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2021年07月02日 17:36 更新

男性の育休法改正“前”の今こそ考える、令和的ワーパパの育休の意義 #渡邊大地の令和的ワーパパ道 Vol.8

産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』『夫婦のミゾが埋まらない 産後にすれ違う男女を変えるパートナーシップ学』(ともにKADOKAWA)など、夫婦のパートナーシップをテーマにした著書が話題の渡邊大地さんによる新連載! 令和における新たなワーパパ像を、読者のみなさんとともに考えます。

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夕食が終わって、お風呂をわかして、いざ子どもたちに「お風呂がわいたから入れよ~」という声掛けをしに行ったところで、長男(小6)が長女(小3)にかみつく声が聞こえました。
「お前、勝手に止めんな! 今見てんだよ!」
どうやら二人でタブレットを使って動画を観ていたようですが、長女が別の動画に変えてしまったようです。
その長女は兄の怒りなどものともせず、次女(5歳)にかみついています。
「ちょっと! かみの毛ふんでる!痛い!」
当の次女、こちらも姉の叫ぶ声などどこ吹く風で、長男にかみついて言います。
「おようふく じゃま!ぬぎっぱなし!」
兄が脱ぎ散らかした服が邪魔だからさっさと片付けろ、という意味です。

誰もが自分のことはさておき、相手を非難する、恐怖の三つ巴。この人たちを黙らせることができるのは、妻の「さっさと風呂入れって言ってんだろうが!」しかありません。
世の中には「問答無用」も必要だと感じる今日この頃。
皆さん、こんにちは。渡邊大地です。今回も、「ワーパパ」とは何たるかを一緒に考えていきましょう!

男性の育休、誰もが取得できます

「2022年4月より、男性の育休の内容が変更になる」というニュースがありました。今回は、その話をしていきたいと思います。
以前、ぼくの両親学級の中で育休の話題になったときに、受講者のプレパパたちに「育休取る予定ですか?」と質問してみたら、「1週間取る予定です」「うちは難しいです」「まだ相談していません」といった回答が出てくるなかで、あるプレパパが「私の会社には育休がなくて……」と答えました。

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「育休がない?……もしかして、領事館に勤めているとか、日本の法律の及ばないところで仕事をしているのかも……」と思って、どんなお仕事をしているのか尋ねると、「A鉄道です」って、民間企業やないかい! 育休あるっつうの!

のちにそのご夫婦から、「会社から育休という制度自体を知らされていなかったので、会社ごとに設定する社内規定のようなものかと思っていました。国の制度だと知れてよかったです」というメッセージをいただきました。
笑い話のようですけど、現実社会ではこれとそう遠くないことが起こっているんじゃないでしょうか。私の知る限りでも、「育休は会社ごとに定める(設置しない会社もある)」と勘違いしていた人は何人もいます。会社からちゃんと説明されていない人も、一定数いるようです。
だから、今これを読んでいる時点で、「育休は国が認めている制度で、どんな会社に勤めていても取得できる(雇用期間が短いなど例外を除く)」ということを知っているのであればかなりのアドバンテージがありますよ!

ではここからは、現在の育休制度がどんなものか、簡単にまとめてみますね。

①子が1歳になるまでに1年以内の育休を(原則1回)取得できる
②産後8週以内に取得した場合は、それ以降に2回目を取得できる
③申請期限は1か月前まで
④勤続1年未満の非正規雇用の場合は取得できない
⑤企業は従業員に育休制度の周知・取得意思確認することを努力しなければならない


では次に、2022年4月からどのような点が変更になるのか、要点のみまとめてみます。

①現状の育休とは別に、「出生時育休」を産後8週以内に最大4週間分まで取得できる。これは2回に分けることもできる
②子が1歳になるまでに育休を2回に分割して取得できる ※「出生時育休」と育休を併せ最大4回休暇取得できる
③2週間前までに申請すれば取得可能
④勤続1年未満の非正規雇用の場合も取得できる(例外あり)
⑤企業は従業員に育休制度の周知・取得意思確認することが義務になる


変更の主旨はつまり、パパが柔軟に休暇取得できるようにするということと、会社側が社員に対して積極的に取得を働きかけるべし、ということです。

企業も社員の働きやすさを追求する時代に

妻の産後に休暇を取得した方が良いのかどうかというと、ぼくは絶対に取得することをお勧めします。というのも、産後約8週間は「産褥期(さんじょくき)」と言い、出産後に褥(ふとん)で寝ているべき時期、つまり体調が万全ではない時期なんですね。ここで家事も育児も産後の妻がやらないといけないのでは体が休まりません。女性の産休が産後8週間までで、この時期は原則として就業できないことになっているのも、体調回復を最優先させるためと言われています。現状の男性育休で産後8週までの取得が推奨されているのもそのためです。ですから、出産後はぼくたちが会社を休んで、赤ちゃんだけでなく妻の体調もみておきたいところです。
そんなぼくらの強い味方となるべき育休ですが、改正されるということはつまり、これまで柔軟な休暇取得ができなかったということと、会社が積極的に取り組んでこなかったということですよね。

令和3年6月の内閣府の調査[*1]によると、20~30歳代の男性既婚者の42.2%が育休を「取得しない」と回答しています。1ヶ月以上の育休を取得しない理由のトップが「職場に迷惑をかけたくないため」で42.3%、3位が「職場が、男性の育休取得を認めない雰囲気のため」で33.8%。職場の雰囲気が与える影響は依然として大きいですよね。
よく、「自分の子どもたちが将来当たり前に育休を取れるようにするために、現代の子育て世代が積極的に育休を取っていかないといけないんだ!」と発破をかけられたりしますが、このアンケートに答えてくれた男性からすると、正直「何でオレたちなんだよー!」という気持ちでしょうか。そして、誰もが思っているであろう、「オレじゃなくて会社に言えよ!」という不満も見え隠れしている気がします。

もちろん企業努力によって現状打破している会社もあります。「キスミント」で有名な江崎グリコ株式会社は、育休とは別に会社独自の「Co育て出産時休暇」(子どもの出生後6ヶ月以内に1ヶ月間の有給休暇を取得することを必須化)という制度を設けており[*2]、父親と母親が協力して育児を行うことを後押ししているそうです。
また、「育休じゃなくて短時間勤務の方が実用的」という声もありますが、例えば「PostPet」で有名なソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社では、法定の時短勤務枠を超えて、子どもが小学6年生の3月まで(法定では3歳になるまで)男女ともに時短勤務ができる制度を整えているようです[*3]。
今回の法改正によって、会社が積極的に育休を推奨していくだけでなく、こうした企業独自の子育て支援が脚光を浴びるようになるといいなと思います。

あ、「キスミント」と「PostPet」のお世話になったという人は、おそらくぼくと同年代です。

育休をとったパパと、その妻の満足度は?

会社が変わるのであれば、ぼくらも変わらなくてはいけません。
ただ、「男性がパパになったら育休取得」という流れが未だできあがっていないのは、模範となるべきモデルケースが少ないからなのでしょう。まだまだ男性による育休の有意義な使い方は確立されていないようです。

でも、諦めないでください。
完璧とは言えなくても、育休を有効活用すべくがんばっている先輩パパたちはたくさんいますから、そこから学ぶべきことは山ほどあります!
ここでは、先輩パパたちのさまざまな育休の過ごし方と、それに対する妻のコメントを紹介します。

ケース1:Kさん

出産日に休みが取れなかったKさんですが、退院日に合わせて育休を取得することに成功し、約2週間の休みをもらいました。退院の同伴と2週間健診の送り迎えもしました。退院当初、買い足りなかった赤ちゃん肌着やおしりふきなどの急な買い出しにも対応できました。

Kさんの妻の満足度 ★★★★☆
「立ち合い出来なかったのは残念でしたが、退院以降がすごく大変だと聞いていたので、そこに合わせて休みを取ってくれたのは結果的に成功だったと思います」

ケース2:Tさん

妻の里帰り終了日に合わせて、産後2ヶ月経ったところから約10日間の育休を取得したTさん。妻の実家(里帰り先)まで車でお迎えに行き、日中は赤ちゃんをあやしたりおむつ替えをしたりと、奮闘。夜中の寝かしつけも積極的に担当しました。

Tさんの妻の満足度 ★★★☆☆
「里帰り出産で、出産直後の大変な時期を夫が経験していないので、“ママはすぐに母親になれるからいいよな~”という発言があったことはちょっぴりイラっとしました。ただ、サポートしてくれる人が途切れないような形で育休を取ってくれたことは、とてもありがたかったです」

ケース3:Bさん

出産直後の休みを取らず、妻の職場復帰準備の段階で育休を取ることにしたBさん。妻が復帰に先駆けて何度か出社するタイミングで2週間取得しました。出産直後にあまり育児をしなかったことが気がかりではありましたが、妻が出社している時間は赤ちゃんと二人きりで乗り切らないといけないため、妻に頼らなくていいように事前に「日中の過ごし方」を詳細にメモしておいて留守番を成功させました。

Bさんの妻の満足度 ★★★★★
「予定より早い復職を会社から求められたのでいっときは退職もよぎりましたが、夫が休みをとってくれたおかげで無事に復職までこぎつけることができました。会社にいるときに何度か“ゲップが出ないんだけど……”などの連絡が来たときには、自分で調べてほしいと思うこともありましたが、予想よりもはるかにがんばってくれたと思います」


せっかく取得した休暇ですから、ぜひとも家族から喜ばれる使い方をしたいものです。何をするのが正しいのかは一概には言えませんが、少なくとも、夫婦でよく話し合って、休暇中のぼくたちのマスト・トゥ・ドゥを事前に決めておくべきですよね。

育休を取れるか否かよりも、取りたいか否か

皆さんご存知のように、男性育休取得者はなかなか伸びず、厚生労働省の最新データ(2019年度)では約7%と、10%にも満たない数値でした[*4]。そして、先ほど書いたように、20~30歳代男性の4割以上が「育休取得を希望しない」と回答しました。ですから、育休の話を声高に叫んだところで、大半の人にとってはこのコラムは無関係かもしれません。ただ、会社の雰囲気によるものが大きいのは間違いありません。「(どうせいい顔されないから、わざわざ波風を立てないため)取得を希望しない」のが本心に近いのかもしれません。
そんななか、ぼくが注目したいのは、株式会社明治が、0歳児を育児中の25~39歳の男性を対象にした調査(2021年6月に実施)で、「今後、産休・育休の法整備が進んだ場合、育休を取得したい」と答えたパパが74.6%だったというデータ[*5]です。実に、現役パパの4人に3人が、状況が改善するなら取得したいと考えているんですね。

取りたい人がこれだけいるのであれば、ぼくは「取得したい男性」にこそ伝えたい。

取りたいなら、取った方がいい!

拙著『夫婦のミゾが埋まらない』(KADAOKAWA)の中に、ぼくがいわゆるパタハラに遭って第一子の子育てに参画する芽をつぶされたエピソードを掲載しています。パタハラとは、男性が育児参画する権利や機会を職場の人間などが侵害することで、当時の社長に「会社より家族を優先するヤツはいらない」と言われたことは今でもハッキリ覚えています。当時はなんとかクビにならないように必死に会社にしがみついていました。だから、パパたちが会社の意向に反して育休を取ることがはばかられる気持ちはよく分かります。
でも、結局ぼくは今、その会社にはいません。そして、第一子の子育てで妻にワンオペさせたことをとっても後悔しています。
3人の子育てをする中で気づいたことは、出産直後のかかわりが多ければ多いほど、子どもが父親を頼ってくれるということ。逆に、この時期かかわりが少ないと、父子の関係を築けない状態がずっと続いていく気がしています。これがないと、この先ホントに大変なんです。泣いても泣き止ませられない、寝かしつけもできない、二人でお留守番もできない、少し大きくなっても遊んでもくれなければ、もっと大きくなっても相談に来てもくれない……子育ての戦力にならないんです。これは後から取り戻すのが非常に難しい!

子育てをがんばった自負のある2人目、そしてメインで産後のお世話をした3人目とはいい親子関係性を築けていると思います。が、完全ワンオペでほとんど子育てにかかわらなかった第一子・長男は、何かあると妻に相談し、ぼくに頼ってくれないことが多いです。小6になった今でもそう、ぼくが息子にとって安心材料になっていないということだと思います。父子関係の土台作りにとって大切な産後すぐの期間を妻にまかせっきりにしたことは、長男に対しても妻に対しても申し訳なく思うことが未だにありますが、現在では長男にしっかり向かい合おうと試行錯誤する毎日です。

今だからこそ、言えます。
子育て優先しておけばよかった!! もちろん会社のせいだけにするつもりはありません。会社の理解度とぼくら自身の積極性双方あってこそ、仕事と家庭の両立に至ることは間違いありません。

ですから、法改正によって会社が積極的に働きかけてくれるようになるのはありがたいことです。そうなると、ぼくたちも受け身の育休ではなく、自分事として育休を捉えていかなければいけません。
もし育休を取りたいと言ったら、会社から睨まれるかもしれない。その現実は無視できません。でも、その会社に十年後、二十年後も絶対に居続けるかどうかも分かりません。
一方、家族は何十年経っても家族です。家族のために働いているのであって、仕事のために家族ごっこをしているわけではないですから。
たとえ睨まれても、取りたいなら取りたいと言えばいい!
令和の育休は、取れるかどうかよりも、取りたいかどうかを優先していきませんか。令和のワーパパ像を、ともに作っていきましょうよ!

今回のまとめ

家族優先の時期を見極めて育休取得を希望できるワーパパになろう!

(文:渡邊大地、イラスト:村澤 綾香、編集:マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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