【医師監修】赤ちゃんが脱水症になりやすい3つの理由と気づくポイント

【医師監修】赤ちゃんが脱水症になりやすい3つの理由と気づくポイント

赤ちゃんがたくさん汗をかいたり、下痢や嘔吐が続いたりすると、気になるのが「脱水症」です。赤ちゃんは脱水症になりやすいといわれていますが、それはなぜなのでしょうか。そして、どのような場合に対処が必要なのでしょうか。


赤ちゃんは大人より脱水症になりやすい

人間の体は、水分補給が適切に行われなかったり、体からいつもよりも多くの水分が失われたりすると、体に大きな変調が現れます。これを脱水症といいます。特に赤ちゃんは大人よりも脱水症になりやすいので、注意が必要です。それはなぜなのでしょうか。いくつか理由を説明します。

理由1:体の中の水分量は大人より多いものの失われやすい

人間は年を取るとともに体の水分の量が減っていきます。つまり、赤ちゃんは大人よりも体の中の水分量が多いです。水分量の割合は新生児の場合体重の約80%、乳児では約70%、そして大人は約60%と言われています[*1]。

赤ちゃんの水分は失われやすい「細胞外液」が多い

「もともと大人より水分量が多いのなら脱水しにくいのでは?」と感じるかもしれませんが、実は赤ちゃんの体にある水分は大人よりも失われやすいものが多いのです。

体内の水分は「細胞外液」と「細胞内液」に大きく分類することができます。「細胞内液」とは細胞の中にある水分で、「細胞外液」は細胞と細胞の間にある水分や血液、リンパ液、胃や腸内の消化液などです。新生児や乳児は細胞内液より「細胞外液の割合のほうが大きい」のですが、これは体外に出やすい水分が多いということです。

大人は、水分のうちの40%が細胞内液で、細胞外液は20%です。しかし、新生児は、水分のうちの35%が細胞内液で、45%が細胞外液。乳児では細胞内液は40%、細胞外液は30%です[*1]。赤ちゃんは大人よりも体内の水分に占める細胞外液の割合が多いため、それだけ水分が体外に出やすいのです。

体が小さいので影響が大きい

なお、脱水症の重症度は体重減少の度合いによって分けられます。乳児の場合、体重減少が5%未満のときが軽度、5~10%が中等度、10%より多い場合は重症となります[*1]。

たとえば体重6,000gの赤ちゃんが、120ccの嘔吐を3回すると、120×3=360ccが体の外に出ていくことになります。これをおよそ360gということにすると、体重の6%ほどの重さを占めることになります。もし、この状態で赤ちゃんが水分をとらなければ、体重の6%が失われてしまうことになり、中等度の脱水症になるのです。

たった3回嘔吐を繰り返しただけで中等度の脱水症になってしまうのですから、いかに赤ちゃんが脱水症になりやすいかがよくわかるのではないでしょうか。

理由2:成長のために大人より必要とする水分量も多い

子供は大人よりも体重当たりで必要な水分量が多いのも特徴です。大人と違って子供は、体を維持するだけではなく、成長して体を大きくしなければいけません。そのためにはエネルギーがより必要となり、それに伴って水分もたくさん必要になるのです。

1日の平均的な水分必要量は、新生児では体重1kgあたり1日60~160ml、乳児で1kgあたり1日100~150ml、幼児で1kgあたり1日60~90mlですが、成人では1kgあたり1日30~40mlです[*1]。いかに子供がたくさんの水分を必要とするかがよくわかります。

理由3:内臓の機能などが未熟なために脱水になりやすい

人間の体は、尿や汗以外でも自然に水分が失われています。たとえば、吐く息に含まれる水分や、皮膚や気道の粘膜から蒸発する水分などです。赤ちゃんは大人に比べて、このような自然に失われる水分が多いのも特徴です。

また、赤ちゃんは大人に比べて腎機能が未熟です。大人の場合、寝ている間などあまり水を飲んでいないときに出る尿は濃く、たくさん水を飲んだときの尿は薄くなります。しかし、赤ちゃんはそこをうまく調整することが難しいため、やはり脱水症になりやすくなります。

なお、体に取り込んだ分より失われる水分が多いと喉が渇きますが、まだ言葉を話せない赤ちゃんは「喉が渇いた」とは訴えられません。このことも赤ちゃんで脱水症が進みやすい原因のひとつです。

赤ちゃんはどんなときに脱水症になりやすいの?

水分の摂取量よりも水分が奪われる量が多いと当然体内の水分量は減るので、脱水症のリスクが上がります。では、どのようなときに体内の水分は減るのでしょうか。

大量の発汗、発熱時、下痢・おう吐が続くとき

脱水症は通常、大量の発汗、嘔吐や下痢などで過度に水分が失われることで起こります。ただし、嘔吐や下痢があるからといって、必ず脱水症になるわけではありません。ほか、病気にかかっている場合や、乳児がうまく母乳やミルクを飲めていなくて十分に水分を摂取できていない場合でも起こることがあります。

赤ちゃんの脱水症状はどんなもの?

赤ちゃんの脱水症は、体重の減少の度合いで重症度が変わることはすでに説明しました。しかし、ほかにもさまざまなサインがあります。緊急度別に症状を紹介します。

こんなときはすぐに受診して!-注意したい赤ちゃんの脱水症状ー

「赤ちゃんはどんなときに脱水症になりやすいの?」で解説したように、発熱時や下痢、嘔吐が続いているときなどには脱水症に注意が必要です。脱水症が起こるかもしれないときに下記のような症状が出ている場合は、重症の脱水症の疑いがあります。すぐに受診し、治療を受けましょう。

時間外や休日でもすぐに受診!

・尿の色が非常に濃い、または尿が出ていない
・泣いても涙が出ない
・目が落ちくぼむ
・うとうと、ぼんやりする。もしくは、ちょっとした刺激に過敏に反応する
・呼吸があらい
・皮膚と粘膜の乾燥(しわやたるみが目立つ)
・大泉門(頭の上にある頭蓋骨の隙間)がへこむ
・手足の体温が冷たい、まだら状の模様が出ている(網状チアノーゼ)
・意識障害、けいれんがある

診療時間内に受診

上記に挙げた症状はないけれど、嘔吐や下痢などが続いている場合は、診療時間内に受診しましょう。受診の際は前開きの服を着ておくと、着脱の際に吐いたものが服につきにくいです。

赤ちゃんが脱水症かもしれない場合はどうすればいい?

赤ちゃんの場合は、母乳やミルクを与えるのもよいでしょう。ただし、嘔吐を繰り返している場合は一度にたくさんあげるとよけいに吐き気をもよおすことがあるので、少しずつ頻繁に与えるようにしてください。

母乳やミルク以外の水分を与える場合は、水やお茶は避けてください。体内の水は塩分を含んでいるので、水やお茶だけを補給すると、塩分が薄まってしまいます。すると体内の水分が外に逃げやすくなるので脱水状態が改善しないのです。脱水症から回復するためには、失われた水分と同時に塩分を補給することが重要になってきます。

経口補水液をあげましょう

脱水症が疑われる場合は、市販の「経口補水液(ORS)」を与えるのがおすすめです。経口補水液は水分と塩分をすばやく補給できるように、ナトリウムとブドウ糖の濃度が調整されていて、医療機関で使う点滴と同等の効果があることが証明されています。

スポーツドリンクなら塩分が入っているからよいのではないかと思うのかもしれませんが、スポーツドリンクは実は糖分が多く塩分が少ないので脱水症のときは適していません。

なお、経口補水液は、嘔吐や下痢などの症状がみられた時点で、速やかに飲ませることをおすすめします。急性胃腸炎では、症状が続くにつれて脱水が進行して重症化するからです。薬局で売っているので、普段から常備しておくといざというときに安心です。

経口補水液の与え方

『小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017』では、50〜100mL×体重(kg)の経口補水液を3〜4時間かけて投与することを推奨しています。

具体的には、ペットボトルのキャップ 1 杯程度の 5mLの経口補水液を5分おきに飲ませます。

嘔吐がなければ、与える間隔を徐々に短くしていきます。もし飲ませたあとで嘔吐してしまっても効果はあるので、続けてあげても問題ありません。経口補水液は一気飲みさせずに、少しずつ頻繁に飲ませることがポイントです。

もし、赤ちゃんが経口補水液の味を嫌がるようであれば、ゼリータイプの経口補水液を与えるのもよいでしょう。ゼリータイプは塩味を感じにくく飲みやすいというメリットがあります。

まとめ

赤ちゃんは大人に比べると簡単に脱水症になってしまいます。たくさん汗をかいたり、下痢・嘔吐を繰り返しているときは要注意。もし下痢や嘔吐が始まったら、すぐに経口補水液などの水分補給を始めてください。重度の場合は命にかかわることもあるため、ここで紹介したような症状があって疑われる場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修ドクター
大越陽一先生
杏林大学医学部卒業、杏林大学医学部小児科学教室任期助教、埼玉県立小児医療センター循環器科医長を経て現在アルテミスウィメンズホスピタル小児科部長。小児科専門医

(文:今井明子/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]前川喜平:母子健康協会 第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気 1.子どもの特性

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

関連する投稿


【漫画】料理も掃除もお任せあれ! でも夫があまりに家事ができすぎて……!?『ワーキング母ちゃん日記』Vol.29

【漫画】料理も掃除もお任せあれ! でも夫があまりに家事ができすぎて……!?『ワーキング母ちゃん日記』Vol.29

育児も、仕事も、大変だけど楽しい! フリーランスデザイナーとして働くあいさんのコミックエッセイ『ワーキング母ちゃん日記』。毎週火曜日更新で、大好評連載中です。


【漫画】余裕……じゃない!? ADHD疑いのわたしが発達検査を受けた結果『発達障害親子のワーママDAYS』Vol.4

【漫画】余裕……じゃない!? ADHD疑いのわたしが発達検査を受けた結果『発達障害親子のワーママDAYS』Vol.4

長男は自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症。グラフィックデザイナーとして働く私も発達障害の傾向があって……? 凸凹親子の日常を描いたコミックエッセイ『発達障害親子のワーママDAYS』は、隔週木曜日更新です。


【豪華プレゼント付き!】2021年6月11日(金)インスタライブを配信 話題の知育絵本の読み聞かせ&手遊び歌を楽しもう!

【豪華プレゼント付き!】2021年6月11日(金)インスタライブを配信 話題の知育絵本の読み聞かせ&手遊び歌を楽しもう!

パパとママに役立つ情報を発信しているマイナビ子育てが、定期的に行っているインスタライブ。今回のインスタライブの内容をご紹介します。


AIの子どもの名前に反響「すごくいい名前」 いま人気な赤ちゃんの名前は?

AIの子どもの名前に反響「すごくいい名前」 いま人気な赤ちゃんの名前は?

歌手で二児の母であるAIさんが、お子さんたちの名付けについて明かし、話題になっています。様々な願いを込めた「名前」。時代ごとにトレンドの漢字や読みもありますが、今はどんな名前が人気なのでしょうか。


【漫画】4歳の息子が私の知ってる「天使の4歳」と違う件『ちっちゃいけどモヤるぅ~!育児のあれこれ』Vol.19

【漫画】4歳の息子が私の知ってる「天使の4歳」と違う件『ちっちゃいけどモヤるぅ~!育児のあれこれ』Vol.19

4歳になった二太郎くん。イヤイヤや癇癪が落ち着く「天使の4歳」迎えたかと思いきや、現実は違って……? 子育て中のちょっとしたモヤモヤ、笑い飛ばしましょ♪ 姉・イチコちゃん、弟・二太郎くんの2人のお子さんとの暮らしを描くコミックエッセイやかわいいイラストがInstagramや書籍などで大人気! モチコさんがお届けします。


最新の投稿


【漫画】帝王切開を報告。でも夫は自分のことばかりで……『新米ママは今日も心配のタネを抱えています!』Vol.25

【漫画】帝王切開を報告。でも夫は自分のことばかりで……『新米ママは今日も心配のタネを抱えています!』Vol.25

元・強迫性障害の私が予期せぬ妊娠!? “心配のタネ”をお腹に抱えた新米ママ・わたしが送るマタニティライフとは? そして、妊娠をきっかけに生じた夫婦の溝はどうなる? 毎週水・土曜日の更新です。


【漫画】妻の不倫相手は3人! このままでは気が済まない僕はある行動に……『妻が鬼畜不倫、僕は復讐することにした』Vol.5

【漫画】妻の不倫相手は3人! このままでは気が済まない僕はある行動に……『妻が鬼畜不倫、僕は復讐することにした』Vol.5

この幸せがいつまでも続くと思っていたのに……。妻の裏の顔に驚愕! 不貞の証拠がゴロゴロ出てきて、もはや妻を愛せない。こんな人間に親権を渡してなるものか‼ サレ夫におこったドロドロの離婚劇が始まる――。ガマ太郎さん『妻が鬼畜不倫、僕は復讐することにした』(KADOKAWA)の内容を一部抜粋してお届けします。


【助かるわあ】オムツ替え全力拒否のはずが……泣き叫ぶ息子に何が?

【助かるわあ】オムツ替え全力拒否のはずが……泣き叫ぶ息子に何が?

Instagramで子育て漫画を発信されるそうははさん。そうははさんの投稿よりオススメの投稿を編集部がピックアップして紹介します。


【ちょっとそれ自己中!】妻が身勝手だと感じる夫の言動

【ちょっとそれ自己中!】妻が身勝手だと感じる夫の言動

子育てをしていて夫の発言や行動が自分勝手だと感じると、子なし時代より圧倒的にイライラしてしまいますよね。今回は、夫が自分勝手(身勝手)だと思うことはあるかどうかアンケートをとってみました。みなさん、怒りがたまっているようです……。


【医師監修】生理中は眠い・だるい……その原因と対処法、普段からできる対策とは

【医師監修】生理中は眠い・だるい……その原因と対処法、普段からできる対策とは

生理中は毎回眠くて仕方がないし、体もだるくて辛いと感じる人は多いのではないでしょうか。ここではそんな症状が起こる原因と少しでも改善するための対処法、生理ではないときからできる対策について解説します。