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2023年11月02日 06:15 更新

子どもの「言いまちがい」は言い直しはさせた方がいい?専門家に相談する目安【言語聴覚士解説】

「とうもころし」「ぶっころりー」「へこりぷたー」……独特のまちがいは“育児あるある”で、微笑ましいですよね。一方で、なかなか直らないと「正した方がいい?」「ことばにつまずきがある?」と少し心配にもなります。今回は「子どもの言いまちがい」について、言語聴覚士の寺田奈々先生に解説いただきます。

子どもの「言いまちがい」はどうして起こる?

Q. 子どもが物の名前などを少し違った呼び方をすることがあります。
私はかわいいなと思うのですが、夫は心配なのか「ちがうよ。もう一回言ってみよう」と言い直しをさせることも。
子どもの言いまちがいは訂正しないといけないものでしょうか? また、何歳ぐらいまであるのでしょうか? 

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子どものことばの発達と言い間違えについて、まずは時期ごとに考えてみましょう。

ぽつぽつ期(めやす:1歳~2歳前半)

この時期、意味のあることばをお話しはじめますが、音を耳でとらえる力、それぞれの音に分解して聴く力が未発達です。また、聞き取りができても自分で発音することが難しい音がたくさんあるので、ことばは全体的に不明瞭で部分的になります。

たとえば「りんご」のことを「んご」と言ったり「ご」とだけ言ったりします。こうした現象には名前が付いていて、「ワードパーシャル(部分語)」と呼びます。

また、車のことを「ブーブー」、犬のことを「ワンワン」など、いわゆる赤ちゃんことばもたくさん使います。赤ちゃんことばでよく使われる擬音語や擬態語は、ものごとを活き活きと表すのでイメージしやすい、音が繰り返されていると耳でリズムをとらえやすい、言いやすい、伝わりやすいなどの背景があると言われています。

カタコト期(めやす:3歳~4歳)

※写真はイメージです
※写真はイメージです

この時期には、文でのお喋りがはじまります。音を正確に話す力がずいぶんと付いてきますが、まだまだ言いまちがいが多く聞かれます。

ごはんを「ごあん」、さくらんぼを「かくらんぼ」、おすなばを「おすばな」、クロワッサンを「クロワッササン」など、ちょっとした音の入れ替わりや言いまちがいがたくさん聞かれます。なかには、クスッと笑えるものもあったり、惜しい! と言いたくなるような絶妙な言いまちがいもあり、ふむふむとメモしてしまいます。

言いまちがいが起こる背景

子どもの言いまちがいの背景にあるものとして、
①まだ発音できない音が含まれている
②音の並びを整理するのが難しい
③すでに知っているほかのことばに影響される

などが挙げられます。

①まだ発音できない音が含まれている
たとえば「つ」がまだ発音できないお子さんであれば、「ちゅみき」や「ちゅくえ」のような話し方になります。

②音の並びを整理するのが難しい
発音が苦手なのではなく、そのことばに含まれる音の並びを頭の中で順番に整理して浮かべておく難しさが背景にあります。長いことばであれば、音をたくさん頭の中に浮かべる必要があります。難しい用語でこれを「音韻意識」「音韻操作」と呼びます。肌感覚ですが、おおよそ5文字(5つの音)を超えてくると3〜4歳ごろのお子さんにとっては長いことばなので難しく、言いまちがいも増えるようです。

③すでに知っているほかのことばに影響される
「クロワッササン」の例で言えば、「〇〇さん(人の呼び方)」で知っている「さん」という言い回しに影響を受け、ひとつ余分に「さ」を付けたのかもしれません。

①~③の背景のどれか、あるいは複数が重なってお子さんの言いまちがいは起こるようです。

言いまちがいの例

✅<省略>---------------------------
ごあん(正/ごはん)
goan

gohan

✅<置き替え>----------------------
かくらんぼ(正/さくらんぼ)
kakurambo

sakurambo

✅<ひっくり返し>------------------
おすばな(正/おすなば)
osubana

osunaba

✅<付け足し>-----------------------
クロワッササン(正/クロワッサン)
kurowassasan

kurowassan

※ 音を正確に表記するためにはIPA記号(発音記号)を用いますが、本記事では簡易的に説明するためにローマ字を使用しています。

言い直しをさせたほうがいい?

お子さんの言いまちがいに対し、言い直しを強要するのは基本的にはNG。何度も指摘を受けると楽しいはずのお喋りに苦手意識が芽生えてしまうかもしれません。お喋りの場面で重要なのは発音や音の正確さではなく、話している内容のはず。言いまちがいは気にせず話の内容に耳を傾けましょう

指摘ではなく、ただ「正しい音」を聞かせる

りんご
※写真はイメージです

耳が育っていくことで、徐々に言いまちがいが減っていくことが多いです。

お子さんが「んご!」と言ったら、「そうだね、りんごだね」と正しい音でことばを聞かせてあげましょう。「違うでしょ、そうじゃなくて……」と指摘はせずに、正解だけをただ聞かせるのがポイントです。あまり神経質にならずに、楽しい会話の流れの邪魔にならない程度でOKです。

言いまちがい、いつまで様子をみる?

お子さんによくあるかわいい言いまちがい。とはいえ、いったい何歳ぐらいまであることなのでしょうか?

✅ お子さんが5~6歳になって
・正しく言えないことばが多い
・お喋りが著しく不明瞭


✅ お子さんが小学生になって
・書くときにも言っているのと同じように書きまちがう

……という場合には、音を並べる音韻意識の力にやや弱さがあるのかもしれません。

気になることがあれば、専門家に相談を

※写真はイメージです
※写真はイメージです

音韻意識は文字の読み書きの習得に重要な力のひとつです。
・しりとりあそび
・かるたあそび
・ことばを逆さまに言うあそび

などによって育てていくことができます。楽しく取り組んでみましょう。

もし気になることがあれば、小児を専門にする言語聴覚士や、学校に併設する通級指導学級の先生に相談してみてくださいね。

(解説:寺田奈々先生)

※画像はイメージです

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