起こっているのかわからず不安になるかもしれません。あらかじめ出産の流れを知っておき、わからないことや不安なことは医師や助産師に聞きながら、少しでもリラックスして出産を乗り越えましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:直林奈月 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]『病気がみえる vol.10 第3版』メディックメディア
[*2]日本産科婦人科学会  産科・婦人科の病気 > 前置胎盤

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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