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2024年01月20日 11:41 更新

パパの帰宅は22時。2児の育児をワンオペしているママがそれでも笑っていられる理由 山根夫妻の場合 #共働き夫婦のセブンルール

世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。

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【左】山根秀樹さん(仮名/29歳/公務員)
【右】山根彩佳さん(仮名/30歳/メディア/マーケティング)

この連載でも世間的にも、夫婦で日々の家事育児をできるだけ平等に負担する共働き家庭が増えている。ただし、さまざまな理由で明らかに平等ではないケースもある。

今回の山根夫妻もそうだ。秀樹さんは通勤に1時間かかり、残業も多い公務員。彩佳さんはメディアのマーケティング職としてフルタイム勤務しながら、毎日朝の保育園への送りから夕方のお迎え、寝かしつけまでひとりでこなしている。秀樹さんの仕事柄、しかたがないことと納得しているとはいえ、大変だ。

彩佳さんの実母は近くにおらず、隣駅に住む秀樹さんの母にも日常的に頼れるわけではない。

「しんどい、と言われても、申し訳ないけど仕事を早く切り上げることはできないんですよね……」という秀樹さんに、「まあ、週末にお酒を飲んで我慢しています(笑)」と話す彩佳さん。

週末の晩酌くらいで、1歳と3歳の育児とフルタイムの仕事の両立を乗り切れるものなのか――? フルタイムワンオペの彩佳さんが、それでも機嫌良くいられるための山根夫婦のセブンルールを聞いた。

7ルール-1 土日どちらか1日は家族全員で過ごす

平日は帰宅が22時過ぎになる秀樹さん。育児にはほぼ不参加なため、週末は彩佳さんの監督のもと、子どもたちの相手役に努めているそう。「パパ大好き」な娘さんたちも喜ぶという(彩佳さんは、秀樹さんがレアキャラとして子どもたちに人気があるのも、それはそれで納得いかないところもあるらしい)。

「夫は平日いない分、休みの日に私がひとりで出かけたりするのは『いつでもどうぞ』というスタンスです。なので、友人と遊びに行くときもあるのですが、夫も週末に仕事の呼び出しがかかることもあり、お互いに予定を入れると家族が揃わないことがあって。それは寂しいな、と思って決めたのが、土日どちらかは家族全員で過ごすというルールです」(彩佳さん)

家族で過ごす休日にはテーマパークや水族館に行くこともあるが、「毎週お金をかけるわけにもいかないので」(彩佳さん)と、近くの公園で過ごすことが多いそう。まだ小さい子どもたちは、公園でも十分に楽しめる。

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友人と会う時間も楽しいけれど、家族全員が揃う時間は何より貴重!という共通認識があるからこそ成立するルールだ

「もちろん、週末は僕も家事をしますよ。夕食も作りますし、トイレや風呂の水回りの掃除は僕が担当なので、言われなくてもやっています」(秀樹さん)

水回りの掃除はできればやりたくない人も多いだろう。彩佳さんも例にもれず、「家事の中でも私がやりたくないことを率先してやってくれることが、不満がたまらない理由かもしれません」と笑顔で話してくれた。

7ルール-2 食事は1品以上手作りすればOK

彩佳さんはフルフレックスの在宅勤務。平日は秀樹さんが朝6時に出勤した後、彩佳さんが8時に子どもたちを保育園に送っている。その後、彩佳さんは9時に始業して17時に子どもたちのお迎え。そこから子どもたち2人と入浴し、食事を作って食べさせ、寝かしつけるまでは休む暇のない「戦い」だ。

「以前は仕事の合間に仕込みをして毎日2品作っていたのですが、3ヶ月ほど前から1品作ればOKという形で落ち着いてきました。というのも、パルシステムを始めてみたら、魚の甘酢揚げや唐揚げ、チーズ挟みなど、できるだけたくさん採りたいと思っていた魚料理の種類がたくさんあって。添加物が抑えられているので、安心して食べられるのもいいですね。メインはそれで、野菜はすべて汁物で摂ります。あとはブロッコリーとミニトマト、黒豆など、簡単なもので済ませています」(彩佳さん)

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毎日の食事は簡単に済ませつつ、野菜やたんぱく質を欠かさないなど栄養バランスはしっかり整えている

宅配サービスの調理済み食品は完全な手作りに比べれば安くはないが、「便利過ぎて抜け出せません(笑)」と彩佳さん。夕食作りの負担を減らしたことで、食事をして歯磨きなどを済ませ、20時に子どもたちが寝たあと仕事の残りを片付ける余裕も生まれている。

ただ、3歳になる長女に「今日はおかずこれだけ?」と文句を言われるようにもなったという。「成長とともに変えていく必要はあると思いますが、今は1品以上の手作りでなんとかしのいでいる感じです」(彩佳さん)

7ルール-3 外食は我慢しすぎない

週末は秀樹さんが食事を作る。子どもが生まれる前は交代勤務だった秀樹さんが毎日の料理担当だったため、手慣れたものだ。だが、もともとお互いに外で食べてお酒を飲んだりするのが好きなタイプ。

「家族でゆっくりしたいと思うと、気づいたら外食を選んでしまうんですよね。だから、最初は『外食は週に1回』というルールにしたのですが、それだとストレスになってしまうので『外食は週に1回が基本だけど、多くなってしまうときがあっても気にしない』というルールにしました(笑)」(彩佳さん)

「回転寿司や焼き肉なら、店内がざわざわしているので多少子どもが騒いでも気にならないですし、娘たちも喜びます」(秀樹さん)

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回転寿司は子育てファミリーの味方! 近所の「はま寿司」によく行っているそう

食費の管理は大切だが、家族の外食は心から楽しみたい。目安は決めるけれど、無理し過ぎないのが山根夫婦のルールだ。

7ルール-4 経験を大切にする

彩佳さんは子どものころ、毎週のように両親と外出し、いろんなところへ連れて行ってもらった思い出があるという。

「私自身、初めて行く公園の開拓をしたりするのが大好き。子どもも『またあそこに行きたい!』と言うこともあって、覚えていてくれているのがうれしいんです。親が思ってもいなかった公園を気に入っていることもあり、発見があって楽しいですよ」(彩佳さん)

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2人目が生まれたのをきっかけに、車を購入したという山根夫妻。遠方の公園での水遊びもかなりハードルが下がる!

秀樹さんはインドア派で、週末は家でゆっくりしていたいほう。それでも、子どもたちのためならがんばって出かけられる。気持ちに鞭を打つために役立つのが「経験を大切にする」という夫婦のルールだ。

「子どもはいろんな経験をしたほうがいいというのは僕も同感なので、遠出をして大洗の水族館に行ったり、サンシャイン水族館の年間パスポートを購入したりしています。楽しんでいる娘たちを見れば、僕も楽しめますしね」(秀樹さん)

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横浜動物園ズーラシアでの記念写真。乗馬やモルモットとの触れ合いもできて、子連れにはもってこい

彩佳さんはお仕事体験テーマパークもお気に入り。

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千葉市・幕張のKando(カンドゥー)で建設作業のお仕事体験。大人も子どもも楽しめるお気に入りスポットだ

「カフェ体験などを娘たちがとっても楽しそうにするので、また行きたいな、と思います。まだ宿泊を伴う旅行はできていないので、娘たちがもう少し大きくなったら挑戦したいですね」(彩佳さん)

7ルール-5 お互いの時間・趣味を尊重する

そろそろ忘れている人もいるかもしれないが、彩佳さんは平日フルタイムワンオペだ。2人の未就学児を抱えて、朝の保育園の支度から送り、在宅とはいえフルタイム勤務の後に子どもたちの迎えや食事、風呂、寝かしつけまですべてこなすのは、はっきり言って心身ともに疲労困憊するはずだ。

「朝の送りくらいなんとかできるようにしてよ!」とブチ切れてもおかしくないと思うが、彩佳さんの笑顔を支えている存在が、実は家の外にもいる。結婚する前からファンだという、King & Princeだ。

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遠征は友人と! コンサートはもちろん、現地でおいしいものを食べたりお酒を飲んだりするのも楽しみのひとつ

「メンバーがお互いを信頼している空気感が好き。普段は彼らの曲を聞いたり、YouTubeを見たりするくらいですが、年に1回は1泊して遠征でコンサートに行くことも許してもらっています。娘たちも、YouTubeなどで彼らが出てくると『ママ、キンプリだよ!』と教えてくれます(笑)」(彩佳さん)

疲れているときにも、キンプリの曲を聴くことで元気が出るという。「私にとっては、本当にありがたい存在です」と彩佳さん。「グループとして色々ありましたが、みんな大好きなのでこれからも変わらず応援します!」と楽しそうに話してくれた。それがワンオペ育児の励みになるのなら、彩佳さんにとって推し活は大切だろう。

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コンサートやテレビ出演などの楽しみがあれば、毎日の仕事や家事・育児もがんばれる。推しの存在って本当に偉大……!

大学時代からの付き合いである秀樹さんも、彩佳さんの推し活を尊重している。

「普段、任せきりになってしまっているので、コンサートもどうぞどうぞ、という感じです」(秀樹さん)

自分の時間が大切なことを、秀樹さんも知っているからでもある。
秀樹さんの趣味はサイクリングだが、子どもが生まれてからは週末の朝4時ごろに起きて、子どもが起きるころには戻るという楽しみ方をしているそう。

「最近はゴルフも始めたので、たまに打ちっぱなしに行って練習しています。その日は、朝から掃除をしたり子どもたちと遊んだりしてポイントを貯めてから出かけています(笑)」(秀樹さん)

お互いの趣味の時間があることで、忙しい毎日の中でもリフレッシュできているようだ。

7ルール-6 【夫】 長女・次女それぞれ対等に接する

2人以上を育てていると、問題になるのがきょうだいげんか。山根家の姉妹も同様で、休日に秀樹さんといるときにもよくけんかをするが、「“お姉ちゃんなんだから”という叱り方はしないようにしています」と秀樹さん。

けんかの理由がわかっているときはきちんと指摘し、わからないときはどちらも叱らないようにする。何かをしよう、あるいはしてはいけないと説明する際も、「妹は小さいから(悪いことをしても)いい」という接し方はしない。

「3歳のお姉ちゃんのほうが当然、理解は速いので、話のしかたは違います。1歳の下の子のほうが、説明にかける時間はぐっと長くなりますが、できるだけじっくり平等に伝えるようにしています」(秀樹さん)

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ワンオペで余裕がないと、どうしても上の子のケアがおろそかになりがち。そういう意味では、休日に秀樹さんがバランスをとってくれているのかもしれない

彩佳さんがまだ赤ちゃんらしさの残る下の子を「かわいい〜」と言ったりすると、「下の子だけに言うのはよくない」と秀樹さんに注意されるのだとか。

娘さんたちがパパ大好きなのは、週末しかいないレアキャラだからというだけでなく、こういう繊細な気遣いができる人だからなのかもしれない。

7ルール-7 【妻】記録を残す

共働きで育児をしていると、日々があっという間に過ぎていく。そんな、猛スピードで過ぎる時間を少しでも手元に残すために、彩佳さんが始めたのが記録を残すことだ。

「子どもの写真をこまめに残すようにするだけでなく、2020年から5年日記を始めて、今年で3年になりました。すぐに忘れてしまうので、子どもの身長やら、夫と交わしたプレゼントの内容など、とにかく記録しまくっています。毎年、その日になると数年前の日記を読むので、『あ、こんなことあったな』と楽しく思い出しています」(彩佳さん)

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アルバムを作っている人は多いだろうが、日記は少数派なのでは。毎日の手間は少しかかるだろうが、10年後には「記録しておいて良かった……!」となるに違いない

5年日記は秀樹さんと交代で書こうとしたこともあったが、難しそうだったのでひとりで書くことにしたという。

子どもたちが小さいころの何気ない毎日が、数年経てば宝物のように光って見える。悩んだことさえも、懐かしく思い出されるだろう。デジタルの時代だからこそ、アナログな日記帳というのも良いと思った。

彼らの7ルールを一言で言うと……?

「おふたりのルールに共通していことは?」と聞くと、秀樹さんはすぐに「奥さんの意見を尊重することですね」と答えてくれた。

「週末しかいない僕が意見を言っても通らないですし、それより奥さんが機嫌良くいられたほうがいいですから」(秀樹さん)

なんとすばらしい夫か、と思ったが、揉めることも多いという。

「揉めるというか、僕が注意されるというか。先日も、奥さんから『休日に家でお酒を飲むのは週に1回だけ。飲んだ後のグラスや皿は洗うこと』と強く言われました。3ヶ月くらい前には、友人の結婚式で飲み会に行っても『朝帰りは絶対にダメ』と言われて、こっちは『はい……』と言うしかないですね(笑)」(秀樹さん)

最近は、朝の出勤前に洗濯物を干すようにもなったという秀樹さん。「まあ、言えば努力してくれるので、今のところ不満はないです」と彩佳さん。

何か思うところがあれば、すぐにLINEで秀樹さんに送りつける。秀樹さんは「怒っているな、と思ったら、返信はしないでただ受け止めるようにしています」とのこと。そんなときは、仕事帰りに彩佳さんを労うためのコンビニスイーツを買って帰ることを忘れない。

今の仕事も充実しているが、将来的には留学経験で培った語学力を活かせる仕事に就きたいという彩佳さん。「でも、まだ子どもたちが小さいので、挑戦するのは今じゃないかな、と思っています。今は、ストレスをできるだけためないことのほうが大事かな」。

平日ワンオペでも「妻を尊重する」という姿勢があるから、ストレスをため込み過ぎずに乗り切れる。それもこれも、秀樹さんが育児の大変さを理解しているからだろう。彩佳さんがわからせた、と言うべきか。

芯の通った夫婦の7ルールが、家族の笑顔を生んでいる。

(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)

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