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2021年04月24日 16:17 更新

妊婦は海苔を食べても大丈夫?気になるヨウ素や食べていい量【管理栄養士監修】

おにぎりに巻いたり、刻んで料理にふりかけたり、風味豊かでおいしい海苔。白いごはんには海苔のつくだ煮が欠かせない! という人もいるでしょう。栄養豊富で、妊婦さんにとってうれしい食材である海苔の、上手な摂取方法を紹介します。

妊婦も海苔を食べていい! 海苔のうれしい栄養素

のりと巻きす

海苔はこのあと解説する栄養素を含んでいることから、妊娠中も積極的に食べてほしい食品です。ただ、海苔の栄養素についてお話しする前に、大前提として知っておいてほしいことがあります。それは「海苔だけで必要な栄養を補うのは難しい」ということです。

海苔はたしかに栄養豊富です。しかし、一度に大量に食べられる食品ではありませんよね。食物の栄養価を一覧にした日本食品標準成分表には、可食部「100gあたり」の栄養価が書かれています。それを見るとたしかに、海苔には栄養が豊富に含まれていますが、それはあくまで「100g食べた時の栄養価」です。

「全型」と呼ばれる、よくスーパーなどで見る一番大きいサイズの焼き海苔でも、1枚3g程度。 100g食べようとすると、これを33枚以上食べる必要があります。全型の焼き海苔を一度にそんなに食べることは、ほぼないと言ってよいのではないでしょうか。

どんな食品にも言えることですが、それだけを食べて栄養を摂ろうとするのではなく、ほかの食品と組み合わせながら適度に食べるのが、海苔でも上手な取り入れ方といえます。

胎児の健康な発育に欠かせない葉酸

ここからは、海苔に含まれる主な栄養素を紹介していきます。海苔には、妊娠中の人にとってうれしい栄養素がいくつも含まれており、「葉酸」はその代表格といえます。

ビタミンB群の一種である葉酸は、お腹の赤ちゃんに「神経管閉鎖障害」と呼ばれる異常が発症するのを抑えるほか、貧血や口内炎の予防、動脈硬化のリスクの抑制、病気への抵抗力の向上といった働きがあるとされています。そのため、妊娠を計画している女性や妊娠初期の妊婦さんはとくに、葉酸を積極的に摂取したほうがよいと言われています 。

2020年版の日本食品成分表によると、焼き海苔には100gあたり1,900μg(1.9mg)程度、全型1枚(3g)あたりにするとおよそ57μg(0.057mg)の葉酸が含まれています[*1] 。

葉酸を最も多く必要とするのは、妊娠計画中(妊娠の1ヶ月以上前)~妊娠3ヶ月までの女性で、この時期の女性は1日あたり「食事から240μg+サプリメントなどから400μg=計640μg(0.64mg)」の葉酸を摂取したほうがよいといわれています[*2, 3] 。

仮にこの「食事から摂取する240μg」をすべて焼き海苔で摂取しようとすると、全型の海苔4枚強を食べれば1日分の食事性葉酸を摂取することが可能です。しかしながら毎日毎日、全形の焼き海苔を4枚以上食べるのはあまり現実的でないため、葉酸が豊富なほかの食品と一緒に摂取していくのがよいでしょう。

葉酸を豊富に含む食品はいくつかありますが、妊娠中はとうもろこし、枝豆、ホウレンソウ、アスパラガス、そら豆、小松菜などがおすすめです。

妊娠後期のむくみ改善に役立つカリウム

むくみがきになる妊婦

ホルモンバランスの変化などにより、妊婦さんはむくみやすいことが知られています 。ナトリウム(塩分)には体に水を溜め込む機能がありますが、一方、カリウムにはナトリウム(塩分)を尿に排泄する手助けをしてくれる働きがあり、むくみの解消に役立ちます 。

妊婦さんはカリウムを、1日に2,600mg以上摂るのが目標とされています[*4]。これを海苔だけで摂取しようとすると、焼き海苔を100g以上食べる必要があります(焼き海苔100gでカリウム2,400mg)。よって、こちらもほかの食品と組み合わせて摂取していきましょう。

カリウムはバナナ、いも類、切り干し大根などに豊富に含まれています 。

妊娠中の貧血予防に役立つ鉄分

妊娠中、貧血になる人は少なくありません。貧血とは、血液中のヘモグロビン(赤血球中にある物質。血液の赤さの素となる)の濃度が低くなった状態のことを言います。妊娠すると、お腹の赤ちゃんに栄養を運ぶために血液自体の量は増えますが、その多くは液体成分である血漿(けっしょう)で、赤血球などの細胞成分はそれほど増加しません。したがって血液が薄まった状態になり、貧血になりやすいというわけです 。

厚生労働省では貧血を防ぐために、妊娠中は非妊娠時よりも多くの鉄分摂取を推奨しています。非妊娠時の鉄の推奨摂取量は、18~49歳の女性で6.5mg/日(月経がある場合は10.5mg/日)とされています[*2]。 妊娠初期はこれに+2.5mg、妊娠中期・後期では+9.5mgすることを推奨しています 。つまり、妊娠中は1日あたり少なくとも9mg、妊娠中期以降は16mgの鉄分摂取が勧められていることになります。

焼き海苔100g中には11.0mgの鉄分が含まれています[*1]。ただ、やはり海苔だけで必要な鉄分を摂取するのは、現実的ではありません。

赤身の肉(牛のヒレ肉など)、あさりの水煮、鶏卵、ほうれん草、小松菜、がんもどき、納豆などの鉄分を多く含む食品を上手に組み合わせて摂取しましょう 。

妊娠中の便秘予防に役立つ食物繊維

ご飯を海苔で食べる

便秘も、妊娠中に起こりやすいマイナートラブルのひとつです。便秘予防に効果的な栄養素である食物繊維も、海苔には豊富に含まれています。

妊娠中は、1日あたり18g以上の食物繊維の摂取が目標となっています[*4]。焼き海苔に含まれる食物繊維の量は100g中36.0g[*1]。実に重量の1/3以上が食物繊維です。焼き海苔を全型で17枚以上(50g)食べると、1日の目標である18g以上の食物繊維を摂取することが可能ですが、これも現実的ではありません。

食物繊維が豊富なほかの食品、例えば、しらたき、さつまいも、切り干し大根、カボチャ、ごぼう、ブロッコリー、椎茸なども組み合わせて摂取するのがおすすめです。

妊娠中の海苔でヨウ素のリスクは?

海苔には、妊婦さんにうれしい栄養素が豊富な一方、少し注意が必要なものも含まれています。それは「ヨウ素」という栄養素。一体どんな栄養素で、どんなところに注意すべきなのでしょうか。

ヨウ素とは

ヨウ素は食品に含まれているミネラルの一種です。代謝をはじめとした体内の重要な機能の調節や、妊娠・授乳期における赤ちゃんの骨や脳の正常な発育に関わる「甲状腺ホルモン」というホルモンの合成にヨウ素は不可欠です。

ヨウ素は魚介類や海藻類に比較的多く含まれています。土壌中にヨウ素が少なく、海からも離れているヒマラヤ、アルプス等の山岳地帯などの地域では、ヨウ素の摂取量不足が心配されることもありますが、海産物を多く食べる習慣のある日本では、ヨウ素不足よりも過剰摂取、つまり摂りすぎのほうが問題になることがあります。

妊娠中に ヨウ素の摂取量が多くなりすぎると、一過性クレチン症などの、赤ちゃんの甲状腺機能低下がみられたり、ママ自身にも甲状腺機能の低下がみられたりすることがあり、注意が必要です 。

ヨウ素の過剰摂取にならない海苔の量は?

では、どれくらいヨウ素を摂取すると過剰摂取になるのでしょうか。

大人の場合のヨウ素の1日の耐容上限量(注1)は3,000μgとなっていますが、妊婦さんや授乳中の女性はヨウ素の過剰摂取への感受性が高いと考えられているため、1日2,000μgが耐容上限量とされています[*5]。

焼き海苔100gには2,100μg(2.1mg)のヨウ素が含まれていますが[*1]、焼き海苔100gは全型の焼き海苔で約33枚分相当なので、妊娠中に多少海苔を食べたとしてもヨウ素の過剰摂取はまず心配ないといえるでしょう。

(注1)耐容上限量とは、この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなることを表します。耐容上限量を超えたらすぐに健康を害するということではありませんが、習慣的に摂取する食品では、耐容上限量を超えないように注意が必要です。

海苔よりも「昆布だし」に注意

海藻

ヨウ素については、海苔よりも普段料理に使っている「だし」のほうに注意が必要かもしれません。

だしとして使う機会の多い昆布は、ヨウ素を多く含む食品のひとつです。昆布だしの場合、水出しで37g(大さじ2程度)、煮出しただしで18g(大さじ1程度)を超えると耐容上限量を上回ります[*1]。

いつも昆布だしを使っているという人は、妊娠・授乳中はそれをかつおだしに置き換えてみるとよいかもしれませんね。かつおだしに含まれるヨウ素の量は100g中1μgと、ごくわずか[*1]。ヨウ素の摂りすぎを気にせず使うことができます。

妊娠中の昆布については以下の記事も参考にしてください。
▶︎妊婦は昆布をどれくらい食べてよい?上限量と食べ過ぎたときの対処法

また、昆布のほかに以下の食品にもヨウ素が多めに含まれています。過剰摂取にならないよう、量に注意して食べましょう。

■ヨウ素が多い食品の例
 ・ヨード強化卵
 ・海藻類
 ・寒天を使った食品
 ・貝類、かに類
 ・タラ(タラを使ったかまぼこなども)、たらこ
 ・あん肝

味付け海苔や韓国海苔は食べていい??

味付け海苔

ところで、味付け海苔や韓国海苔などを食事と一緒に、またおやつ代わりに食べる人もいるでしょう。こうした味付きの海苔を食べる時には、以下のポイントに注意しておきましょう。

味付け海苔や韓国海苔は塩分に注意

韓国海苔は焼き海苔に、ごま油や塩を使って味付けした食品です 。また味付け海苔は、同じく焼き海苔に砂糖や食塩、醤油などで味付けをしています 。

このように韓国海苔や味付け海苔は、調味料を使って味付けをしている分、海苔単体よりも塩分が多くなっていて、その点に注意が必要です。例えば味付け海苔には、焼き海苔の3倍の塩分が含まれています[*1]。


・焼き海苔:食塩1.3g(ナトリウム530mg)
・味付け海苔:食塩4.3g(ナトリウム1,700mg)
     *いずれも100gあたり

韓国海苔の場合、商品によって多少の変動はありますが、韓国海苔8枚※に食塩0.35g程度(ナトリウム138mg程度)の塩分が含まれています。100gあたりに換算すると食塩8.8g程度になり、味付けのない焼き海苔の約8倍の塩分が含まれる計算になります[*1]。

※韓国海苔8枚:約4g=焼き海苔全型1枚相当

妊娠の有無に関わらず、塩分を過剰に摂りすぎることは、むくみや高血圧などの不調や病気につながります。味付け海苔や韓国海苔は、量に注意して食べることをおすすめします。

まとめ

海苔をまいたおにぎり

海苔は妊婦さんにとって、うれしい栄養素が豊富に含まれていますが、たくさん食べる食品ではないため、海苔単体で栄養を摂取しようとせず、ほかの食品と組み合わせて、必要な栄養を摂取していきましょう。また、海苔の中でも味付け海苔や韓国海苔は塩分を多く含むので、塩分の過剰摂取に要注意です。

食べすぎには気を付けながら、妊娠中もおいしい海苔を楽しみましょう。

(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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