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2023年08月18日 07:01 更新

日立ソリューションズが主催した「小学生向け セキュリティ授業」をレポート #親と子のネットリテラシー入門 Vol.23

社会や企業を支えるICTソリューションを提供する日立ソリューションズは2023年7月7日、東京都練馬区立豊玉第二小学校に通う5年生を対象に、身近に潜むセキュリティリスクや対応策について解説する「セキュリティの出前授業」を開催しました。今回は連載初の「出張編」として、著者の鈴木朋子さんが参加。当日の様子をレポートします。

物を守るセキュリティと情報を守るセキュリティ

今の子どもたちは幼いころからスマホやゲーム機、テレビなどでネットに接しています。2019年に開始されたGIGAスクール構想によってタブレットが配布され、子ども自身でネットを使う機会も増えています。

20年以上にわたり、社会を支える重要インフラやさまざまな企業のセキュリティ対策を支援している日立ソリューションズはこうした社会背景を受け、学習指導要領「情報と産業の関わり」に対応した小学校向けセキュリティ教材を無償配布してきました。このセキュリティ教材は2020年8月20日に文部科学省から学校用教育教材として選定されており、社会科の情報学習や道徳の情報モラル指導に多くの学校で活用されています。

セキュリティ教材を提供するにあたって、小学校から「学校で授業をしてくれないか」との要望も受けるようになり、2023年からは「セキュリティの出前授業」として学校での講義も始めました。授業を担当するのは、日立ソリューションズでセキュリティ分野のシニアエバンジェリストおよびSecurity CoE センタ長を務める扇 健一さんです。扇さんは早稲田大学で非常勤講師として情報セキュリティ講座を行うなど、安心安全な社会づくりへの活動を行っています。

日立ソリューションズの扇健一さんが講師を務めました
日立ソリューションズの扇健一さんが講師を務めました

扇さんは自己紹介ののち、「セキュリティと聞いてどんなことをイメージしますか?」と生徒さんたちに問いかけました。

生徒A:「ウイルス対策ソフトを作る会社とか」
扇さん:「そうですね。セキュリティソフトを作っている有名な会社もたくさんあります」
生徒B:「悪いことから守る」
扇さん:「はい。警察官もセキュリティの仕事をしていますね」
生徒C:「攻めてこられた時に守るバリアみたいな、壁みたいな」
扇さん:「それはセキュリティの世界ではファイアウォールと言うんですよ。ウイルスが入ってこないように壁を作ります」
生徒D:「泥棒とかの侵入を防ぐ」
扇さん:「そうですね。家のセキュリティを守る警備会社やドアのカギの会社もあります」

興味津々で話を聞く小学5年生の生徒さんたち
興味津々で話を聞く小学5年生の生徒さんたち

小学校5年生でも、セキュリティとは何かをしっかり把握しているように思います。扇さんはあらためて「私たちが安心して暮らすために、自分を守るための手段です」と、セキュリティについて説明しました。

「セキュリティには2種類あります。物に対するセキュリティと、情報に対するセキュリティです。物に対するセキュリティは、家のカギや万引き防止のための監視カメラなどがあります。人を守ることもできますね。そして、もうひとつの情報に対するセキュリティは、わかりやすい例で言うと名前や住所などの個人情報が漏えいしないように守ることです」(扇さん)

扇さんによると、情報とは「それを見たり、聞いたりすることで、考えたり、何か行動を起こしたりするようなもの」とのこと。例えば、天気予報を見て涼しい服装にしようと決めたり、YouTubeなどの映像でおいしそうなスイーツを見て実際に買ったりすることは、情報による行動です。また、子どもが塾に行った際に、入退室記録のためのカードをかざすと保護者に通知が行くシステムがありますが、これも通知が来なければ塾や警察に連絡するなどの行動が発生します。

情報セキュリティを知らない場合、情報が本物か偽物かを見分けることができません。偽の情報に騙されることで、犯罪に巻き込まれる可能性も出てきます。

SNSやパスワードに潜むセキュリティリスク

続いて扇さんは、私たちの身近にあるリスクについて話します。「LINEを使っている人はいますか?」と扇さんが問いかけると、1/3ほど手が上がりました。扇さんは「中学生になるとだいたいスマホを持ち、LINEを始めるようになります」と言い、LINEで気を付けてほしいこととして一例を挙げました。

怪しいLINEが来たらどうする?(資料提供:日立ソリューションズ)
怪しいLINEが来たらどうする?(資料提供:日立ソリューションズ)

この例では、友達からLINEで「私のLINEアカウントがロックされました。解除するには何人かの友人の確認が必要となります」といった文章が来ています。私たちはどのように対応すればいいのでしょうか。

「いつもと様子が違うなと思ったらすぐに疑って、送られてきたメッセージ内容をインターネットで検索して調べることが大切です。また、メッセージにWebのリンクが書かれていたら、怪しいことが多いです。今回のLINEの例では、リンクを開くとあなたのメールアドレスやパスワードの入力を求められLINEアカウントを乗っ取られてしまいます。他にも、偽サイトだと気づかずに情報を入力することで、クレジットカード番号を盗られてしまったり、マルウェア(ウイルスを含む悪意あるプログラム)がダウンロードされてしまったりする危険性もあります」(扇さん)

また、Webサイトを見ているときの危険もあると扇さんは話します。

Webサイトを見ていたら警告メッセージが出た(資料提供:日立ソリューションズ)
Webサイトを見ていたら警告メッセージが出た(資料提供:日立ソリューションズ)

「無料の漫画サイトや占いサイトを見ていたら、セキュリティアップデートをしなさいと警告メッセージが表示されることがあります。インストールやキャンセルのボタンを押すと、偽のサイトに誘導され個人情報やクレジットカードの情報が盗まれてしまったり、悪意のあるアプリがインストールされ高額な費用を請求されてしまったりします。本来はこうしたメッセージがWebサイトに表示されることはありません。もしメッセージが出たら、周りの大人に相談して、本当に必要か判断してもらいましょう。また、表示されているメッセージ内容で検索すると、詐欺だとわかります」(扇さん)

そして、パスワードに関するお話もありました。子どもたちはゲーム機やGIGAスクールのタブレットなどでパスワードを利用しているため、パスワードはとても身近な話です。扇さんは、安易なパスワードを設定する危険性として、2022年に日本で多く使われたパスワード10位までを示しました。

安易なパスワードは乗っ取られるリスクがある(資料提供:日立ソリューションズ)
安易なパスワードは乗っ取られるリスクがある(資料提供:日立ソリューションズ)

「10位まで見てみると、簡単なパスワードが多いんですね。数字だけを使っていたり、単純に"password"ってつけていたり。また、自分の名前と生年月日をパスワードにしている人も非常に多く、こうした安易なパスワードは攻撃を受けやすいです」(扇さん)

安易なパスワードを付けていると、攻撃を受けたときにすぐパスワードが漏れてしまいます。すると、自分のIDとパスワードでネットショッピングされてしまったり、SNSでなりすまして人の悪口を言われたりするなどの被害に合ってしまいます。扇さんがおすすめするのは、名前の一部とペットの名前と車のナンバーの一部を組み合わせるなど、複雑でも覚えやすいパスワードだそうです。

※イメージ
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次に、実際に日立ソリューションズのホワイトハッカー(情報セキュリティの専門家)が過去に検証したときの結果をもとに、パスワードが破られるまでにどれくらい時間がかかるかを当てるクイズが出されました。パスワードは、プログラムを使って総当たりしたり、よく使われるパスワードのリストを使ったりすることで破られます。これには子どもたちも大興奮。次々と手が上がり、自分の予想を発言していました。

「パスワードは弱いものなので、他の情報と組み合わせて強固にします。例えば、パスワードと顔認証、パスワードと指紋認証などですね。最近では、ATMに指を置くところがあり、静脈のパターンを見て認証しています。こうして安全を守っているのです」(扇さん)

また、中学生になってSNSを始めるとき、気を付けてほしい点もあると言います。SNSに投稿した写真や動画には、住所を特定する情報が含まれていることがあります。写真の後ろに電柱の番地が映り込んでいたり、近くの建物から居場所が特定されたりします。

※イメージ
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「居場所がわかるような写真を投稿すると、あなたを気に入った人が誘拐しに来ることもできます。個人情報には位置情報も含まれます。個人情報は信用できる人以外には決して教えないでください」(扇さん)

扇さんはネットの使い方に関して、「インターネットの世界には、自分が想像できないような悪い人がたくさんいます。ただ、インターネットの怖さや情報の大切さを知って、安全な行動を取っていれば、インターネットは勉強や仕事にすごく役立つものです。安全にインターネットを使ってほしいと思います」と話しました。

最後に、質問コーナーが設けられました。子どもたちからは、「パスワードを間違えるとロックがかりますが、さっきのパスワードを破る時間にその時間は含まれていますか?」「顔認証は本当に安全なのですか?」など、パスワードに関する質問が多く寄せられました。

授業を終えて~小学生にもセキュリティ知識は必要不可欠

授業を終えて生徒さんに話を聞いたところ、「スマホを持つようになったらハッキングされないように気を付けようと思った」「LINEで詐欺サイトに引っかからないように注意したい」と、身近な危険に対する対応策についてしっかり学んでいました。

扇さんは、「今の子どもたちは普段からネットに接しているため、セキュリティについても関心が高い。質問も高いレベルのものが多く、驚いてしまうほどです。GIGAスクールのタブレットなどでネットを利用する年齢は年々下がっていて、危険な目に合うリスクは高まっています。できるだけ早い段階でネットの利用法について教える必要があると思います」と話します。

扇さんは授業の最後に、おうちの人と確認してほしい項目を挙げました。ぜひご家庭の話し合いに活用してください。

安全なネットの使い方をできているか、チェック項目で確認しましょう(資料提供:日立ソリューションズ)
安全なネットの使い方をできているか、チェック項目で確認しましょう(資料提供:日立ソリューションズ)

(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)

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