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2023年09月07日 07:07 更新

「チャーハンには何種類の材料がいる?」の問いかけで、数を数える場面を作り出そう|「数学力」が育つ言葉がけ#1

「数学の力」というと早くても小学生以降…というイメージかもしれません。しかし、もっと幼い2歳からの言葉のかけ方次第で子ども数学力は伸びるのです。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(植野義明 著)より、幼児期の今しかできない、家庭での言葉がけのヒントをご紹介!第一回は「チャーハンの材料数」です。

「数への興味」が育つ言葉がけ

ちょっと注意して見回すと、わたしたちの日常にはいろいろな数字があふれていることがわかります。数にはものの量を表わすだけでなく、位置や順序を表わす働きもあります。数のもつ、そうした多様な側面への「気づき」を、子どもとの会話の中で深めていくことができます。

計算は単なるスキルではなく、足し算や引き算の意味を理解することが大切です。「あといくつ?」は、足し算の考え方を引き算へと自然に応用し、引き算の本当の意味が、知らないうちに自分のものになる魔法の言葉です。

1+1が2にならないこともあるよという、子どものちょっとした発見も、現実の事象を単純化して示す数学の役割に気づく対話のきっかけとすることができます。

ほんの少し会話や話しかけ方を変えるだけで、親子の対話が弾んだものになり、子どものわくわく感が大きくふくらみます。

数に親しむ|数を数える場面を作り出そう

「チャーハンには 何種類の材料がいるかな?」

※写真はイメージです

日常の何気ない会話の中で興味をもてる話題を選ぶことで、子どもがかぞえる場面を自然に作ることができます。

例えば、今日のお昼は、あり合わせの材料でチャーハンを作ることにしたとします。冷蔵庫から、ニンジン、玉ねぎ、ハム、玉子を出しながら、子どもに、「チャーハンを作るには、何種類の材料がいるかな?」と聞いてみます。

すぐには答えが出ないときは、さらに「3つかな? それとも、4つかな??」と聞いてみると、子どもはまな板の上の材料を見て答えます。「あ、お母さん、大切なものを忘れているよ。ご飯がなくちゃ、チャーハンは作れないよ」と教えてくれるかもしれません。

2歳児くらいまでは、「種類」という言葉が何を意味するのか理解しにくい場合があります。1本1本のニンジンは手にもってかぞえることができますが、ニンジンという「種類」は抽象概念なので、かぞえることがむずかしいのです。

そこで、小さい子には、冷蔵庫から出したばかりのときにかぞえます。3歳以上になれば、コマ切れになっていても、ニンジンはニンジン、玉ねぎは玉ねぎと、種類の数で考えることができるようになります。

子どもをキッチンに入れられないのであれば、食事をしながらでも会話はできます。「今日のチャーハンには何種類の材料が入っているか、かぞえてみよう」と言葉がけをすることで、食べることが楽しくなり、具材に関心をもつようになるかもしれません。

チャーハンイラスト
イラスト:Mariko Minowa
「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より

楽しく食べながら、足し算もしてみましょう。

例えば、「ピーマンも入れたら、もっと色がきれいで美味しそうになるかもね」と言ってみるのです。色がきれいになると聞いて、ピーマンが嫌いな子も少しは興味をもってくれるかもしれません。「ニンジン、玉ねぎ、ハム、玉子の4つにピーマンを入れたら、材料は全部でいくつになるかな?」と聞いてみます。

もちろん、すぐに「5つ」という答えが返ってきますが、ここで、答えを言うだけでなく、足し算を教えることができます。「4に1を足したら5だから、4足す1は5、つまり、5つだね」と教えます。あるいは、「4の次は5だから合わせて5つだよ」と、子どものほうから言ってくるかもしれません。

小さい子どもは、「いち、に、さん、よん」と数字を呪文のように唱えて覚えているだけですが、3歳児になると、「5は4の次だから、4より1多い」というふうに、数字を量と結びつける理解ができてきます。子どもにおはじきやお菓子などを見せて、「何個ある?」と聞いて、4つと答えたら、「じゃあ、もう1つ足すと?」と聞いてみます。

このとき、もう一度最初からかぞえ直す子どもは、かぞえた結果が数になることは理解していても、4に1を足すと5になることはまだ理解していません。「かぞえる」という行為は単純そうに見えますが、子どもの心の中で実際に起こっているプロセスは、成長段階に応じてさまざまです。

どんなやり方でも、答えが出たら「よくわかるね」「えらいね」などと褒めてあげましょう。同じ話題は引き算にも応用できます。例えば、うちのチャーハンは、ニンジン、玉ねぎ、ハム、玉子が入っているのが定番だということを子どもが理解しているとします。

ある日、お母さんが冷蔵庫を覗くと、ハムがありません。「あれ、今日はチャーハンを作ろうと思ったのだけど、ハムがないわ…」とつぶやいてみます。「えー、そうすると、今日のチャーハンに入る材料は3種類になっちゃうよ」「そうね、4ー1だから、3種類ね。でも、ハムが入ってないと美味しくないよ。どうしよう」といっしょに考えます。

「そうだ、ハムがないなら、焼き豚かカニかまぼこを入れてみたら?」ということになるかもしれません。「そうすると、チャーハンには何種類の材料が入ることになる?」答えは、3+1=4で4種類です。

こんなふうに、毎日の食事の会話を楽しみながら、数や計算への興味につなげていけたらいいですね。他の料理や、お出かけ前の持ち物チェックなど、生活の中のほかの場面にも、同じような会話を応用できます。

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\言葉がけのコツ/

身近なもので足したり引いたりしてみる

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■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします
子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。

■考える力の「芽」を育てよう
小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。
「こっちには何個入っているかな?」
「点をつないだら、何に見える?」
「これと同じ形はできるかな?」
「どうしたらいいと思う?」……などなど、
少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。

■2~6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト
著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。

著者|植野 義明(うえの・よしあき)先生について

東京大学非常勤講師、くにたち数学クラブ代表、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退任と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)がある。

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