【医師監修】赤ちゃんがひきつけ・けいれんを起こす3つの原因と対処法
前ぶれもなく赤ちゃんに起こるひきつけ・けいれんは、ショッキングな症状ですがどんな子でも起こる可能があります。それだけに、起こったときはどう対処したらいいのかを、いざというときのためにぜひ知っておきましょう。今回は、生後半年以降の赤ちゃんに多く見られるひきつけを中心にお伝えします。
赤ちゃんに見られる「ひきつけ・けいれん」とは?
乳幼児が起こしやすいひきつけ・けいれんの原因や症状はいくつかあります。
どのような症状?
赤ちゃんが起こすひきつけ・けいれんは、「身体をガタガタふるわせる」「手足をつっぱる」などのほか、全身が硬直するなどの様子が見られます。これは赤ちゃんの意思とは関係なく起こるもので、乳幼児の場合は「ひきつけ」と呼ばれることも多いのですが、一般には「けいれん」と言われています。
なりやすい時期は?
乳幼児がけいれんを起こしやすいのは、神経系の発達が未熟なことがおもな原因です。子供の場合多いのが「熱性けいれん」で、生後6ヶ月~満5歳までの乳幼児に起こりやすいといわれています。
また、子供は大泣きした後に「泣き入りけいれん(憤怒けいれん)」と呼ばれるけいれんを起こすこともあります。これは生後6ヶ月から2~3歳ぐらいまでに多く見られます。
赤ちゃんがひきつけ・けいれんを起こすおもな原因は?
子供のけいれんの原因では発熱が多いのですが、そのほかにも大泣きや胃腸炎に伴ってけいれんが起こることがあります。また、症状にけいれんを伴う病気もいくつかあります。
発熱(高熱)
乳幼児の脳は発達している途中で、神経系統も未発達です。そのため熱に敏感で、かぜなどで熱(通常は38℃以上)を出すとけいれんを起こすことがあります。
発熱時に起こるけいれんは多くの場合「熱性けいれん」で、子供の5%以上が経験すると言われているほど珍しくないものです。原因ははっきりわかっていませんが、子供の脳が発達途中にあることだけでなく、遺伝的な要因なども考えられます。
熱性けいれんの場合は熱の上がり際に起こることが多く、突然意識がなくなる、白目をむく、体をそらせてこわばらせる、手足を震わせるなどの症状が見られます。また、一度熱性けいれんを起こしたことのある子のうち、約30%が再度、熱性けいれんを起こすといわれています。
大泣き
子供が激しく泣いた後に呼吸が止まり、顔色が悪くなる、意識を失う、全身の力が抜けてぐったりする、などとともにけいれんを起こすことがあります。これが、「泣き入りひきつけ」または「憤怒けいれん」で、生後6ヶ月から2~3歳ぐらいまでの乳幼児の4~5%に見らます。
泣き入りひきつけは、激しく泣いて息を吐いたまま止めたことで無呼吸となり、一時的に脳が無酸素状態になってしまうことで起こります。でも、呼吸はたいていすぐに再開し、後遺症の心配もありません。
下痢(胃腸炎)
0~2歳前後の乳幼児が脱水を起こさない程度の軽い下痢を起こしたとき、熱が38度以下にもかかわらずけいれんを起こすことがあります。下痢の原因にかかわらず起こる可能性がありますが、特にロタウイルスやノロウイルスによるウイルス性胃腸炎にかかり、下痢の症状が出て1~2日目に起こることが多いようです。
これは「ウイルス性胃腸炎に伴うけいれん」と呼ばれ、繰り返し起こりやすいのが特徴です。ただし、1回の症状はたいてい数分以内でおさまり、すぐに意識もはっきりして普段の状態に戻りますし、後遺症はまずありません。
その他、ひきつけ・けいれんを起こすことがある病気
発熱や大泣き、下痢だけでなく、何らかの病気の症状のひとつとしてけいれんを起こすこともあります。
けいれんの症状が見られる疾患の例
ひきつけ・けいれんが起こった時の対処方法
赤ちゃんが白目をむいて体をつっぱらせるなど、けいれんの様子はとてもショッキング!初めて見たママやパパは慌ててしまいパニックに陥りがちですが、適切な対応をするため、1~2回深呼吸するなどして、まずは落ち着くよう心がけてくださいね。
① 時間を計る
けいれんを起こしたときにまずしてほしいのは、けいれんが起きてからおさまるまでの時間を計ることです。
発熱、下痢、大泣きなどが原因のけいれんなら、症状は短ければ1~2分、長くても5分くらいでたいていおさまります。落ち着いて時計を見て、できるだけ正確にけいれんの時間を計りましょう。
ただ、初めてのけいれんだと、実際よりかなり長く感じるかもしれません。計り始めがわからなくなりやすいので、できるだけ落ち着いて時計を見ることが大切です。できれば、室内に秒針のついたアナログ時計を置いておくと、いざというとき役立つでしょう。けいれんの持続時間は、後で受診したとき医師に伝えると、診断の目安になります。
② ひきつけ・けいれんの様子をよく観察する
などに注目して、よく見ましょう。
脳のどこかに問題があるなど、何らかの病気が原因で起こるけいれんの場合は、動きが左右非対称になることもあります。けいれんの様子は、持続時間と同じく診断の助けになるので、できるだけ詳しく正確に医師に伝えてください。
③ 顔を横に向けて衣服をゆるめる
けいれん中は、身体をゆすったり大声で名前を呼んだりすると刺激になることがあるので、あおむけで顔を横に向けて寝かせましょう。顔を横向きにするのは、もし何かを吐いたときに窒息しないようにするためです。衣服やおむつなどは、ゆるめてあげましょう。
「けいれんを起こしたら、舌をかまないように割り箸やスプーンなど硬いものを口に入れる」と聞いたことがあるかもしれませんが、これは間違った対応なので絶対にやめてください。けいれん中に口の中に物を入れることで、口の中を傷つけたり、のどに詰まらせたりする危険があります。
④ 周囲の物を片付ける
けいれんが起こっているときには、周囲の物とぶつかってケガをする危険があります。周囲はサッと片付けて、近くに物がない状態にしましょう。
⑤ 5分以上ひきつけ・けいれんが続いたら、救急車を呼ぶ
多くの場合、けいれんは5分以内におさまることがほとんどです。もし、けいれんが5分以上続く場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
ひきつけ・けいれんが5分以内におさまった時は…
5分以内でけいれんがおさまったら、子供の名前を呼んで反応するか、目が合うかなど、意識がはっきりしているかどうかをまず確認しましょう。けいれんがおさまってから、どれくらいで意識が戻って反応したか、時間を計っておくといいですね。
けいれんが5分以内に止まっても、意識がなかなか戻らない、短時間で何度もまたけいれんを繰り返す、左右対称でないけいれんが見られた、などの場合は、急いで受診することが必要です。
なお、5分以内にけいれんがおさまり、その後は意識がはっきりして普段のような様子に戻った場合でも、診療時間内には必ず小児科を受診してください。
まとめ
乳幼児が初めてけいれんを起こした時は、「冷静に」と言っても難しいと思いますが、小児のけいれんの原因として多い①熱性けいれん②泣き入りひきつけ③ウイルス性胃腸炎に伴うけいれんの場合、5分以内におさまる事が多いです。できるだけ落ち着くよう自分に言い聞かせるなどして、子供の安全確保を優先しましょう。
また、けいれんの時のことを医師に伝えられるよう、よく観察することも大切です。けいれんがおさまって落ち着いたら、スマホなどにけいれんの持続時間や様子をメモしておくと役立つでしょう。
いずれにしても、「乳幼児のけいれんは決して珍しいことではない」ということを頭に置いて、いつ起こっても冷静に対処できるよう心がけておいてくださいね。
(文:村田弥生/監修:大越陽一 先生)
※画像はイメージです
日本小児神経学会「熱性けいれん診療ガイドライン2015」
日本小児神経学会「泣き入りひきつけは何故起こるのですか?」
日本小児神経学会「熱性けいれんはどのような病気ですか?」
日本小児神経学会「子どもでは下痢に伴ってけいれんをおこすのはどうしてですか?」
日本小児神経学会「けいれんを起こした時の注意点は有りますか?」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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