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2023年09月30日 07:07 更新

<汐見先生 前編>「恥ずかしい」という感覚、大人が教える必要はある?お漏らしが続く子へかけるべき言葉とは

わたしたちはいろいろな感覚を持って生活していますが、その一つに「恥ずかしさ」があります。自由奔放な幼い子どもとは無縁なようですが、実は生きていく上では大切なことのようです。

「恥ずかしいという感覚」について、絵本『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』の監修者で東京大学名誉教授の汐見稔幸先生にお話をうかがいました。

大事にしたい「恥ずかしい」感覚とは?

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――『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』の中では、汐見先生は“「恥」の感覚は、自分たちの社会で暮らす上で、とても大事なもの”とおっしゃっています。この「恥の感覚」についてお聞かせください。

我が家の3歳の娘が、家ではお漏らしをしないのに、幼稚園ではよくお漏らしをします。娘はそのことを恥ずかしいとは思ってないようですが、「恥ずかしい」という感覚は自然に身についていくものなんでしょうか? それとも、大人が「お漏らししたら恥ずかしいよ」と伝えなければいけないのでしょうか?

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3歳の女の子
※画像はイメージです

まず、お漏らしをすることを「恥ずかしいからやめなさい」というのは、やめたほうがいいです。もっとお漏らしするようになるかもしれませんよ。

家ではお漏らしをしないのに園ではしてしまうのは、子どもは家にいるときよりも園ではずっと緊張しているからかもしれません。緊張とは、「心のエネルギーを使っている」ということです。

心のエネルギーというものは、ひとつのほうにしか向かないのが人間の特質です。園では「みんながやっているから、わたしもやらなきゃいけない」とか「先生が何か言ってるから、聞かなきゃいけない」とか、そちらのほうに心のエネルギーを注いでいます。そうすると「あ、おしっこ」と気づくのがどうしても遅くなりますから、思ったときには出ちゃった……ということが起こるわけです。

これは、本人がサボっているわけではなく、お漏らしをしてもいいと思っているわけでもありません。

4歳半から5歳ごろには、2つ物事が起きても脳の中でぱっと切り替えられる力が増してきます。遊びや会話などに向けている注意をうまく切り替えられるようになれば、自然とお漏らしはしなくなります。

また、5歳くらいになると、「わたしのことを人がどう見ているか」ということに注意が向くようになります。「わたしが変なことをしたり恥ずかしいことをしたりしていると、わたし自身が嫌だ」と思うようになる心が育ってくるのです。そうすると、できるだけおしっこを漏らさないようにしようと思うほうに気持ちが向いていきます。

この気持ちが育っていないうちに「お漏らししたら恥ずかしいよ」と言うと、子どもは必要以上に神経質になってしまいます。だから、漏らしても「そういうときもあるよ。そのうち漏らさなくなるから、気にしない気にしない!」と言うほうが、子どもにとってもいいでしょう。

一方で、大事にしたい「恥ずかしい」感覚もあります。

電車と子供
※画像はイメージです

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――「大事な恥ずかしさ」とは、具体的にはどのようなものなのですか?
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お漏らししてしまった時のような、隠したいことを知られてしまった場合は、過度に恥ずかしがる必要はないと思っています。

一方で、私のいう「大事な恥の感覚」というのは、社会的な守るべきものを守れないでいる、あるべき姿が身についていない「恥ずかしさ」です。

例えば、電車に妊婦さんや老人、ハンディキャップがある人などが目の前に立っていても、誰も席を譲らないでいるという状況。赤信号で止まるといったルールは守るけれど、法的拘束はないものの“社会的には最低限したほうがいい振る舞い”が身についていないことに対して「恥ずかしい」と思える感覚が一番大切だと思います。

(解説:汐見稔幸先生、文・聞き手:mamaco)

Eテレの番組が絵本に! 5歳児が主人公の『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』でまずは自分の心と体について親子で学ぼう!

アイラブみーカバー

「自分を大切にできる人になってほしい!」その願いは子を持つ親共通のもの。そして、自分を大切にすることこそが性教育のはじめの一歩につながります。一方で、家庭での性教育にはハードルの高さを感じてしまいますよね。そんな親御さんたちにぴったりな本が、現在発売中の『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』です。

自分の心と体を大切にするってどういうこと?

■あらすじ
5歳の「みー」は今日も元気にお散歩中。道で出会った犬のワンまるを見て、なんで自分はパンツをはいているんだろう、と不思議に思います。
パパや、道ゆく人に聞いたり考えたりしながら、パンツをはく理由を探していくと、とある発見が......

NHK Eテレで放送中の番組「アイラブみー」のエピソード「なんでパンツをはいているんだろう?」が編集された本書は、5歳の主人公「みー」の体験を通して、自分の心と体を知り、大切にすることを一緒に学んでいける、わかりやすい絵本になっています。

巻末にある、北山ひと美先生や東京大学名誉教授汐見稔幸先生をはじめ「アイラブみー」の番組監修の先生方による解説やQ&Aは、読み応え抜群で思わずハッとするほど“気づき”にあふれています。

親子で楽しみながら「自分とは」そして「自分を大切にすることとは」ということを学び、子どもの自己肯定感を育みましょう。

『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』(新潮社)より

書籍概要

■書名:アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん
■著者:絵/オバック、文/たけむらたけし
■監修:東京大学名誉教授 汐見稔幸、和光小学校・和光幼稚園前校園長 北山ひと美 ほか
■仕様: A4 変形(196mm×193mm)、 ハードカバー、オールカラー48ページ
■価格:本体1,600円+税
■ISBN:978-4-10-355181-2
■発売日:2023年6月21日(発売中)
■発行元:新潮社

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