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2020年11月30日 13:18 更新

【弁護士監修】嫌いな姑に倍返し! 慰謝料請求や離婚、子どもとの面会拒否はできる?

今も昔も嫁姑問題は家庭内トラブルの代表。姑との関係が実質的な離婚の原因になることも少なくありません。年間300件以上の離婚案件を扱う弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生の取材協力、監修のもと、姑との関係に悩んだとき、離婚できる可能性はあるのか、慰謝料の請求は可能なのかなどを解説していきます。

嫌いな姑に倍返し! 離婚、慰謝料、孫との面会拒否……! 法的に可能なの?

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お姑さんとの折り合いが悪くて……という既婚女性は多いもの。でも、実際にお姑さんに対し、何か法的にできることはあるのでしょうか?

嫁と姑の対立は、今も昔も結婚生活の大問題。姑との関係を理由に、離婚を考える例も多いといいます。

でも、実際問題として、姑に対し、法的にできることには、どのようなものがあるでしょう?

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生の取材協力および監修のもと、くわしく解説していきます。

嫁姑問題、法律事務所にくる相談の事例

陰湿ないじめをくりかえすモンスター姑。その魔の手から逃れ、心と体の平安を取り戻すため、救いを求めて法律事務所の扉をたたいた妻たち。

まずは、そのリアルな戦いの実例を見てみましょう。

姑憎し! だけど、本当の問題はマザコン夫。特徴を知って正しく対処!

「夫は、私に対してはやさしいんです。姑の言動は許せないけど、夫婦仲は悪くないし、夫のことはやっぱり好きなんですよね。結婚生活の不満は姑がらみのことだけだから、我慢してきました。でも、私に対する姑の攻撃はエスカレートする一方なんです」と話す伸子さん(仮名、38歳)。最近では離婚を迫ってくるようになった姑に耐えきれなくなり、相談に訪れました。

マザコン夫の特徴とは?

離婚にはためらいもある様子の伸子さんですが、ちょっと待って。姑から守ってくれっていない彼って本当にやさしいの?本当は優柔不断なだけのマザコン夫なのでは?

●マザコン夫の特徴

・姑の言動をかばう。いつだって姑側に立ち、姑の味方をする。
・建設的な意見がないので、妻と話し合いながら自分たちの家庭を築いていくことができない。
・「自分には自分の考えがある」ふりをしているだけで、実は良し悪しの基準があいまい。だから、妻からの提案に的確な判断が下せない。
・すぐ姑に相談する。

マザコン夫との離婚は話し合いでの解決が難しい

弁護士がよくよく話を聞いてみると、伸子さんの夫は「マザコン夫の特徴」を見事に兼ね備えた、マザコン夫の典型でした。姑の言いなりのマザコン夫のケースは、残念ながら話し合いでの解決は困難。離婚に向けての調停や訴訟におよぶことがほとんどだそうです。

伸子さんが離婚という道を選択するのなら、まずは家を出て別居するべき、というのが弁護士のアドバイスでした。なぜなら、離婚裁判においては「婚姻を継続し難い事由」を満たす必要があり、「姑の過度の介入」のみでは「婚姻を継続し難い事由」としては不十分だからです。「別居」は夫婦関係が破綻している明確な実態となります。

伸子さんは、「姑の過度の介入」と「別居」の合わせ技で「婚姻を継続し難い事由」をしっかり固め、できるだけ有利な条件で離婚できるよう準備を進めることになりました。

夫が姑の意のままにあやつられ、でっちあげの理由で離婚訴訟まで!

芳恵さん(仮名、33歳)は、夫から離婚調停を申し立てられ、相談に訪れました。

「たしかに、姑の陰湿ないじめから守ってくれない夫のマザコンっぷりを非難する口げんかをしたことはありました。でも、基本的に夫とは仲がよかったし、わたしたちには子どももいます。離婚なんて……」

芳恵さんに別れる意思はありませんでしたが、事態は驚きの展開へ。

調停不成立から訴訟へ

芳恵さんと夫の過去の口げんかの証拠をつかんだ姑はこれを巧みに利用し、芳恵さんとは別れるよう、うまく夫を言いくるめていました。夫は、芳恵さんと子どもよりも姑をとることを宣言、芳恵さんたちには家を出ていくよう命じ、離婚調停の申し立てを行ったというわけです。夫に離婚の意思がないことを信じる芳恵さんは調停では離婚に応じず、調停は不成立に。

姑の工作はとどまるところを知りません。夫はさらに離婚訴訟を提起してきました。

しかも、訴状にあげられた離婚原因は事実と真逆で、離婚原因はすべて芳恵さんにあるというでっちあげ。具体的かつ詳細な芳恵さんの主張に勝てるはずもなく、裁判は夫側の敗訴となりました。

理不尽な相手だからこそ冷静な対応を

相手が理不尽であればあるほど、逆にこちらからは、具体的かつ詳細な主張を矛盾なく展開することが肝心。驚きの状況でも冷静さを失わず、相手に振り回されない強い気持ちで立ち向かった芳恵さんは、離婚を回避することができました。

同居地獄! かばってくれない夫にサヨナラ。夫と姑に慰謝料を請求したい!

夫の実家に同居の明奈さん(仮名、29歳)。はじめて会ったときから「あれ?私、お義母さんに嫌われてるのかな?」と嫌な予感はあったのですが……。

夫婦の問題に対する口出し、明奈さんに対するしつこい嫌がらせなど、ねちねち攻撃してくる姑との関係は最悪で、毎日、気持ちの休まるときがありません。姑に口ごたえしてケンカになってしまったとき、夫が味方をしてくれなかったことは、明奈さんをさらに追いこみました。別居したいと訴えても、夫は家賃や光熱費がもったいないと拒否。

「もはや離婚しかない」と法律事務所を訪れた明奈さん。夫と姑には慰謝料を請求したいと考えています。

まずは家を出て 「別居」からの離婚を目指す

明奈さんの離婚の意思は固いようですが、「婚姻を継続し難い事由」を固めるために、まずは別居が必要というのが、弁護士のアドバイス。

明奈さんにとってメインの離婚理由は「姑の過度の介入」だとしても、それだけでは民法上の離婚事由に該当する可能性は低いです。「別居」との合わせ技で「婚姻を継続し難い事由」をがっちり固め、離婚に持ち込むのが得策です。

姑から慰謝料をとるのはむずかしい

恨み骨髄の明奈さんとしては「姑からたっぷり慰謝料取ってやる!」と思っていたのですが、裁判で姑に対する慰謝料を認めさせるのは、相当困難です。離婚せざるを得ない状況に追いこんだ姑の言動が「客観的に見ても限度を超えた干渉」で、「不法行為」(他者の権利や利益を侵害する行為)と認められるレベルであると判断するに足る証拠が必要だからです。

一方、明奈さんと姑の仲を取り持つことに非協力的だった夫に対しては、慰謝料が取れる可能性あり。

姑に対する怒りはおさまらない明奈さんではありますが、勝算の低い戦いにこだわるのはやめ、慰謝料請求は夫に対してすることにしました。

ちなみに「慰謝料がっぽり」は無い

「慰謝料がっぽり」という使い古されたフレーズがありますが、裁判所は慰謝料を簡単には認めません。しかも、認めたとしても慰謝料全般の相場は100~200万円。

「慰謝料はハードルが高く、認められるケースは限定的。取れたとしてもせいぜい200万円まで」と知っておきましょう。

離婚後の面会で子供を姑に会わせたいと訴える元夫に「冗談でしょ!」

姑との不仲を理由のひとつに、離婚が成立した夏希さん(仮名、40歳)。今は月に一度の面会交流で夫と子供を会わせています。

ところが、その面会交流の際に夫が、「子どもたちを姑に会わせたい、次回は姑を連れてくる」と話したのでビックリ。夏希さんに意地悪の限りを尽くした姑の顔なんて今さら見たくないし、子供たちを会わせる気もさらさらないのに!

姑と子どもの面会は拒否できる

世の男性は総じて母親大好き。「孫に会えないなんてかわいそう」と夏希さんの元夫のように「面会交流におばあちゃんを連れてきたい」「子どもを一回実家に連れて帰りたい」と訴えるケースは多く見られます。

しかし、面会交流はパパのための権利。おばあちゃんのための権利ではありません。だから、夏希さんは、子どもと姑を会わせることを拒否できます。

「面会交流はパパのための権利」という法的根拠については弁護士から夫に説明。

夏希さんは、「もう少し子どもが大きくなってからね」「今はまだ小さいから、遠くに連れて行くのは無理」など、理由はふんわり、でもきっぱりとした態度で、姑と子どもを会わせることを拒否しました。

姑が嫌いでもう耐えられない! 離婚はできる?

頭に「離婚」の二文字が浮かんだら、何をするべきでしょう?

離婚のプロセスを正しく理解して、周到な準備を整えましょう。

姑問題のみを理由に離婚するのはむずかしい

姑問題がきっかけで夫婦仲に亀裂が生じ、離婚を考えるようになる人は多いもの。恨みは姑に向かいがちですが、離婚とはそもそも夫婦の問題であり、姑だけを理由に離婚するのは困難です。

しかし、離婚を考えるほどの状況なら、何かできることがあるはず。姑に耐えられないあなたが、離婚を決意したとき、とるべき方策を解説します。

離婚のプロセスは、協議→調停→裁判

夫も妻も「別れたい」のなら、すんなり離婚できますが、「妻は離婚したい、夫は離婚したくない」というように、双方の意向は食い違うことが多く、次のようなプロセスをたどることになります。

一方が離婚を言い出す→もう一方が離婚を拒否→話し合い(離婚協議)→話し合いでは解決しない→離婚調停→離婚調停不成立→離婚訴訟

「調停」とは裁判によらない紛争解決の手段。裁判所が二人の間に入って交互に言い分を聞き、合意を目指します。調停でも合意に至らない場合、離婚訴訟(裁判)になります。

「姑にもう耐えられない!」と離婚を考えるケースでは、夫がいわゆる「マザコン夫」であることが多く、その場合、まともな話し合いがむずかしいため、訴訟までもつれるケースが多くなります。

裁判で離婚が認められる理由5つ

民法には「法定離婚事由」つまり「離婚に相当する然るべき理由」は以下の5つであると定められており、いずれかの要件を満たさなければ、裁判で離婚は認められません。

民法770条
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

平たくいうと、裁判で離婚が認められる理由は以下の5つです。

① 不倫など不貞行為を行った
② 夫が生活費を渡さない、家出して帰って来ないなど、妻を放ったらかしにした
③ 3年以上生死がわからない
④ 重度の躁うつ病など、精神疾患が回復する見込みがない
⑤ ①~④に匹敵するレベルで夫婦生活が破綻している

条文の第一項から第四項まで「配偶者」という言葉が並んでいることからもわかるように、裁判では、配偶者(夫あるいは妻)の行為や夫婦の状態が問題となります。

つまり、基本的に姑は離婚に関しては部外者。

とはいえ、「姑問題」は、第五項「婚姻を継続し難い重大な事由」=「夫婦生活が破綻している」の理由となり得ます。ただ、姑の言動がどのくらいだったら妻のストレスになり、夫婦生活を破綻させる事由となるかは、妻の性格や夫婦の関係性によって異なります。自分では判断がむずかしいので、弁護士に相談しましょう。

離婚を成立させるには準備が大切!

姑からいわれたあんなこと、姑からされたこんなこと、1つ1つの出来事の詳細な記録を弁護士に提出できるようにしておきましょう。

弁護士は、あなたが姑から受けた仕打ちが離婚のための合理的な理由となるよう、整理してくれます。

●嫁姑トラブルを記録するときのポイント
・ノートに日記をつける
・メモの場合は日付が必要。
・ルーズリーフのようにバラバラになるものは×。
・綴じられたノートに頭から順に書く。(あとからまとめて書いたと言われないように)
・記録はできるだけ詳細に、かつシンプルに。
・実際の音声を録音できればいいが、できなくても発言なども細かく書き留める。

姑に精神的苦痛を受けた! 慰謝料請求はできる?

姑に対する慰謝料請求が認められる可能性はかなり低いといえます。

「姑からたっぷり慰謝料取りたい」という心情は理解できますが、裁判で姑に対する慰謝料を認めさせるには、たとえば離婚せざるを得ない状況に追い込んだ姑の言動が「客観的に見ても限度を超えた干渉」で、「不法行為」(他者の権利や利益を侵害する行為)と認められるレベルであると判断するに足る証拠が必要になってきます。

ただし、姑が妻が勤務する会社にあらぬ噂を流すなど、名誉権やプライバシー権の侵害にあたる行為がある場合は、慰謝料請求が認められる可能性もあります。

姑が子どもに関わることを止めたい! 面会差し止めはできる?

夫との離婚が前提であれば、可能です。

離婚後の面会交流は子どもの親のための権利であり、おばあちゃんのための権利ではありません。「面会差し止め」といった手段を講じるまでもなく、姑と子どもを会わせることは拒否できます。

姑と物理的に距離をとりたい! 法的にできることはある?

「姑さえいなければ平和なのに」

「姑の気配を感じただけでも悪寒が走る」もはや「姑恐怖症」「姑アレルギー」といった状況の人は、姑が近づくことができなくなる法的措置でもあればいいのにと考えるかもしれません。

しかし、家族の間でそれは困難。法的にどうこうはむずかしいので、別居や転居などを夫に働きかけ、あるいは自分で出ていくなど、自ら距離をとるほうが現実的です。

姑との関係に悩む人へ、弁護士からのアドバイス

この記事の執筆にあたり取材・監修に協力いただき、これまで多くのモラハラ離婚を成立させてきた中里弁護士から、姑との関係に悩む女性に向けて、アドバイスをいただきました。

弁護士に相談する前に~夫と話し合い、姑との間に入ってもらう

夫には姑と妻、双方の言い分を聞く義務があります。夫に間に入ってもらい、妻として何が不満なのか、これからどうしたいのか、あなたの希望を姑に伝えてもらいましょう。

夫は姑と話し合い、その結果を妻に伝えること。妻に不満が残る場合は、再度話し合います。(こうした経緯、話し合いの内容は文書に残しておくこと)

話し合いをくりかえしても、夫と姑とのつながりが強固で、妻の思いどおりにならないこともあります。

最終的には、この間の経緯を記録した文書を持って弁護士のもとをたずね、離婚理由に相当するか相談しましょう。とくに、妻が一方的に不満をいだいて離婚を進めるケースでは、姑側が財産分与を承諾しないということになりがちですが、弁護士が法的に適切な解決に導きます。

姑と距離を置くことを夫に提案

同居や実家の近くに住むことは、妻にとって大きなストレス。長く続くと我慢も限界に達し、離婚を決意することにもつながります。

離婚裁判では、関係修復のためにどれだけ努力したかも問われます。姑と同居しているのなら別居を、姑の近くに住んでいるのなら引越しをして行き来を減らすことを、夫に提案してみましょう。

夫が応じて姑との距離ができ、夫婦が円満ならば、離婚の必要はなくなります。夫が姑と離れることに難色を示し、妻の提案した解決方法を受け入れない場合は、そのことも離婚理由のひとつとなります。

弁護士に相談するときには、関係改善のための手をつくしたけれどもうまくいかなかったということを伝えましょう。弁護士があなたに有利な条件で離婚のアドバイスをします。

まとめ

世の中の多くの妻を悩ませる姑問題。まずは夫にきちんと相談する勇気を。「お前の考えすぎじゃないの?」などとあしらわれることもあるでしょう。でも、そのときの夫の態度は、その後を考える大きな材料となります。

どこまで真剣に向き合ってくれるのか、姑問題は夫婦の絆を試す、いいチャンスなのかもしれません。

(取材・文:暮らしのチームクレア 小川睦美/監修:中里妃沙子弁護士/漫画:ニタヨメ)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、弁護士に取材、および、その監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものです。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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