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2023年07月15日 08:00 更新

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」は読み聞かせにもおすすめ!糸が切れるか切れないか、ハラハラ感を意識して子どもの興味を引き出そう

親子で楽しみたい物語をご紹介している本連載「親子のためのものがたり」。今回は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をお届けします。児童向けの短編小説として書かれた作品であり、噛み砕いて話せば、小さなお子さんでも楽しく聞けるお話です。成長したときに自分で読んでみることにもつながるかもしれませんね。

「蜘蛛の糸」を子どもに聞かせよう!

芥川龍之介の作品のなかでもよく知られているものの1つが「蜘蛛の糸」ではないでしょうか。児童向けの文芸雑誌に発表された短編小説です。そのまま読んでも数分で読み終えることができる程度の長さですが、本記事では、お話として子どもに聞かせるときに頭に入れておくとよい、あらすじのポイントなどをお伝えします。

「蜘蛛の糸」のあらすじ

蜘蛛の糸

「蜘蛛の糸」は短いお話なので、あらすじもシンプルです。場面を2つに分けて考えれば、子どもに聞かせるのも簡単でしょう。

地獄にいる罪人カンダタ

ある日、極楽にいるお釈迦様は一人で池の淵を歩いていました。お釈迦様は池に生えている蓮の間から水の底をのぞき込みました。池の下はちょうど地獄の底につながっているので、池をのぞくと地獄の様子がよく見えるのです。

すると地獄の底にカンダタという男が他の罪人と一緒にうごめいている姿が見えました。このカンダタという男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊ですが、それでもたった1つ、よいことをしました。

カンダタが道を歩いているときのこと。小さな蜘蛛を見つけ、カンダタは踏み潰そうとしたのですが、「これも小さいながら命だ。その命を無闇に奪うのはかわいそうだ。」と思い直し、と蜘蛛を助けたのです。

それを思い出したお釈迦様は、カンダタを地獄から救ってやろうと考えます。そして、極楽にいる蜘蛛の糸をとり、ずっと下にある地獄の底まで、一本の銀色の糸をたらしました。

\ココがポイント/
✅極楽の池の底と地獄がつながっている
✅悪党のカンダタにも1つだけ善行があった
✅お釈迦様はカンダタのために蜘蛛の糸をたらす

蜘蛛の糸をのぼっていくカンダタ

蜘蛛の糸

さて、カンダタがいるのは地獄の底にある血の池です。真っ暗な中で他の罪人と一緒にただ、むなしくもがいているばかり。ところが、何気なく空を眺めたとき、銀色に輝く蜘蛛の糸がするすると降りてくるのが目に入りました。

これにカンダタは大喜びです。上手く行けば極楽まで行けると考えたカンダタは、蜘蛛の糸をのぼり始めました。地獄と極楽の距離はとても離れているので、相当のぼっていかなければなりません。疲れたカンダタは、どのくらいのぼってきたかと下を見てみました。すると、他の何百、何千もの罪人が同じく蜘蛛の糸にぶら下がっているではありませんか。

このままでは、いつこの細い蜘蛛の糸が切れてしまうかわからないとカンダタには思われました。もしそうなったら、カンダタは再び地獄に落とされることになります。

そこでカンダタは「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。下りろ。下りろ。」と叫びました。すると、その瞬間、それまでなんともなかった蜘蛛の糸が、ちょうどカンダタがぶら下がっているところから切れてしまったのです。

カンダタはあっという間にくるくる回転しながら地獄の底に落ちていきました。

一方の極楽では、お釈迦様がすべてを見ていました。カンダタが血の池に沈んでいくのを見届けたお釈迦様は悲しそうな顔をしています。カンダタの無慈悲な心がその罰を受けたことが、御釈迦様からすると残念だったのでしょう。

相変わらず極楽では蓮の花のよい香りがただよっていました。

(おわり)

\ココがポイント/
✅カンダタは蜘蛛の糸を独り占めしようとした
✅カンダタがほかの罪人に「下りろ」と叫んだ瞬間、蜘蛛の糸は切れてしまった

子どもと「蜘蛛の糸」を楽しむには?

蜘蛛の糸

地獄から救われるチャンスを与えられたのに、そのチャンスを独り占めしようとしたことで、その権利を失ってしまった男のお話でした。

細い蜘蛛の糸に多くの人が群がっている様子などは、想像するだけでもハラハラしますよね。ここの盛り上がりを意識してみると、より子どもがワクワクするかもしれません。極楽と地獄という異なる世界を、声色を変えて表現するのも楽しいですね。

また、お話の後では、

・糸が切れるのを恐れたカンダタの気持ちもわかる?
・カンダタのように他の人に「下りろ」と言いたくなる? それとも、皆で一緒に天国を目指す?


などと聞いてみるのもよいでしょう。

まとめ

「蜘蛛の糸」は、訓話としてとらえると少し難しいようですが、まずは物語としてその面白さを子どもに伝えてみてはいかがでしょうか。興味をもって物語に耳を傾ければ、カンダタの立場を想像し、その気持ちや振る舞いを考えることにつながるでしょう。

(文:千羽智美)

※画像はイメージです

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