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2023年09月21日 06:55 更新

宮沢賢治の名作『注文の多い料理店』不可思議な扉のメッセージに子どもは興味津々間違いなし!

親子で楽しみたい物語をご紹介している本連載「親子のためのものがたり」。今回は多くの人に愛され続ける宮沢賢治の名作『注文の多い料理店』を。童話にちょっぴりスリリングな内容を兼ね備えた素晴らしい作品です。小さなお子さんにはもちろん、成長したお子さんに1人で読ませるにもピッタリな作品だと思います。

「注文の多い料理店」を子どもに聞かせよう!

「銀河鉄道の夜』などとともに宮沢賢治の代表作としてよく知られている『注文の多い料理店』。童話ですが大人が読んでも面白く、親子で読むお話として大変おすすめの一編でしょう。

「注文の多い料理店」のあらすじ

注文の多い料理店

『注文の多い料理店』は有名な作品なので、結末を知っているという人も多いでしょう。物語の結末を話すうえで抜かせないポイントを押さえながら、あらすじをご紹介します。

狩猟にきた若い男2人組が道に迷い…

イギリスの兵隊の恰好をした2人の若い紳士が、鉄砲をかついで、白熊のような犬を2匹つれて山奥を歩いていました。案内してきた専門の鉄砲打ちも、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。それに、あんまり山がものすごいので、犬が2匹一緒にめまいを起こして死んでしまいます。2人の紳士はお金の損害を悔しそうに言い合いました。

寒気や空腹のため2人は帰ることにします。それに、宿屋で売っていた山鳥やウサギを買えば同じことだと思ったのです。

しかし、困ったことに道に迷ってしまいました。

「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ」
「ぼくもそうだ。もうあんまり歩きたくないな」


その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。そして玄関には「RESTAURANT 西洋料理店 WILDCAT HOUSE 山猫軒」という札がでていました。2人は、こんなところに?と不思議に思いつつ、これはちょうどいいと喜びます。

\ココがポイント/
✅2人の若い男が狩りをしに山奥までやってきた
✅山は異様な雰囲気で、連れていた犬も死んでしまった
✅帰り道がわからなくなって困っていると料理店を見つけた

「当軒は注文の多い料理店です」

2人が玄関に立ってガラスの開き戸を見ると、そこに金文字でこう書いてありました。「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」

2人は戸を押して、喜んで中へ入りました。ガラス戸の裏にはこうも書いてありました。「ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします」この両方を兼ねていた2人は大喜びで廊下を進んでいきました。

ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水色ペンキ塗りの扉がありました。その扉の上に黄色の字でこう書いてありました。「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」

「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で」と言いながら、2人はその扉を開けました。

するとその裏側に「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえてください」とあります。「これはどういうことなんだ」1人の紳士は顔をしかめました。「これはきっと注文があまり多くて支度が手間取るけれどもごめんくださいとこういうことだ」

ところがまた扉です。ここで髪をきちんとして靴の泥を落とすように書いてあります。2人が髪をといて靴の泥を落とし、ブラシを床に置くや否や、それはかすんで消えていまい、風がどうっと部屋の中に入ってきました。驚いた2人はより添って次の部屋に進みます。

その際も何度も扉が現れました。鉄砲とたまを置いてくれ、帽子と外套と靴を脱いでくれ、ネクタイピンやカフスボタン、眼鏡、財布、金物類なども外してくれ、との指示にその都度2人は従いました。

\ココがポイント/
✅料理店には「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」と書いてあった
✅扉がいくつもあり、奇妙な要望に従って2人の若者は少しずつ持っているものや身につけているものを置いていった

「注文」の真の意味に気付く2人

また扉があって、その前に硝子の壺が1つありました。扉にはこう書いてありました。
「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください」

それは牛乳のクリームでした。1人は訝しがりますが、もう1人は、外が寒いので部屋の中が暖かいとひびが切れるからその予防だろう、奥にはよほどえらい人がいるようだ。貴族とちかづきになれるかもしれない、という意見です。2人は壺のクリームを全身に塗りました。

するとすぐその前に次の戸がありました。「料理はもうすぐできます。十五分とお待たせはいたしません。すぐ食べられます。早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振ふりかけてください」

2人はそのとおりにしますが、その香水はどうも酢のような匂においがするのでした。ともかく2人は扉を開けて中に入ります。扉の裏側には、大きな字でこう書いてありました。
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうか体中に、壺の中の塩をたくさん、よくもみ込んでください」
今度という今度は2人ともぎょっとしてお互いにクリームをたくさん塗った顔を見合せました。

「たくさんの注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ」
「西洋料理店というのは、西洋料理を、来た人に食べさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家ということなんだ。これは、その、つ、つまり、ぼ、ぼくらが……」
2人は震え出してもう、物が言えません。

\ココがポイント/
✅ついにはクリームを全身に塗る2人
✅塩をもみ込めというメッセージでさすがに気づく
✅この西洋料理店は料理を出すのではなく来た人を食べる店だった

料理店の正体は…

蜘蛛の糸

奥の方にはまだ1枚扉があって、「いや、わざわざご苦労です。大変結構にできました。さあさあお腹にお入りください」と書いてありました。おまけに大きな2つのかぎ穴からはきょろきょろ2つの青い眼玉がこっちをのぞいています。

2人はがたがた、がたがた震え、泣き出しました。

「おい、お客さん方、早くいらっしゃい。あとはあなたがたと、菜っ葉をうまくとりあわせて、まっ白なお皿にのせるだけです。はやくいらっしゃい」

2人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。

「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いてはせっかくのクリームが流れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早くいらっしゃい」
「早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます」


2人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。そのときうしろからいきなり、「わん、わん、ぐゎあ」という声がして、あの白熊のような犬が2匹、扉とをつきやぶって部屋の中に飛び込んできました。犬たちが次の扉に飛びつくと、戸はがたりとひらき、犬たちは吸い込まれるように飛んで行きました。その扉の向こうの暗闇のなかで、「にゃあお、くゎあ、ごろごろ」という声がして、それからがさがさという音がしました。

部屋は煙のように消え、2人は寒さにぶるぶるふるえて草の中に立っていました。見ると、上着や靴や財布やネクタイピンは、あっちの枝にぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしています。犬がふうと唸って戻ってきました。また、「旦那あ、旦那あ」と猟師が草をざわざわ分けてやってきました。そこで2人はやっと安心しました。

しかし、さっき一度紙くずのようになった2人の顔だけは、東京に帰っても、お湯に入っても、もう元の通りに治りませんでした。

(おわり)

\ココがポイント/
✅数々の注文は山猫が人間をおいしく食べるためだった
✅死んだはずの犬が山猫を追い払った
✅恐怖でくしゃくしゃになった顔は二度と戻らなかった

子どもと「注文の多い料理店」を楽しむには?

猟をしにきた2人の若者がいきなり現れたレストランは普通のお店ではなく、人間を捕まえるために山猫たちがつくったもので、あやうく2人は山猫に食べられそうになるというお話でした。

山猫の子分が「早くいらっしゃい」と呼ぶ声や、山猫の親分が犬と争う場面など、スリル満点にお話しするとよいでしょう。
また、
・どうして2人はこんな災難に遭ってしまったのだと思う?
・途中で変だなと気づいた?
・どうして2人の顔はくしゃくしゃになったままなのだと思う?

などと聞いてみてはいかがでしょうか。

まとめ

言葉の解釈を利用したミステリー仕立てになっているこの作品。ストーリーだけでぐいぐい子どもの関心を引き付けるでしょう。また、「おかしいな……」と心の隅で思いながらも、楽天的な考えのほうに寄っていってしまう人間の心理も巧みに描かれていて、おもしろいですね。作品のメッセージに対してもさまざまな考察があり、奥深い小説といえます。子どもが小さいときは単純にストーリーを楽しみ、子どもが大きくなったら、物語のメッセージついて親子で話し合うなどして、何度も読みたい作品です。

(文:千羽智美)

※画像はイメージです

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