納豆の食べ過ぎは何が危険?リカバリー方法と食べ過ぎの目安【管理栄養士監修】
気づいたら今日が賞味期限の納豆が3パック。これって一気に食べていいのかな? なんてこと、よくありますよね。値段も手頃で手に入りやすい上に、体に良い印象もある納豆。混ぜてすぐ食べられ、大人も子供も手軽に美味しく食べられるところも魅力ですね。そんな納豆について、いい効果と食べ過ぎてしまうことのをお伝えします。
- 納豆の栄養、5つの特徴とは?
- 1.栄養|たんぱく質はもちろんビタミン・ミネラルも豊富
- 2.カロリー|納豆1パック100kcal程度
- 3.貧血対策|ビタミンCなどと合わせて鉄吸収up
- 4.便秘対策|納豆菌と食物繊維が腸内環境を整える
- 5.コレステロール対策|大豆たんぱくが吸収を抑える
- 効果的な食べ方「加熱しない」「酢を入れる」
- 納豆を食べ過ぎてしまった場合のリスクは?
- リスク1 「尿酸値高めな人」痛風発症リスク
- リスク2 「サプリメントと併用」セレン過剰摂取リスク
- リスク3 「効果が弱まってしまう」薬との相互作用
- 大豆イソフラボンはいいもの?悪いもの?
- どのぐらい納豆を食べたら「食べ過ぎ」になる?
- 1日の目安|1日1パック程度
- 食べ過ぎの目安|場合によっては5パックまでなら許容範囲
- 納豆を食べ過ぎてしまった時の対処法
- 妊娠中も納豆を食べていい?
- まとめ
納豆の栄養、5つの特徴とは?
納豆の特長としては
1. たんぱく質やその他の栄養が豊富
2. カロリーが脂たっぷりな肉などよりは低め
3. 便秘対策になる
4. 貧血対策になる
5. コレステロール対策になる
などがあります。
1.栄養|たんぱく質はもちろんビタミン・ミネラルも豊富
納豆は、蒸し煮にした大豆を納豆菌で発酵させて作られています。発酵させることで大豆よりも栄養価が高まり、なおかつ食べやすくなっているのが特徴ですね。
肉、魚、卵と同様に、必須アミノ酸のバランスがいい良質なたんぱく質を主に含んでいます。他に、
・血液凝固に関わるビタミンK
・腸内環境を整える食物繊維
・骨の形成を助けるカルシウム
・貧血を予防する鉄分
なども豊富です。
2.カロリー|納豆1パック100kcal程度
納豆のカロリー(エネルギー)は1パック(約50g)で100kcal程度[*1]なので、決して低カロリーとはいえません。体にいいイメージがあるからと食べ過ぎてしまうと摂取カロリーが多くなってしまうので注意が必要です。
ただ、脂身の多い肉や魚と比べると低カロリーなことは確かなので、納豆だけをたくさん食べ続けるというよりは「ハイカロリーな肉・魚を、時々納豆に置き換える」ぐらいにするといいでしょう。
3.貧血対策|ビタミンCなどと合わせて鉄吸収up
納豆には鉄が豊富に含まれていますが、吸収率があまり高くない「非ヘム鉄」という種類になります。吸収率を高める為には、ビタミンCや、肉や魚などの動物性たんぱく質と一緒に摂取することが効果的です[*2]。
4.便秘対策|納豆菌と食物繊維が腸内環境を整える
納豆に含まれる「納豆菌」の働きにより、腸内環境を整える作用があります。また、納豆には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が豊富に含まれているので、便秘にも効果的です[*1]。
5.コレステロール対策|大豆たんぱくが吸収を抑える
動脈硬化の原因となるLDLコレステロール(通称悪玉コレステロール)ですが、納豆に含まれる大豆たんぱくはコレステロールの吸収を抑える働きがあります[*3]。
ただし、かつては「納豆を食べて血液サラサラに!」などといわれ、血栓予防効果があると話題になったこともありましたが、そのような効果は明らかになっていません。脂質の多い肉類などはコレステロールなどが多く血流が悪くなるので、それらと比べると、同じたんぱく質源であっても血流に悪影響がない点では納豆が良いといえるかもしれませんね。
効果的な食べ方「加熱しない」「酢を入れる」
納豆に含まれる、ナットウキナーゼは酵素のため、熱に弱いという特徴があります。50℃以上で活性が鈍くなり、70℃ではほぼ働きを失います。そのため、ナットウキナーゼの働きを活かしたい時には、加熱をしないで食べる事がおすすめです。
また、酢などに含まれる「有機酸」は非ヘム鉄の吸収を高めますので、納豆から鉄を効率よく吸収したい場合は少し酢を垂らして食べるのもいいでしょう。酢をいれると糸ひきが少なくなるため、ねばりが苦手な人にもおすすめしたい食べ方です。
納豆を食べ過ぎてしまった場合のリスクは?
納豆の食べ過ぎで考えられるリスクとしては、持っている病気によって
1. 痛風(プリン体過剰摂取)
2. 胃腸障害、爪の変形など(セレン過剰摂取)
3. 薬との相互作用(ビタミンKの作用)
などがあります。
リスク1 「尿酸値高めな人」痛風発症リスク
痛風とは、血液中の尿酸値が高い状態を長い期間放っておくことで起きる可能性がある病気で、関節、足指などに結晶化した尿酸がたまって炎症を起こして腫れたり激痛が起きたりする病気です。まずは、尿酸値が高い場合には、肥満にならないように食べ過ぎに気を付ける他、適度な運動や飲酒を控えることが必要です。
他に気を付けることとしては、プリン体の過剰摂取があります。
尿酸値が高いと言われたら、プリン体の1日の摂取量を400mg以下にすること推奨されています[*4]が、納豆は1パック(50g)あたり、約57mgのプリン体が含まれています[*5]。これは肉や魚と同じぐらいで、特に納豆だけがプリン体が多いというわけではありませんが、食べ過ぎには注意が必要です。納豆7パック程度を食べればプリン体400mgに達してしまうことになります。尿酸値が高いと言われていたら、連日このような大量の納豆を食べるようなことは避けたほうがいいですね。
なお、肥満も尿酸値を上げて痛風を引き起こす原因となるので、納豆に限らず食べ過ぎに注意することや、適度な運動も生活に取り入れられると良いですね。
リスク2 「サプリメントと併用」セレン過剰摂取リスク
セレンとは人の体には欠かせないミネラルですが、慢性的に摂り過ぎると、胃腸障害、下痢、爪の変形や脱毛等が起こる可能性があります[*6]。
納豆にはセレンが比較的多く含まれていて、その量は1パック(約50g)中8μg。健康障害を起こすような過剰摂取とならない量(耐容上限量)としては、成人男性※で450μg、成人女性が350μgなので、通常の食事でこれを超えることは考えにくく、気にしすぎることはありませんが、セレンを含むサプリメントなどと合わせて過剰に納豆を食べすぎる場合は注意が必要です。
※75歳以上は400μg
リスク3 「効果が弱まってしまう」薬との相互作用
飲んでいる薬によっては飲食物が効果を強めたり、逆に弱めたりといった影響を及ぼすことがありますが、納豆もその可能性がある食品です。
血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)を飲んでいる人は、納豆などのビタミンKを多く含む食品は薬の効果を下げてしまうため、食べることを控える必要があります[*9]。もし不安があれば、医師や薬剤師に相談してみてください。
大豆イソフラボンはいいもの?悪いもの?
大豆イソフラボンは大豆製品に多く含まれており、もちろん納豆にも多く含まれています。この大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンであるエストロゲンに類似していることから、その受容体に結合して体に作用をするとされています。骨粗鬆症や乳がんなどの予防効果が期待される一方で、乳がんの発症リスクを高める可能性も考えられており、有効性や安全性については研究中のためはっきりとしたことは言えません。
日常生活における大豆製品の摂取での健康被害は現在報告されていませんので、連日過剰に食べなければ問題ありません。むしろ納豆には良質なたんぱく質やカルシウムなど身体に大切な栄養が沢山含まれているので、他の食品とともにバランスよく食べることができたらいいですね。
ただし、サプリメントなどから大豆イソフラボンを過剰に摂取することには注意しましょう[*8]。
どのぐらい納豆を食べたら「食べ過ぎ」になる?
納豆を食べる際の量に明確な数値はありませんが
・1日に1パック程度にしておく
・多くても5パックぐらいにとどめておく
・たくさん食べてしまったら、それ以降の食事で調整する
というかんじで考えておくといいでしょう。
1日の目安|1日1パック程度
納豆の適量としては1日1パック(50g)程度でしょう。
納豆は大豆製品ですので、肉、魚、卵と同じメイン料理の「主菜」に分類されます。食物性たんぱく質である大豆製品もぜひ日々の食事に取り入れていけたら良いのですが、肉、魚、卵などの動物性たんぱく質に豊富に含まれる栄養素もあるので、たんぱく質の種類も考えながらバランス良く摂ることが大切です。
食事バランスガイドに当てはめて考えてみると、1日あたり主菜は3〜5SV(つ)を摂ることが目安とされており、納豆は1パックで1SVとされています。これだけ見ると1日3〜5パック食べられると思うかもしれませんが、3〜5SVには肉や魚なども入り、それらは1食で2SVほどなことが多いため、バランスを考えると納豆は1パックくらいが望ましいでしょう。
毎食のように納豆を食べてしまうと1日に摂取したいたんぱく質の半分以上を納豆で占めてしまうことになるので、他の動物性たんぱく質とのバランスも悪くなってしまいますね[*10]。納豆は1日1パック程度にし、他の動物性のたんぱく質とバランス良く食べることがオススメです。
食べ過ぎの目安|場合によっては5パックまでなら許容範囲
どのぐらいが許容範囲かについては、ほかの食品をどのくらい食べているかによっても変わってきますので、「納豆を食べるのは何gまで」と断定するのは難しいものです。
例えば、主菜を肉や魚などではなくすべて納豆から摂りたい・摂らなければいけない事情があるとしたら、食事バランスガイドから考えて、1日5パックくらいまでは許容範囲といえるでしょう。この量であればプリン体の1日の摂取上限量を超えないので、問題もなさそうです。
納豆を食べ過ぎてしまった時の対処法
納豆を沢山食べてしまった次の日には、肉や魚、卵などの動物性のたんぱく質を積極的に取るようにするなど、調整できたら良いですね。リスクを減らし、いろんな食材の持つメリットを得るためにも、バランスよく様々な食材から栄養を取ることが大切です。
妊娠中も納豆を食べていい?
納豆には
葉酸や鉄など妊婦さんにも嬉しい栄養素
が豊富に含まれています。
塩分の摂り過ぎに気をつけながら、おいしく食べてください。
納豆には妊娠中に摂りたい「葉酸」も含まれる
納豆は妊娠中に大切な栄養が多く含まれています。その一つが葉酸です。妊娠初期では1日の推奨量は640μg(内400gはサプリメントなどから)とされています[*6]が、納豆には1パック(50g)で60μgと葉酸が豊富に含まれています。
葉酸は妊娠を計画している時期から妊娠中にかけて特に大切な栄養で、胎児の神経閉鎖障害のリスク低減が期待できるので、積極的に摂取したいですね。
また、妊娠中特に大切とされる鉄分は妊娠初期では1日9mg、妊娠中期と後期には16mgと非妊娠時よりも多く必要とされておりますが、納豆には1パック(50g)で1.7mgと植物性食品の中では比較的多く鉄分が含まれています[*1]。鉄分は全身に酸素を運搬する役割や、赤血球をつくるヘモグロビンの成分となり、積極的に摂りたい栄養の1つです。
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妊娠中の納豆や葉酸について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎納豆はつわりによい?納豆の栄養を解説
関連記事 ▶︎葉酸を食べ物から摂る時の注意点
塩分の摂り過ぎには注意を
妊娠中に納豆を食べる際には塩分に注意しましょう。納豆自体には塩分が含まれませんが、納豆のタレには塩分が多く含まれます。
妊婦さんに限らず普段から気をつけたい塩分ですが、特に妊娠中悩まされがちなむくみや血圧についても、塩分を控えることで対策の一つになるので、できるだけ減塩を心掛けたいですね。
すぐにできる工夫としては
・納豆にかけるタレを半分にする
・薬味で風味をつけ、少しの塩分でもおいしく食べられるようにする
・タレを少なくした分、酢を加える
などがあります。妊娠中はタレを使わず酢醤油にしてもいいかもしれませんね。
まとめ
納豆には体に嬉しい効果が沢山ありますが、体に良いからと納豆ばかり食べすぎると心配なこともでてきますね。特に調理のいらない納豆は、朝や忙しい時には最適のたんぱく質です。肉・魚とあわせてバランスよく食べることができたらいいですね。
(文:中坪由佳 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
※この文章内では一般の方にわかりやすいように「鉄」を「鉄分」、「エネルギー」を「カロリー」と表記しています。
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)・第2章(データ)
[*2]貧血の予防には、まず普段の食生活を見直そう :厚生労働省eヘルスネット
[*3] e-ヘルスネット「HDLコレステロール」
[*4]高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版ダイジェスト・ポケット版:診断と治療社(2019)
[*5]公益財団法人 痛風・尿酸財団 食品中のプリン体含有量
[*6]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
[*7]国立健康栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報」セレン解説
[*8]大豆および大豆イソフラボンに関するQ&A:農林水産省
[*9]食物と薬の相互作用(理論) :厚生労働省eヘルスネット
[*10]食事バランスガイド:厚生労働省
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます