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2022年07月11日 06:28 更新

お兄ちゃん呼びはしない。子ども4人が東大の佐藤ママが実践した、きょうだい育児法『子育て本ベストセラー100冊』vol.3

子育て雑誌「AERA with Kids」元編集長・江口祐子さんがベストセラー&名作の子育て本を100冊厳選。数々の取材で学んだ知識を1冊にまとめました。子育てするうえで知っておきたい「子育ての基本」や「新しい教育観」を『子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)からご紹介します。

きょうだいを比較しない→大人になってもいい関係が長く続く

「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ 子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本,江口裕子

きょうだい仲は親の影響大

同じ親から生まれて同じ環境で育っているのになぜか性格も個性も違うきょうだい。「きょうだいの違い」について母親たちによる座談会を開いたことがありますが、いろいろなエピソードが出るわ出るわ!

・おっとり兄に対して強気すぎる妹に手を焼いている
・負けん気がない一人っ子。将来やっていけるか不安
・一卵性の双子なのに性格がまるっきり違う! なぜ?

同じ家庭で育ち、親以上に支えとなることもあるきょうだいですが、永遠のライバルでもあり、ひとつ間違うと、愛情や財産の分配をめぐって争いが生じることも。

『きょうだいコンプレックス』は精神科医の岡田尊司さんが、きょうだい間にある無意識の「わだかまり」の原因と克服法、生まれ順と性格などを解説した本です。

優秀なきょうだいがいる場合はもちろん、病気のきょうだいがいる場合もわだまりが生じやすいといいます。

いずれにしても、きょうだいの仲をこじらせる原因は親にある、と岡田さん。

著書にはこう記されています。

自分の期待に応えるともち上げ、応えなくなると見捨てるという養育態度は、自己愛的な親によく見られるものである。こういう養育を受けると、きょうだい仲が必ず悪くなる。     

『きょうだいコンプレックス』より

ドキリとした方もいるのではないでしょうか。無意識に行っているかもしれない、きょうだいへの対応の差を改めて見直したくなるでしょう。

あの「佐藤ママ」のやり方は?

「きょうだいを比較しないで平等に」と思っていても、能力の差にため息をついたり、性格の違いに手を焼いたり。「比較しないマインド」はどのように作っていったらいいのでしょうか?

まず参考にしたいのが、佐藤ママこと佐藤亮子さんの子育て。「子ども4人が東大理Ⅲの母」として有名な佐藤さん。

「ザ・教育ママ」と思われがちですが、実は見逃せないのが勉強面はもちろん、生活面に関しても確固たる「柱」を持っていたこと。

『3男1女東大理Ⅲの母 私は6歳までに子どもをこう育てました』は、そんな佐藤さんが幼児期に何を大切にしていたのかがよくわかる本です。

そのひとつが「きょうだいは徹底的に平等に接する」こと。

「平等ってむずかしいですよね。自分では平等にしているつもりでも、つい長男長女を優先したり、弟や妹を甘やかしたり……。そこで、私はふたつのルールを掲げていました。『役割を背負わせないこと』『誰にも嫉妬させないこと』」

『3男1女東大理Ⅲの母 私は6歳までに子どもをこう育てました』より

お兄ちゃん、という呼び方をせずに全員名前で呼ぶ。おやつの数も全員一緒(いちばん小さい妹が食べきれなければ、お兄ちゃんに譲る)。

きょうだいに対して、徹底的に平等にしたい、と思った理由のひとつは、佐藤さん自身の子どもの頃のある経験にあるといいます。それが、「ヤクルト事件」。

この話、佐藤さんから直接聞いたこともあるのですが、「事件」とは名ばかりのほのぼのとしたお話で大笑い。詳しくは本書でどうぞ。きょうだいげんかのおさめかたも独自の「佐藤流」があり、必見です。

大人になってからも続くきょうだい愛

「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ 子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本,江口裕子

『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』の著者、アグネス・チャンさんは、書名通り、三兄弟をスタンフォード大に入れたことで有名です。全員成人されていますが、子どもの頃から非常に仲が良かったといいます。なぜそのように育ったのか?

本書の中でアグネスさんは、子ども一人ひとりに自己肯定感を持たせること、そのためにはきょうだいを比較しないことが大事、と強調しています。

取材では、「子どもの性格はすべていい性格。悪い性格なんてないんです」というお話もされていました。

きょうだいの性格を説明する時、ついどちらかをネガティブに言ってしまうこと、ありませんか? 「お兄ちゃんはしっかりしているけど、弟はだらしなくて」「妹は明るいのにお姉ちゃんはひがみっぽい」など。親の潜在意識は子どもに思った以上に伝わるもの。

「みんないい性格をしているね」とまずは親が思うこと。きょうだい一人ひとりに自己肯定感を育む秘訣です。

また、一人ひとりへの声かけが効果的だったといいます。例えば、弟がお兄ちゃんを頼っている場面を見たら、後でお兄ちゃんに「〇〇ちゃん(弟)はお兄ちゃんのこと、本当に好きみたいだね」と吹き込む。

お兄ちゃんと弟が楽しく遊んでいたら、弟に「お兄ちゃんは本当に〇〇ちゃん(弟)のことを大事にしてくれているね」。個別にこっそり言うのがコツだそう。

この「個別に言う」作戦はきょうだい一人ひとりに親からの愛情を伝えるうえでもかなり有効です。花まる学習会の高濱正伸さんは、1日5分でもいいから、一人ひとりをギュッと抱きしめて、話をしっかり聞くことを提案しています。題して「一人っ子作戦」。

著書『子どもを伸ばす「生まれ順」子育て法』では、きょうだいごとの育て方のコツが紹介されていますが、一人っ子作戦の話も紹介されています。

ついつい上の子ばかりを叱ってしまう……というお母さんの悩みにもしっかり対応してくれています。

ワンポイントアドバイス

きょうだい仲の大切さは大人になってからジワジワ感じてきますね。

紹介した4冊

『きょうだいコンプレックス』
(岡田尊司/幻冬舎新書/ 2015)
きょうだいだから仲がいいのは当たり前なのではなく、親の無意識の接し方で変わることを指摘。有名人の例で解説した生まれ順の心理学も面白い。

『3男1女東大理III の母 私は6歳までに子どもをこう育てました』
(佐藤亮子/中央公論新社/ 2018)
生活のあらゆる面で気を配りつつも、大らかで楽しい子育てをしていたことがわかる一冊。

『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』
(アグネス・チャン/朝日新聞出版/ 2016)
自らもスタンフォード大で学び、3 兄弟皆スタンフォード大に合格したアグネスさんの教育法。グローバル時代の子育てとしても参考になる。

『子どもを伸ばす「生まれ順」子育て法』
(高濱正伸/朝日新書/ 2015)
長年多くの子どもたちとお母さんに触れ合ってきた著者が、きょうだいの子育ての悩み、生まれ順による「子育てあるある」をズバリ解説。

江口祐子『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ 子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)

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『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ 子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』では、ほかにもママやパパに役立つ育児法などが紹介されています。ぜひ、書籍でもお楽しみください。

書籍『「AERA with Kids」 元編集長が選ぶ 子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』について

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江口祐子さんのプロフィール

編集者。「AERA with Kids」元編集長。
1970年、埼玉県生まれ。浦和第一女子高等学校、日本女子大学文学部卒業。「自分
の興味と仕事をリンクさせる」をモットーに、株式会社オレンジページで生活実用誌、転職した株式会社アスコムでは学習、健康系の雑誌、書籍等を数多く担当。2007年に娘が生まれたことにより、子育てや教育にいっそう興味が湧き、2009年から「AERA with Kids」(朝日新聞出版)の編集にフリーランスとして携わる。2018 年から編集長を務め、誌面だけでなく、イベントやインスタグラムを通じたファン拡大につなげる。取材した教育者、経営者、起業家等の数は700人以上。2021年に独立し、エディットプラン合同会社を設立。企業のPR活動、出版プロデュースなども行っている。

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