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2023年09月09日 07:07 更新

「前から/上から見たらどんな形?」切った大根で“形への関心”を育てよう|「数学力」が育つ言葉がけ#3

「数学の力」というと早くても小学生以降…というイメージかもしれません。しかし、もっと幼い2歳からの言葉のかけ方次第で子ども数学力は伸びるのです。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(植野義明 著)より、幼児期の今しかできない、家庭での言葉がけのヒントをご紹介! 第三回は「食材をカット」です。

「形への関心」が育つ言葉がけ

いろいろな形に興味をもち、前・後・左・右などの方向を表わす言葉もある程度自由に使えるようになったら、この章で紹介する地図作りなどの遊びで、平面や立体の感覚を育ててみましょう。

形は、もともと現実に存在するものの形ですが、立体の形の特徴を正確にとらえることは、見ただけではむずかしいことがあります。そこで、いろいろな視点から立体を眺めたり、立体を切って、その切り口がどうなるかを見て話題にするなど、立体に対して積極的に働きかけることがポイントです。

平面の図形にもいろいろな面白い特徴をもったものがあります。1つの図形をずらしたり回転したりしていくつも並べたり、裏返したりすると、全体で1つの統一性のあるパターンができます。このような図形の特徴を遊びながらとらえられるようになると、形への理解がさらに深まります。

形についても、親が教え込むのではなく、自然な会話の中で図形が見せてくれるいろいろな側面を子どもといっしょに楽しむのがコツです。子育ての時間を利用して、図形感覚を親子でいっしょに伸ばす機会にしてしまいましょう。

立体感覚を養う|手にもって遊ぼう

「前から見たらどんな形?」「上から見たらどんな形?」

※画像はイメージです

幼児期には、平面に描かれた図だけでなく、立体への興味もぜひ伸ばしておきたいところです。小学校の算数では立体を扱う時間が少なく、探求する時間はさらに限られてしまいます。では、立体感覚を育てるには、どのような言葉がけをすればよいのでしょうか。

立体図形は、身のまわりにあふれています。身のまわりにある物の中から、四角いものを探したり、丸いものを探したりすることは、ゲームとしてとても楽しめます。丸いお皿だけでなく、四角いお皿もあることに気づくと、そこからまた新たな疑問や興味がわいてきます。

また、コップは真上から見ると丸いのですが、真横から見ると四角く見えることに気づきます。四角い箱も、よく見ると、真上から見たときは「ましかく」で、真横からは「ながしかく」に見えることがあります。

立体実験イラスト
イラスト:Mariko Minowa
「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より

子どもに、「前から見たら、どんな形に見える?」と言葉をかけると、真剣に前から見ようとして、しゃがみ込むことがあります。さらに「上から見たら、どんな形に見える?」と言うと、子どもは上から見ようとして椅子の上に上ることがあるので、転ばないように注意してください。

このように、立体感覚は、現実にあるいろいろなものに触れ、またよく見ることによって発達します。見ただけでは、物の裏側はわかりません。立体感覚を身につけるには、ただ見るだけでなく、実際に手でさわってみたり回してみることも大切です。

例えば、毎日の料理は立体感覚を育てる貴重な機会です。立体は見る角度によって違う形に見えることが理解できたら、次に立体を切るとどんな形が見えてくるかを試してみるとよいと思います。これも1つの実験として行います。

食材をまな板の上で切ったときに、切り口にはどんな形が出てくるか、実際に切る前に子どもが予想を立てるように働きかけてみましょう。

ダイコンもニンジンも、身近な野菜です。そこで、「いまから切るよ。さあ、何が出てくるかな?」と、少し大げさなくらいにもったいぶって話しかけるのがコツです。

立体を切るとどんな形になる?

立体イラスト
イラスト:Mariko Minowa
「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より

スーパーで買ってきたダイコンは、だいたい円筒形です。これを縦に切って見せると、切り口の形は「ながしかく」になり、真横に切ると、切り口は丸になります。一方、ニンジンの先のほうはほぼ円錐形なので、縦に切ると三角が見えます。ただし、この実験は包丁を使うので、十分に注意してください。

直方体のプロセスチーズの角を斜めに切ると、切り口は三角になります。直方体は四角いものという先入観をもった大人のほうが、その驚きは大きいかもしれません。

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\言葉がけのコツ/

大げさにもったいぶって話しかける

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\「考える力・見つける力」の芽を育てよう/

いつでもできる簡単な言葉がけで子どもの数学力(算数力)は大きく伸びます。

■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします
子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。

■考える力の「芽」を育てよう
小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。
「こっちには何個入っているかな?」
「点をつないだら、何に見える?」
「これと同じ形はできるかな?」
「どうしたらいいと思う?」……などなど、
少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。

■2~6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト
著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。

著者|植野 義明(うえの・よしあき)先生について

東京大学非常勤講師、くにたち数学クラブ代表、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退任と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)がある。

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