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2021年01月09日 14:33 更新

【医師取材】ノロウイルス感染症の子供の症状とは?

ノロウイルスは、毎年、秋から冬にかけて流行し、保育園や学校などで集団感染を引き起こすこともあるウイルスです。ここでは、このノロウイルスに感染したときに、具体的にどんな症状が現れるのかをご紹介していきます。

ノロウイルス症状でお腹が痛そうな女の子
Lazy dummy

どこから感染するの!?

ノロウイルスは、感染性胃腸炎や食中毒の原因になるウイルスです。感染力が非常に強いのが特徴で、ごく少量のウイルスが体内に入っただけでも感染します。

また、ウイルスの中には、一度感染すれば、体に免疫ができて2度とかからないものもありますが、ノロウイルスには多くの遺伝子型が存在するので、何回でも感染する可能性があります。

感染のピークはいつ!?

ノロウイルスによる感染症は、年間を通して発生する可能性があります。しかし日本では、毎年11月くらいから流行し始め、12~1月頃に感染時期のピークを迎える傾向があります。これは、ノロウイルスの感染源のひとつが牡蠣(カキ)などの二枚貝であるため、これらの貝を生で食べる機会が増える時期になると、発生件数が増え始めるのだと考えられます

ノロウイルスの感染経路とは

感染力の非常に強いノロウイルス。その感染経路には、大きく分けると「人からの感染」と「食品からの感染」の2種類があります。

人からの感染

・感染した人の嘔吐物(おうとぶつ)や下痢便に触れた手指などを介して感染する。
・感染した人の嘔吐物や下痢便が床などに飛び散り、その飛沫(ひまつ)を直接吸い込むことで感染する。
・床などの飛び散った嘔吐物や下痢便の消毒が不十分だったために、残ったウイルスが乾燥して空中に舞い上がり、それを吸い込んで感染する。

食品からの感染

・ウイルスに汚染された牡蠣などの二枚貝を、生のまま、もしくは十分に加熱せずに食べることで感染する。
・ノロウイルスが付着した手、調理器具(包丁、まな板)などにより調理された食べ物を食べることで感染する。

感染力の強さが特徴

ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や便の中には、ウイルスが大量に含まれており、その数は、嘔吐物1gあたり100万個、便1gあたり100万~10億個にものぼるといわれています。しかも、ノロウイルスは、非常に感染力が強いため、そのうちの10~100個程度とごく少量を摂取しただけでも感染してしまいます。

また、ノロウイルスの症状は、通常2~3日ほどで治まりますが、発症してから3週間程度は便の中にウイルスが排出されます。このため症状が治まっても、しばらくの間は、感染するリスクが持続します。

さらにノロウイルスは、とても丈夫なウイルスで、自然の環境の中でも長期間生存でき、アルコール消毒も効きません。こうしたことから、ひとたびノロウイルスの感染者が出ると、あっという間に周囲に感染が広がってしまう可能性があるのです。

どんな症状がでるの!?

ノロウイルスの初期症状

ノロウイルス感染症の主な症状は、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢です。軽い風邪のような症状で、特別な治療をしなくても治るケースが多いのですが、子供や高齢者、体力が弱っている人は重症化することがあるので注意が必要です。また、発熱を伴うこともありますが、多くは37~38度程度で、高熱になることはあまりないようです。

子供と大人で症状は違うの!?

子供の場合は、ノロウイルスに感染して嘔吐や下痢を繰り返していると、体に必要な水分も失われてしまい、脱水症状に陥りやすいので注意が必要です。

脱水症状を防ぐために、吐き気が少し治まったら、白湯(さゆ)やお茶、赤ちゃん用のイオン飲料、経口補水液など、飲みやすいもので、こまめに水分補給をさせましょう。ただし、一気に飲ませると、吐き戻してしまう可能性があるので、少量ずつ与えるようにしてください。また、乳製品や柑橘類(かんきつるい)の果汁は、下痢を悪化させる可能性があるので、控えたほうがよいでしょう。

脱水症状がひどい場合は、病院で補液(点滴)や入院治療が必要になります。「水分がとれていない」「ぐったりしている」「おしっこの量が少ない」「泣いても涙が出ない」「唇や口の中が乾燥している」「手足が冷たい」といった場合は、脱水症状が進んでいる可能性があるので、すぐに病院を受診させましょう。

ノロウイルスの潜伏期間とは

発症までの潜伏期間

ノロウイルスは、感染してすぐに症状が現れるのではなく、1~2日ほどの潜伏期間があります。

発症からどのくらいで治るの?

ノロウイルスの症状は、通常2~3日ほどで自然に治まり、通常は後遺症も残りません。

二次感染の恐れも

このようにノロウイルスに感染しても、一般的には、短期間で症状が治まりますが、注意しなくてはならないのが、二次感染する危険性があるということです。

『どこから感染するの!?』のところでもお話しましたが、ノロウイルスの感染力は非常に強く、感染した人の嘔吐物や便に触れたり、そこから乾燥して浮遊しているものを吸い込んだりすることでも感染します。また、症状が治まってからも、しばらくは糞便中にウイルスが排出され続けるので、発症から1ヶ月くらいは、二次感染のリスクが持続すると言われています。

こうしたことから、家庭や学校の中で、ひとたび感染者が出ると、あっという間に感染が広がってしまう恐れがあるのです。

二次感染を予防するためのポイント

感染した人の嘔吐物や便を処理するときは、次のポイントに注意して、スピーディーに確実に処理するようにしましょう。

・部屋を十分に換気する。

・使い捨ての手袋やマスク、水分が染み込まないビニール製のガウンやエプロンなどを着用して処理する。

・ペーパータオルなどで、静かに汚れを包み込んで取り除いた後、次亜塩素酸(じあえんそさん)ナトリウム(塩素系の漂白剤)(塩素濃度約200ppm)で消毒してから、しっかり水拭きする。

・拭き取った汚物や使用済みの手袋などは、ビニール袋に入れてしっかり口を結び、密閉してから廃棄する。

・処理が終わったら、石鹸を使って手洗いを2回行い、うがいもする。

ノロウイルスの薬とは

ワクチンによる予防はできない

ノロウイルスの感染を予防するワクチンは、現在のところ存在しません。このため、感染を防ぐためには、しっかりと予防対策をすることが重要です。

症状緩和のために処方される場合も

ノロウイルスには、体内に侵入したウイルスを殺したり、その増殖を抑えたりする治療薬もありません。ノロウイルスの症状は、通常2~3日ほどで自然によくなるので、対処としては脱水症状や体力の消耗を防ぐための水分と栄養の補給が基本です。

また、嘔吐や下痢の症状がひどいときは、吐き気止めや整腸剤などが処方されることもあります。ただしこれらの薬は、あくまでも症状を緩和させるための対症療法として用いられるもので、病気を根本的に治せるわけではありません。

市販薬はNG

ノロウイルスに感染すると、下痢になるので、市販の下痢止め薬を使いたくなる人もいるかもしれません。しかし、急性期に下痢止め薬を使うと、ウイルスの排泄が遅れて、回復が遅くなる可能性があります。自己判断で市販薬を使用することはおすすめできません。場合によっては、医療機関で、便を固くする作用のある薬剤を処方してもらえることがあります。

まとめ

ノロウイルスは、感染力がとても強いので、お子さんが保育園などで感染してしまうと、どんなに注意をしていても、家庭内感染を防ぐのが難しいかもしれません。嘔吐物や便を処理するときに二次感染予防のポイントをしっかり守るのはもちろんですが、できるだけ十分な睡眠をとるように心がけるなど、感染に備えて、家族全員のコンディションを整えておくことも大切です。

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.06.19)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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