【医師監修】赤ちゃんが脱水症になりやすい3つの理由と気づくポイント

【医師監修】赤ちゃんが脱水症になりやすい3つの理由と気づくポイント

赤ちゃんがたくさん汗をかいたり、下痢や嘔吐が続いたりすると、気になるのが「脱水症」です。赤ちゃんは脱水症になりやすいといわれていますが、それはなぜなのでしょうか。そして、どのような場合に対処が必要なのでしょうか。


この記事の監修ドクター
杏林大学医学部卒業、杏林大学医学部小児科学教室任期助教、埼玉県立小児医療センター循環器科医長を経て現在アルテミスウィメンズホスピタル小児科部長。小児科専門医。

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赤ちゃんは大人より脱水症になりやすい

人間の体は、水分補給が適切に行われなかったり、体からいつもよりも多くの水分が失われたりすると、体に大きな変調が現れます。これを脱水症といいます。特に赤ちゃんは大人よりも脱水症になりやすいので、注意が必要です。それはなぜなのでしょうか。いくつか理由を説明します。

理由1:体の中の水分量は大人より多いものの失われやすい

人間は年を取るとともに体の水分の量が減っていきます。つまり、赤ちゃんは大人よりも体の中の水分量が多いです。水分量の割合は新生児の場合体重の約80%、乳児では約70%、そして大人は約60%と言われています[*1]。

赤ちゃんの水分は失われやすい「細胞外液」が多い

「もともと大人より水分量が多いのなら脱水しにくいのでは?」と感じるかもしれませんが、実は赤ちゃんの体にある水分は大人よりも失われやすいものが多いのです。

体内の水分は「細胞外液」と「細胞内液」に大きく分類することができます。「細胞内液」とは細胞の中にある水分で、「細胞外液」は細胞と細胞の間にある水分や血液、リンパ液、胃や腸内の消化液などです。新生児や乳児は細胞内液より「細胞外液の割合のほうが大きい」のですが、これは体外に出やすい水分が多いということです。

大人は、水分のうちの40%が細胞内液で、細胞外液は20%です。しかし、新生児は、水分のうちの35%が細胞内液で、45%が細胞外液。乳児では細胞内液は40%、細胞外液は30%です[*1]。赤ちゃんは大人よりも体内の水分に占める細胞外液の割合が多いため、それだけ水分が体外に出やすいのです。

体が小さいので影響が大きい

なお、脱水症の重症度は体重減少の度合いによって分けられます。乳児の場合、体重減少が5%未満のときが軽度、5~10%が中等度、10%より多い場合は重症となります[*1]。

たとえば体重6,000gの赤ちゃんが、120ccの嘔吐を3回すると、120×3=360ccが体の外に出ていくことになります。これをおよそ360gということにすると、体重の6%ほどの重さを占めることになります。もし、この状態で赤ちゃんが水分をとらなければ、体重の6%が失われてしまうことになり、中等度の脱水症になるのです。

たった3回嘔吐を繰り返しただけで中等度の脱水症になってしまうのですから、いかに赤ちゃんが脱水症になりやすいかがよくわかるのではないでしょうか。

理由2:成長のために大人より必要とする水分量も多い

子供は大人よりも体重当たりで必要な水分量が多いのも特徴です。大人と違って子供は、体を維持するだけではなく、成長して体を大きくしなければいけません。そのためにはエネルギーがより必要となり、それに伴って水分もたくさん必要になるのです。

1日の平均的な水分必要量は、新生児では体重1kgあたり1日60~160ml、乳児で1kgあたり1日100~150ml、幼児で1kgあたり1日60~90mlですが、成人では1kgあたり1日30~40mlです[*1]。いかに子供がたくさんの水分を必要とするかがよくわかります。

理由3:内臓の機能などが未熟なために脱水になりやすい

人間の体は、尿や汗以外でも自然に水分が失われています。たとえば、吐く息に含まれる水分や、皮膚や気道の粘膜から蒸発する水分などです。赤ちゃんは大人に比べて、このような自然に失われる水分が多いのも特徴です。

また、赤ちゃんは大人に比べて腎機能が未熟です。大人の場合、寝ている間などあまり水を飲んでいないときに出る尿は濃く、たくさん水を飲んだときの尿は薄くなります。しかし、赤ちゃんはそこをうまく調整することが難しいため、やはり脱水症になりやすくなります。

なお、体に取り込んだ分より失われる水分が多いと喉が渇きますが、まだ言葉を話せない赤ちゃんは「喉が渇いた」とは訴えられません。このことも赤ちゃんで脱水症が進みやすい原因のひとつです。

赤ちゃんはどんなときに脱水症になりやすいの?

水分の摂取量よりも水分が奪われる量が多いと当然体内の水分量は減るので、脱水症のリスクが上がります。では、どのようなときに体内の水分は減るのでしょうか。

大量の発汗、発熱時、下痢・おう吐が続くとき

脱水症は通常、大量の発汗、嘔吐や下痢などで過度に水分が失われることで起こります。ただし、嘔吐や下痢があるからといって、必ず脱水症になるわけではありません。ほか、病気にかかっている場合や、乳児がうまく母乳やミルクを飲めていなくて十分に水分を摂取できていない場合でも起こることがあります。

赤ちゃんの脱水症状はどんなもの?

赤ちゃんの脱水症は、体重の減少の度合いで重症度が変わることはすでに説明しました。しかし、ほかにもさまざまなサインがあります。緊急度別に症状を紹介します。

こんなときはすぐに受診して!-注意したい赤ちゃんの脱水症状ー

「赤ちゃんはどんなときに脱水症になりやすいの?」で解説したように、発熱時や下痢、嘔吐が続いているときなどには脱水症に注意が必要です。脱水症が起こるかもしれないときに下記のような症状が出ている場合は、重症の脱水症の疑いがあります。すぐに受診し、治療を受けましょう。

時間外や休日でもすぐに受診!

・尿の色が非常に濃い、または尿が出ていない
・泣いても涙が出ない
・目が落ちくぼむ
・うとうと、ぼんやりする。もしくは、ちょっとした刺激に過敏に反応する
・呼吸があらい
・皮膚と粘膜の乾燥(しわやたるみが目立つ)
・大泉門(頭の上にある頭蓋骨の隙間)がへこむ
・手足の体温が冷たい、まだら状の模様が出ている(網状チアノーゼ)
・意識障害、けいれんがある

診療時間内に受診

上記に挙げた症状はないけれど、嘔吐や下痢などが続いている場合は、診療時間内に受診しましょう。受診の際は前開きの服を着ておくと、着脱の際に吐いたものが服につきにくいです。

赤ちゃんが脱水症かもしれない場合はどうすればいい?

赤ちゃんの場合は、母乳やミルクを与えるのもよいでしょう。ただし、嘔吐を繰り返している場合は一度にたくさんあげるとよけいに吐き気をもよおすことがあるので、少しずつ頻繁に与えるようにしてください。

母乳やミルク以外の水分を与える場合は、水やお茶は避けてください。体内の水は塩分を含んでいるので、水やお茶だけを補給すると、塩分が薄まってしまいます。すると体内の水分が外に逃げやすくなるので脱水状態が改善しないのです。脱水症から回復するためには、失われた水分と同時に塩分を補給することが重要になってきます。

経口補水液をあげましょう

脱水症が疑われる場合は、市販の「経口補水液(ORS)」を与えるのがおすすめです。経口補水液は水分と塩分をすばやく補給できるように、ナトリウムとブドウ糖の濃度が調整されていて、医療機関で使う点滴と同等の効果があることが証明されています。

スポーツドリンクなら塩分が入っているからよいのではないかと思うのかもしれませんが、スポーツドリンクは実は糖分が多く塩分が少ないので脱水症のときは適していません。

なお、経口補水液は、嘔吐や下痢などの症状がみられた時点で、速やかに飲ませることをおすすめします。急性胃腸炎では、症状が続くにつれて脱水が進行して重症化するからです。薬局で売っているので、普段から常備しておくといざというときに安心です。

経口補水液の与え方

『小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017』では、50〜100mL×体重(kg)の経口補水液を3〜4時間かけて投与することを推奨しています。

具体的には、ペットボトルのキャップ 1 杯程度の 5mLの経口補水液を5分おきに飲ませます。

嘔吐がなければ、与える間隔を徐々に短くしていきます。もし飲ませたあとで嘔吐してしまっても効果はあるので、続けてあげても問題ありません。経口補水液は一気飲みさせずに、少しずつ頻繁に飲ませることがポイントです。

もし、赤ちゃんが経口補水液の味を嫌がるようであれば、ゼリータイプの経口補水液を与えるのもよいでしょう。ゼリータイプは塩味を感じにくく飲みやすいというメリットがあります。

まとめ

赤ちゃんは大人に比べると簡単に脱水症になってしまいます。たくさん汗をかいたり、下痢・嘔吐を繰り返しているときは要注意。もし下痢や嘔吐が始まったら、すぐに経口補水液などの水分補給を始めてください。重度の場合は命にかかわることもあるため、ここで紹介したような症状があって疑われる場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。

(文:今井明子/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]前川喜平:母子健康協会 第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気 1.子どもの特性

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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