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2021年07月30日 07:50 更新

【助産師解説】添い乳でげっぷは必要?添い乳の方法や注意点

母乳育児をしているママにとって、赤ちゃんと一緒に横になりながら授乳する添い乳はとても楽ですよね。一方で、添い乳をする際はいくつかの注意点もあります。また添い乳をした後げっぷはさせたほうがいいのかわからずお困りのママもいると思います。ここでは、添い乳とげっぷについて解説します。

添い乳でも忘れずにげっぷをさせる!

添い乳をする時の注意点はいくつかありますが、中でもうっかり見落としがちなのが「げっぷ」です。

赤ちゃんのげっぷを出そうとするシーン

赤ちゃんはげっぷと一緒に吐き戻しやすい

げっぷは胃から逆流してきた空気です。授乳後のげっぷは、胃の中のガスや空気を出して赤ちゃんを楽な状態にすることと、吐き戻し防止のために行います。

胃の入口部分には噴門(ふんもん)という部位があり、胃の中の圧が強くなると噴門が開かれてガスや空気が食道を通って口から出てきます。赤ちゃんは噴門の筋肉が弱いため、げっぷをしたときや少しの刺激でも吐き戻しやすくなっています。母乳やミルクを飲む時や泣いた時に一緒に空気も飲み込んでいますので、どうしてもげっぷをしやすく、吐き戻すことも多いです。

母乳やミルクの吐き戻しを喉に詰まらせてしまうと、窒息の危険があります。

吐き戻しは窒息のリスクも

平成15〜24年に東京都23区内で発生した乳幼児の死亡例469例のうち、窒息によるものは68例。窒息の原因は吐乳もしくは吐物吸引が最多です。

赤ちゃんの窒息死を予防するためにも、授乳後はげっぷをさせることを心に留めておく必要があるでしょう。

少なくとも生後3〜5ヶ月くらいまではげっぷをさせる

げっぷをさせる

よく吐き戻しをする赤ちゃんや低月齢であれば特に、添い乳後に眠ってしまったとしてもげっぷをさせましょう

授乳後のげっぷは、一般的に自分でげっぷを出せるようになる生後3〜5ヶ月くらいまで必要といわれています。吐き戻しをしやすい赤ちゃんなら、授乳後の様子を見ながらもう少し続けてあげましょう。

なかなかげっぷが出ないときは?

げっぷをさせようとしてもなかなか出ないようなら、赤ちゃんの頭を胃の位置よりも少し高くなるようにして、げっぷと一緒に母乳も戻らないようにしましょう。

その際、何かアイテムを使うとしても、赤ちゃんの顔が埋もれて窒息のリスクがあるやわらかいクッションなどは使わないようにしましょう。

添い乳のメリット・デメリット

添い乳には、メリットとデメリットがそれぞれあります。

そもそも添い乳とは

添い乳

添い乳は、赤ちゃんとママが向かい合うように体を横たえた状態で行う授乳のことです。

添い乳のメリット|ママの体への負担が少ない

出産直後の授乳

添い乳は、ママにとってメリットがある授乳方法です。横になったままの状態で授乳することで、産後すぐや帝王切開後で体を起こした状態で授乳するのは体力的につらいママにとって、授乳による体への負担が少なくできます。

日に日に体重が増えていく赤ちゃんを抱っこしないで済むので、腰痛や腱鞘炎の予防と症状緩和の観点からも、ママの体の負担を減らせる授乳方法といえるでしょう。

添い乳のデメリット|

添い乳後に寝てしまったママ

ママの体を休めるには最適な添い乳ですが、注意しなければいけない点もあります。

中耳炎のリスクがある

赤ちゃんが水平な状態で授乳をしたり、授乳後にげっぷを出してあげなかったことが原因で、鼻へ逆流した母乳が耳(中耳)に入り、中耳炎(ミルク性中耳炎)を起こすことがあります

ミルクより母乳の方が中耳炎に罹りにくいとは言われていますが、赤ちゃんや子どもの耳管は大人よりも太くて水平で逆流物が中耳に流れ込みやすくなっています。げっぷをさせてから寝かせることでこのような中耳炎はある程度防げると考えられます[*1]。

授乳後にはげっぷをさせてあげるのが望ましいことを考えると、添い乳しながら寝た子を起こしてもいいのか困ってしまうママもいるでしょう。ゲップや吐き戻しをよくする赤ちゃんは、授乳が終わったらゲップをさせてから寝かせるほうがママも安心できるかと思います。

ママが寝入ってしまう

添い乳をしたいママは疲れていることが多いため、赤ちゃんと一緒にママもそのまま寝入ってしまう可能性もあります。そうすると、いつの間にか寝てしまったママが赤ちゃんに覆いかぶさる危険性もありますので、疲れすぎているときは敢えて添い乳しないようアドバイスしています。

赤ちゃんの耳

添い乳の方法

添い乳にはちょっとしたコツがありますので、どのような点に注意すればいいのか順番を追って確認しましょう。

添い乳の姿勢

授乳姿勢

赤ちゃんの顔がママの乳頭に来る位置にして、向かい合うように寝ます。

このとき、ママの頭が高い位置にあると、乳房と赤ちゃんの様子が見えやすく、授乳しやすくなるので、ママは枕やバスタオルを使って頭の位置を調整してください。ちょうどいい高さになったら、下側のおっぱいの乳輪が赤ちゃんの口元に届くようポジションを調整します。

添い乳の時の赤ちゃんの支え方

授乳姿勢2

まだ首がすわっていない赤ちゃんなら、下側の腕を赤ちゃんの頭と寝具の間に差し込んで腕枕をしてから、手のひらを背中に手を当てて赤ちゃんを手前に引き寄せます。上の手は下側の乳房を付け根から掴んで、赤ちゃんが少し上を向きながら口に含みやすい位置に乳輪が来るよう調整しながら誘導してあげます。

基本的に赤ちゃんは様々な授乳姿勢でも乳房に吸い付くことができますが、添い乳の体勢では正しいラッチオンができず、咥え方が浅い「浅飲み」していることがあります。添い乳をするときは、赤ちゃんが乳輪をちゃんとくわえているか、乳首に痛みがないか(浅飲みだと痛い)注意してみてあげましょう。

首がすわって赤ちゃんがある程度自分で頭を動かせるようになり、授乳にも慣れてきたら腕枕はしなくても大丈夫です。かわりに、赤ちゃんにとって吸い付きやすい体勢をキープしやすくなるよう、きつく丸めてヘアゴム等で筒状に固定したバスタオルなどで背中を支えてあげてください。

飲ませるお乳を変える

授乳のスイッチ

添い乳をするときは、左右の乳房からバランス良く授乳することを意識してください。例えば、いつも左半身を下にして授乳していると、左側の乳房から吸わせる機会が多くなります。乳汁は左右の乳房ごとで作られるため、左側は母乳がいっぱい出てくるのに対して右側はそれほど出ない状態になる可能性があります。そうなると、右側の乳房は母乳がたまりすぎてパンパンに張ったり、乳腺炎を起こすこともあります

添い乳をするときは、前回は左側の乳房の母乳をあげたから今回は右側からあげる、または片方が終わったら赤ちゃんを胸に抱えて仰向けになった後、逆側に寝返りを打ってスイッチングするなど、左右の乳房からバランス良く授乳するようにしましょう。

まとめ

添い乳をするときは、授乳後にげっぷをさせてあげることで、赤ちゃんが吐き戻ししにくい状態にしてあげましょう。左右の乳房で飲ませる量に偏りが生じないようバランスよく授乳することも意識してみてください。
添い乳はママにとって体の負担が少ない授乳方法です。しかし、疲れすぎている時には控えて、パパや家族に搾乳した母乳やミルクを飲ませてもらうのもいいかもしれませんね。

(文:本河美佳/監修:坂田陽子 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 守本倫子「ミルク性中耳炎」ドクターサロン63巻5月号(4. 2019)p40-4


※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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