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2021年07月03日 13:30 更新

ただ「すごい!」とほめるのはNG!『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』Vol.1

「すごい!」「ダメって言ったでしょ!」などの言葉が、親子関係や子どもの育ち方に影響するかも⁉ 『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした、オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、3~12歳向けの具体的な言葉がけ例を紹介します。

3種類のほめ方、どれが正解?

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(イラストレーター:亀山鶴子/ブックデザイナー:西垂水敦・市川さつき(krran))
「ほめる」とは、「他者の成果やパフォーマンス、あるいは特性に対するポジティブな評価のこと」を指します。〔*1〕つまり評価している側と人の主観で相手の善しあしを決めることなのです。
大きく分けて、ほめ方には3種類があります。

① おざなりほめ(perfunctory)

どういうところがどういうふうによかったのか具体性にかける、中身のないほめ方をする

例:「すごいね!」「上手!」

②人中心ほめ(person focus)

性格(優しさ・気遣いなど)・能力(頭の良さ・足の速さなど)・外見(顔・体形など)といった、表面上の特徴を中心にほめる

例:「優しいね」「頭がいいね」「かわいいね」

③プロセスほめ(process focus)

努力・試行錯誤した手順を中心にほめる

例:「がんばって最後までやりきったね」「失敗してもあきらめなかったね」「いろんな方法を試したね」

たとえば、ごはんをこぼさすに食べた子どもに「すごい、すごい」と言うだけなのがおざなりほめ、「お利口さんだね」と言うのが人中心ほめ、「こぼさないようにスプーンの持ち方を変えてみたのね」と言うのがプロセスほめになります。


おざなりほめと人中心ほめには、4つの問題があります〔*2〕。

1.「ほめられ依存症」になる
2. 興味を失う
3. チャレンジ精神が低下する
4. モチベーションが低下する

ほめるときの3つのポイント

「すごいね」とおざなりのほめ方もダメ、人中心に、「賢いね」と能力をほめたり、「優しいね」と性格をほめたりするのも効果的ではないとすると、いったいどのようなほめ方をしたらよいのでしょうか。

ほめ方には3つのポイントがあります。

①成果よりも、プロセス(努力・姿勢・やり方)をほめる
②もっと具体的にほめる
③もっと質問する

①成果よりも、プロセス(努力・姿勢・やり方)をほめる

子どもをほめるときに大切なのは、能力や性格をたたえるのではなく、取り組んでいる過程での努力や挑戦した姿勢、やり方を工夫した点などに言及し、励ましてあげることです。

たとえば、子どもがテストで100点をとったとします。「100点とれたなんて、本当に頭がいいね!」とおおげさにほめる代わりに、「100点をとれるまで努力してきたんだね!(努力)」「いろいろなやり方を試して、答えを導きだせたね!(やり方)」というような声かけをしてあげましょう。
これによって子どもは、もし次のテストで低い点数をとっても、「自分に能力がないから、できなくてもしかたない」とあきらめるのではなく、柔軟にいろいろな方法を試すことで成功できるかもしれないとがんばれるようになるのです〔*3〕。

もちろん子どもが努力をしていた場面を見ていないとき、あるいはそのがんばりの様子を子どもから直接聞いていないときは、プロセスにコメントをするのは誠実さにかけます。
この場合は、次にご紹介するように、見たままの具体的な感想を共有したり(もっと具体的にほめる)、子ども自身に質問(もっと質問する)をしてみましょう。

③もっと具体的にほめる

おざなりほめにたりないのは具体性です。
「すごいね」と言われて具体的な理由なしには自分の優れているところ、また努力が必要なところがわかりにくいものです。

たとえば、上司に「いいね!」と言われるのと、「細かいところまで注意を払った様子がよくうかがえる資料で、とてもわかりやすかったよ」と言われるのでは、どちらが自分の長所に目がいくでしょうか。

「よく書けた文章です」と言われるのと、「各章のまとめが的確で、全体に一貫性があって、非常に読みやすい文章だった」と言われるのでは、どちらがスキル向上に役立つでしょうか。

このように具体的なフィードバックをもらった場合のほうが、次のパフォーマンスに向けてモチベーションが自然と上がります〔*4〕
「プロセスほめ」でも見たように、途中経過の努力や姿勢、工夫などに言及しながら、具体的にどんなところがよかったのかを子どもに伝え、「すごい」の口ぐせから脱却してみましょう。

見たままを具体的に描写するのも手法のひとつです。
「上手」「よくできました」と大人の評価を押し付けることを避け、見たまま(色・形・数など)を具体的に」表現してみる のです。
たとえば、子どもがおもちゃのレゴをつくってあなたに見せにきたとします。それを評価したり、おざなりに言うのではなく、具体的に「たくさんの色を組み合わせたら、カラフルになったね!」「ここには違う色を使ってみたんだね!」というような声かけをしてあげましょう。

③もっと質問する

ほめる言葉を伝えるだけでなく、子どもにもどんどん質問しましょう。
大切なのは、子ども自身がどう感じたか、どう思ったかということであり、親がどう思うかはそれほど重要ではありません。

質問するときは、「楽しかった?」など「はい」か「いいえ」で答えらえるような広がりのない選択解答形式の質問を避けることが重要です。
「どういうものをつくったのか教えてくれる?」など、会話のキャッチボールができるような自由回答形式の質問をしましょう。

さらに最上級形容詞(もっとも、いちばん)を使って自由回答式の質問をするのも情報を引きだすのにとても有効的です。「もっとも」「いちばん」という言葉をつけ加えるだけで、漠然とした質問から、具体的な質問に変化させることができます。

ここでも具体性が重要になります。たとえば幼稚園や保育園などのお迎えに行ったときに「今日はどんな日だった?」と聞いても「わからない」とか「知らない」と子どもに回答された経験はありませんか。これは、子どもがたくさんあるできごとのなかから情報を整理しきれないからです。
「今日、お友だちと一緒にいて、いちばん楽しいことはなんだった? どうしてそう思うの?」というような的を絞った質問をしてみましょう。
*1Kanouse,D.E.,Gumpert,P.,&Canavan-Gumpert, D. (1981). The semantics of praise. New directions in attribution research,3,97-115.
*2 Kohn, A.(1999).Punished by Rewards: The Trouble with Gold Stars, Incentive Plans, A’ S, Praise, and Other Bribes. Houghton Mifflin Harcourt.
*3 Dweck, C. S.(2008).Mindset: The new psychology of success. Random House Digital, Inc..
*4 Hattie, J., & Timperley, H.(2007). The Power of feedback. Review of educational research, 77(1),81-112.

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「すごい!」「よくできたね!」「さすがお姉ちゃんだね!」
よかれと思って、そんなほめ方をしていませんか?

「ダメって言ったでしょ!」「早くしなさい!」「どうして約束が守れないの?」
しつけのために、そんな叱り方をしていませんか?

「ほめる」「叱る」の声かけ次第で、親子関係や子どもの育ち方に大きな影響が見られます。日本人に多いとされる「自己肯定感」の低い子どもは、謙遜文化による「ほめ不足」が原因ではなく、「非効率的なほめ方や叱り方」が原因かもしれないのです。
注目が集まっているプログレッシブ教育(進歩教育、オルタナティブ教育)の代表格である「モンテッソーリ」と近年最注目の「レッジョエミリア」を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士による、エビデンスに基づく最先端の教育メソッドをほめ方叱り方という「声かけ」に落とし込んだ画期的な子育てバイブルです。

(文:島村華子『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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