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2019年11月27日 10:00 更新

「価値観はそれぞれ」押し付けはやめて<あき先生の出産・育児コラム>

妊婦さんや育児中のパパママのお悩みに、ベテラン助産師さんが答える「あき先生の出産・育児コラム」。今回のテーマは『価値観の押し付け』です。妊娠・出産・子育てにまつわる何気ない一言に、傷ついたり、心が重くなったりした経験を持つ人も少なくないでしょう。そんなとき、どう受け止めていけばいいのでしょうか

無意識の「価値観の押し付け」

育児をしていると、年長者の方に「今が一番いいときよ」と言われたことがありませんか?

また、「男だから仕事が最優先」とか、「こんなに小さいのに保育園へ入れるなんてかわいそうだ」とか。

悪意のない表現とはわかっていても、そのような価値観の押し付けに傷ついている方もいます。わたし自身傷ついたこともあるし、無意識に傷つけてしまったこともあるでしょう。

そんな、悪意ない価値観の押し付けについて、思っていることをまとめました。

私は母親失格なの?

先日このようなお悩みを聞きました(お子さんは3歳男の子)。

このような思いを、勇気を出して親戚の女性に話したそうです。
すると…。

「なに言ってるのよ~ 今が人生で一番いいときよ~
主婦なんて子どもと遊んでたらいいんだからうらやましいわ~!」

そう言われて、腰が抜けそうになったそうです。
このママのお気持ち聞いてみると、心が壊れそうと感じているには理由がありました。

このママは、このように思っていたのではないでしょうか。

「今が一番いいときよ」……こんなにイライラする今が “一番いいとき” だなんて耐えられない!
「女の幸せは男の仕事を支えることだ」……男性も女性も同じ!支え合って仕事をしたい!
「保育所に入れるなんてかわいそう」……私は保育所に預けて仕事がしたい!

きっと、実際に想像していた育児と現実の生活の違いに葛藤し、本当の気持ちに蓋(ふた)をしていたため、「心が壊れそう」で「自分が自分じゃないみたい」と感じていたのだろうと思います。

Lazy dummy

価値観は人それぞれ

価値観はさまざまで、全員違います。
でも、そんな価値観を押し付ける表現はよく耳にします。

たとえば、このように。

「子どもを産んで、ようやく一人前よ」

→妊娠したくても授からない人もいる。不妊で流産くりかえしている人もいる。
一人前ではないって完全否定された人の気持ちを考えてみて!

「困ったことは夫婦で相談するのが一番」

→夫婦で相談できる夫婦もいれば、できない夫婦もいる。
浮気や暴力を繰り返す男性や、心を病んでいる男性もいる。
夫婦で相談できなくて、ひとりで踏ん張っている人が言われたらしんどいよ。

生き方はいろいろ。
話さないだけで、当事者しかわからないこともあるのですから。

価値観は時代とともに変化する

わたしは今までに、多くの「〇〇べき」論を耳にしました。
なかには、現在ではありえない価値観の押し付けをされたこともあります。

「男性をキッチンに入れたら女が廃る(すたる)」
「女性が仕事をしていたら、子どもは非行に走る」
「離婚したら、まともな子どもは育たない」
「女性は生理があるから不安定で、仕事能力が低い」
「女性は25歳までが結婚適齢期。26歳過ぎたら売れ残り」

どれも、令和の現代に聞いたら炎上するものばかりです。

自分の経験だけで「ふつう」は語れません。

価値観の押し付けよりもしてほしいことは

「今が人生で一番いいときよ~」という表現には、悪意は100%ありません。
でも、言われた側は「こんなにしんどい時期が、一番いいときだなんて…!」と衝撃を受けました。

このママは、なんと言ってってほしかったのでしょうか。
「しんどいのね」
「わかるわよ、わたしも辛いときあったのよ」
「あなたは毎日よくがんばっていると思うよ」
「どうしてもしんどかったら預かるから言ってね」

そんな、共感・尊敬・支持やサポートなのではないでしょうか。

育児中は、自分の思いを受け止めてもらえるだけでラクになることがたくさんあります。
価値観はさまざまで、自分の当たり前が相手の当たり前とは違う可能性がたくさんあります。
“こういうものだよ” と押し付けられることで、苦しくなるママもいます。

自分の経験だけで “ふつう” は語れません。
育児の価値観は時代ともに変わり、“〇〇べき” という正解もありません。

わたしは、価値観を押し付けることなく共感を心掛けたいと思っています。

Lazy dummy

(文:直井亜紀先生)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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