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2023年10月08日 08:30 更新

【ホームレスの実態調査】今の路上生活になって「10年以上」が4割、高齢化が進む

多くの家庭が家計の苦しさを感じる世の中ですが、なかでも懸念されるのが職や家を失ったホームレスの人々の生活です。社会の課題の一つとして子どもにも伝えていきたい問題でもあります。今回は、厚生労働省が実施した「ホームレスの実態に関する全国調査」をもとに、現在の路上生活者の人たちの状況を見ていきます。

厚生労働省によると全国のホームレス数は3,065人

厚生労働省ではホームレスの自立支援などを目的にした調査を定期的に行っています。2023年1月に実施された全国調査(概数調査)によると、全国のホームレス(※)数は3,065人。男性が2,788人と圧倒的に多く、女性は167人、不明110人となっています[*1]。都市部に多いという特徴があり、東京23区と政令指定都市で8割近くを占めました。

また、同調査によるとその数は年々減少しており、15年前の2008年調査での16,018人[*2]と比べると2023年は8割以上の減少となります。そのため最近は日常生活で目にする機会も減っており、その生活の実態がいっそう見えにくくなっていることでしょう。

ここからさらにホームレスの実態をより知るうえでは、同じく厚生労働省が実施している「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)」が参考となります。およそ5年ごとに実施されているものですが、本記事では最新の2021年の調査結果を手掛かりに、ホームレスの人がどのような暮らしをしているのかを知っていきましょう。

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※「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の第二条に規定された「ホームレス」をさし、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」。

高齢化が進むホームレス

まず、調査対象者の性別および年齢の分布を見てみましょう。性別は男性が95.8%を占め、女性は4.2%となっています。年齢は19~80歳以上まで幅広く分布していますが、最も多い年代は70歳~74歳で23.8%、次いで65歳~69歳で20.0%という結果でした。60歳以上が7割を占めています。調査実施以来、男女比は変わっていませんが、高齢化が一層進んでいる印象です。

調査対象者の年齢分布
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
調査対象者の年齢分布
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

どこで、どのように寝泊まりしているのか

ここからは、実際にどのような生活をしているのかを見ていきましょう。

約8割は場所が決まっている

まず、路上(野宿)生活の形態がどうなっているかという点ですが、その場所が「決まっている」と回答した人が79.5%と大半を占めました。ほとんどの人は決まった場所で野宿をしているようです。しかし、過去の調査結果と比べると、「決まっていない」人の割合が10年前よりは増えている傾向が見られ、より不安定な生活をしている人が多くなっているように感じられます。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
寝ている場所はだいたいいつも決まっていますか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

約3割が公園で野宿している

野宿先が「決まっている」と回答した人を対象に、具体的な野宿場所を聞いています。その結果、最も多かったのが「公園」(27.4%)でした。次いで、「河川」が24.8%、「その他」が23.1%と続いています。ベンチや水道、トイレなどが設置されている場所も多く、雨風などもしのぎやすい公園が最も多くなっているのは、納得の結果と言えるかもしれません。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
決まっている方へ質問。具体的にはどこですか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

簡単な敷物で寝ている人が3人にひとり

では、野宿の形態としては何が多いのでしょうか。

「どのように寝(野宿)場所を作っているのか」を聞いてみたところ、「簡単に敷物(寝袋・毛布等)を敷いて寝ている」が最も多く、32.7%でした。ほぼ同数で「廃材やダンボール、ブルーシートによるテントまたは小屋を常設」(31.0%)が続き、次いで「ダンボール等を利用して寝場所を毎晩作っている」(18.7%)となっています。

過去の調査結果と比べてみると、小屋を常設している人が減っている傾向が続いている一方、簡単に敷物を敷いて寝るという人の割合は増えています。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
どのようにして寝(野宿)場所を作っていますか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

ホームレス中はずっと野宿という人が6割以上

今回の調査の対象は路上生活をしている人ですが、基本的に常に外で寝ているのか、それとも、簡易宿所やホテルなどを利用することもあるのでしょうか。

「現在の路上(野宿)生活の間、ずっと継続して路上(野宿)生活が続いているか?」という設問の回答を見てみると、「ずっと路上(野宿)生活をしていた」と回答した人が最も多く、64.4%となっています。次に多いのは「時々、ドヤ、飯場、ホテル等にも泊まっていた」(※)で16.0%でした。

そのほか「緊急一時宿泊施設(シェルター・一時生活支援事業)等に一時的に入っていたことがある」(3.0%)、「病院に一時的に入っていたことがある」2.6%などの回答も見られました。

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※ドヤ:住居不定の日雇労働者を対象とした簡易宿所のことで、「宿(ヤド)」の逆さことば。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
今回の路上(野宿)生活の間、ずっと継続して路上(野宿)生活が続いていますか?または、どこかと行き来していましたか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

どのくらい路上生活をしているのか

最後に路上生活をしている期間を見てみます。

今の路上生活は「10年以上」が4割

「現在の路上(野宿)生活がどのくらい続いているのか」を聞いた結果は、40.0%もの人が「10年以上」と回答しました。次いで「5年~10年未満」(19.1%)、「1年~3年未満」(11.4%)という結果でした。「10年以上」と回答した人の割合は、過去の調査と比較して増加傾向であることもわかります。一度ホームレスになるとなかなかそこから抜け出すことができず、長期化してしまうケースの多いことが想像されます。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
今回の路上(野宿)生活をするようになって、どのくらいたちますか?(昔のことは除く)
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

初めて路上生活をしたのは「20年以上前」が最多

ここまで回答者の属性として高齢者が多いこと、また、今の路上生活が続いている期間は10年以上という人が最多であるのを確認しました。このことと関連するのですが、「初めて路上(野宿)生活をしたのはどのくらい前か」を聞いた結果も見てみましょう。

最も多い回答は「20年以上」で25.7%、つまり4人に1人以上を占めています。次いで「10年~15年未満」(19.5%)、「5年~10年未満」(18.0%)という結果でした。ホームレスになったあと安定した職に就けず年月が過ぎ、高齢になっている人が少なくないことがうかがえます。

一方、「5年未満」の人の割合は前回調査までは減少傾向であり、新しくホームレスになっている人はずっと減ってきていたと思われますが、前回調査から今回の調査にかけては微増となっています。

厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より
初めて路上(野宿)生活をしたのはどのくらい前ですか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

まとめ

厚生労働省が行っているホームレスの実態調査から、その暮らしぶりや高齢化などの現状がわかりましたが、同時に、国が支援策をとっているにもかかわらず、ホームレスを取り巻く状況にはそれほど大きな変化がないのではないか、ということも感じられる結果でした。

一方、ホームレス数3,065人という数字には「あまり多くないな」という印象を受けたかもしれません。しかしながら、ネットカフェなどで寝泊まりしている人は調査対象から漏れていることにも目を向ける必要があるでしょう。2018年の東京都の調査では、いわゆる「ネットカフェ難民」が1日約4,000人と推計されています[*3]。ホームレスの存在がより見えにくい時代を迎えるなか、社会の実態として子どもに伝えていくことは、教育として大切ではないでしょうか。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

■ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果/厚生労働省
調査対象:ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法第二条に規定するホームレス
※調査対象自治体は、東京都23区、政令指定都市及び令和3年1月調査(概数調査)で20名以上の報告があった市。
調査時期:令和3年11月
有効回答数:1,169名

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