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2021年10月07日 08:00 更新

2歳半になっても喃語しか話さない…お喋りに必要な3つの力と関わり方【専門家監修】

2歳を過ぎて2歳半ぐらいになっても喃語しか話さないと、ちょっと心配になるものです。今回は喃語からことばを話せるようになるために必要なこと、そしてまだ喃語のみの子との関わり方、そして専門家への相談の目安について「ことばの相談室ことり」主宰の言語聴覚士・寺田奈々先生にお話いただきました。

喃語に行き着くまでのプロセス

言語聴覚士のもとには、「ことばが遅いかも?」というご相談で、日頃たくさんの親子が言語相談室に訪れます。発達のスピードはさまざまですが、発達には順番があります。ことばをお話しはじめる前に、まずは赤ちゃん・幼児の「声」はどのような過程を辿るのかについてお話ししたいと思います。

生まれたての赤ちゃんは、第一声の産声をあげますね。そのとき実は、まだ話すための声にはなっていません。生後半年ほどかけて、徐々に「喃語」と呼ばれる声の出し方を獲得していきます。

「泣く」から「クーイング」へ

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産声から始まり、泣くことができるようになった生後0〜2、3ヶ月の赤ちゃんは、その次にクーイングといって、お鼻とお口の両方同時に声を出す発声をするようになります。クゥクゥと鼻を鳴らすような声ですね。鼻と口は喉(のど)の奥でひとつの道に繋がっており、喉の奥には声をどちらに流すかを調整する弁(軟口蓋)が付いています。私たち大人は、喋るときにこの弁を開け閉めすることで、鼻から出す声・口から出す声を自由自在に使い分けています。発声のときに、口と鼻の分離が進むと、「あいうえお」の母音に似た声が上手に出せるようになってきます。

この頃、赤ちゃんの出す声の響きがなんとなく変化してきたかも?という印象を持ちます。

離乳開始ごろには「喃語」を話すように

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離乳食が始まるころには、「ママママ」や「ババババ」のように、唇を使った音、「チャチャチャチャ」や「ナナナナ」など舌を使った音が出せるようになってきます。

食べる力の獲得と、喃語の発達にはとても深い関係があります。食べるときに唇をしっかりと閉じる動きがマ行やバ行の発音の獲得に、半固形の食べ物を舌を使い口の中で押しつぶす動きがタ行やナ行の発音の獲得に繋がっていきます。口の奥に固形物を送り込み、ごっくんするときの舌の動きは、カ行やガ行の発音に繋がります。

喃語は口の動きの探索・練習

喃語とは、ことばではなく"音"を繰り返すことをいいます。この時期にいろんな音を出すことで、赤ちゃんはお口の動きと声、音を作るしくみについての実験を重ねているんですね。まるで何かを言っているふうのこともあれば、ときには、ただ自分の身体から声が出ていること自体を楽しんでいるようなようすのこともあります。

ことばを話すために必要な「3つの力」

喃語がことばに変わるには、そのほかにもいくつかの条件が揃うのを待つ必要があります。はじめてのことばをお話しするのに必要な条件とは、いったいなんでしょうか。

同じものに注目する力

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ことばをお話し始めるために最も大切なこと、それは「キミの見ているものをボクも見ているよ!」の理解です。どういうことでしょうか。
自分の目で世界を見始めた赤ちゃん、はじめは視界がぼんやりしていますが、やがて少し離れた場所もはっきりと見えるようになっていきます。動くもの、人の顔、鮮やかな色などに興味を惹かれ出します。

さらにそれから、興味関心を惹かれたものを誰かほかの人に向けて共有するようになっていきます。たとえば道端で猫が泣いていたら、猫のほうをまず見て、続いてママ・パパのほうを向き、また猫のほうを見て驚いたような顔をします。ことばは無くとも、まるで「ママ、猫が居るよ」と言いたげな視線のやり取り。この視線のやり取りが「相手の見ているモノの理解」です。また、ママやパパが見ている先には何があるのかな?と、視線の先を追うようになります。

同じ時期に、指差した先を見てくれるようになったり、指差しを自分でもするようになったりします。持っているものを渡そうとしてくれたり、逆に差し出すと受け取ってくれるようになります。こうした、「相手と同じものに注目する力」が、ことばをお話し始める前に必ず必要な力なのです。

耳で音に注目する力

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目に入ったものを誰かと共有する力だけでなく、耳に入った音についても同じくです。たとえば救急車の音が聞こえたら、「アッ!」とママ・パパのお顔を見て知らせてくれるかもしれません。耳に手を当てて、「聞こえるよー」とサインを出してくれるかもしれません。お子さんによっては、「ピーポー」など音の真似をすることも。アイコンタクト、身振り、音の真似ーーーこれらはすべて、ことばではないですが、ことばを豊かにお話しするための大切な準備のひとつです。

ことば・状況・周囲のものなどを理解する力

ことばの発達は、必ず理解することからはじまります。ことばをお話しする前に、もうすでにいろんなことばの理解があるということですね。「ネンネ」や「おいで」のように、日常的によく使うことばから、理解は進んでいきます。

ことばの理解だけでなく、状況の理解や、身の回りにあるものの理解について深まっていくことも大切です。状況の理解とは、鍵の音がカチャカチャ鳴ったらパパが帰ってくる、いい匂いがしたらそろそろごはんだとわかる、のようなこと。身の回りにあるものの理解とは、電話を見たらモシモシと真似っこ遊び、帽子を見たら両手を頭の上に乗せてかぶる仕草。これが実物でなくて、積み木を電話に見立てて遊んだり、空き箱のフタを帽子に見立てて遊んだりといった「見立て遊び」もことばの力に関係あります。ものを別のものに見立てられるということは、頭のなかに"もののイメージ"があるということですね。ことばを話すときには、頭のなかにそのイメージ(概念)が浮かんでいることが必要です。

喃語しか話さない2歳児への関わり方、6つのポイント

では現在喃語しか話せない2歳の子への関わり方についてのポイントを解説しましょう。

1. 注目を待ってから話しかけて

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「同じものを見ているよ」を確認してから、話しかけるようにしましょう。
お子さんが別のほうを向いているときに、突然話し掛けてもことばは耳に入っていきません。目に入っているものや状況と、耳から入っていくことばが一致するタイミングで話しかけをおこないましょう。

2. 「言葉のシャワー」ではなく子供に合わせたスピードで

赤ちゃんやお子さんに話しかけるときに、自然と柔らかくゆっくりとした話し方になる人は多いですよね。なかには、普段お話しするときよりもちょっと高めの、いわゆる"猫撫で声"になる方もいます。そこまでやる必要はありませんが、話しかけのスピードはゆっくりのほうがよいでしょう。

ことばの意味を理解するのに、お子さんのほうが大人よりも時間がかかります。また、一度に覚えていられる量は1つからせいぜい3つくらいです。ペラペラと長い文章で話してしまうと内容が伝わっていないかもしれません。かつて、「言葉のシャワーを浴びせましょう」と言われることがありましたが、大量に話し掛ける必要はありません。お子さんが理解できるちょうどよい話しかけをこころがけましょう。

3. 抑揚や感情も含めての言葉かけを

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ことばをまだ理解していないお子さんへの話しかけにもちゃんと意味があります。声のトーン(抑揚)やその声に含まれる感情を受け取っています。また、ことばのリズムを音楽のように受け取っているとも言われています。なので、話すスピードはゆっくりにしますが、「お・は・よ・う」のように区切って話しかけてしまうと、本来のことばとはかけ離れた不自然なものとなってしまいます。区切ったり平坦になったりしないよう、自然に抑揚がついていることば掛けがいいでしょう。

4. "言わせる"ではことばは伸びない

特に1歳〜3歳代ぐらいにおいて、強制的に言わせることではことばを伸ばすことはできません。そのことばがどんなものに対してどんな状況で使われるのか、という「現場」を丸ごと学んでいくのが乳幼児のことばの学習です。まさに今目の前で起こっている状況と、ことばの表現が結びついていく必要があります。なので、「さあ、言って!」では、場面状況が違ってしまうので、なかなか習得には結びつきづらいのです。

また、「と・け・い」のように、区切って1音ずつ言わせようとしてしまうと、「と」という音、「け」という音、「い」という音の練習にしかなりません。ことばは自然なまとまり(ひとかたまり)で吸収し、ひとつずつ分解できるようになるのはもっと後のことです。

5. オノマトペ・身振り・赤ちゃんことば、すべて使って大丈夫

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「赤ちゃんことばを使いすぎるとことばが遅れる?」「ベビーサインなど、身振り手振りを使いすぎるとお話しはじめが遅くなる?」などの疑問が聞かれます。ことばの発達の観点からは、そうしたことはありません。むしろ、楽しくコミュニケーションを取る機会が増えるメリットがあります。

特にオノマトペと呼ばれる擬音語・擬態語について、そこから派生する赤ちゃんことば(「ワンワン」で犬、「ブーブー」で車など)は、ことばの獲得の大きな助けになります。

6. 顔の表情・お口の動きを見せて

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大人も子供も、外ではずっとマスクの生活。赤ちゃんや幼い子の場合、本人が付けておらずとも周囲ではマスクを付けた大人が囲んでいます。ご家庭など、許容される場所ではお顔全体を見せてかかわってあげるとよいでしょう。また、あっかんべーやあっぷっぷ、いないいないばあのような、お顔・お口の動きを見て真似をするといった遊びを取り入れてみてください。ことばを教えてあげるときに口の動きをしっかり見せてあげるのも効果的です。

ことばの発達に不安があるときは専門家に相談を

2歳児のことばの発達に関しては「意味のあることばをお話しない・指差しをしない」というのが、専門家に相談する一つの目安になります。

ことばに不安があるとき、相談先に迷う親御さんも多いようです。自治体の行う健診で相談窓口を紹介されることもありますが、そういったタイミングにかかわらず、ちょっとしたことでも何か気になることがあればかかりつけの小児科や地域の発達支援センターなどで相談してみるといいでしょう。

まとめ

泣くだけだった赤ちゃんも、クーイングから喃語と発達していきます。喃語はいずれことばを話すための練習段階。そこに音や物事に注目する力や理解力が備わり、ことばを話すようになっていきます。2歳のお子さんに早くことばを話すようになって欲しいという思いから、ペラペラと長く話しかけたり、話すことを強要してしまうケースもあるようですが、それは逆効果。目線を合わせ、子供に適したスピードで、口の動きを見せながら抑揚をつけて話しかけてみましょう。赤ちゃんことばや身振り手振りも交えつつ、コミュニケーションを楽しむ気持ちで関わって行ってくださいね。

(文:寺田奈々先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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