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2023年08月04日 23:28 更新

子どもはもう1人欲しい、でも今はとてもそんな気分になれなくて【運命の人とレスになりました。美咲編vol.5】

最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。

「週1はしたい」って言われてもね……

育休を終えて職場に復帰した美咲。大輔は仕事が忙しく、子どもの送迎も保育園の準備も食事も寝かしつけも、ほとんどワンオペ状態の美咲は、心が疲弊して……。

子どもはもう1人欲しい、でも今はとてもそんな気分になれなくて【運命の人とレスになりました。美咲編vol.5】

職場復帰をして5ヵ月目。
蓮は来月、1歳になる。
スクスク成長してくれてとても嬉しいけれど……ママはフラフラだよ。
だって、共働きなのに、私の子育ての負担割合がハンパないからっ‼
具体的には、朝と夕の送り迎えはもちろん、蓮の離乳食、入浴、寝かしつけ、体調管理や発達段階に合わせた知育・読み聞かせまで、ぜーんぶ私。
これに仕事や義母への気遣いもプラスされるので、完全に身体的にも精神的にもキャパシティーを超えてるよ。

会議中に急に園から連絡があった時の恐怖とか、「蓮くんと一緒にいられて嬉しい!」と快くOKしてくれる義母にちょっとしたものを渡す面倒とかが、イマイチ理解できてない大輔は、
「またイライラしてる?」
程度にしか思っていない。
説明したって「ふーん」だし……最近あんまり笑顔で大輔と喋ってないな……。

でもこんな状況で、大輔とスキンシップしたいなんて思うはずないじゃん。
だから、夜のお誘いがあっても、角が立たないように、4回に3回はやんわりと断っている。

「まーた断られた(笑)。俺は週に1回はしたいんだけどな~」
週に1回って多くない? 耐えられない……。
ちなみに私は、月に1~2回が理想だ。
本当はあまりしたくないけれど、それも妻の務めだと思うし、いずれは2人目も……と考えているから、雰囲気が悪くならないよう月に1回は頑張っている。
仕事、家事、子育て、義実家との付き合い、大輔の相手。
多少の不満はあるけれど、私さえ頑張れば、家庭はうまくいくんだから。

でも、この積もり積もった不満が爆発してしまうのは、わりとすぐだった。

確かに2人目は欲しいんだけど……

今日は、雲一つない快晴っ!
ということで、3人で動物園に来ています!
……が、すでにイライラしている私。
だって、大輔ったら出発ギリギリまで寝て、さらにモタモタしてるんだもん。
気を利かせてしてくれた皿洗いも、スローペースだし、何度言っても水は出しっぱなしだし。
大きな子どもがいる気分だよ。

今もイライラするけど、家族の前では、ちゃんと“母親”の役割を果たさないと。
「蓮~! ゾウさんだよ~! 赤ちゃんが2頭いるね。きょうだいみたいだね」
「きょうだいかあ。そういえば、いつから妊活始める? 2人目の」

こういう話になると急に嬉しそうになるのが、ちょっとイラつく。

「だいたい1年半~2年は空けた方が母体にはいいらしいよ」
「じゃあ、来月で蓮も1歳だから……」
「職場の事情を考えると、私は2年後くらいがいいかなぁ」
「OK。じゃ、心の準備しとくよ。じゃ、さっそく今夜予習しようか?」
「え? 今夜するってこと?」
「ダメ?……俺は美咲が好きだから、妊活のためだけにするっていうのは考えてないよ」
「……わかった」
真昼間の動物園で、なんつー話をしてるんだコイツ……。
正直引いたけど、ここで断って、いざ2人目が欲しいタイミングで妊活できないなんて事態だけは避けたい……。
私、子どもは2人って決めてたんだ。我慢しなきゃね。

その夜。
蓮を寝かしつけた後リビングに戻ると、待ってましたと言わんばかりに大輔がキスしてきた。お姫様抱っこで大きなソファに私を運ぶ大輔。
最近は蓮が起きないように寝室でするのを避け、リビングで事に及ぶようにしている。
全身にキスを浴びても、心は上の空だ。大輔と出会った頃は、お姫様抱っこも、こうしてつながっていることも幸せでしかなかったのに。
今は、大輔とつながればつながるほど、憎いような気持ちが湧いてくる。
事が済むと、大輔はすごく満たされた表情で撫でてくる。
「好きだよ」
「私も好きだよ」
いつしか、セックスのときだけじゃなく、大輔に対して演技をするようになった気がする。
正直、イチャイチャする時間さえ生理的に嫌だなと思ってしまうことがある……。

ああ、もう全部、無理!!!

終わった後、すっきりした顔の大輔が
「最近、元気がなかったみたいで心配してたけど、安心したよ。またしようね!」
と言った。
“また”……というワードにカチンときた。
こちらの気も知らないで、自分のしたいようにしている大輔にイライラした。

「美咲、次の日曜はどこ行く?」
「え? 次の日曜日もどこか行くの?」
「うん! だって今日すごく楽しかったし。4人家族になったら大変だから今のうちにさ?」
今度は、“楽しかった”というワードにすごくイライラした。

大輔がすごく楽しかったのは、大輔がしなくて済んでいることを、ぜーんぶ私がやってるからだよ?
なんでそんなことにも気づかないんだろう?
無理。
普段の疲れに外出の疲労も重なっていた私の口から、とっさに大きな声が出た。

「無理っ‼」

「どうした? 急に大きな声出して……来週は出かけたくない?」
「無理! こっちは、家のこともしなきゃいけないし、蓮のお世話や仕事だってあるんだよ⁉ 日曜日くらい休ませてよ!」
「どうしたんだよ? 今、それとこれとは関係ないだろ? 日曜日に出かけるだけじゃん」
「大輔にとっては“出かけるだけ”だからいいよね? 外出するのに準備もしたことないし、帰ったらソファに寝転がっていられるもんね?」
「なんでそんなにつっかかってくるの? 俺、子育ても家事もちゃんと手伝ってるじゃん」
「その“手伝う”っていうのが嫌なの!」
「美咲、今日は疲れちゃったんだね。明日になれば落ち着くよ。今日はもう寝て……」
「“明日になれば落ち着く”⁉ その程度のことしかしてない大輔と一緒に出かけたくない! こんなんじゃ2人目なんて無理! ていうか……したいと思わないよっ‼」
「美咲っ! ちょっと待っ……」
大輔の言葉が追いかけてきたけれど、遮るようにトイレへ逃げた。

今のは、さすがに言い過ぎた。
自分で望んだ結婚と子育てなのに……。
うまくできない自分に一番イライラする。
大輔に気づかれないように、トイレの中で声を殺して泣いた。
寝室のベビーベッドでは、蓮がスヤスヤと眠っている。
少し泣いたら、また日常に戻らなきゃ……。

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