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2023年08月05日 07:11 更新

「ベビーシッターは躊躇なく使う」 疲弊しきったママを救う合理的ルール 川本夫妻の場合 #共働き夫婦のセブンルール

世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。

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【左】川本直人さん(仮名/37歳/WEBメディア編集者) 【右】川本明子さん(仮名/33歳/フリーランス/ライター・編集)

夫婦ともにメディア編集の仕事に従事しているふたり。直人さんは会社員として朝9時過ぎから深夜までリモートワークで忙しく働き、明子さんはフリーランスとして働きながら平日の家事育児の中心を担っている。

元同僚として出会い、明子さんが28歳のときに結婚。5年後に出産した長男はまだ9ヶ月だが、会社の後ろ盾がないフリーランスである明子さんはクライアントとの関係を継続させるため、産後1ヶ月から仕事を再開したという。

直人さんはコロナ禍で立ち会い出産が許されず、退院後初めて我が子に会ったときには、「写真で見るよりずっと小さい!」と驚いたそう。すぐには父としての実感がわかなかったというが、育児は待ってくれない。長男は昼寝がなかなかできず、明子さんの膝の上でしか眠ってくれなかった。出産前に妊娠高血圧症候群を患い、産後も2ヶ月間は血圧が下がらず、通院を余儀なくされていた明子さんは、ほどなくして疲弊しきってしまった。

そんな夫婦の支えとなったのが、ベビーシッターの存在だ。日本でのベビーシッターサービスは近年、急速に普及したものの、なかなか一歩を踏み出せないでいる人も多い。夫婦でどう話し合ったのかということや実際に利用した感触も含め、多忙な川本夫婦がいつも笑顔でいるためのセブンルールを聞いた。

7ルール-1 お出かけは「家族全員」にこだわらない

「夫は休日に家族で出かけることがリフレッシュになるタイプ。私も『子どもができたら家族みんなで出かけるものなのだろうな』と思って、最初は子連れで一緒に出かけていました」と明子さん。

だが、0歳児を連れての外出には気苦労が多い。家の近所の児童館ならまだしも、電車で出かけるとなると車内で子どもの機嫌が悪くならないか気を使ってしまうため、まったく楽しめず、余計に疲れてしまっていた。

直人さんは、「気づいたら、妻の顔から笑顔が消えていて……。疲れているのがわかったので、早い段階で『無理に一緒に来なくていいよ』と言いました」と振り返る。それは冷たさではなく、「楽しそうではない妻を見て、無理して全員で出かけるのは無駄だと合理的に判断しました。それなら、妻にゆっくり休んでもらって、家にいる時間を一緒に楽しめたほうがずっといい」。

それからは、夫婦どちらかが子連れで出かける間、片方はひとりでのんびり過ごすようになったそう。「正直、私はそのほうがリフレッシュできるので、それまでのような心底からの疲れがなくなりました」と明子さん。

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赤ちゃんといるとどうしても気を張ってしまうため、すぐに家に戻れてなじみのある近所で過ごす方が楽という明子さん

「子どもがもう少し成長して、会話も楽しめるようになったら家族みんなで遠出もしたいけど、今はこのルールがうちには合っていると思います」(直人さん)

7ルール-2 保育園送りは夫が担当

直人さんは仕事で就寝が遅くなることも多く、もともと朝は弱いほう。寝坊をして起きてこないこともあり、明子さんはついイライラしてしまっていたという。

「だから、保育園に行き始めたタイミングで、朝の保育園の送りを夫の担当にしてみたんです。そしたら、以前よりスムーズに朝起きるようになりました。タスクがあれば起きられるんですね(笑)」(明子さん)

当の直人さんは、夜遅かった日には「もっと寝ていたい」と思う日もあるが、「保育園までの往復10分くらいを歩くことで、頭がすっきりします」とのこと。「それまでは朝起きた瞬間からチャットで仕事のやり取りをしていたのですが、朝の送りの間だけはチャットを見ないことに決めたので、仕事のメリハリもつくようになりました。抱っこ紐の日は、息子のほっぺをつついたりしてコミュニケーションをとりながら歩くので、楽しいですよ」。

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送り中はよく息子に話しかけたり歌を歌っているという直人さん。たまに道行く人に笑われることもあるんだとか

明子さんは、子どもの登園の準備をしながら自分の身支度もする必要がなくなるため、とても助かっているそう。イライラとともに朝のあわただしさも軽減されて、まさに一石二鳥のルールだ。

7ルール-3 ときには躊躇なくシッターさんを利用する

次はぜひ聞きたかった、シッターさんに関するルール。

「産後2ヶ月間は母が泊まりに来て手伝ってくれていましたが、義両親ともにすぐに来られる距離ではないので、シッターさんの利用を考えました」と明子さん。

東京都の一部の自治体では、ベビーシッター利用支援事業(一時預かり利用支援)として、児童一人当たり年間最大144時間分のベビーシッター利用料を補助する制度を用意している(詳細は在住の市区に確認のこと)。これを知ったときから、「こういうサービスはどんどん利用していこう」と夫婦で話し合っていたそう。

「僕は自宅でのリモートワークではありますが、平日は忙しくてなかなか家事育児ができません。子どもが泣いているときにあやすくらいはできますが、がっつり子どもに向き合うことはできないんです。それなら、助けてもらえる制度を積極的に利用して、妻に体を休めてもらいたいと思いました」(直人さん)

保育園に入園するまでの3ヶ月間、月に4、50時間はベビーシッターに来てもらって子どもを預け、その間、明子さんはコワーキングスペースで仕事。「シッターさんにお願いしている間は家を出て仕事をすることで、気分転換もできました」と明子さん。

「一度だけ、相性が合わず担当のシッターさんを変えてもらったこともありましたが、基本的にはみなさんプロなので、安心して子どもを預けることができました」(直人さん)

夫婦ともに食べることが好きで、保育園に通う今でも、月に1、2度、ふたりで食事に出かける際にベビーシッターを利用している。お互いの仕事の話、趣味の話、友人の話など、夫婦の会話を楽しむ貴重な時間になっているため、「年間144時間の補助の上限時間を超えても、シッターさんにお願いしたいと思っています」と直人さん。

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アートやサウナも趣味の二人。この日は上野の美術館に行った後、鶯谷の銭湯でリフレッシュ

0歳から保育園に預けることへの罪悪感は世の中的にも薄れ、理解が広まっているように思う。だが、ベビーシッターとなると、思い切って利用できている人と、すごく気になってはいるものの一歩を踏み出せていない人に分かれるのではないだろうか。

「疲弊してしまうくらいなら、プロの力を借りたほうがいいと思っています」と明子さん。確かに、本当にその通り。ベビーシッターを利用したことはなくても、育児と仕事の両立に疲れ切り、助けを求めて気が遠くなるような経験をした人は少なくない(というか、経験していない人なんていないだろう)。

利用料金もハードルになることは間違いないため、今後、同じような支援制度がより広まっていくことを願うばかりだ。そして、夫婦の間でベビーシッターを利用することへの共通理解ができていると、いざというとき、手遅れになる前に利用できるはずだ。

7ルール-4 土日の間に夫が作り置きをする

川本家ではそれぞれができることを、できるときに担う。直人さんの担当は主に料理まわり。週末には長男とお出かけを楽しむほかに、買い物から平日分の作り置きの料理、後片付けまでを担っている。

「子どもはまだ離乳食なので、大人用に好きな物を作っています。作り置きは、日持ちのする味の濃いものをたくさん作ると飽きてしまうので、酢の物、ナムル、カプレーゼなど副菜5品と主菜2品くらいを作って、平日の3日くらいをアラカルトで食べられるようにしています。残りの2日は生協の冷凍食品でしのぐのが最近の定番ですね」(直人さん)

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ある日の作り置き。一番左はたらちり、上左から順にカプレーゼ、タコときゅうりの酢の物、たたききゅうり、下左から順にツナと玉ねぎのサラダ、なすの煮びたし

離乳食は明子さんの担当で、生協や和光堂のベビーフードにも頼りつつ、冷凍できるものを作って小分けにして食べさせているそう。

その他、掃除・洗濯やこまごました家事は明子さんが担っているが、「我が家はドラム式洗濯機・ロボット掃除機・食洗機を導入しているので、料理以外の家事はそこまで大変ではありません。料理は夫のほうが得意なので、毎日の食事を考えなくていいのはラクですね」と納得している。

7ルール-5 プリペイド式ペアカード「b/43」で生活費を可視化

以前は生活費分の現金をお互いが出し合い、ひとつの財布に入れて管理していたという川本夫妻。しかし、その財布を持ち合わせていないと立替えが発生するなど、管理が煩雑だったという。家計簿アプリもつけていたが、子どもが生まれるとレシートの写真を撮る暇さえなくなってしまった。

そこで、夫妻が取り入れているのが家計簿プリカ「b/43(ビーヨンサン)」というプリペイド式のペアカードだ。

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いつ、どこで、いくら買い物したかが一目でわかる
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毎月の支出も項目別にざっくり把握できる

「今はお互いの預金から毎月40,000円ずつチャージして使っています。お互いに何を購入したのかアプリで確認でき、集計も自動で行ってくれるので、生活費の見える化に役立っています」(直人さん)

足りなくなったらお互いに5,000円ずつチャージして、現金はできるだけ使わない。これだけのシンプルなルールで生活費を管理できるため、夫婦ともに満足しているという。

7ルール-6 【夫】資産形成はしつつ、互いのお金の使い方には干渉しない

仕事柄、それぞれにお金にはある程度の知識があるというふたり。

そのため、「iDeCo(退職金代わり)、つみたてNISA(子どもの大学費用)、個人年金(子どもの結婚祝い用)、その他保険など、それぞれに資産形成を行って、お互いが何のためにいくら貯めているかという総金融資産は把握しつつ、後のお金の使い方は自由にしています」と直人さん。

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お互い家庭以外にも趣味や友人を大事にしているから、お金の使い方には口出ししないスタイルが合っているという直人さん

どちらかといえば直人さんが言い始めたルールだが、明子さんも意見が一致している。「『またこんな物買って』とか、『また飲みに行ったの?』とか言い出すと、ストレス発散もうまくできなくなって辛くなっちゃいますからね」と明子さん。

直人さんは、友人とお酒を飲んだり、趣味で続けている音楽のライブ費用を出したり。明子さんは、仕事を兼ねてスキンケア用品や美容医療に出費しているが、お互いに「相手にとって必要な支出」だと理解しているそう。

「夫婦2人のときはお金の貯めどきでしたが、子どもが生まれて3歳くらいまでは積極的に貯める時期ではないと思っています。お互いに『これくらい貯めているから、このくらい使っても大丈夫』と理解して使っているという信頼があるので、細かいところは気にしません」(直人さん)

子どもが生まれてからは、子ども名義で口座を作り、月に5,000円ずつ入金して撮影費や家族旅行費に充てている。節約一辺倒ではなく、計画性の上に自由に使うことで、ひとりの時間も充実させることができるようだ。

7ルール-7 【妻】 家族以外にも色んなつながりを大切にする

取材中も、にこにこと笑顔を見せてくれた川本家の長男君。人見知りしない性格なのも、ベビーシッターを利用する際に助かったという。

「子どもは多様な人たちと関わる中で育つものだと思っているので、友人やご近所さんなど、さまざまな関係を大切にしつつ、子どもとふたりきりのときは笑顔で一緒に遊ぶことを心掛けています」と明子さん。

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帰省先で、明子さんの友人ファミリーと。友人の娘さんが長男君とたくさん遊んでくれたという

直人さんも、「人間の長い歴史から考えれば、核家族で親だけが子どもを見ている時代のほうがずっと短いですよね。こういう考えが僕たちの根底にあるから、ベビーシッターを利用することにも抵抗がなかったんだと思います」と同意する。

「子どもとふたりきりのときは笑顔で一緒に遊ぶ」というのも胸に刺さった。人に頼らず、なんでも自分でこなそうとすると余裕がなくなり、私のように子どもと一緒にいるときにも仕事に集中してしまったり、つい子どもに感情的に怒ってしまったりして、罪悪感を覚える親は多いだろう。

いつも笑顔ではいられなくても必死にがんばり続ける親、上手に人に頼りながら子どもといるときは笑顔を心掛ける親、どちらを子どもが求めるかといえば、どちらの場合も子どもは理解し、親の努力を認めてくれるだろうと思う。だが、ベビーシッターというプロの手を借りることで家族みんなが笑顔でいられるなら、川本家にとっては間違いなく正解だろう。

彼らの7ルールを一言で言うと……?

川本家のルールの軸となっているのは、「家族が笑顔でいるための合理性」だ。

ベビーシッターを利用したほうがよければ利用する。夫婦それぞれが、できることを、できるときに担う。将来のための資産形成と生活費、子どものためのお金を計画的に用意し、それ以外のお金はお互いへの信頼関係のもと自由に使う。

「我が家は決して世帯年収が高いパワーカップルではありませんが、僕たち夫婦と子ども、みんなが笑顔でいるためにはどうするべきか、合理的に考えていると思います」と直人さん。

もちろん、気持ちが揺れることはある。特に明子さんは、仕事と家事育児を両立させるためにベストな選択をしてきたという自信はあるものの、SNSなどで世間の「理想の母親像」というプレッシャーに押され、不安になることもあったそうだ。

そんなとき、支えとなるのが合理性に則ったルールを一緒に作ってきた直人さんの存在だ。定期的に食事に行き、夫婦の間で十分に会話ができていたことも重要だろう。

「お互いに『こうしないといけない』というより、『こうしたら心地いい』と思えるほうに進むことで、ルールができていった気がします」と明子さん。

1日1日、夫婦で話し合い、築き上げたセブンルールがあると強い。「母は強し」という言葉は偏っていて嫌いだが、「親は強し」なら仕事と家事育児を両立するうえで心強いことこの上ない。

(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)

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