
妊婦は馬刺しに注意!トキソプラズマの危険性と食べてしまったときの対処法【管理栄養士監修】
地方によっては子供のころから慣れ親しみ、老若男女問わず好まれる馬刺しですが、妊婦さんの場合は注意が必要です。今回は妊娠中になぜ馬刺しがNGなのかについて解説します。
妊婦は馬刺しに注意
妊娠中に馬刺しに注意が必要なのは、どのような理由からなのでしょうか。
馬刺しNGの理由は食中毒のリスク

馬刺しに限らず、妊娠中は肉を加熱不十分な状態で食べるのは控えなければいけません。
馬肉は腸管出血性大腸菌やカンピロバクターなどのリスクが高いわけではありませんが、原因のわからない食中毒発症事例もありますので[*1]、妊娠中は馬刺しを食べない方がいいでしょう。
細菌だけではなく、馬はサルコシスティス・フェアリーなどの寄生虫により下痢などを起こす可能性もあります[*2]。寄生虫の中でも特に妊婦さんに気を付けてほしいのが、母子感染リスクのあるトキソプラズマ症です。
馬刺しはトキソプラズマ症のリスクがある?
トキソプラズマ症とは、寄生虫の一種トキソプラズマを摂取することでおこる感染症です。
妊娠中に初めて感染すると、母子感染し先天性トキソプラズマ症を引き起こす原因となります[*3]。トキソプラズマ症にかかる危険があるのは、初めて感染するときのみなので、すでに抗体をもっている場合はこれに該当しません。
多くはないが事例はある
厚生労働省「生食用食肉における危害評価」の中では、牛肉のトキソプラズマの可能性について書かれていますが、すべての哺乳類・鳥類に可能性はあるとされています[*3]。
馬刺しのほかにもレアステーキ、ユッケ、鶏刺し、生ハム、サラミ、生乳などもトキソプラズマ症のリスクがありますので、これらは妊娠中は避けるようにしましょう。
トキソプラズマ症の感染経路

猫の糞が主な感染源で、猫が出入りするような砂場や庭や花壇の土に含まれる危険があり、土いじりにも注意が必要です。このほか、トキソプラズマに感染した肉を生や加熱が不十分な状態で食した場合にも感染することがあります。また、肉を切った包丁やまな板で生野菜を調理する事にも感染の危険性があります。
妊婦がトキソプラズマにかかるとどうなる?
かかってもわかりにくく、単なる風邪のような症状でおさまってしまうことが多いです。しかし、妊娠中にトキソプラズマにはじめて感染した場合は、流産・死産のほか、赤ちゃんが水頭症や視力障害などを起こす可能性があります。また、出生時は無症状でも大人になってから目などに症状が出る場合があります[*3]。
知らずに生肉の馬刺しを食べてしまったら?

心配な場合は、トキソプラズマの抗体検査をすることができます[*4]。この抗体検査でトキソプラズマに対する免疫の有無を調べ、もし陽性で妊娠中の感染が疑われるようであれば、必要に応じて治療が行われます。心配な場合は主治医に相談しましょう。
まとめ
ほかの生肉に比べて食中毒リスクの少ない「馬肉」ですが、馬刺しに関しては妊娠中はできる限り控えておくほうが安心です。トキソプラズマ症の可能性はさほど高くはありませんが、他にも食中毒などになった場合には体力を奪われてしまいます。母子感染がなかったとしても妊娠中は健やかであることが大切なので、しっかり加熱したものを食べておくといいですね。
(文:川口由美子 先生)
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