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2023年11月06日 07:05 更新

仕事、漫画、育児…並立のためにあきらめたこと『頼りになるのはスマホだけ?!』真船佳奈さんインタビュー【前編】

笑って共感する読者が続出!大人気の書籍『令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!』の著者、真船佳奈さんにインタビュー。前編では、テレビ局のお仕事と漫画家のお仕事、子育ての3つを並立するためのコツや心構えをうかがいました。

『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(真船佳奈 著、 オーバーラップ刊)
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1歳7カ月の男の子のママで、テレビ局で正社員として働く傍ら、漫画の執筆も続けている真船佳奈さん。ブログで発表した漫画をまとめた書籍『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』は多くのママ&パパの共感を呼び、たちまち重版に。そんな真船さんに、お仕事と漫画と育児の両立のコツや書籍に込めた想い、おすすめのエピソードなどをうかがいました。

3つの「柱」で自分を支える

――― テレビ局のお仕事と、漫画家と、子育て。とても大変な日々と思いますが、どうやって並立されているのでしょうか。

真船 ママにも色々なタイプの人がいて、子育てにしばらくは専念したい、という方もいれば日中は子どもを預けて今までのペースを取り戻したい、という方もいると思います。私はまさに後者のタイプ。産後1年は育休をとって子育てに専念しましたが、子どもが6カ月になったころから「早く仕事に復帰したい!」と思っていました。
子育て中は、他のママと話しても話題はどうしても子どものことばかり。相手のママのことはよく知らないまま、私も自分のことは話さないままで……。常に“〇〇くんママ”と呼ばれる中で、ママではない「真船佳奈」として必要とされる場がほしいと思っていました。

仕事を離れて育児をしている中、先輩や同期の活躍を見聞きしたとき、「育児中 私は宇宙にいるみたいだな〜と何度も思った」という。
(『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』 12話「投げてはならないボール」より)


――― 仕事が子育ての息抜きに、逆に子育てが仕事の息抜きになるという人もいますね。

真船 そうですね。
私はもともとたくさんの人と関わって仕事を進めるのが大好きで、保育園に子どもを預けて子育てを頼りながら、漫画も描くという今の生活が自分に合っているんだと思います。
また、今の生活ができているのは、環境のおかげも大きいと思っています。以前、AD時代のことも漫画に描いていて(※朝日新聞出版「オンエアできない!」)、それを読んだ方には、「テレビ局の仕事は大変なのにどうやってるの?!」と思われるかもしれません。でも、現在は時代も大きく変わり、さらには今私が働いている番組の宣伝をするプロモーション部は、同僚にはママも多く、働きながら子育てをすることにかなり理解がある職場だと感じています。

――― 環境は大切ですね。それにしても、お仕事と子育てだけでなく、漫画家も続けられているのはすごいと思ってしまいます。

真船 出産前から本業と並行して漫画を描いていて、本業が行き詰まったときは漫画が息抜きになったし、逆に漫画で行き詰ったときは本業が息抜きになっていました。今、仕事と子育てがお互いに息抜きになっているのと一緒ですね。
大変なことももちろんたくさんあるので息抜きと言い切れないところもありますが 笑。
だから、自分の中にいくつか柱があることが大切だと思っています。私の場合は、「仕事」と「漫画」と「子育て」の3つの柱で自分を支えています。仕事を終え、家に帰ればかわいい息子と一緒にいられるし、育児中の発見を漫画に描くことで、読者に共感してもらえる……本当に今の自分は3つの柱で成り立っていると思います。

並立するためにあきらめたものは?

――― 子育てが始まると、以前のような仕事ができなかったり、続けていきたいことを諦めざるをえなかったりと、産前に比べるとパワーダウンした自分を感じてしまう方も多いと思います。真船さんは、仕事・育児・漫画という柱に支えられ、充実した日々を送られているようですが、子どもが生まれたことで何かあきらめたことや捨てたことはありますか?

真船 それで言えば、「完璧」を目指すことを捨てました。育休中はインスタなどで子どもがいるのに塵一つ落ちていないお部屋や、手の込んだ離乳食の写真を見かけると、自分は全然できていないと焦ったこともありました。でも、誰かと比較して思い悩むよりも「自分の家庭が幸せならそれでいい」と、割り切ることにしたんです。そしてそのためにも、「まず自分が幸せでいないとダメだ」と考えました。

(『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』 15話「頼りになるのは…」より)


例えば、お皿をきれいに洗って明日を迎えたいのに、子どもの世話で中断しなくてはいけないことってよくありますよね。そして、思わず「子どもに邪魔をされた」と思ってしまい、イライラが募る……。でも、家族と自分の幸せのために家事も育児もがんばっているはずが、そのせいでイライラしては本末転倒と気付きました。「皿なんか放っておいても死なない! だったら皿は放っておいて、子どもと遊んだ方が自分も子どもも幸せ。」と考えるようにしたんです。

そうやって、息苦しくなく呼吸ができるように、まず自分の気持ちを大切する。そして、そのために必要のないものはどんどん切り捨てていきました。きれいな部屋、完璧な離乳食作り、夫婦のご飯を作るのもやめました。夫の帰りも遅いし、子どもが小さいうちはお互い自分のことは自分でなんとかしよう、と。いろいろ切り捨てましたが、結果、私が子どもと心置きなくしっかり遊んで笑うことができていたら、それでいいかな、と。

――― 自分の気持ちが大事という軸を大切にされているんですね。

真船 母親も、自分の世界や時間は不可欠だと思っています。自分の母は専業主婦で、時代背景もあって育児に全力で、家事も完璧な親でした。自分がある程度成長して手が離れたころ、母は友だちと旅行に行ったり、習い事を始めるようになって。そうやって自分の世界を持つようになってからの母の方がずっと生き生き楽しそうで、私は好きでした。その方が、子育てに集中するあまり、子どもに過度に集中してしまうこともないので。お母さんがお母さんじゃなくなる、自分に戻ることも大切です。父親もそれは一緒です。家族全員でどうやったらみんなが自分の時間を作れるか考えて、その時間を尊重して確保することが大切だし、それも育児のひとつだと思います。

――― 時間を確保するためのコツはありますか?

真船 それで言うと、頼れる先を、“余裕があるとき”に見つけておくことは大事だと思います。渦中に入ってから動いたのでは余裕がなくて調べきれず、後になって知って「あの時に知っていれば……」と思いました。
例えば、育休中でも、一時保育に預けてみたりベビーシッターを利用したりしておけば、いざ必要になったときにすぐに頼れますよね。頼る可能性があるものは、事前に一度利用して値段感、子どもの反応、予約の取りやすさ、使える支援制度などを確認しておくといいと思います。

仕事で人に頼るために、頼られる強みを見つける

オフィスでの真船さん(ご本人提供)

――― 子どもが生まれたことで、家事を省エネ化し、漫画にもいい影響があったようですが、お仕事の面では変化がありましたか?

真船 出産前は仕事を引き継ぐことが苦手で、「全部自分でやった方が速い」と思っていました。今はヘルプを頼むしかない状況であることを自覚することが大切だと思っています。
例えば、子どもが熱を出して、急に仕事を抜けるときなどに備え、情報を資料にまとめておいたり、日頃から周囲の人とコミュニケーションをしっかりとることを心がけています。こちらの状況があまりわからない人に、いきなり仕事を振ることになったら、お互いにギクシャクしてしまいますよね。なので、普段からなるべく状況を共有できる準備をしておくことを心がけています。

――― コミュニケーションは大事ですね。「頼れる環境」を作るポイントはほかにもありますか?

真船 もうひとつ大事だな、と思ったのは、自分だけの強みを持つことです。自分だけの強みがあれば、仕事で人を頼ることがあっても、頼った相手が困っているときにお返しをすることができるのではないかと。私の場合はSNS運用がそれにあたります。

プロモーション部では仕事としてSNSを利用することがとても多いのですが、どう運用したらいいのか、と悩んでいる人も多いです。私は漫画の宣伝のために7年前からSNSをやってフォロワーを0から12万人まで伸ばした経験があります。その経験を仕事で聞かれることも多くなったので、最近では勉強会に参加したり自分のアカウントを使って検証したり……SNSでの発信を自分の強みにしようと奮闘中です。

こうして「これだけは私に任せてください」という仕事があると、その分野では頼ってもらえる分、自分からほかの人にもお願いしやすくなることに気づきました。相手にも、「いつも仕事を代わってばかり」ではなく、「頼りになることもあるしな」と思ってもらえたらいいのかな、と。自分の気持ちの問題でもありますね。「仕事を押しつけてしまった」と罪悪感に押しつぶされてしまうなら、自分が職場のメンバーに貢献できることをひとつ作っておくといいのかな、と思って頑張っています。

また、母になった経験もいつか活きることがあるはずです。仕事でママの意見が求められることも、子育てで培ったスキルが役立つこともあります。だから、頼ってばかりで申し訳ない、なんて思わずに、みんなに感謝しつつ、うまく頼ること、助け合うことを心がけたらいいと思います。

真船佳奈さんのインタビュー、後編に続きます。
後編では子育てで心がけていることや、書籍への想い、おすすめエピソードを紹介します。

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