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2022年02月07日 07:00 更新

それもこれも親のせい? 軽々しく「愛情不足じゃない?」と言わないで。 小児科医の提言

子供に何か問題があると「愛情不足じゃない?」などと言う人がいます。でも、何もかも親のせいにできる「愛情不足」という言葉を安易に使わないほうがいいと、森戸先生。ただでさえ親は子に何かあるとつらい気持ちになるからですが、ほかにも理由があって……。

「お母さん、もっと抱きしめてあげて」と言われ唖然

(photoAC)

「それは愛情不足じゃない? もっと子供に目を向けてあげて」

こんな言葉をかけられたことはありませんか?  

じつは、私は見知らぬ人から似たようなことを言われた経験があります。昔、テーマパークで一日中たっぷり遊んだ帰りの電車で、まだ幼かった娘が疲れて眠くなり、泣き出したことがありました。すると高齢の女性が近づいてきて、私に「お母さん、もっと抱きしめてあげて」と言ったのです。娘は、私が抱きしめて愛情を示さなかったからではなく、遊びすぎて疲れて眠いから泣いていたので、本当に唖然としました。

とても嫌なことですが、このように子供のことで何らかの不都合があると、「親の愛情不足」が原因かのようにいわれがちです。よく泣くとか、おしゃぶりやオムツが取れないとか、おねしょをするとか、落ち着きがないとか、発達障害があるとか、風邪をひきやすいとか……、ことあるごとになんの根拠もなく愛情不足だといわれることがあります。

ただでさえ親は、子供によくないことがあると心配して胸を痛めたり、自責の念にかられたりしてつらい思いをするのに、本当に余計なお世話です。直接は言われないまでも、例えば子供の落ち着きのなさが気になる時に、何かの記事などで「落ち着きがないのは愛情不足」などと書かれているのを読んでしまうと、つらい気持ちになりますよね。

また、「愛情不足」という言葉には、子供は親が育てたとおりになるものだという驕りがあると思うのは深読みしすぎでしょうか?「性格の明るい子に育てたい」「勉強が得意な子供にしたい」と思っても、本来の子供の性質を変えることはできません。子どもが、大人にとって都合のいい造形物でも所有物でもないのは明らかです。いくら愛情があっても大人の望むような子供にはならないでしょう。

本当に愛情が不足しているなら支援が必要

それにしても、愛情不足というのは、あらゆることを全て親のせいにするために、なんて便利な言葉でしょうか。何しろ愛情は目に見えないので、他人に不足していると指摘されれば、全く根拠がなくても、親は子供を大事に思う気持ちがあるがために不安を感じてしまいかねません。

しかし、「愛情不足」と言われて心配すること自体が愛情のある証です。そして普段から子供の世話をしているなら、十分に愛情はあるでしょう。何より、子供の不都合が全て親のせいとは限りません。

さらに、本当に親が子供へ愛情を感じたり、示したりすることができない場合は、「愛情不足だから、増やしたほうがいい」と言われても意味がないどころか、逆効果です。大抵、親はしんどい状況にあるわけですから、いっそう追い詰められてしまうことになります。

なぜ親御さんがお子さんに愛情を示すことができないのか、ただ余裕がないのか、何らかの悩みを抱えているのか、心身の調子が悪いのかなどを探って、何らかの援助をするしかありません。

軽々しく「愛情不足」などと言わないよう気をつけたいですね。

(編集協力:大西まお)

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