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2021年01月29日 11:08 更新

【医師監修】子供の膀胱炎とは? 原因・症状・治し方

おしっこの回数が増えたり排尿時に痛がっていたら、「膀胱炎」かもしれません。子供の病気として珍しいものではないので、どのような病気か知っておきたいものです。原因や症状、治療法や予防法などとともに紹介します。

子供の「膀胱炎」とは、どんな病気?

子供の膀胱炎
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普段、耳にすることもある「膀胱炎」ですが、まずはどんな病気かをおさらいしておきましょう。

おしっこを溜めておく「膀胱」に炎症が起こる病気

「膀胱炎」は、「膀胱」に炎症が起こる病気です。その結果、おしっこ(尿)や排尿時に異常が起こります。

尿は、「腎臓で血液から作られる」ことを知っていますか? 腎臓では、動脈の血液から老廃物や摂りすぎた塩分・水分をこしとって、尿がつくられています。腎臓でつくられた尿は、腎臓と膀胱をつなぐ「尿管」を通り、「膀胱」に一時的に溜められます。膀胱にある程度溜まったら、膀胱と体外とをつなぐ「尿道」を通って、体外へ排泄されます。

尿は便(うんち)と同じように、健康のバロメーターでもあります。尿の量、回数、色などがいつもと違うときは、何らかの病気が疑われることも。膀胱炎もそのひとつで、大人と同じように赤ちゃんや子供でも起こる病気です。

腎臓と膀胱のイメージ
Lazy dummy
腎臓と膀胱のイメージ。上に2つある、帽子をかぶったソラマメのような臓器が「腎臓」。尿は腎臓でつくられ、「尿管」を通って「膀胱」に運ばれる。膀胱にある程度溜まった尿は、「尿道」を通って排泄される

子供が膀胱炎になる原因は?

膀胱炎の原因はいくつかありますが、最も多いのは便の中などにいる大腸菌です。

多くは大腸菌などの細菌が原因

膀胱炎は、尿の出口(尿道口)から細菌などの病原体が体の中に入ることで起こります。

急性の膀胱炎では、原因のおよそ70%は大腸菌と言われています[*1]。 子供の場合は、女の子の約3~5%、男の子の1%程度が、膀胱を含めた尿の通り道(尿路)への細菌感染を経験すると言われています[*2]。 とくに女の子は尿道が短いため、男の子より尿路に細菌などが入り込みやすい傾向がありますが、2歳までに限って言えば男女の差はそれほど大きくありません。

なお、夏かぜを起こすアデノウイルスやコクサッキーウイルスなどのウイルスによって膀胱炎になる場合もありますが、ウイルスが原因かどうかの診断は難しいとされています。

膀胱炎にかかると、どんな症状が出るの?

膀胱炎は尿や排尿時に異常が起こることが多いのですが、ときには症状がほとんど出ないこともあります。

排尿痛や頻尿など。目立った症状がないことも

膀胱炎の症状

膀胱炎の場合には、熱は出ないか、出ても38℃以下[*3]のことが多いでしょう。 膀胱炎でよくある症状は、


・尿の回数が増えて、頻繁にトイレに行きたがる
・排尿時に痛がる
・それまでなかったのに、よくパンツをぬらすようになった
・残尿感があるため、排尿後に「まだ出そう」とよく言う
・尿がいつもよりくさい
・尿に血が混じる

などです。

熱が出たら要注意!

さきほど、膀胱炎の場合は発熱しないことが多いと説明しましたが、膀胱から腎臓にまで炎症が拡がってしまうと熱が出ることが多いです。この状態の代表的なものに「腎盂腎炎」があります。

腎盂腎炎の症状
・39~40℃[*4]の高熱が出る
・おなかや背中を痛がる
・吐き気・おう吐
・ぐったりしている

ただし、発熱以外のはっきりした症状がないことも
小学生以降の子供が腎盂腎炎になったときには、発熱のほか腰や背中の痛みや全身の倦怠感などを訴えることもあります。ところが乳幼児の腎盂腎炎では、発熱以外にはっきりした症状がなく、機嫌もとくに悪くならないことが多いと言われています。

腎盂腎炎は腎臓にダメージを与えたり、ひどくなると命に関わることもある病気です。いずれにしても、高熱が出たときには早めに受診することが大切です。

膀胱炎になったら、どんな治療を行うの?

膀胱炎を診察しに来た子供とママ
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膀胱炎は、子供にとって決して珍しい病気ではありません。診断がついたら適切な治療を受けることが大切です。

膀胱炎が疑われたら、何科を受診すればいい?

膀胱炎が疑われたら、かかりつけの小児科を受診しましょう。大人の膀胱炎のように泌尿器科でもかまいませんが、子供がかかりやすい病気全般に詳しい小児科で、まず相談するといいですね。

後で詳しく説明しますが、赤ちゃんや子供が腎盂腎炎などを起こした場合、生まれつき膀胱から尿管へ尿が逆流してしまう「膀胱尿管逆流」が原因となっていることがよくあります。その場合は、必要があれば小児科医が小児を専門とする泌尿器科など他の医療機関を紹介してくれるでしょう。

膀胱炎かどうかはどうやって調べるの?

膀胱炎は、問診や尿検査の結果から診断されます。尿検査をするのは、尿の中に原因となる細菌がいるかどうかを見るためです。幼児以降はトイレで尿を採りますが、トイレトレーニングがまだの赤ちゃんは、尿の出口(尿道口)にビニールパックをつけて採尿します。

膀胱炎の治療は何をするの?

採尿した尿の培養検査を行ったうえで抗菌薬の投与を行います。培養検査結果はすぐにはわからないので、症状が強ければ培養結果がわからなくても原因菌として最も多い大腸菌をターゲットに、抗菌薬投与を開始する事が多いです。

原因となる細菌がわかり、症状も含め使用していた抗菌薬が効いていないようであれば原因菌に効果のありそうな抗菌薬に変更して治療します。膀胱炎だけで発熱もないようなら、抗菌薬を服用して約1日たてば症状はよくなってきて、3日間くらい薬を飲み続ければ完治するでしょう[*5]。

ただ、腎盂腎炎を起こして高熱が出ている場合には、抗菌薬を使った治療を2週間ほど続ける必要があります。

子供の膀胱炎で気をつけることは?

膀胱炎は大人もかかり、とくに女性では経験のある人は多いものですが、子供の場合、とくに注意したいことはあるのでしょうか?

おしっこが逆流する「膀胱尿管逆流」があることも

乳幼児が尿路の感染症で熱を出しているようなときは、「膀胱尿管逆流」だったというケースがあります。膀胱尿管逆流とは、通常、「腎臓→尿管→膀胱」と流れていく尿が、排尿時に「膀胱→尿管→腎臓」へと逆流してしまう現象をいいます。

普通、排尿時には、尿管と膀胱のつなぎ目が閉じるのですが、「膀胱尿管逆流」がある子ではこのつなぎ目が閉じきれないために、尿が膀胱から尿管の方に逆流してしまうのです。 膀胱尿管逆流は、乳児100人のうち1人ぐらいに起こり、1歳以下では男の子に多く、それ以上の年齢では女の子に多いと言われています[*4]。

膀胱尿管逆流があると排尿のたびに尿が逆流するため、細菌が腎臓まで入っていって細菌感染を起こし、腎盂腎炎になって高熱を出すことがよくあります。

ただ、膀胱尿管逆流は成長とともに治ることが多いため、積極的な治療はせず、「予防投与法」といって抗菌薬を1日1回少量だけ飲み続けて自然に治るのを待つ治療が中心となります[*4]。

膀胱炎を予防するには?

膀胱炎にならないようにするには、水分摂取と正しい排尿習慣をつけることが大切です。

十分に水分を摂り、尿を我慢しない

膀胱炎をはじめ、尿路感染症を予防するためには以下のことを心がけましょう。

膀胱炎の予防で注意したいこと

・日ごろ、水分を十分にとるよう心がける
水をたくさん飲めば尿量は多くなって膀胱が発達し、尿路感染も予防されます。

・尿を我慢しない
2~3時間おき、1日6回以上[*5]はトイレに行くようにしましょう。

・緑茶、紅茶、コーラなどカフェインの含まれる飲み物は避ける
これらの飲み物は膀胱を刺激するためです。

・便秘をしないよう、食物繊維をたっぷりとる
便秘をしていると腸内で細菌が繁殖し、尿路感染症が起こりやすくなります。また、尿がしづらくなります。

・女の子は、うんちをしたときに前から後へとふく習慣をつける
外陰部を清潔に保ち、尿の出口(尿道口)から細菌が侵入しないよう注意します。

まとめ

子供の膀胱炎
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「膀胱炎」は子供に起こりやすいおしっこのトラブルですが、症状がわかりにくく、気づかない間に感染が進むこともあります。日ごろから尿の様子や回数に注目し、「いつもと違う?」と気になったら早めに受診しましょう。

(文:村田弥生/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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