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2022年04月05日 16:41 更新

宿題の意味って? 無理にでもやらせるべき? 効果的な声かけも紹介!

子どもが小学生になった途端、子どもにとっても親にとっても大きな負担としてのしかかってくる「宿題」。子どもがどうしても宿題をしたがらない、泣きながら嫌がる子どもに無理強いするのは正しいの?などと、日々葛藤しているご両親も多いようです。教育研究家の平川裕貴さんが、宿題の意味と上手な付き合い方を解説します。

宿題って何のためにあるの?

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「宿題しないとあなたが困ることになるんだからね!」なーんて、子どもには言っていても、内心「この宿題、本当に意味があるの?」と疑ってしまうことも……毎日の宿題バトルから、どうしたら抜け出せるの!?

宿題とは、家庭でやるべきものとして学校から与えられる課題です。小学生の子どもを持つ多くのお母さんたちが、宿題に悩まされているのではないでしょうか。

なかには、「親が何も言わなくても自分でサッサとやっています」という羨ましいようなご両親もいるようですが、「宿題をめぐって日々子どもとバトルです」なんて言うご両親も、珍しくはないですね。

宿題の目的は? 先生や学校のねらい

宿題には、「明日持ってきなさい」という短期のものや、夏休みの宿題のように長期のものがあります。日本ではあまりないようですが、欧米などでは1週間とか2週間単位で出されるプロジェクト的な宿題もあります。

小学校で多い宿題は、教科書の音読や、漢字の書き取りや計算などのドリルです。

これらの宿題の目的は

 (1)家庭での学習習慣を身に付けさせる
 (2)学校で習ったことを定着させる
 (3)先生が子どもの評価判断材料として使う
 
と言ったところでしょうか。

(1)家庭での学習習慣を身に付けさせる

多くの子どもにとって、勉強とは、残念ながら楽しいものではありませんね。

ですから、家庭で自発的に勉強させるのはなかなか難しいことなので、学校からの課題ということで、机に向かわせようということです。それが毎日となるときっと習慣づくだろうというのが、親の希望なわけです。

(2)学校で習ったことを定着させる

子どもは1回や2回、話を聞いたくらいでは忘れてしまいますから、家で授業の内容を再度復習させて、定着させようというものです。

確かに、漢字や計算などの基礎知識は、反復することで定着していくかもしれません。でも、実際のところ、ただ義務的に宿題をこなすだけになってしまって、頭には入っていない、なんてこともあるようです。

(3)先生が子どもの評価判断材料として使う

学校での子どもの評価方法は、以前のような相対評価(集団の中の比較での評価)から、絶対評価(達成基準を満たしているかどうかで判断)に変わりました。これによって、先生にとっては子どもの評価がとても難しくなっています。単にテストの点で、上位中位下位と単純に決められないからです。

そのため、子どもの学習態度や学習意欲などを判断する材料として、宿題を利用する、というわけです。

宿題に悩む親たちの実録エピソード

さて、宿題の目的はなんとなくわかったとしても、子どもにそれを伝えても理解させるのはなかなか大変です。

現実的に、お母さんたちはどんなことで悩んでいるのでしょうか? これまで耳にした話から、典型的なものをあげてみましょう。

毎日「早く宿題しなさい」と怒るのに疲れる……

小学1年生、まだじっと机に向かって座っていられない

勉強嫌いの息子、宿題を忘れても平気のようで……

テストは満点、だから宿題はしなくてもいい?

「宿題やった!」と嘘をつく娘にどう注意すれば……

宿題を子どもにさせるにはどうすればいいの?

お母さんたちの悩みの数々、大変ですね。

宿題に関して悩んでいる親にとっては、本当にバトルみたいですが、子どもに気持ちよく宿題をさせるにはどうすればいいでしょうか?

子どもが宿題をやる気になる声かけのポイント4つ

まずは声かけの方法から考えてみましょう。

1.命令されると反抗する

人って強く命令されると反抗的になってしまう傾向がありますよね。
とくに、自分がやろうと思っていた矢先に命令されたりすると、「今やろうと思ってたのに!」と反抗的になって、わざとやろうとしなくなったりします。

ですから、ポイントとしては、

「宿題しなさい!」
「宿題ちゃんとしたの!?」

などと強い口調で言わないことです。

2.選択肢を与える

子どもも自分で選んだことなら、納得してできます。ですから、自分で選んだと思わせるのです。

そのために、選択肢を与えて、子どもに選ばせましょう。

たとえば、こんな声かけが効果的です。

「宿題、晩ご飯の前にすませてしまう?それとも、晩ご飯の後にする?」
「宿題、自分の机でする? それともここ(ダイニングテーブル)でする?」

単に「いつする?」とか「どこでする?」と言うより、選択肢を与える方が子どもには答えやすいですし、実は逃げ道を防ぐことにもなります。

ポイントは、宿題は当然するものだという前提で話すこと。

ただ、いつするか、どこでするかは子どもの自由というわけです。そうすると、子どもは、自分の意思も尊重してもらえていると感じます。

3.助けがあるという安心感を与える

 時間や場所の選択肢のほかに、もうひとつ、付け加えるといい声かけがあります。それは、安心感を与えるための声かけです。

 「宿題する時お母さんもいた方がいい? それともいなくても大丈夫?」
 「お母さん自分の仕事するけど、わからないことがあったら聞きにきてね」
 「わからないところがあれば飛ばしていいよ。あとで教えてあげるから」
 
といった言葉です。

 宿題で、わからないことがあったりすると、そこでやる気をなくしたり、嫌になってしまったりします。ですから、子どもに「わからないときは教えてもらえる」という安心感を与えると、落ち着いて宿題に向き合うことができるのです。

4.やったことを認めてあげる

宿題は、学校からの課題ですから、「やるのが当たり前」と考えてしまいがちですね。でも、クラス全員に一律に出される宿題の内容が、子どもに合っているかどうかは、また別の問題です。

子どもにとっては、もう十分わかっていることをやらされるのも苦痛だし、理解できていないことをやらされるのも苦痛です。子どもなりに我慢して頑張っているわけですから、それを認めてあげましょう。
 
早く終わったなら、「エーもうできたの?早いね」
長くかかっているなら、「丁寧にやっているのね」
漢字なら「きれいに書けたね」「昨日よりこの線きれい引けてるね」
計算なら「早いね」「こんなむずかしいのやってるの?すごい!」

頑張ったことを認めてもらえたり、褒めてもらえたら大人でもうれしいですよね。

ポイントは、わからないことやできないことがあったときに、決して叱らないこと。間違っても「こんなのもわからないのー?」なんて言ってはダメです。ていねいに教えてあげましょう。

子どもが宿題をやる気になる声かけ以外の方法4つ

次に、声かけ以外の方法を考えてみましょう

1.ルールを決めてしまう

子どもが家庭でやりたがることや楽しいことってありますよね。ゲームをするとか、お絵かきをするとか、おもちゃで遊ぶとか、本を読むとか、アニメを見るなど。

自分の好きなことをする条件として、宿題を済ませてしまうというルールを決めるのです。

ポイントは、親が一方的に決めて押し付けるのではなく、子どもと一緒に考えること。子どもが納得するようなルールにしないと、決めても守らせることが大変になって、結局、宿題バトルと同じことになってしまいます。

2.スケジュールを決めてしまう

毎日、学校から帰ったら何をするかのタイムスケジュールをある程度決めてしまいます。これはお稽古ごとなどのスケジュールもあるでしょうから、曜日ごとに決めてもいいでしょう。

これも、ポイントは、子どもと一緒に考えることです。何を先にするか、何を後回しにするかは、ある程度、子どもの希望も聞いてあげましょう。

やってみて、後でどんどん修正

3.スタンプやシールを利用する

たとえば、子どもの好きなキャラクターのノート(手帳)やカレンダーを用意します。
そして、宿題が済んだらスタンプを押していくという風にするのです。

スタンプを押すとかシールを貼るとかは、子どもにとっては楽しい行為ですし、スタンプがどんどん増えていくのも嬉しいはずです。常に目に見えるようなカレンダーなら、曜日によってご両親が交代で宿題を見るという場合でも、結果を共有しやすいという効果もあります。

4.ご褒美を用意する

宿題をするのは当然ですから、それにご褒美なんて必要ないという考えもあるでしょうが、頑張ったことのご褒美は、大人でも嬉しいものです。

まあ、マイレージとか、必要なものを買ってもポイントが貯まるとか、大人の世界でも、インセンティブって活用されていますよね。

1ヶ月単位でも、半年や1年単位でも、何かご褒美をあげるというのも効果があるかもしれません。先のスタンプやシールがいくつ貯まったら、ということでもいいですね。

効果は子どもの性格や気質などによってちがう

これらの方法は、子どもの性格や気質、また、得意不得意などによって、効果がちがってくると思いますから、いろいろ試してみるといいでしょう。

習慣づけができてしまえば、必要なくなります。学年が上がれば、ご褒美なども欲しがらなくなるでしょう。

宿題がどうしても終わらないときはどうする?

いろいろ試したけど、やっぱり宿題をやらない。どんなに言い聞かせても、結局、宿題が終わらないというような場合もあるかもしれません。

そんなときは、どうしたらいいのでしょうか?

宿題は絶対的なものではありません!

私自身は、実は放っておいていいと思っています。その理由をお話しましょう。
 
宿題は絶対的なものと思われているかもしれませんが、そうではありません。とくに欧米では、授業内容は先生に任されていますから、宿題を出さない先生もたくさんいます。

日本でも、宿題を出さない先生や学校も、たくさんあります。宿題を提出しないと厳しく叱る先生もいれば、出さなくても何も言わない先生もいます。宿題を出しても内容までチェックされない場合もあります。

宿題は子どもにとって別に絶対必要不可欠なものというわけではないのです。

宿題は小学生にとって悪影響という研究結果も……

アメリカ・デューク大学のハリス・クーパー教授らは、小学生にとって、とくに長時間の宿題の効果は非常に少ないという研究結果[*1]を、アリゾナ大学のエッタ・クラロベック教授らは、小学生の宿題は本人の学習効果や家族関係に悪影響という研究結果[*2]を発表しています。
 
こう言った事情もあって、極端に言えば、私は、そんな宿題に、親が毎日神経をすり減らす必要はないんじゃないかと思っているのです。

大切なのは、宿題の意味に子ども本人が気づくこと

宿題をしないと本人が困ると思うから、親は口うるさく言うわけですね。親としては子どもにきちんと学習習慣をつけたり、やるべきことをさせなきゃと思うでしょう。真面目なご両親は、それは親の責任だと感じるかもしれません。

でも、私は、無理やりやらせることが大切なのではなくて、自分でやろうと思わせる、自分でやらなきゃと気づかせることが大切だと考えています。

ですから、宿題をやらなくて本人が困るなら、それはそれでいいのです。子ども自身で、そのことに気づくチャンスを与えられたのだと思うことです。

人は自分で気づかないと動けない、動かないものなのです。

もちろん、最初からあきらめてしまうのではなく、気持ちよく宿題をさせる方法をぜひ試してくださいね。

まとめ

たいていの親は、学校から帰った子どもに、先に宿題をさせようとするのではないでしょうか?イヤなことは、先に済ましてしまえば後が楽でしょというわけです。
 
でも、子どもにとっての学校は、大人にとっての会社と同じです。そこでの人間関係や仕事(勉強)をこなして帰ってくるのです。楽しいだけではない、我慢したり、悲しい、つらいと思うような出来ごとにも、出あっているでしょう。

そんな子どもの気持ちに、寄り添ってあげることも、大切なのではないかと思います。
 
たとえばあなたが会社に勤めていて、会社で終わらなかった仕事を持ち帰らなければならなかったとして、帰ってすぐそれに取り掛かりますか? 確かに先に済ませてしまった方が楽なんですけど、私ならやっぱり、ちょっとゆっくりしたいと思います。

そんなときに、「仕事しなさい!」と言われると、やっぱり反抗したくなっちゃいそうです。

さて皆さんはどうでしょうか?

参考文献
[*1] [*1]Does Homework Improve Academic Achievement? A Synthesis of Research, 1987–2003 Harris Cooper, Jorgianne Civey Robinson, Erika A Patall https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/h29danjokan-gaiyo.pdf
[*2] The end of homework: How homework disrupts families, overburdens children, and limits learning E Kralovec, J Buell - 2001 - Beacon Press https://eric.ed.gov/?id=ED450930

(文:平川裕貴/漫画:田辺ヒカリ)

※画像はイメージです

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