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2024年06月19日 10:31 更新

朝5時起きで少年野球の球拾いをするパパたちの姿に「仕事を言い訳にできないな」。あばれる君の子育て/インタビュー【2】

子どもたちにも大人気の芸人・あばれる君は7歳と2歳の男児を育てるパパ。上梓したばかりの初エッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』では、濃厚な子どもとの関わりを綴っています。いま、その中心となっているのが、長男の少年野球。生きる上で大切なことがそこには詰まっていたといいます。

■「負け」を認めることは「強さ」になる

ーーもうすぐ第三子が誕生しますね。我が子を見ていて、成長を感じるのはどんなときですか。

あばれる君 長男は小学校に入学して少年野球のチームに入ったのですが、野球を始めた前後で変わったなと思いますね。子どもって、自分が負けることがすごくイヤなものじゃないですか。カードゲームに負けるたびに泣いたり……でも、生きる中で負けることは当たり前にある。どうやってそのことを学べるかなと思っていましたが、野球を始めてから、少しずつ負けた自分を受け入れることができるようになってきているように見えます。ただ、まだ息子を厳しい言葉で叱ることもありますが。

ーーどんなときにですか?

あばれる君 負けを受け入れられないときは、ふてくされていたり、練習態度が悪かったり、表面に出ているのでわかりやすいんです。そういうときは、「自分の気持ちを立ち直らせるのは、自分しかいないんだよ」と教えます。まだ息子は完全には理解していないと思いますが、できる限り言葉で伝えたいんです。

ーーエッセイに登場する運動会のエピソードで、「1位を決めない運動会」への違和感と、「負け」から得られる大切なことについて書かれていますよね。

あばれる君 負けることそのものよりも、「負け」を認められないことが、弱さだと思うんです。「負け」を飲み込めるということは、自信の裏返しでもあると思います。だから子どもには「負け」を繰り返して強くなってほしいし、多少の失敗は糧にできるようになってほしい。自分がそうやってきましたから。この芸人人生、失敗して失敗して、修正してきましたからね。

ーー大事なことをご自身の経験を言葉で教えてくれるお父さん、いいですね。

あばれる君 言葉にするまで、僕もかなり時間がかかりました。どう言い表せばいいのかな、と。それで本を読んで学んできました。

ーーどんな本を読んだんですか?

あばれる君 コンビニで売っているような、『ブッダのありがたい言葉』みたいな本です。

ーーいわゆる「子どもの心を伸ばす言葉かけ」みたいな、育児に関する本ではないんですね。

あばれる君 そうですね。だって、四千年も前から現代に伝わってきているんですよ。ってことは、そこにはやはり確かな真理があるんじゃないかなと思っています。

父子の豪快な寝姿。完全に挟まっています(提供写真)

■怒らない育児に憧れるも……「怒らないのはやっぱり無理!」

ーー子どもに教えることで、翻って大人側の理解も深まりそうですね。とはいえ、感情的に叱るようなことも……?

あばれる君 ありますね。最初は「叱らない子育て」に憧れていたんですが、無理でした! 叱らなきゃいけないときがやっぱりあります。ここは子どもにしっかり伝えなきゃいけないと思ったときは、厳しく指導しますね。結構、効いているみたいです。

ーー「パパは怒ると怖いぞ」と。どんなときに怒るのですか?

あばれる君 たとえば野球の練習中、子どもが勝手に機嫌を損ねて周囲の大人たちに気を使わせるような態度を取ったら、それは自分の息子として恥ずかしいです。
 少年野球って、すごく大勢の大人たちがかかわって、一生懸命環境を整えてくれているんですよ。子どもには、衣食住があって、なおかつ、大人がグラウンドの予約をしたりして、それで初めて野球ができている……ということに気づいて、感謝の気持ちを持ってほしいなと思います。

ーー少年野球やキャンプなど、長男とは特に密に関わっているようにお見受けしますが、どんなふうに「2人の時間」が定着したのでしょう。

あばれる君 一時期、仕事が忙しくなって、子どもとの時間がなかなかとれなかったんです。やっと忙しいのが一段落ついたときに、子どもを連れていろんなところに行って、思いっきり遊んだことが始まりでしたね。これは楽しいぞと。そして、子どもはどんどん成長していくので、思った以上に親子で過ごせる時間は少ないことに気づきました。
 少年野球を始めたいまは、土日は必ず僕も練習に同行しています。昨日も朝5時に起きて息子の試合に行ってきました。そのあと防災イベントに出て、いきものがかりさんのライブにも出させてもらったんですけど。

■早朝5時起きで子どもの朝練に付き合うパパたち

ーー朝から夜までフル稼働の一日ですね!

あばれる君 さすがに朝5時起きで練習に付き合って球拾いをやって、イベントとライブで、ちょっと疲れましたね(笑)。でも長男の入っている少年野球チームは、平日も含めていつも朝練があるところがすごく良いと思っていて。子どもは朝5時起床で6時から7時半までグラウンドで練習するのですが、学校に行ってから勉強にも集中できているようです。朝から充実していますね。

ーー朝練って自由参加だと思うのですが、チームのみなさん来ているんですか?

あばれる君 そうですね、結構な人数が来ますよ。仕事の前にグラウンドに集まって朝練のお手伝いをする先輩パパさんたちの背中を見て、僕も「仕事があるから」とか言い訳してられないな、と思うんです。
 僕自身が純粋に野球が好きというのもあるんですが、長男が生まれてから7歳になるまでって、信じられないくらいあっという間だったんですよ。「このままだとすぐに大人になるぞ……!」と思ったら、1日1日大切にしようと思って。うまくできているかはわかりませんが、濃密な時間を過ごせるように心がけはしています。

ーーあばれる君も子ども時代、野球をやっていたんですよね。

あばれる君 はい。でも父は教員だったので、僕が部活や少年野球をやっているとき、父も自分が顧問を務める部活の指導をしています。だから土日に野球の試合があってもぜんぜん来てもらうことができなくて、子ども心に寂しかったのを覚えています。たまに来てくれると、すごくうれしかった。子どもにはそのうれしさを味わってほしいと思います。

ーー少年野球を通じてパパ友もできましたか?

あばれる君 徐々にですね。息子が入ったときから、チームメイトのパパ同士が仲良く喋っているのを見て「うわあ、うらやましい」と思ったので、自分から積極的に話しかけにいっています。もともとそういうコミュニケーションが得意な人間じゃなかったんですけど、そんなの言い訳なので……それを飛び越えるために行事にもどんどん参加するようにしています。

■「やることをちゃんとやっている」先輩パパ芸人たちの姿が励みに

ーー苦手意識を払拭したんですね。

あばれる君 先輩パパさんたちはみなさん優しくて、いろいろと話しかけてくれます。お笑い芸人以外の人と付き合うのがほんとうに久々なので、新鮮な体験をさせてもらっています。
 そうした交流は子どものためにも自分のためにも重要なことだと思うので、野球や学校行事への参加は忙しくても続けていきたいです。あっ、この前、小学校に迎えに行ったとき、小学生が僕を見て「わー!」と言ってくれて、うちの子どもだけは何も言わないみたいな光景が新鮮でおもしろかったですね。

ーーあばれる君の小学生人気はすごいですもんね!

ーー最後に、お子さまたちに、どんな大人に成長してほしいかうかがいたいです。

あばれる君 基本的なことですね。挨拶や感謝の言葉をきちんと言える。友達を思いやって大切にする。誠実である。……とかですかね。僕、5人のお子さんを育てている先輩パパのつるの剛士さんの子育てを尊敬しているんです。つるのさんのお子さんたちのように、のびのび育ってほしいですけどね。

ーー今、有吉弘行さんやバカリズムさんなど、40~50代の芸人パパさんも増えていて、比較的オープンに男性たちが育児の話をする土壌が育っていると感じます。

あばれる君 そうですね。土田(晃之)さん、庄司(智春)さん、小島よしおさんもそうだし、尾形(貴弘)さんだって春日(俊彰)さんだって、みんなあえてそれを前面に出さないけれど、やることをちゃんとやっているからすごいですよね。そういう先輩の姿は励みになりますね。
 僕はこれから3人の父親になりますが、石に食らいついてでもがんばって子どもたちを育てていきたいです。家族を幸せにすることで、ほかの家族にも幸せを配れると思うので、まずは自分の家庭を充実させることが目標です! 僕は完璧ではないけれど、いいことばかり言っちゃってすみません!

・あばれる君/お笑い芸人

1986年9月25日生まれ、福島県出身。ワタナベコメディスクール9期生として入学し、2009年にデビュー。2015年2月、『R-1ぐらんぷり2015』決勝に進出。2020年5月より自身のYouTubeチャンネルでポケットモンスターのゲーム実況を開始すると、特異な実況スタイルで人気に。大学在学中に中学社会科と高校世界史の教員免許を取得。2022年には世界遺産検定1級に合格。2013年に高校時代から交際していたゆかさんと結婚。2015年に長男が、2021年に次男が誕生した。まもなく、第三子が誕生予定。

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(撮影:松野葉子 取材・文:有山千春)

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