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2021年05月23日 16:01 更新

【医師監修】睡眠退行はいつからいつまで? 赤ちゃんが寝ない原因と対処法

まとまって眠るようになってきた赤ちゃんが突然なかなか眠らなくなったり、何度も起きるようになったりしたら「睡眠退行」かもしれません。睡眠退行はいつごろ起こるものなのか、子供の睡眠にくわしい森田麻里子先生のアドバイスとともに、原因・対処法と併せて解説します。

<森田麻里子先生からのアドバイス>
赤ちゃんは日々、急激に成長しています。脳や身体にどんどん変化が起こっているので、睡眠が不安定になってしまうことも。それまで大丈夫だった赤ちゃんの睡眠が、急に乱れてきてしまうと不安ですよね。睡眠が乱れる時期やその対処法を知り、落ち着いて対処していきましょう。

睡眠退行とは

泣く赤ちゃん

赤ちゃんの睡眠退行は親にとって大変なことですが、実はそう珍しいものではありません。

赤ちゃんが寝ない!睡眠退行って?

「睡眠退行」は、赤ちゃんの睡眠が不規則な状態に戻ること。

そもそも赤ちゃんは、新生児のうちは昼夜の区別なく短時間で寝たり起きたりを繰り返しながら、1日のほとんどを眠って過ごします。月齢が進むにつれてまとまって眠る時間は増えますが、1日の睡眠時間の合計は少しずつ短くなり、生後6ヶ月ごろには昼夜の区別もはっきりしてきます。

このように、赤ちゃんは成長とともに徐々に夜にまとめて眠るようになってくるものですが、睡眠リズムが順調に整ってきたなという矢先に急に寝つきにくくなったり、夜に何度も起きたりするようになることもあります。これが「睡眠退行」と呼ばれるものです。

睡眠退行が起こるのはいつからいつまで?

ただ、乳幼児の睡眠パターンはもともと個人差が大きいもの。睡眠退行は赤ちゃんに必ず起こるというものではありません。

起こる時期もそれぞれですが、だいたい生後4ヶ月~1歳半より前に見られやすいとされ、また複数回起こる可能性もあります。月齢が進むにつれて、睡眠退行を起こす子は少なくなる傾向があり、1歳半以降ではまれになります。

月齢で異なる? 睡眠退行が起こる原因

眠る赤ちゃん
Lazy dummy

睡眠退行の主な原因は、月齢によって以下のように徐々に変化してくると言われています[*1-5]。

4ヶ月ごろには新生児の睡眠パターンからの変化が

生後4ヶ月ごろの赤ちゃんは、新生児期のこま切れ睡眠からまとまって眠るパターンへの移行の真っ最中にあります。この変化のために、睡眠退行を起こすことがあります。

これはおもに脳の発達に伴って起こることですが、環境や生活習慣、体の成長などがそれを助長する可能性があります。

8ヶ月ごろは「分離不安」と「歯ぐずり」も

分離不安とは

赤ちゃんの「分離不安」はおもに生後8ヶ月ごろから始まり、10ヶ月~1歳半でピークになります[*6]。分離不安になると、親などの主に世話してくれる人から離れることに不安を感じて、離れるのを嫌がって泣いたりします。正常な発達過程で起こることですが、この分離不安が睡眠退行の原因となることもあります。

歯が生えることによる不快感も

また個人差はありますが、多くの赤ちゃんは生後6~8ヶ月の間に歯が生え始めます[*7]。この少し前くらいから、歯が生えることによる痛みや不快感で「歯ぐずり」をすることがあります。これは早ければ生後3ヶ月ごろから見られることもあるようです[*8]。

出てきた歯に押されて周りの歯茎が腫れたり柔らかくなるので、時には食欲がなくなったり、よだれが多くなったりします。これによって、赤ちゃんが寝つきにくくなったり夜中に目を覚ましてぐずったりする可能性もあります。

赤ちゃんの歯ぐずりについて詳しくは、下記の記事を参照してください。

分離不安や歯ぐずりのほかにも、この時期の赤ちゃんに睡眠退行を起こす可能性がある事柄はいろいろあります。

ある程度まとまった時間眠るようになってきたことから親が睡眠スケジュールなどを調整し始めたことが影響していたり、身体能力が大きく向上することでかえってベッドで落ち着かなくなるなど発達上の変化が要因になったりすることもあり、原因を特定できないことは珍しくありません。

11~12ヶ月ごろは心身の成長の影響に加え悪夢をみることも

それまで特に睡眠のトラブルがなくても、1歳ごろになって睡眠退行が起こることもあります。この時期も複数の要因による影響が考えられ、原因をひとつに絞ることは難しいのですが、主に次のような理由が考えられます。

・体が成長し活動レベルが上がったことで、落ち着きがなくなっている、または刺激を受けすぎている

・感情や社会性が発達することで分離不安が強くなっている

・1日のスケジュールや寝かしつけ方の変化による影響


加えて、この時期にも歯ぐずりが原因となることもあります。また一般的ではありませんが早い子ではこのころから悪夢を見るようになり、その影響で目が覚めたり、寝るのを嫌がったりすることもあります。

赤ちゃんの睡眠退行への対処法

外出する赤ちゃん
Lazy dummy

赤ちゃんの寝かしつけに手がかかるようになり、睡眠退行かもしれないと感じたら、このあと紹介する対処法を試してみてください。

なお、もし眠れない日が続いて体重が増えない、排尿または排便の変化(特に減少)、呼吸が苦しそうといったことがあれば、家族だけで対処しようとせず、小児科で相談してください。

生活リズムを整える

赤ちゃんがスムーズに寝入るためには、生活リズムを整える必要があります。冒頭で解説したとおり、赤ちゃんの生活は成長に伴ってこま切れの睡眠と覚醒を1日に何度も繰り返す新生児期のサイクルから、夜間にまとまった睡眠をとる生活に徐々に変化していきます。

また、この間に1日に必要とされる睡眠時間も変わっていきます。その月齢にあった時間、睡眠がとれているかをまず確認し、不十分なようであれば、必要なだけ眠れるように生活リズムを整えてあげましょう。

寝かしつけの時間にスムーズに眠くなるよう、日中の起きている時間は日光を浴びながら遊んだり、話しかけて活動させてあげることも大切です。

月齢ごとに必要とされる睡眠時間、赤ちゃんの生活リズムの整え方や月齢別におすすめの生活リズムなどについて、詳しくは次の記事を参考にしてください。

落ち着いて眠れる環境を整える

寝室の環境が落ち着けるものでなければ、寝つきが悪くなったり何度も起きてしまったりするのは当然です。暑すぎるとき、寒すぎるときはエアコンを使って温度調節を。冬は室温18~20℃、湿度50~60%程度が目安です。夏はエアコンを25~27℃に設定し、さらに服装や寝具で調整します[*9]。

寝る1時間ほど前には部屋を薄暗くして、寝かしつける時は暗くした寝室に連れていきます。また、うるさすぎる部屋では赤ちゃんももちろんよく眠れませんが、低月齢の赤ちゃんの場合は「ホワイトノイズ」(テレビの砂嵐や換気扇、空気清浄機などの「ザー」「ゴー」という音のこと)が寝かしつけに役立つことも。

ホワイトノイズの役立て方について詳しくは、下記の記事を参照してください。

眠る前の「儀式」を行う

寝る前の赤ちゃんをリラックスさせるために、「夜のルーティーン(入眠儀式)」と呼ばれる習慣を取り入れるのも効果的です。

儀式と言っても特別なことではなく、入浴、入浴後のマッサージ、子守唄を歌う、興味が出てきたら絵本を読むなどを毎日同じ時間に同じ順序で繰返すことで、赤ちゃんに寝る時間が近づいていることを伝えることができます。

なお、もともと夜のルーティーンを行っていた場合は、睡眠退行が起こってもこの習慣は続けるようにしましょう。「ぐずる」「目をこする」など眠気の兆候を見逃さずに夜のルーティーンを始めるのも大切です。

分離不安の対処 ー過度に構うと逆効果ー

パパに抱っこされる赤ちゃん

分離不安は8ヶ月ごろからみられると言われています。特に1歳を過ぎたころから1歳半くらいの睡眠退行では、分離不安が原因となっていることが多いです。

この場合、就寝前や途中で起きたときに構いすぎると、事態をかえって悪化させてしまうことも。子供が泣いているとどうにかして泣き止ませてあげたくなりますが、早く良好な睡眠習慣を身につけてもらうため、過度に構うのはやめましょう。

分離不安を悪化させずに対処するためのポイント

・夜中に目を覚まして泣いても、すぐに応えず必ず数分待つことで、子供に自分で落ち着いて眠りにつく機会を与えましょう。

・数分待っても泣き続けていたら、側に行ってあやすようにしますが、このとき照明は暗いままにして、子供を布団やベッドから出さず、なるべく刺激を与えないようにします。

・何度も泣くときは、見守り、声かけ、トントンなどの方法で落ち着かせてみましょう。

なお、1歳を過ぎたころには、お気に入りのおもちゃやぬいぐるみなどを持たせて寝かせるのもいいでしょう。窒息の危険もあるので持たせるものはひとつだけにして、外れる可能性があるボタンやリボン、乾電池などの部品がない安全なものを選んでください。

まとめ

眠る赤ちゃん

やっとまとまって眠るようになったと思っていたら、突然やってきた「睡眠退行」。一見、文字通り赤ちゃんの睡眠が後戻りしてしまったようでも、実は赤ちゃんがすくすくと育っている証でもあるのです。中には何度か繰り返す子もいますが、いつかは落ち着くことです。ここで紹介した対処法は、赤ちゃんがスムーズに寝つくのを助ける基本的な方法でもあります。睡眠退行が落ち着いた後も、赤ちゃんの心地よい眠りのためにぜひ続けていってくださいね。

(文:佐藤華奈子/監修:森田麻里子先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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