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2022年04月21日 17:56 更新

【医師監修】赤ちゃんと車のお出かけはいつから?新生児の車移動は?楽しいドライブのコツと注意点

産院からの退院をはじめ、生後間もない赤ちゃんを車に乗せる機会は意外とあります。赤ちゃんを車に乗せて家族で旅行したり、帰省したりする人も多いのではないでしょうか。赤ちゃんを車に乗せるときの注意点について解説します。

赤ちゃんは生後何ヶ月ごろから車に乗せてもいいの?

赤ちゃんを車に乗せる夫婦
Lazy dummy

新生児から問題ないが、免疫力が低いことに注意

産院から退院するときから始まり、1ヶ月健診やお宮参りなどで、赤ちゃんを車に乗せる機会は意外と多いもの。また、赤ちゃんを遠方の祖父母に見せにいったり、里帰り出産から自宅に戻ったりする際などで、赤ちゃんを長時間車に乗せなければいけないこともあります。

まだ首も座っておらず、弱々しい赤ちゃんを車に乗せるのはドキドキしてしまいますが、新生児であっても乳児用のチャイルドシートを適切に使用していれば車での移動は可能です。とはいえ、大人が乗るときよりも細やかな配慮が必要になります。具体的な注意点は次項以降で紹介します。

赤ちゃんを車に乗せるときの注意点

赤ちゃんが車に乗っていることを知らせるマーク
Lazy dummy

とにもかくにも、まずは安全第一を心がけましょう。そして、赤ちゃんの体力をなるべく消耗しないようにスケジュールを組み、車内環境にも配慮しましょう。おなかがすいていなくても、赤ちゃんは信号待ちなどで停車すると泣くことがよくあります。運転中に赤ちゃんが泣くと焦ってしまいますが、なるべく平常心で運転することを心がけてくださいね。

チャイルドシートは必ず設置する

そもそも、道路交通法では、自動車に乗ったらすべての座席でシートベルトを着用することが義務付けられています。そして、6歳未満の幼児の乗る車には必ずチャイルドシートを設置しなければいけません。新生児であっても例外ではないので、生後すぐの産院からの退院時から使えるように、車に設置しておきましょう。

チャイルドシートには乳児用、幼児用、学童用の3タイプがあり、子どもの体格、対象年齢に合ったものを使用することが大切です。とくに首が座る前の新生児を乗せる場合は、その機種に合ったインナークッションなどを使用し、首がぐらつかないようにしましょう。
※なお、路線バスやタクシーやバスでは、どのような体格の幼児が何人乗ってくるか予想できないため、チャイルドシートの使用は免除されています。

チャイルドシートを使わないと、事故の衝撃で、前席やダッシュボード、天井、ドア等に非常に強い力でたたきつけられることになります。仮に、時速60kmで進んでいる車が壁などに激突した場合、高さ14mのビルから落ちるのと同じ衝撃を受けます[*1]。また、衝突の勢いが強い場合、車外に放り出されて硬いアスファルトに叩きつけられたり、後続の車にひかれたりすることもあります。後部座席に座っている人が衝撃で前の座席に投げ出されると、前の人はシートとエアバッグに挟まれて命を落とすこともあるのです。

なお、2019年8月6日までに入手したデータから警察庁が交通事故を分析した結果、6歳未満の幼児が自動車に乗っているとき、チャイルドシートを適正に使用したときの致死率は0.03%だったのに対し、チャイルドシートを使わなかったときは0.42%と、約13.4倍もの差があることがわかりました [*2]。

赤ちゃんをチャイルドシートに乗せようとすると、嫌がって泣くこともあります。また、昔はシートベルトの着用やチャイルドシートの設置が義務づけられていなかったため、祖父母世代からは「かわいそうだから抱っこしてあげたら?」などと言われるかもしれません。それでも赤ちゃんの安全のため、必ずチャイルドシートに乗せるようにしてください。

ドアやパワーウィンドウに挟まれないよう注意

子どもは不用意に窓から手や足を出すことがあります。それに気づかずにドアや窓を閉めてしまうと、ケガをしてしまいます。ドアやパワーウィンドウを閉める場合は、子どもが手足を出していないか事前に確認し、子どもが親の言葉を分かるような年齢になったら、「今から閉めるよ」と一声かけてから閉めるようにしましょう。

また、子どもが勝手に窓やドアを開けると事故につながるおそれがあります。子どもは開閉操作ができないようにロック機能を使うようにしましょう。

車内に放置するのは厳禁

ちょっとコンビニで飲み物を買いたいときや、トイレ休憩をしたいときに、赤ちゃんや子どもが寝ていると、わざわざ起こすのは面倒ですし短時間なのに起こすのもかわいそう、と車内に置いて出たくなるかもしれません。しかし、赤ちゃんや子どもを車内に放置すると、短時間であっても熱中症になる危険があります。

車のエンジンを切ると、エアコンのスイッチもOFFになります。その状態で太陽の光が車内に降り注ぐと、温室効果であっという間に車内の気温が上がります。真夏はもちろんですが、JAFのユーザーテストによると、気温20℃台の秋の過ごしやすい気候であっても、晴れた日に車のエンジンを切って1時間放置すると車内の温度が50℃以上に達することがわかりました [*3]。また、夏の場合はエアコン停止からわずか15分で熱中症指数が危険レベルに達するという実験結果も出ています[*4]。サンシェードを設置したり、3cm窓を開けて置いたりしても、温度上昇を抑制する効果はあまりありませんでした。

赤ちゃんや子どもは大人に比べて体温の調節能力が低いため、高温のなかでは短時間で体温上昇し、熱中症になってしまいます。たとえ数分でも車内に赤ちゃんや子どもを残してはいけません。

赤ちゃんに合わせた移動時間に

子ども、とくに赤ちゃんは体力がないため、車に乗せる時間はなるべく短時間に済ませるようにしてください。イギリス王立災害防止協会のサイト[*5]では、「40週の正期産児と早産児を、40度の姿勢でチャイルドシートに乗せ、車の振動を発生させるシミュレーターを用いた研究では、 正期産児・早産児ともに、心拍はかなり速くなり、低酸素状態になって、 呼吸数も増加したとする報告がある」と紹介しています。つまり、チャイルドシートを適切に使用していたとしても、車でのドライブはやはり赤ちゃんの体に負担をかけるということです。

ただ、遠方にある実家への帰省や、里帰り出産からの帰宅の場合など、どうしても長時間、赤ちゃんを車に乗せなければいけないこともあります。その場合は、「1時間ごと」に休憩を取りながら運転しましょう。

チャイルドシートのメーカーでは、説明書で「長距離移動の場合には、1時間ごとに休憩を取り、赤ちゃんをシートから降ろす」、「1時間以上の連続使用はやめる」ことを勧めています[*6, 7]。

こまめに休憩を取り、その都度赤ちゃんのお世話をしていたら、どうしても移動時間は大人だけのときよりも長くなってしまいます。タイトなスケジュールを組んで、「遅れそう!」と慌てると事故にもつながります。余裕をもった予定で、赤ちゃんも大人も安全な旅を目指しましょう。

人混みへの移動は避ける

赤ちゃんは大人よりも免疫力が弱いです。実は、赤ちゃんの体内には、生後6ヶ月ごろまではお母さんの体から移行したIgG(免疫グロブリン)という抗体が体内に存在しているのですが、これは誕生から日がたつにつれて急速に減っていきます。赤ちゃん自身も生後すぐからIgGを作り始めますが、最初はかなり量が少なく、生後3ヶ月ごろになってようやく量が増えてきます。

急速に減少していく母親由来のIgGを赤ちゃんが自分でつくって補っていくわけですが、最初からたくさんつくれるわけではないので、ちょうど生後3ヶ月ごろに赤ちゃんの体内のIgGの量が最も少なくなる時期があるとされています。つまりこの時期は免疫力が弱くなる時期で、免疫力が弱いということは、病源体に感染しやすいということです。ですから、生後3ヶ月前後はとくに人混みは避けたほうがよいのです。

なお、免疫力として働く抗体には、ほかにも、IgMやIgAなどもありますが、これらは基本的には誕生直後の赤ちゃんの体内には微量しか存在せず、母乳などを介して生後徐々に増えていきます。

車内の環境も赤ちゃんファーストで

空腹の時間帯でもなく、うんちをしているわけでもなく、車が止まっているわけではないのに、赤ちゃんが泣き止まないことがあります。その場合、直射日光が当たっていたり、暑すぎたり寒すぎたりするなど、赤ちゃんが不快な思いをしている可能性があります。

日よけシートやブランケット、保冷や保温ができる背あてシートを用意して、赤ちゃんができるだけ快適に過ごせる工夫をしてみましょう。また、渋滞で車が動かないときなどのぐずり対策として、ガラガラなどのおもちゃも用意しておくと良いですね。

まとめ

車の中でもチャイルドシートでぐっする眠る赤ちゃん
Lazy dummy

赤ちゃんは、生後すぐから車に乗せることはできますが、必ずチャイルドシートを使用しましょう。たった数分でも赤ちゃんを車内に放置するのは厳禁です。また、赤ちゃんは大人より体力も免疫力も低いことに注意が必要。どうしても長時間移動せざるを得ないときは、こまめに休憩を取りながら、くれぐれも無理せず、赤ちゃん優先のスケジュールと車内環境を心掛けてください。

(文:今井明子/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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