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2023年12月10日 10:00 更新

たくさん本を読む子どもは理解力や読解力が高い傾向、さらに自分への自信や将来の目標も抱きやすい

読書は子どもの能力の向上にも良いというイメージが強いですよね。しかし、実際のところはどうなのでしょうか? そこで今回は、ベネッセ教育総合研究所が行った「子どもの生活と学びに関する親子調査」の分析をもとに、読書量が子どもの理解力や思考力、あるいは将来の目標などに影響するのかを考えていきます。

約2万組の親子を対象にした横断調査をもとに、読書の実態を分析

「子どもの生活と学びに関する親子調査」はベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所が共同で実施しているもので、2015~2022年にかけて同じ親子2万組を対象に行った7年間の追跡調査となっています。この調査結果をもとに、さらにベネッセ教育総合研究所は、子どもたちの読書行動に関するデータをまとめ、「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」を発表しました。

本記事ではその中から、読書量が子どもたちの文化体験や能力、将来の目標などとのかかわりを調べたデータをご紹介します。

読書量と、1年間の活動との関係

まず、読書量によって文化体験をしたり、将来のことを考えたり、調べごとをしたりする行動に違いはあるかを見てみましょう。「この1年間で次のようなことを経験したか」を尋ねた結果を学校段階別・読書量別に分析したグラフが次の通りです。

これを見ると、不読層のグループに比べ多読層のグループは、「美術館や博物館に行く」「自分の進路(将来)について深く考える」「疑問に思ったことを自分で深く調べる」「無理だと思うようなことに挑戦する」を経験した割合が多いことがわかります。

不読層と多読層で最も大きな差がみられるのが、小学4年生~6年生の「疑問に思ったことを自分で深く調べる」です。多読層は不読層の約1.9倍となっています。本を読みさまざまな情報や知識、価値観に触れることで疑問をもつ機会が増えたり、ものごとに対する好奇心が強まったりすると想像できますが、年齢が若いほど読書の影響は強く出やすいのかもしれません。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

読書量と、思考力・読解力・文章力の関係

次に、読書量と子どもたちが得意としていることとの関連を見ていきます。「あなたは次のようなことが得意か苦手か」を聞いた結果を同様に学校段階別・読書量別で分析したところ、「図や表(グラフ)を見て理解すること」「論理的に(筋道を立てて)考えること」「長い文章を読んで理解すること」「自分の考えを文章にまとめること」のいずれにおいても、多読層の子どもは不読層に比べて「得意」と回答した割合が多くなっています。

高校生では読書量による大きな違いは見られませんが、小中学生においては、特に「論理的に考えること」「長い文章を読んで理解すること」「自分の考えを文章にまとめること」では、読書量で差があらわれています。

「論理的に考えること」は小学4年生~6年生の場合、多読層が不読層の約1.9倍、中学生で約1.7倍となっています。同様に「長い文章を読んで理解すること」は小学4年生~6年生で約2.5倍、中学生で約2.1倍の差があり、「自分の考えを文章にまとめること」では、小学4年生~6年生で約1.8倍の差、中学生で約1.6倍の差がありました。

読書で日頃からさまざまな言葉や表現に親しんでいる多読層の子どもたちは、自然と読解力や文章で表現する力が培われていると言えるでしょう。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

読書量と、社会への関心や将来の目標との関係

最後に、読書量と社会への関心や自分への自信、将来の目標との関連についてご紹介しましょう。

「社会の出来事やニュースへの関心が強い」「自分に自信がある」「将来の目標がはっきりしている」「将来なりたい職業がある」と回答した人を学校段階別・読書量別で分けたところ、それほど大きな開きは見られませんでした。

ただ、不読層の子どもは中読層や多読層の子どもに比べて、やはりいずれの項目でも比較的、低い傾向があるといえます。ニュースへの関心や将来の目標といったことは読書行動だけが影響しているわけではないと思われますが、読書によってさまざまなことに興味・関心を持つことで広い世界を知り、それが新たな夢や目標につながるということはあるでしょう。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

まとめ

今回は、読書体験が子どもにもたらす効果の可能性について見てきました。調査の結果、やはりより多くの読書体験をもつ子どもは、思考や関心、また自己表現などの能力が高く、それが自信にもつながりやすいことがうかがえました。読書は自分の知らない世界を知ったり、知りたかったことをより深く知るきっかけになります。また、それを機会にもっと違う世界への興味の扉を開いてくれることもあります。そうした体験から、子どもたちはさまざまな能力を身につけることもできますし、新たな夢などを抱くこともあるでしょう。何より読書体験は楽しいものです。1日の読書時間「0分」という子どもが少しでも本に興味を持って、読書を楽しむ機会が増えるといいと思います。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

【分析データ】
「子どもの生活と学びに関する親子調査」
調査テーマ:子どもの生活と学習に関する意識と実態(子ども調査)/保護者の子育て・教育に関する意識と実態(保護者調査)……同一の親子を対象に2015年から継続して追跡する縦断調査
調査対象:各回ともに約2万組の親子の調査モニターに依頼
調査時期:2015年~2022年の各年7~9月

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