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2024年01月02日 11:30 更新

“白魔法”と“黒魔法”で、子どもに「言葉の大切さ」を知ってほしい|五百田達成さんインタビュー

友だちと口喧嘩が絶えない、家族にキツい言葉を投げかける……そんな子どもの「言葉」に関する悩みを持つ親御さんは少なくないでしょう。また、自分の気持ちをうまく表現できない、慣れない相手とはうまく会話ができない、という子も。 上手に言葉にして伝えるのは大人でも難しいものですが、子どもにはどう教えてあげればいいのでしょうか。

今回は『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で心理カウンセラーの五百田 達成(いおた・たつなり)さんに、「言葉のコミュニケーション」についてお聞きしました。

“話し方のプロ”が教える自分の気持ちの伝え方とは……!?

五百田達成さん

「コミュニケーションは大事」はなぜ?

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――まず初めにお聞きしたいのが「子どものコミュニケーション力」についてです。コミュニケーションは大事だ、とはよく言われることですが、これにはどのような理由があるのでしょうか。
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五百田 達成さん(以下、五百田) 光合成などをして自分単独で生きられる存在ならば、別にコミュニケーションなんかいらないですよね。一方、人は普通に生きていたらほかの人と関わって生きていかざるを得ない「社会的な動物」です。だから、コミュニケーションは必要だし、大切なんです。

コミュニケーションは「生きる力」

五百田 お母さん・お父さんたちに「お子さんにどういう人になってほしいか」を聞くと、「強い子になってほしい」とか、「人とうまくやってほしい」「人気者になってほしい」などと答える方が多くいます。つまりこれは、お子さんに「コミュニケーションをうまく取って、社会の中で人とつながっていってほしい」と期待しているからではないでしょうか。

コミュニケーションは生きている誰にとっても大切なもの。「コミュニケーションは生きる力」だと、思っています。

言葉にせず「察して」だけじゃ解決しない!?

応用の白魔法「あのね」
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『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』より

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――そんな大切なコミュニケーション力ですが、話すのが苦手で、自分の気持ちをうまく言葉にできずにいる子も少なくありません。そういうケースでは表情や様子から周囲が察してあげたりもしますが、お互いにストレスが募ることも……。言葉にすることの大切さは、どのように捉えればいいのでしょうか。
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五百田 コミュニケーションにはいろいろなものがあります。たとえば、笑顔で頷き合うのもコミュニケーションですし、お互いの話しぶりや表情、手つき、行動から伝わりあうのもコミュニケーションです。もちろん、おしゃべりするのもコミュニケーションですね。

その中でも、一番の基本は言葉で話すこと。誰もができるコミュニケーションで、「話すなんて簡単だ」と軽視されやすいですが、基本的だからこそ大事なんです。

良くも悪くもなる、言葉の持つ大きな影響力

五百田 話すのが苦手だとしても、それ自体はいけないことだというわけではないです。

ただ、知らない人の中にいてお腹がすいても黙っていたら誰にも伝わらない。「お腹がすいた」と言って初めて「そうだったんだ、お腹がすいてたんだね」とパンをくれる人が現れるかもしれない。

そういうふうに言葉って気持ちの表れなんだ、と考えてみるといいかもしれません。

言葉というアイテム、言葉という魔法はすごく良いことにもなるし、すごく悪いことにもなる。大きな影響力を持つものなんだよ。色んな子どもたちに、そう思ってもらえたらうれしいです。

まずは思っていることを言葉にしよう

応用の白魔法「わたしは〜と思う」
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『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』より

五百田 たとえば、一見“あうんの呼吸”で通じ合っていそうな夫婦も、実際は通じ合っていないことがよくあると思うんです。「おい、あれ」と言われてわかったような気でいても、実は求められていないことをやってしまう……そんなこと、ありますよね。やっぱり察してもらうんじゃなくて言葉にして伝えないと、ちゃんと伝わりにくい

僕には「人と人は言語化すれば、話し合えばわかり合えるはずだ」という信念があります。

もちろん言語化できないものもあるし、すべてをロジカルに説明できるわけではない。すべてを言語化したら世界が平和になる、なんていうのも幻想だとは思います。

でも、スムーズにコミュニケーションを取るためには、まずは思っていることを言葉にしようよ、って子どもたちにも伝えたいですね。

「言葉選び」は難しい?

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――短文でのやり取りが増える昨今では、言葉でのコミュニケーションに関しても「そんな細かいこと考えなくていいじゃん」「ざっくり伝わればいいでしょ」と思う子も増えているように思えますが、どうでしょうか?
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五百田 SNSやゲーム、チャットなどで「ざっくりと伝わればいい」というのもそれはそうなんですが、一方で、言葉の意図が正しく伝わらず人と行き違いになることはよくあること。また、良くない言葉を投げかけてもめることもあります。

言葉の感度繊細な響きへの敏感さは、テキストコミュニケーションが増えた現代の子どもにこそ持ってほしいセンスかもしれません。

「バカ」と言う前に考えたいこと

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――「サイアク」「死ね」「バカ」など、オンラインゲーム中などの暴言は、親の間でもよく話題になります。
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五百田 子どもたちが「サイアク」「バカ」などと言うのは、思っていることを言葉にできてはいるけれど、人と上手に繋がっていく言葉にできているかどうかという点では、微妙でしょう。

言葉が気持ちを伝えるためのアイテムであることを、子どもも大人もあまり意識していないですよね。言葉を発する前に、「自分の言葉が相手を傷つけるかもしれない」「自分が言ったことで誤解されるかもしれない」と考えてみることは大事です。

人に嫌われやすい言葉を知る

禁断の黒魔法「バカ・アホ」
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『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』より

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――著書『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』では、友だちとコミュニケーションが取れて好かれる言葉を“白魔術”、友だちに嫌われやすい言葉を“黒魔法”と表現して具体例を挙げていますが、あえて『嫌われる言葉』も紹介したのはなぜでしょうか。
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五百田 コミュニケーションに役立つ“白魔法”として挙げた、「ありがとう」「ごめんなさい」「いいね!」などの言葉ももちろん大事ですが、「バカ・アホ」「うんこ」「キモい」といった、人に嫌われやすい“黒魔法”の言葉を知っておくと、「なんかこういうのは良くないんだな」と気づくきっかけになるんじゃないでしょうか。

相手に伝わるように自分の気持を上手に話す

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――子どもの場合、頭では“黒魔法”の言葉を「言ったらまずそう」とわかっていても、投げやりになってしまった時などについ言ってしまうこともありそうです。そういう子にはどうしたらいいのでしょうか?
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五百田 “黒魔法”の言葉を口にする前に、言い換えようとしたり、その言葉を投げかける代わりにどうしたらいいか相手と一緒に考えてみるといいと思います。

たとえば「なんでもいい」という言葉は、相手のやる気をなくしてしまう“黒魔法”の言葉です。この言葉を言いたくなったら、相手に「なんでもいい」と丸投げにするんじゃなくて、相手にコミットして「どうしよっか」「なにがいいかなあ」という言葉に言い換え、一緒に考えられるといいですね。

禁断の黒魔法「なんでもいい」
食べたいものが特にない、遊びに行きたいところが思いつかない……。そんなときにはつい「なんでもいい」と言ってしまいがち。
「ん? なんでもいいよ」「どこでもいい」
この言葉を聞くと相手は、がくっとやる気がなくなります。まるできみが「そんなに楽しみじゃないよ」「盛上がってるのはそっちだけですよ」と言っているように聞こえるからです。
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『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』より

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――一歩引いて相手の気持ちを考え、どんな言葉にするかを考えることは、子どもだけではなく大人にも大切ですね。
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五百田 そうですね。

相手に伝わるように自分の気持を上手に話すことはとても難しい。それは、子どもだけじゃなく大人も同じで、むしろ大人でも思ってもいないことを口にして、相手に誤解されて終わることはよくあります。

「ありがとうと言ったほうがいい」とか、「こんにちはと言ったほうがいいのはなぜか」とか、大人は大人に教えない。大人になると子どものころのように、“言った方がいい言葉” “言わない方がいい言葉”を人から教えてもらえる機会はなかなかないんです。だからこそ、「コミュニケーションが取りやすくなる“白魔法”の言葉」「言ったらコミュニケーションに悪い影響を与える“黒魔法”の言葉」のことを、子どもとともに大人にも改めて考え、学んでほしいですね。

(解説:五百田達成、取材・文/大崎典子、書籍イラスト:ナポリ)

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