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2022年01月31日 11:03 更新

子育て情報をお母さん“だけ”に伝えるデメリットはこんなにある。小児科医だから伝えたいこと

子育てに関する情報の多くが、なぜかお母さん“だけ”に向けて発信されがち。「でも、それはお母さんとっても、子供にとっても、お父さんにとってもデメリットがあってよくないことなんです」と、小児科医の森戸やすみ先生。その理由とは……⁉︎

「お父さんには子供のことはわからないですよ」

(photoAC)

以前、育児書を読んでいたら、おかしなことに気づきました。それは終始、母親だけに語りかけていること。具体的には「お母さんは鼻水をとってあげてください」「心配なお母さんも多いと思いますが、大丈夫です」といった感じです。

小児医療に関わる人たちの会合でも「私はお母さん方のために〜」「お母さんたちが不安を感じるのは〜」などと、子育てに関して母親だけに向けて話しているのを耳にしたりすることは少なくありません。さらにはクリニックを受診したお父さんから「子どもの健診に夫婦で行くと、妻だけが話しかけられて」「自分(父親)だけで行くと、『お母さんはどうされたんですか?』と聞かれて驚きました」などという話を聞くこともあります。

私は、子育てに関して母親だけに向けて話す人に「保護者というのは、お母さんだけに限りません。お父さんや保護者全般にも向けて話すべきだと思います」という意見を伝えることにしています。お母さんだけでなくお父さんも同じ親ですし、また家族の形はいろいろあるので保護者が親とは限らないことも想定したほうがいいと思うのです。

ところが、そういった指摘をしても、大変残念ながら「でも、まだ実際に子育てしているのは、ほとんどがお母さんでしょう」「お父さんには子供のことはわからないですよ」などという答えが返ってくることがほとんど。「それがなぜ悪いの?」と聞かれることも多いので、この原稿に書いてみようと思ったわけです。

母親だけに子育て情報を伝えるデメリット

まず、真面目なお母さんが「私だけが子育ての責任者なんだ」と重圧を感じてしまうことがデメリットです。特に産後すぐは心身ともに疲れていて、「産後うつ」のリスクも高いのに、お母さんだけに重圧をかける必要は少しもないでしょう。お父さんも、お母さんと全く同じ「親」であることを考えたら、おかしいということは誰でもわかると思います。

次に、せっかく解消するべきものと認識され始めた性別役割分業を、「男は仕事、女は子育てと家事」といった偏見を、わざわざ強化してしまうのはよくありません。今や多くの家庭は共働きですし、家庭によって役割分担はそれぞれ。第一、たとえ家庭内に専業主婦または専業主夫がいたとしても、子育ては主婦や主夫だけの仕事ではありません。両親がいるならば、その両方の仕事でしょう。そういった偏見を、未来のある子供に刷り込まないことも大事だと思います。

さらに子供にとっては、家庭内に自分の成長や体のことを知っている保護者が複数いたほうが安心です。両親はもちろんですが、さらにいえば多くの大人が子育てに関わったほうが、万が一の体調不良や怪我、災害などがあった時にも助かるのは間違いありません。お母さんしか子供のことがわからないのでは、お母さんの不在時や体調不良時にも明らかに困りますね。

もちろん、お父さんも、お母さんだけに語りかけられたりすると、存在を無視されるようで嫌なことでしょう。私は子育てをしているお父さんたちに失礼だと思います。今では、多くのお父さんが当たり前に子育てしているのです。私がクリニックや健診会場でお会いするお父さんは、ここ10年ほど増える一方ですし、みなさんがお子さんの食事量や体重などをきちんと把握されているのです。私は必ず、お父さんとお母さん、保護者のみなさんに同じように接したいと思っています。

父親はもちろん、保護者全般へ語りかけて

一方で、子育てに関して、母親だけに語りかけるメリットは一つも思い当たりません。メリットはなく、むしろデメリットだけがたくさんあることを続ける必要はないでしょう。ですから、なぜ「子育て情報は、お母さんだけに向けて発信するべき」ということに固執する人がいるか全く意味がわからないのです。

むしろ、母親の負担を減らすためにも、子供のためにも、父親のためにも、意識的に父親や保護者全般へも向けて発信したほうがいいでしょう。一般のみなさんもですが、特にマスコミの方や医療や子育て支援に関わっている方(医師、助産師、保健師など)には、お母さん限定で子育て情報を発信しないようにしていただけたらいいなと思います。

最後に「私が寒い思いをさせたから風邪をひいてしまって」などと、子供に何かがあると自責の念にかられるお母さんもいるのですが、でも、風邪をひくのはウイルスや細菌などのせいであって、お母さんのせいではありません。私も子供に起こる何もかもに責任を感じた時期がありましたが、それは「お母さんだけが子育ての責任者だ」という刷り込み、世間からの重圧があったせいだと思います。「お母さんだから我慢しないと、責任を取らないと」と思いすぎないようにしましょう。お父さんや他の人と分かち合ってくださいね。

(編集協力:大西まお)

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