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2023年07月08日 08:08 更新

厳しいしつけや叩くことから卒業を!親子で安心できる我が家を作るためにできること|高祖常子さんインタビュー前編

虐待されていた子が亡くなるニュースを目にし、心を痛める人は多いでしょう。一方で、「子どものため」と思って厳しくしつけようとしたり、イラッとしてつい手が出てしまうケースも珍しくありません。保護者として、子の将来のためにはどう接すればいいのでしょうか?『感情的にならない子育て』著者の高祖常子さんにお話を伺いました。

「しつけ」は、自分で考え行動できる大人になるためのサポート

――真面目だからこそ「ちゃんとしつけないと!」と思って子どもに厳しくしてしまうママやパパもいます。そもそも、しつけって何なんでしょう。

高祖 しつけは「将来、子どもが自分で考えて生きていけるようになる」、言い換えれば「子どもが将来、自立・自律する」ためのもの。
大人になった時にいろいろな人の意見を聞きながら、自分で考えて、自分で決めて生きていけるように、親や周りの大人が応援していくのがしつけです。

――「しつけ」と思って子どもに厳しく接していたら、子どもへの応援にならないんでしょうか?

高祖 ちゃんとしつけなくちゃ、と思って接すると、子どもに「あれしてこれして」と指示してしまいますよね。でも、そのやり方では人の指示に従うようになるだけで、子どもの自律・自立心を育てることにはならないんです。

子どもに「将来どんな大人になってほしいか」

――あれこれ厳しくしすぎることは、かえって子どものためにならないんですね。

高祖 子どもを厳しくしつけようとする前に考えてほしいのが、「子どもには将来どんな大人になってほしいか」ということです。
私が講演などでお話しする時にも、親御さんに向けて「どんな大人になってほしいですか?」とよく聞くんです。すると「優しい人」「人の役に立つ人」「自分の意見が言える人」などが出てくる。
では、日々の中でしつけと思って「宿題まだやってないの」とか「早くしなさい」と親があれこれ言い続けていたら、そういう大人に育っていくのかどうか考えてみてほしいんです。

――親の言うことを聞くのはいい子に思えても、将来を考えるとそうとは言い切れないんですね……。

高祖 親もついあれこれ言ってしまうけれど、子どもが将来、意見を求められた時に「いや、私には意見なんかないので、言われたことをやります」と答える大人になってほしいわけじゃないはず。
自分で考えて、自分で行動できるようになった方がいいですよね。
そう考えると、子どもとの関わりの中で「ああしなさい、こうしなさい」と言い続けることは、「子どもになってほしい将来像」とズレてしまうことになりますよね。

――子どもを叱ることもあると思いますが、それはいいんでしょうか?

高祖 叱っちゃいけないというわけではないんです。ただ、毎回叱ってばかりいたり、細かく指示を出すだけなのは、子どものためにならないということ。
子どもの幸せを願い、「こういう大人になってほしい」という思いを大事にしながら、日々の子育てを考えていくと、一方的なしつけなどではなく、子どもの気持ちを尊重した上で「これはどうするのがいいと思う?」などと相談しながら解決していけるような親子の関わりに変わっていくと思います。

叩いた後に後悔する親は90%。体罰は親子の両方がツラくなるだけ

――子どもの気持ちを大事にする、相談するのがいいと思っていても、ついイライラッとして叩いてしまうケースもあるかと思います。そんな時にはどうしたらいいんでしょうか?

高祖 まずは法律上ではどう考えられているかお話ししますね、
2020年4月に、児童福祉法が改正されて施行され、ここから法律上でも体罰は禁止されるようになったんです。
これは「理念法」といって基本的な考え方を示すもので、“叩いたら逮捕される”という法律ではありません。それでも、叩くことがエスカレートして日々の虐待につながったような事件があったので、「虐待はしないようにしよう」と法律に反映されて本当によかったです。


一方で、これが広く知られているかというとそうでもありません。2021年に国で「児童福祉法改正の認知度調査」[*1] を行ったところ、コロナ禍であまりPRされていなかったこともあって、一般の方の認知割合は20%程度でした。

――そういえば2020年に法律上でも虐待を禁止するようになったと少しだけ報道されていました。

高祖 そうなんです。でも体罰禁止が法律になったという認知度は低かったんですが、同じ調査で、「叩いてしまった後に後悔している人」は90%くらいいたんですよ。
私はそこに希望を見ています。
子どもは親に叩かれたら痛いし悲しいのはもちろんですが、親にとっても叩いてしまったら後々悔やむことになる。子のためにも親自身のためにも、体罰はない方がいいんです。

「イライラ」の気持ちを「叩く」行動につなげない

――叩かれた子どもが心に傷を負うだけでなく、叩いた親の方も悔やんでいるんですね。叩かない方がいいとわかっていても、イラッとして子どもを叩いてしまう場合はどうしたらいいんでしょう?

高祖 子育てに限らず、カーッとしたりイラッとするのは誰にでもあります。これは人間として当たり前の防衛反応。だからイライラするのは自然なことなんです。
だけれど、それを子どもにぶつけてはいけない。「カーッときてイライラする気持ち」と「子どもを叩く行動」を分けてとらえてほしいんです。

――分けてとらえるとは、具体的にどのようなことでしょうか。

高祖 脳の機能的に「感じるのは瞬間的」なんですが、「考えるには5~6秒かかる」と言われています。つまり、理性的な考えに至る前に、瞬間的に感じたイライラなどをそのまま行動に反映すると、叩くことにつながってしまうのです。
感じたイライラを叩く行動につなげないために大事になってくるのが、クールダウンです。

体罰回避のための「イラッとしたら数秒のクールダウン」

――実際にはどのようにクールダウンするのでしょうか?

高祖 カーッとしたら深呼吸をしたり、ゆっくり数を数える。あるいは目の前の子どもを叩きそうだと思ったら、子どもの安全を確認してから自分がその場を離れる。私も子育て中にイラッとして爆発しそうになったら、ちょっとトイレに行ったりしてました。
イライラを子どもにぶつけないように怒りの感情をコントロールする、いわゆる「アンガーマネジメント」ですね。

――イラッとしたら叩く前に少し時間を作るんですね。

高祖 そうです。
そうやって時間を空けると、叩かないで済むだけじゃなくて「この子もほんとはこうしたかったのかな」「こんな気持ちだったのかな」という思いが沸いてきたりもしますよ。

まずは「叩かないと決める」ことから始めよう

――イラッとしたら時間を空ける以外にも、できることはありますか?

高祖 「叩いてもしょうがないでしょ」と思っているよりも、「叩くのはやめる」と思った方が、確実に叩く回数は減ります。また、叩かないと明確に決めておくと、叩かずに済むよう工夫するようになります。なので、単純なことですが自分自身で「叩かない」と決めることをおすすめします。

虐待


――「もう叩かない!」というルールを自分で作るんですね。

高祖 ただ、あまりにもイライラが強い、しょっちゅうイライラしているなら、「どうして自分はこんなに頭に来るのか?」と考えてみるのもいいですね。
怒りは“第二次感情”と言われていて、怒りの感情の裏には第一次感情となる「怒りを引き起こす別の感情」があることが多いんです。

イライラの「裏の原因」も考えよう

――イライラや怒りっぽくなる原因として、よくあるのはどんなことでしょう?

高祖 例えば「他の子は親の言うことをよく聞くのにうちの子はイヤイヤばかり…発達に問題があるのかもしれない」という不安だったり、「どうして自分ばかりが育児や仕事や家事を負担しなければならないのか」というパートナーへの不満だったり……。
また、「心と体の疲れ」「睡眠不足」からイライラしやすくなることもあります。下の子が生まれてよく眠れていなかったり疲れていると、なおさら子どもにイライラしやすいですよね。

――心と体のコンディションもイライラに繫がるんですね。そんな時にできることは何でしょうか?

高祖 その原因を、可能なことから解消していきましょう。
子どもの成長発達が不安なら、支援センターや子育て広場に相談する。お子さんが小学生ならスクールカウンセラーに話してもいいですね。
パートナーへの不満があるならば、お互いに今後どうするかを話し合う。例えば、毎朝の出勤時間がギリギリなのに子どもの支度が間に合わずイライラするなら、「子どもの着替えとご飯を食べさせるのをやって欲しい」と具体的にパートナーに相談してみる。
体が疲れているなら、一時預かりやファミリーサポートを利用して、近くに祖父母がいるなら子育てや家事を助けてもらう。
漠然と不安や不満を抱えたままいるのではなく、一つずつ具体的に“手当て”をしていくんです。

虐待


――できることを考えて、少しずつ原因に対処していくんですね。一気に解決できなくても、だんだんいい方向に進めそうです。

高祖 しょっちゅう子どもにどなったり叩いている生活だと、親も疲れるし子どもも落ち着かないですよね。
どなったり叩かないためにはどうしたらいいのかな? と解決策を考えたり対処しながら、家族が安心して過ごせる我が家を作っていきたいですね。

(解説:高祖常子先生、文・取材:大崎典子)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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