【医師監修】妊婦の体重管理|妊娠中の理想的な体重増加の目安

【医師監修】妊婦の体重管理|妊娠中の理想的な体重増加の目安

体重管理は、妊婦さんにとって関心の高いことのひとつかもしれません。妊娠すると体重は増えるものですが、増えすぎても、そして逆に増えなさすぎてもリスクが高まる可能性があります。妊娠中の正しい体重管理を知っておきましょう。


この記事の監修ドクター
産婦人科専門医 太田寛 先生
松岸レディスクリニック(千葉県成田市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士。

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妊婦に体重管理が必要な理由

体重は多すぎても少なすぎても、健康に影響があります。特に妊娠中は、妊婦さんだけでなく胎児にもかかわってきますので、いつも以上に注意が必要です。神経質になりすぎるのも良くないですが、リスクを減らすために適正な管理は必要です。

もし、妊婦さんが太りすぎたり、反対にやせすぎたりした場合、どのようなリスクがあるのでしょうか

妊婦の太りすぎのリスク

太りすぎのリスクは「妊娠前に肥満だった場合」と「妊娠中に大きく体重が増加した場合」とで、やや異なります。

まず、妊娠前に肥満だった場合については、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病といった合併症を発症するリスクが高まるといわれています[*1]。また、帝王切開での出産になるリスクや、胎児が体重4,000g以上の巨大児になるリスクも高まるようです[*1]。

一方、妊娠中に大きく体重が増加した場合では、巨大児のリスクが高まり、帝王切開も増えるとされています[*1]。

体重制限すれば妊娠高血圧症を防げる?

なお、以前は「妊娠中に体重の増加量を制限すると、妊娠高血圧症候群を予防できる」とされていましたが、それについては信頼性が低い情報であることが昨今の報告からわかっています[*1]。

妊婦のやせすぎのリスク

やせすぎの妊婦さんについても、妊娠前にやせていたのか、それとも妊娠中に適正な体重増加がないのかによって、少々リスクが異なります。

もともと妊娠前からやせている女性の場合、切迫早産や早産、低出生体重児分娩のほか、貧血のリスクが高まるとされています[*1]。

また妊娠中の体重増加が著しく少ない場合は、早産や低出生体重児分娩のリスクが高まる傾向にあります[*1]。

低出生体重児とは

低出生体重児とは出生時体重が2,500g未満の赤ちゃんのことです。以前は未熟児と呼ばれていましたが、体重は少なくても体の機能が未熟ではないこともあるため、低出生体重児という呼び方に変わっています。

低出生体重児になるのは、早産で生まれる、もしくは妊娠37週以降の正期産でも妊娠週数に見合った発育がない場合などが主な原因だといわれています。低出生体重で生まれた赤ちゃんは、生まれてからの環境にうまく順応できず、生活習慣病を発症しやすくなると考えられています。

増える低出生体重児は過度なダイエットのせい?

厚生労働省の統計によると低出生体重児はここ数年、増加傾向にあり[*2]、その一因には厳しすぎる妊娠中の体重管理が関わっているという見方もあります。医師から指示がない限り、自己判断でダイエットをするのはやめましょう

妊婦の体重管理はいつから始める?

このように妊娠中は、体重が増えすぎても、体重増加が少なすぎても妊婦さんや赤ちゃんにリスクが生じる可能性があります。したがって適正に体重管理をすることが大切です。妊娠がわかった時から、体重管理を意識しておいたほうがよいでしょう。

ただし、大切なのはあくまで「意識する」こと。増減に一喜一憂せず、医師や助産師と相談しながら、妊娠期間トータルで見ていくのがよいでしょう。

妊婦の体重増加の目安

では、妊娠中の体重増加はどれくらいを目安にするとよいのでしょうか。体重増加の目安は、妊娠前の体重によって変わってきます。詳しく見てみましょう。

妊娠すると基本的に体重は増加する

体重増加の目安を知る前に、あらためて確認しておきたいことがあります。それは「妊娠すると、ママの体重は基本的に増加する」ということです。

妊娠中はおなかの赤ちゃんの重さに加え、胎盤や羊水、母体側の血液や皮下脂肪が増加していきます。そのため妊娠経過に伴い、体重が増えていくのは当然のことなのです。

ただし、その増加量が多すぎると、先ほど説明したようなリスクが生じる可能性があります。具体的には何kgなら増加してもよいのでしょうか。

BMIから計算する妊婦の体重増加の目安量

妊娠中の体重増加量の目安は「妊娠前の体型」によって変わってきます。

身長:(cm)

体重:(kg)

BMI(Body Mass Index)という、体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)で求められる指標により、体重増加量の目安が以下のように提示されています[*3]。

妊婦の体重増加の目安(2021年3月改訂)

・妊娠前が低体重(BMI18.5未満):12~15kg
・妊娠前が普通体型(BMI18.5~25.0未満):10~13kg
・妊娠前が肥満度1(BMI25.0~30.0未満):7~10kg
・妊娠前が肥満度2以上(BMI30.0以上):上限5kgを目安に個別に対応

体重増加の目安量は引き上げられた

ちなみに改訂前の目安は、全体的に今よりも3kgほど少なくなっていました[*4]。また、肥満に分類されるBMI25.0以上の人については一律で「医師による個別判断」となっていましたが、改訂後はBMI25.0~30.0未満の「肥満度1」とBMI30.0以上の「肥満度2」に分けられ、それぞれに目安が設けられました。

改定の主な理由は、先に説明したような、女性の低体重による妊婦さんや赤ちゃんへの健康リスクの増加が問題視されたことによります。著しい体重増加だけでなく、体重を適正に増加させないこともリスクとなる可能性があるため、妊娠中は正しく体重を管理していくことが大切です。

妊婦の体重管理の方法

体重管理をする場合、非妊娠時は運動と食事制限で行うのが一般的です。しかし妊婦さんの場合、それらを行うことで良くない影響が生じる可能性があります。では、妊婦さんが適正に体重を管理していくには、どのようにするのがよいのでしょうか。

過度な運動や食事制限での体重管理はNG

医師から特に運動を制限されていない場合は、妊娠中も適度な運動を行うことが、早産や低出生体重児のリスクの増加防止につながる可能性が明らかになってきました。

ですが妊婦さんの体は妊娠していない時とは異なります。妊娠中には体重の増加、体型変化による体勢の不安定さ、関節の緩みといった、どちらかといえば運動に不向きな変化が生じます。加えて運動のしすぎは、妊娠や出産に悪影響を及ぼす可能性があります。

本格的な筋力トレーニングなどの激しい運動は妊娠中はNG

本格的な筋力トレーニングや人とぶつかり合うような競技(柔道やボクシング)など、激しい運動を妊娠中に行うことは避ける必要があります。

食事制限についても同様です。妊娠中に限らず、極端な食事制限はかえって健康の妨げになることがあります。この後、詳しく説明しますが、妊娠中はバランスのよい食事をとることが特に大切です。体重の増え方が気になる場合でも、食事を過度に制限するのは避けましょう。

体重管理の基本はバランスのよい食生活

赤ちゃんや妊婦さんの健康のためには、体重を管理しつつ、バランスの良い食生活をすることがポイントとなります。

しかし「バランスの良い食事」と言われても、具体的にどういう内容の食事ならバランスが良いといえるのかピンとこない人も多いのではないでしょうか。

食事の栄養バランスについては厚生労働省が提案する「食事バランスガイド」が有名です。食事バランスガイドでは、食事の内容を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つのグループに分け、それぞれを組み合わせてとることを推奨しています。1日の食事の中で少なくても2回は主食、主菜、副菜のそろえるようにするとこのバランスをとれることが報告されています[*5]。そこに乳製品や果物を補うことができればいいですね。

妊娠中は食事のバランスを見直す絶好の機会です。まずは1日2回、主食、主菜、副菜のそろった食事をとることから始めてみましょう。

適度な運動をするのがおすすめ

激しい運動は避けるべきですが、適度な運動であれば妊娠中の体重管理には有効なことがあります。おすすめは無理のない強度で、ほぼ毎日継続的に行える有酸素運動です。

有酸素運動とは、呼吸を意識してゆったりと行える運動のこと。具体的にはウォーキング、水中ウォーキング、マタニティスイミングやヨガなどがあげられます。これらの運動を週に数回程度、無理のない範囲で行うのがよいでしょう。

ただし、切迫流早産のリスクがあるなど、運動を控えるように指導さている場合はそれに従いましょう。

妊婦の体重管理成功のコツ・ポイント

そのほか、妊娠中、適正に体重を管理するためのコツやポイントを紹介します。

食事は「食べすぎ」に気を付ける

食べすぎは、必要以上の体重増加の一因になります。エネルギー(カロリー)を摂取しすぎてしまうと消費できなかったエネルギーが体に蓄積し、適正な増加量以上に体重が増えてしまうことにつながります。ゆっくりよくかんで食べたり、栄養バランスの整った食事をとったりするなど、食べすぎ防止に努めましょう。

カロリーだけでなく塩分・糖分・脂肪分にも注目

食事をする時はエネルギー(カロリー)を少なくすることに意識が向きがちですが、カロリー以外に、食事に含まれる栄養成分にも注目しましょう。特に塩分、糖分(糖質)、脂肪分には注意が必要です。これらは体にとって重要な成分ですが、多く摂取しすぎると体重増加につながりやすくなります。

食べる量はさほど多くなくとも「甘いお菓子を食べたから、カロリーが気になるので一食抜いた」などがあると、本来食事から摂るべき栄養が摂れなくなる危険もあります。また、塩分は気を付けていても意外に多く摂取しているケースもあり、例えば和食はローカロリーでヘルシーな印象がありますが、付け合わせとして出されることの多い漬物や和食に欠かせないみそ汁などには塩分が多く含まれます。カロリー以外のこうした栄養成分にも気を付けながら、食事バランスガイドを参考に、バランスのとれた食事を意識しましょう。

アプリやグラフで効果を見える化する

栄養バランスや摂取エネルギーを自分で管理しようと思うと大変です。そんなときはスマートフォンなどで手軽に使える、食事管理アプリを利用するのもひとつの方法です。

食べたものを登録すると、摂取カロリーや栄養素を見える化してくれるため、忙しい毎日の食事管理にぴったりです。記録することで不足している栄養素や、反対に摂取量の多すぎる栄養素がわかるほか、必要なアドバイスもしてくれます。例えば「あすけん」「FiNC」「ハミング google/app」「YAZIO google/ app」といった食事管理のスマホアプリを使って食事のバランスを考えるのもよいですね。

厳しすぎるとストレスで逆効果!辛いときは息抜きを

妊婦さんと赤ちゃんの健康のためには体重の管理は大切です。ですが、厳しく管理しすぎるとストレスがたまり、反動でドカ食いに走ってしまうことも考えられます。何事もやりすぎは良くありません。時には息抜きをしつつ、約10ヶ月間の妊娠期間を上手に乗り切りましょう。

まとめ

妊婦さんにとって体重管理は妊娠期間中、気になることのひとつかもしれませんが、妊娠中、体重が増えるのは当然のことです。その量が多すぎたり、少なすぎたりしないようにするのが、妊婦さんの体重管理における大切なポイントです。
1日にせめて2食は主食、主菜、副菜のそろった食事にしたり、脂質や糖質、塩分の過剰摂取に注意したり、適度な運動をしたりして、適正な体重増加に努めるのが大切です。

(文:山本尚恵/監修:太田寛 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン産科編2020』CQ010 妊娠前の体格や妊娠中の体重増加量については?
[*2]平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「低出生体重児保健指導マニュアル」p2
[*3]厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」改定の概要(2021年3月)
[*4]厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」リーフレット外面(2006年2月1日発表)
[*5]妊産婦のための食事バランスガイド(2016年3月)

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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