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2021年05月07日 20:00 更新

誰もが当事者! うつ病・産後うつ病体験記 #渡邊大地の令和的ワーパパ道 Vol.4

『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』『夫婦のミゾが埋まらない 産後にすれ違う男女を変えるパートナーシップ学』(ともにKADOKAWA)など、夫婦のパートナーシップをテーマにした著書が話題の渡邊大地さんによる新連載! 令和における新たなワーパパ像を、読者のみなさんとともに考えます。

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我が家の小6長男、少し前までは二言目には「ママァ!」と母親を追い回し、母親のトイレにまでついていくような子でしたが、ここ1~2年であっという間に「ママ」よりも「ゲーム」への関心が上回り、家族で外出する際にも「オレ、ゲームやってるから、いい」とひとりでゲームに熱中するようになりました。

「このままいくとマザコン街道まっしぐらだぞ?」と心配した時期もありましたが、いつの間にか成長し、母親よりも大きなサイズの靴を履くようになりました。いつからかカメラを向けても避けるようになりました。好きなテレビ番組は『相棒』と『科捜研の女』になりました。考えてみればあと十年もすれば家を出てもおかしくない年齢です。家族全員で出かけられるのもあとどのくらいあるのか、と考えてしまいます。

皆さん、こんにちは。渡邊大地です。今回も、「ワーパパ」とは何たるかを一緒に考えていきましょう!

うつ病、産後うつ病は誰にでも起こりうる

ゴールデンウィークが最終局面に差し掛かっている皆さん、会社に行くのダルいですよねぇ。そして、一足先にゴールデンウィークを終えている皆さんも、しんどかったですよねぇ、連休明け。この時期、仕事に悩んでメンタルの不調を訴える人は珍しくありませんよね。

心の病といえば、ぜひワーパパの皆さんに知っておいてほしいのが「産後うつ病」です。皆さんは、出産後に女性がさまざまな原因でうつ病を発症してしまうことがあるのは聞いたことがあるでしょうか。よくニュースでも、女性の自殺に産後うつ病が影響しているらしいとか、我が子を虐待する親と産後うつ病との関連性の高さが指摘されていたりしますよね。気持ちが落ち込んだり、育児がつらいと感じるということが続いたら、保健センターや医療機関に相談する方法もありますが、心の病という性質上、自身のうつ状態に気付かなかったり、そもそもワンオペで通院する余裕がなかったりする女性もいます。専門家によると、産後うつ病になる女性は10%程度と言われていますけども[*1]、そこには“通院していない人”、つまり産後うつ病だと診断されていない人は含まれていませんから、実数はそれ以上だと思われます。さらに、2020年は新型コロナウイルスによる外出自粛等によって精神的に不安定になり産後うつ病の女性が増えたという調査もありました[*2]。

産後うつ病について知りたい方は、日本産婦人科学会のホームページなどで詳しく解説されていますのでそちらを参考にしていただくとして、今回はうつ病、そして産後うつ病が、決して他人事ではなく誰にでも起こりうるものだということを知っていただきたいと思います。
※この後に「うつ病」「産後うつ病」に関する描写が出てきます。閲覧する際はご注意ください。

渡邊大地の「うつ病」体験記

ぼくがうつ病になったのは社会人1年目。まさにゴールデンウィーク明け直後の今ごろの時期です。2月入社で、2、3、4月と気を張って過ごしたものの、人間関係(特に先輩や上司とのコミュニケーション)がうまくいかずに居づらさを感じていました。なんとかゴールデンウィークまでがんばりましたが、休み中も自宅でずっと仕事をしなければならず、気持ちが休まらないままあっという間に休暇が終わりました。休暇明け数日後のある朝、出社するために自宅最寄りの駅まで行き、改札を通ろうとしたときに、突然体が硬直して前に進めなくなりました。それからジワジワと心がざわついてきて、「これ以上先に進んだら帰ってこられなくなるんじゃないか」という不安に襲われました。自分でもビックリしました。今振り返ってみると、気持ちよりも“体”が先にSOSを出してくれたような気がします。しばらく改札前をうろうろしたりキオスクに入ったりしてみたんですが、一向に改札を越えられる気がしないまま時間だけが過ぎて、会社からの電話に気付いたときには近所の公園のベンチに座っていました。

「調子が悪いので今日は休ませてもらえませんか」と伝えても「ダメだ、すぐに出社しろ」の一点張り。怖くなって電話を切り、すぐに当時の彼女に電話をすると、仕事中の彼女が「すぐ行くからそこにいて!」と仕事を切り上げて迎えに来てくれました。その後彼女の勧めでメンタルクリニックを受診することになり、「うつ病」と診断されて抗うつ薬を処方してもらいました。それでも会社は「みんなが迷惑しているんだ、すぐに出社しろ」と何度も何度も電話をしてきました。仕事がいやになったというよりは、会社が怖くなったという感覚が近かった気がします。それから数日仕事を休んでいる間、ずっと彼女も仕事を休んで一緒にいてくれました。

ただ、会社からの電話に出ずに無断欠勤をしていたため、いよいよ会社から「今から家まで迎えに行くからすぐに出社できる準備をしておけ」という留守電がありました。怖くなって実家の両親に電話すると、父が「会社のひとつくらい辞めていいんだぞ。とにかくウチに帰ってこい」と言ってくれました。この言葉には本当に救われました。そして彼女も「好きなだけ実家でゆっくりしてきなよ」と言ってくれました。会社には不義理をしてしまいましたが、自分を守るためには仕方がなかったと思っています。その後徐々に回復し、転職活動をできるようになりました。

心の病は心の弱い人がなるんじゃないかと漠然と思っていたので、自分のような図太い人間がいとも簡単にうつ病だと診断されたのは大きなショックでした。「誰にでもなりうる」と理解するのに時間がかかりました。

この時期彼女は、有給休暇を使いまくって多くの時間をぼくと過ごしてくれたんですが、特に励ますでも楽しませるでもなく、とにかく黙って隣にいてくれました。医学的にはうつ病の対処はさまざまあると思いますが、ぼくにとってはこのときの彼女の対応が本当にありがたくて、彼女は命の恩人だと思っています。あ、今では妻ですけどね。

2児のワーママMさんの「産後うつ病」体験記

次に、女児2人の母であるMさんが産後うつ病になったときのことを紹介します。

1人目の育児は完全なワンオペで、旦那さんは育休をとることもなく、家事も育児も保育園関係も一切をMさんに任せていました。その後2人目が生まれますが、パパによくある誤解「1人目の経験値があるから2人目は楽勝でしょ」に則って、当然のように旦那さんは何もせずワンオペ継続。

その結果、Mさんは自分ひとりにのしかかる育児のしんどさ、そして復職したらやっていけるのだろうかという不安感に悩まされるようになり、気づけば終始無気力状態に。受診したところ「産後うつ病」と診断されました。

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それを聞いた旦那さんは、「そんなものは気合いが足りない人間がかかるものだ。そんなことでよく両立なんて言ったもんだ」とMさんを責め、理解しようとはしなかったそうです。

それでも生活はしなければいけません。長女の保育園の送り迎えを渋々旦那さんがすることにしましたが、次女のお世話は産後うつ病のMさんに押し付けて、会社通勤を続けました。初めて送り迎えを経験した旦那さんでしたが、Mさんの大変さを知るどころか「なんて迷惑なんだ。さっさと治して家事も育児もちゃんとやってくれよ」とさえ思っていたそうです。

そんなMさん一家に転機が訪れたのは、旦那さんが長女の送り迎えを始めてから数週間が経ったころ。ある朝、長女が保育園に行きたくないとぐずり、理由を問いただした父親に向かって「パパ、おこってばっかりになったんだもん!」と大泣きしたそうです。考えてみたら、これまで育児をまったくしてこなかった旦那さんは、いわゆる「いいとこ取り」の育児ばかりで、娘に甘い顔ばかりしてきました。それが、送り迎えを担当することで、怒ったり叱ったりしなければいけなくなってしまった。長女にとっては別人に映ったかもしれません。

産後うつ病で苦しむMさんが泣きじゃくる娘をあやしながら「今日は私が家でみてるから、仕事行ってきていいよ」と言ってくれた瞬間、旦那さんは理解したそうです。

「オレが嫌われ役をやらない分、妻が嫌われ役を全部やってくれてたのか……」

そう思うと涙が止まらなくなり、そのまま会社に電話をかけて、しばらく休ませてほしいと願い出たのだそうです。

現在は家事も育児も夫婦で協力しているMさんは、当時を振り返って「仕事を休んで収入が減った分、自分が家事も育児もやるのが当然と思い込んでいた」と言います。そして、旦那さんも同様に思っていたため、産後うつ病になるまで無理をしてしまったんじゃないかと話してくれました。このエピソードがあって、旦那さんは自分がいかに家事・育児に関わってこなかったかを思い知ると同時に、Mさんが家事・育児をがんばってくれていたから自分は好きなだけ働けていたんだということにも気づきました。旦那さんがこのことに気付いてから、Mさんの症状は次第によくなっていったといいますから、夫の理解が妻の精神状態にいかに大きな影響を与えるかがうかがえます。

お互いの両立を支え合える夫婦に

仕事と子育ては、どちらもうつ病のきっかけになりやすいんですよね。両立(りょ)という言葉の中には「うつ」が隠れています。ぼくだって、まさか自分が心の病になるなんて思いもしませんでしたし、そもそも「うつ病」なんて存在について考えたこともありませんでした。ところがどっこい、ぼくらは心の病と隣り合わせに生活していたわけです。大事なことなのでもう一度言いますが、うつ病・産後うつ病は誰にでも起こりえます。ぼくら自身にも、妻にも。「ウチは100%大丈夫だ」と言い切れる人はまずいないと思っておいてくださいね。

そして、ぼくのエピソードも、Mさんのエピソードも、パートナーの理解によってうつ状態が軽減された好例です。もちろん、医師や投薬のおかげもありますが、パートナーの理解の有無は回復に大きく影響すると、ぼくは自分自身の経験から断言できます。

お互いが精神的な支えになるのが家族。もちろん、ぼくらも妻から精神的に支えられたいですし、現に大部分を支えられているはずです。では、「自分は妻を精神的に支えられているんだろうか?」と、この機会にぜひ振り返ってみてください。夫の両立と妻の両立をお互いに支え合う、これができてこそワーママ・ワーパパが成立するのではないでしょうか。

サラッと書きましたけど、「ところがどっこい」って皆さんも使いますよね?

今回のまとめ

妻を精神的に支え、妻からも支えられるワーパパになろう!

(文:渡邊大地、イラスト:村澤 綾香、編集:マイナビ子育て編集部)

※本記事にでてくる病気、症状、治療法に関する表現は、作者の個人的な体験にもとづくものです。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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