
【弁護士監修】モラハラ妻の危険度チェックリスト! もしかして私も? 法的リスクと対処法を確認
夫が頼りない。だからつい声を荒らげてしまったり、嫌味を言ってしまったり……。こんなわたし、もしかして「モラハラ妻」になってる? 夫婦の離婚相談を多く受ける弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生に、妻から夫へのモラハラの実態と、モラハラ妻にならないためのポイントを教えていただきました。
「モラハラ」とはいったいどんな行為?

「モラハラ」とは、上司や夫などの立場が強い方から、部下や妻など弱い者に向けて行われるもの、というイメージがある人も多いかもしれません。でも、妻から夫へのモラルハラスメントも、成立するんです。
「モラハラ」とは? モラルハラスメントの定義を知ろう
モラルは「道徳」。ハラスメントは「嫌がらせ」。
つまり、「モラハラ」とは、道徳的、倫理的、精神的にダメージを与える嫌がらせのことを言います。夫から妻へのモラハラ、妻から夫へのモラハラ、どちらも成立します。
また、「モラハラ」はセクハラやパワハラと同じように、どんな行為を「嫌だ」と感じるかが受け取り手により異なります。このため、「これをしたらモラハラです」と区切ることが難しいのも特徴です。
被害者も加害者も「モラハラ」に気づかず泥沼化⁉
ハラスメントかどうかの線引きが難しいということは、加害者側も「自分がモラハラをしている」という自覚を持ちにくいということ。
さらに、モラハラ加害者は、威圧的な言動で被害者を支配します。支配されてしまったモラハラ被害者は「こんな目に合うのは、自分が劣っているから仕方ない」と、あたかも自分に責任があるかのように錯覚してしまいます。
そのため、被害者側からはSOSを出しにくく、どんどんモラハラがエスカレートし、周囲が気づいたときには、家族崩壊、暴力沙汰など、大きな問題に発展してしまっていることも多いのです。
妻から夫へのモラハラはとくに表面化しにくい
一般に、家庭内のことは外からわからないもの。だから、配偶者間でのモラハラは、表面化しにくく、エスカレートしやすいといわれています。
加えて、男性である夫は、妻からのモラハラを誰にも相談しない傾向があり、モラハラ妻の実態は、なかなか外からは見えないようです。
内閣府による「男女間における暴力に関する調査」[*1]では、身体的暴行だけでなく、心理的攻撃や経済的圧迫といったいわゆる「モラハラ」にあたる行為までを含めて調査しています。平成29年の調査では、女性の約3人に1人、男性の約5人に1人は、配偶者から被害を受けたことがあり、被害を受けた女性の約6割は相談しているが、男性の約7割はどこにも相談していない、という結果が出ています。
妻からのモラルハラスメントは増えている!?
わたしの「モラハラ妻」危険度チェックリスト
自分が「モラハラ妻」になっていないか、考え始めてソワソワしてきたという方もいらっしゃるかもしれません。まずは、簡単に、あなたの「モラハラ妻」危険度をチェックしてみましょう。
以下の行動パターンにあてはまるものはいくつありますか?
□夫に対して威圧的な態度に出てしまう
□理想の夫になって欲しくていろいろ要求する
□夫のことを無視してしまう
□夫をコントロールしたくなる
□養ってもらって、または、夫の方が多く稼いで「当たり前だ」と思っている
□夫の言い分に、正論で返してしまう
□子どもの前で、夫(パパ)の文句を言う
□「もっと稼いでこい」「能なし」などと言ってしまう
□家庭内で自分が1番正しいと思っている
□夫に対し、暴力をふるったり物を投げつけたりする
【チェックの数は0】→「モラハラ妻」ではありません
あなたに「モラハラ妻」の要素はありません、安心してください。
むしろ、「わたし、モラハラ妻になってないかな?」と振り返って考えられる、やさしく思いやりのあるパートナーといえるでしょう!
【チェックの数が1〜3】→「モラハラ妻」の疑いあり
「これ、よくやっちゃっているかも……」と、当てはまるものが1つでもあれば、あなたは「モラハラ妻」の疑いあり。チェックの入っている数が多いほど、危険度は高くなります。思い当たる節があれば、すぐに態度をあらためて!
ただし、ケンカのはずみなどで、突発的にリストにあるような言動をしてしまっただけならば、よくあること。そこまで神経質に考えなくて大丈夫です。
また、自分がどんなに「モラハラしちゃったかも?」と不安に思っても、夫がなんとも思わなければ、ハラスメント行為にはなりません。夫とのコミュニケーションをよくとって、相手を傷つけていないか、思いやるようにしましょう。
【チェックの数が4〜6】→「モラハラ妻」への黄色信号!
あなたの中には、「モラハラ妻」の芽が育ってきています。とくに、チェックリストにあるようなことを日常的に繰り返している場合は要注意。モラハラ加害者は、男女問わず「外面がいい」という特徴が指摘されていますが、あなたはどうですか?
モラハラをしているかもと気になる人は、夫があなたの前でどんな様子でいるのか、じっくり観察してみましょう。あなたの顔色をうかがう素振りを見せたり、あなたの前で自信がなさそうな様子だったら……実は、心理的に追い詰められているのかもしれません。あなたのふだんの言動をあらためる必要がありそうです。
【チェックの数が7〜10】→残念ながらあなたは「モラハラ妻」の可能性大
残念ながら、今のあなたは「モラハラ妻」である可能性が高いです。
でも、自覚したのだから、まだ大丈夫。今すぐ、モラハラをやめる努力を始めましょう。まずは、自分が自覚なくモラハラをしていたことを夫に謝罪し、「変わりたい」と思っていることを誠心誠意伝えるのです。
モラハラをしてしまう理由はさまざまですが、もしかしたらあなた自身も、身近な誰かからモラハラを受けてきていて、愛情表現が苦手なのかもしれません。そんな自分自身を強く責めるよりも、前向きな対処方法をとっていきましょう。
モラハラを自覚したら、どうしたらいいの?
自分が「モラハラ妻」だと自覚したら、それを克服することに挑戦しましょう。必要に応じてカウンセラーなど専門家に頼る手もあります。
また、繰り返しになりますが、モラハラは自覚しにくいのが、怖いポイント。ですから、自覚できたあなたは、それだけで、自分の悪い点を認めることができる、とても勇気のある人です。夫や家族に「モラハラを克服したいから、もしモラハラだと感じたら指摘してほしい」と伝えましょう。
そして、ズバリと指摘されても、カッとしないこと! ひと呼吸おいて、「冷静に」「穏やかに」と心の中で唱えてから、自分の気持ちを言葉にしていきましょう。
「暴力をふるったり物を投げつけたりする」にチェックが入った人は、今すぐSTOP!
どんな場合であっても暴力はいけません。一般に、男性よりも女性は力が弱いとはいえ、暴力を正当化することには絶対にならないのです。
とくに、「女性は男性よりも弱い」と強く思っている人、女性としての被害者意識が強い人は、男性へ暴力をふるうことに抵抗感が薄くなりがちなので、要注意。妻から夫への暴力がエスカレートして、夫を殺害してしまったという事件も起きています。
暴力は犯罪です。今すぐ、やめましょう。
ママからパパへ、モラハラがはじまるきっかけ二大パターン
子どもができると、妻のなかでの夫の優先度が下がる、なんてことはよく言われますね。
だからといって、パパにモラハラなんてしないママは大勢いるのですが、モラハラが始まりやすいタイミングがあらかじめわかっていれば、「モラハラ妻」化することも避けやすいはず。
子を持つ女性が夫にモラハラしてしまいやすい二大パターンを、ケーススタディとして見てみましょう。
(1)ワンオペ育児&産後クライシスで夫への愛が薄れて……
出産後、急速に夫婦の関係が悪化する「産後クライシス」。とくに、産後の体調不良やホルモンバランスの乱れに、ワンオペ育児の不安と疲労が重なったりすると、妻から夫に対する不満や怒りが爆発しがちなことが知られています。
産後すぐは「非常時」と夫にわかってもらおう
産後しばらく、女性の身体は元には戻らず、ホルモンバランスの乱れから、メンタルも不安定になりがちな時期。また、目の前の赤ちゃんに必死になるので、夫に対する口調や態度を気にする余裕なんて、どこにもない、ということも多いです。
まずは、この事実を、夫に理解してもらうことが大切です。夫が、「この時期の妻は心身ともに限界の状態なんだ」とわかっていてくれれば、多少のことで「妻にモラハラされた!」などとは思わないはずだからです。
夫婦一緒の子育てで「モラハラ妻」発生を防いで!
産後すぐの、育児が一番大変な時期に、妻が「夫は一緒に子育てしてくれなかった」「夫は大変なことをみんなわたしに押しつけてきた」と感じてしまうと、その恨みを長く引きずってしまいがち。結果として、「産後クライシス」をなんとか乗りきった後も、夫への口調や態度がキツイままとなって、「モラハラ妻」化していくことも……。
「産後すぐ」という、子育ての最初のクライマックスを夫婦で一緒に乗り越えることは、あなたが将来的に「モラハラ妻」化しないためにも、重要なことなんです。どう夫婦一緒に子育てしていくかについて、できれば出産前から、夫婦でよく話し合っておきましょう。
(2)思春期の娘と一緒に、夫を「粗大ごみ」扱い!
思春期になると、女の子はたいてい「パパがキモイ」などと言い出し、父親を避けるようになります。そんなとき、ママが娘と一緒になって夫を粗大ごみ扱いしてしまうのはNG。「モラハラ妻」のできあがりです。
両親間のモラハラを見せるのは子どもにも悪影響
娘が父親に嫌悪感を抱くのは、生物学上、似通った遺伝子が結びつかないようにするための防衛反応だとか。成長の過程で多くの女の子が通る道なので、あなた自身にも同じように、父親に反発した記憶があるかもしれません。
だからといって、子どもと一緒になって、母親が父親の尊厳を傷つけるような言動を続けたとしましょう。夫が傷つくことはもちろん、「不仲の両親の間で育った自分は、価値のない存在なのだ」と、将来的に子どもが自己肯定感を失ってしまうこともあるんです。
娘さんの成長や気持ちに寄り添うのは大事なこと。ですが、「あなたがパパのことをイヤでも、私は大好きよ」と、夫を大事にしている姿を見せる方が、結果的に子どもの成長にもよい影響をもたらしますよ。
子どもの父親への反発に、安易に同調しないこと
娘の場合だけでなく、息子に対しても関しても同じこと。子どもの父親への反発に、過度に寄り添って同調した結果、「モラハラ妻」となる危険に注意して。夫のためだけでなく、子どものためにも、大切なことです。
それが続くと訴えられる? STOP!モラハラ行為
「だって止められないんだもん」。そんな気持ちでモラハラ行為を続けていたら、法的なリスクがある場合も……。中里弁護士に聞いてみましょう。
手をあげる、物を投げるDV妻は傷害罪!
罵り続けたその言葉で、慰謝料請求されるかも!
わたしの稼ぎも多いけど、家計は夫が担って当然ですよね?
金銭問題は「生活が困窮するほどの金額かどうか」がポイント!
もし、妻が家計を管理している家庭で、夫が「毎月のこづかいが少ないのは、妻の金銭的モラハラ行為だ!」と抗議してきた場合はどうでしょう。
離婚をちらつかせて威圧したつもりが、逆に離婚へまっしぐら!
「わたし、モラハラ妻かも」と思ってしまった女性たちへ、中里弁護士からのアドバイス
まとめ
モラハラの大きな問題点は、している方にもされている方にも自覚が難しく、エスカレートしてしまうことも多いこと。モラハラを自覚すること自体、「モラハラ妻」脱出への、とてつもなく大きな第1歩なんです!
自分を「ダメな妻だ」と必要以上に責める必要はありません。その分、夫にかける言葉や夫への態度を、意識して変えていきましょう。
(文:暮らしのチームクレア 川口裕子/監修:中里妃沙子弁護士/漫画:ニタヨメ)
※画像はイメージです
[*1] 内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査 」https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/h29danjokan-gaiyo.pdf [*2] 内閣府男女共同参画局「ドメスティック・バイオレンス(DV)とは」https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/index.html
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、弁護士に取材、および、その監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものです。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます