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2021年01月09日 18:15 更新

【医師監修】エンテロウイルス感染症って、どんな病気? 手足口病などとの関係は?

腸で増殖するウイルスの総称であるエンテロウイルス。手足口病やヘルパンギーナといった“子供の夏かぜ”の原因になります。また、かつては小児麻痺の原因として恐れられていたポリオウイルスもエンテロウイルスの一種です。

エンテロウイルス感染症って、どんな病気?

エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる感染症の疑いがあり熱を確認する子供
Lazy dummy

エンテロウイルスって、何?

エンテロウイルスの「エンテロ」は英語で「腸の」という意味です。つまりエンテロウイルスとは、主に腸の中で増殖するウイルス群のことで、「腸管ウイルス」とも呼ばれています。

エンテロウイルスに属するウイルスには、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、、ポリオウイルスなどがあります。エンテロウイルスは腸などの限られた範囲にいる場合、多くは特に症状が現れません。

しかしウイルスが増殖し体の中に広がると、さまざまな病気を引き起こします。

エンテロウイルスは口を介して人に感染していく

エンテロウイルス属のウイルス(ライノウイルスを除く)の感染経路は、経口(糞口)感染、飛沫感染、接触感染などです。

経口(糞口)感染とは、病原体を含む水や食べ物を口にすることで感染する経路です。普通、口から体に入った病原体の多くは胃の中で強力な胃酸によって退治されるのですが、エンテロウイルスの仲間は酸に強く、経口でも感染します。

ただしエンテロウイルス属の中でもライノウイルスは酸に弱いため、経口ではなく飛沫と接触により感染します。

飛沫感染とは、咳やくしゃみ、会話などによって口から飛んだ病原体(ウイルスなど)を含む飛沫により感染することです。飛沫が飛ぶ距離より離れていれば(おおむね2メートル)感染する可能性は低くなります。

接触感染とは、ウイルスが手などに付着したまま口や鼻に触れることにより感染することです。エンテロウイルス属による感染症は、感染しても症状が現れない場合(不顕性感染)が多いと言われていますが、不顕性感染であってもウイルスは体外に排出され、人へ感染します。

子供の手足口病の原因。髄膜炎や脳炎などが起きることも

エンテロウイルス属のウイルスによって起こる子供に多い病気には、以下のようなものがあります。

・非特異的発熱

子供の夏かぜの原因の多くがエンテロウイルス属のウイルスです。「非特異的」とは「際立った特徴はない」という意味で、発熱とともに乳児では哺乳量が減ったり不機嫌になったり、時に吐いたり下痢をします。発疹が現れることもあります。通常は数日で軽快します。

・ヘルパンギーナ

やはり子供の夏かぜの一つで、主な原因ウイルスはコクサッキーウイルスです。発熱とともに、のどに水疱(水ぶくれ)やアフタ(潰瘍)が現れます。のどの痛みのために食欲が落ちたり、よだれがあふれたりします。

通常は数日で熱が引き、のどの症状も治まる予後の良い病気ですが、痛みのために食べ物を食べられないときには脱水に注意が必要です。

・手足口病

同じく子供の夏かぜの一つで、主な原因ウイルスはコクサッキーウイルスやエンテロウイルスです。発熱とともに、手のひらや足のうら、口の中に水疱が現れます。1週間~10日ほど[*1]で自然に治りますが、のどの痛みのために十分食べられないときには脱水に注意が必要です。

・急性出血性結膜炎

結膜(眼球とまぶたをつないでいる膜。白目の部分)に出血性の炎症が急に起き、真っ赤に充血する病気です。エンテロウイルスとコクサッキーウイルスが原因です。出血は時間とともに引いていきます。

・無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)

髄膜炎とは、脳と脊髄を包んでいる膜状の組織「髄膜」に起きる炎症のことです。細菌やウイルスなどの感染がその原因となります。このうち細菌が原因ではないものを無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)と呼びます。

発熱や頭痛、吐き気などに始まり、痛みのために首を曲げられなくなるなどの症状が現れます。ウイルス性の場合、一般に細菌性髄膜炎よりも軽症で済み、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスによるものでは1週間~10日ほどで多くは後遺症なく軽快します[*2]。

ただしまれに脳炎を起こし重症化すると後遺症が残ることがあります。エンテロウイルスによるものも含め無菌性髄膜炎は通年見られますが、夏から秋にかけて増加する傾向にあるようです。

・熱性けいれん

髄膜炎や脳炎などによるけいれんではなく、発熱に伴って起こるけいれんのことを熱性けいれんと言います。乳幼児の熱性けいれんは冬と夏に多く、夏はコクサッキーウイルスの感染によるものが多いです。

熱性けいれんは長くても数分で治まります。6歳以下に多く、大部分は後遺症なく治りますが、けいれんが長引いたり繰り返したりする場合は、てんかんと診断されることがあります。

・エンテロウイルスD68感染症

少し前まで単なるかぜの一つと考えられていた病気ですが、近年、子供に呼吸不全や肺炎を起こしたり、手足のまひが残るというポリオに似た症状を伴うことがある(急性弛緩性麻痺)と報告され、注意され始めている感染症です。

・ライノウイルス感染症

主に春と秋にかかるかぜです。のどの痛みやせき、鼻水、くしゃみなど、いわゆる“鼻かぜ”で治まり、通常は発熱しません。子供だけでなく大人もかかることがあります。

・ポリオウイルス感染症

急性灰白髄炎(いわゆる小児麻痺)のことです。ワクチンが普及し世界から根絶されつつあり、国内では昭和55年を最後に新たな感染は起きていません。

・そのほかの影響

コクサッキーウイルスやエコーウイルスの感染で、心筋炎(心臓の筋肉の炎症)や心膜炎(心臓を包んでいる膜に起こる炎症)が起こることがあり、生命に危険が及んだり、回復後も心不全などの後遺症が残ることがあります。

そのほか、生後まもない赤ちゃんにエンテロウイルス属のウイルスが感染し、敗血症様疾患や肝炎、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎といった病気を引き起こして、命にかかわったり長期間の治療が必要になることがあります。

エンテロウイルス感染症に似た病気、混同しやすい感染症

症状が似ている病気~かぜ様症状、水疱、結膜炎、髄膜炎

エンテロウイルス属のウイルス感染に多い、いわゆるかぜ症状を引き起こす病原体は他にもたくさんあります。その多くは、RSウイルスやインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどのウイルスですが、A群溶血性連鎖球菌という細菌もあります。細菌性のかぜでは治療に抗菌薬が使われますが、ウイルス性のかぜではインフルエンザを除いて、対症療法が主体になります。

ヘルパンギーナの主な症状は、口の中に水ぶくれや潰瘍ができることですが、これはヘルペス、アフタ性口内炎、手足口病などと似ています。

手足口病では、水ぶくれや潰瘍が口の中以外に手足にもできる症状がヘルペス、アフタ性口内炎、水ぼうそう(水痘)、水いぼ(伝染性軟属腫)、ヘルパンギーナなどに似ています。これらのうち、ヘルペスに対しては治療に抗ウイルス薬が使われます。

また急性出血性結膜炎の症状である充血は、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(はやり目)などでも起こります。無菌性髄膜炎は、重症になりやすい細菌性髄膜炎、あるいはその他の原因(例えば真菌)によるものとの鑑別が重要で、髄液などの検査をして調べます。

エンテロウイルスには多くの種類があって症状もさまざま

エンテロウイルス属のウイルスは数多くあり、これらによって引き起こされる病気は、発熱、ヘルパンギーナ、手足口病、出血性結膜炎、無菌性髄膜炎など多岐にわたります。

また、同じウイルスが異なる症状を起こしたり、逆に別のウイルスなのに同じような症状を起こすことがあって、症状だけで原因ウイルスを特定するのは難しいことが少なくありません。

エンテロウイルスに感染したときの治療と、感染した時の注意点

感染から発症までの潜伏期間と、ウイルスの排出期間

エンテロウイルス群のウイルスは、感染してから発症するまで3~6日ほどの潜伏期間があります[*3]。ただし急性出血性結膜炎は1~3日とやや短く、ライノウイルス感染症も1~4日ほどと言われています[*4]。

なお、感染後にエンテロウイルスやコクサッキーウイルスはせきや鼻水から1~2週間、便からは数週間~数ヶ月間、排出され続けます。ライノウイルスは1週間~10日、排泄が続きます[*5]。

治療では対症療法が中心になる

エンテロウイルス群のウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。そのため感染した時は対症療法を行います。対症療法とは、現れた症状ごとに治療を進めることで、例えば、のどの痛みに対して抗炎症薬を使うといったことです 。

ただ、エンテロウイルスによる病気をこじらせて細菌にも感染することで(二次感染)、気管支炎や肺炎、副鼻腔炎などになることがあり、その場合は抗菌薬が使われます。

二次感染とは、最初に感染した病原菌とは別の病原菌に感染することで、例えばかぜをひきのどの粘膜が傷んでいると細菌の二次感染を起こすことがあります。

いつから登園・登校を再開していいの?

ライノウイルス感染症では、せきが治まり体調的に問題がなければ登園・登校して支障ありません。

ヘルパンギーナや手足口病ではウイルスが排出される期間が長いことから、その間ずっと出席を控えることは現実的ではなく、解熱して24時間が経過して体調的に問題なければ登園・登校可能です。ただし、手洗い(特に排便後)を励行するようにします。

急性出血性結膜炎では症状が改善してからも感染力が続く場合があるので、医師が許可するまで登園・登校を控えてください。

無菌性髄膜炎では、体調的に問題なければ登園・登校可能です。

予防のために日常生活でできること

エンテロウイルス属のうち、ポリオウイルス以外のウイルスに対するワクチンは残念ながらまだありません。

エンテロウイルス属による感染症予防でも、手洗いとマスクの着用は大切です。エンテロウイルスやコクサッキーウイルスは症状が消失した後も数ヶ月間、便とともにウイルスが排出されることがあるため、手洗いは特に重要になります。

まとめ

エンテロウイルス属に属するウイルスは数多くあり、それによる感染症の種類もさまざまです。多くは自然に治る予後の良い病気ですが、赤ちゃんや子供では時に重症になることがあり、注意が必要です。また、治ったあともしばらくの間は、ほかの人、ほかの子供へ感染させないように配慮するようにしましょう。

(文:久保秀実、監修:武井智昭先生)

参考文献
[*1]医学書院「標準皮膚科学」478p
[*2]医学書院「標準微生物学」409p
[*3]東京医学社「小児感染症マニュアル2017」364p
[*4]医学書院「標準微生物学」409p
[*5]日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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