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2023年03月11日 07:21 更新

再び社会問題化した「迷惑動画」について、親が子どもに伝えておきたい3つのこと #親と子のネットリテラシー入門 Vol.17

ここ数年で、子どもを取り巻くデジタル環境は劇的に変化。私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。

なぜ若者は「迷惑動画」を投稿するのか

2023年になってから、「迷惑動画」と呼ばれる動画がSNSから拡散し、社会問題へと発展しています。回転寿司チェーンで湯呑や醤油さしを舐めまわす、牛丼チェーンではテーブルに備え付けの紅ショウガを直接食べる、ショッピングモールのトイレでライターに火をつけて火災報知器を鳴らす、スーパーの入り口に設置してある消毒液に火をつけるなどなど、キリがありません。

親と子のネットリテラシー入門,鈴木朋子

しかも、これだけ問題になっているにも関わらず、新たな迷惑動画が次々と明るみになっています。もしかすると以前に投稿していた動画なのかもしれませんが、話題に便乗して撮影した若者もいるのでしょう。

「若者」と書きましたが、迷惑行為をして発覚している人のほとんどが若者です。男性の比率が高いものの、女性による迷惑動画も拡散されています。

大人からすれば、迷惑行為をした証拠を動画で残し、さらにネットに投稿するなんて理解ができませんよね。なぜ若者は迷惑動画を投稿してしまうのでしょうか。

内輪ウケのつもりが拡散

実は、迷惑動画は今に始まったことではありません。約10年前、コンビニ店員がアイスケースの中に入って寝転んでいる写真がFacebookに投稿されて炎上しました。やがてその店舗は特定され、コンビニはフランチャイズ契約を解約、休業へと追い込まれました。その後も、主にアルバイト店員による店舗内での迷惑行為の画像が投稿される件が相次ぎ、「バカッター」や「バイトテロ」などと呼ばれるほどの騒動になりました。

親と子のネットリテラシー入門,鈴木朋子

バカッターは、当時Twitterに投稿されるケースが多かったため、「バカ」と「Twitter」が掛け合わされた造語です。その後、Instagramのストーリーズが発信元になるようになり、「バカスタグラム」という言葉も生まれました。

こうした動画投稿はその後も相次いで起きているのですが、すべてが大きなニュースにはなっておらず、さらにその後の結末まで明らかになっていないことも多いため、若者は迷惑動画にまつわる騒ぎを知らないままスマホを手にしている可能性が高いと考えられます。

そして、若者は普段交流している仲間と繋がるツールとしてSNSを使っていることも、迷惑動画を投稿する理由のひとつでしょう。自分専用のスマホを手に入れたら、ネットとリアルの両方で友人と交流するのが当たり前の世代です。知り合いといつでも交流できる場として利用しているため、投稿へのハードルも低めです。しかもInstagramのストーリーズなら24時間で消えるため、大抵はたわいない「一緒に寿司食べてる」程度の気軽な投稿なのですが、楽しくて気分が上がり、一線を越えた投稿をしてしまったのだと思います。

仲間に見せたらウケるかも、と「内輪ウケ」のために投稿しても、一度ネットに上がってしまえば内輪ウケでは済みません。公開範囲を限定していても、24時間で消えるストーリーズでも、誰かがスクリーンショットや「画面収録」機能で保存して、TwitterやTikTok、YouTubeなどに拡散してしまう可能性があります。

また、Instagramのライブ配信を、そこに来られなかった友人とのビデオ通話のように使う若者もいます。こちらも誰かに録画されてしまえば同じです。仲間向けの投稿が全世界に発信されてしまうのです。

迷惑動画について子どもに伝えておきたいこと3つ

マイナビ子育て読者の皆さんは、幼いお子さんをお持ちの人が多いと思います。迷惑動画については、まだ先のこととして捉えているかもしれません。でも、あっという間に子どもは成長し、自分専用のスマホを手にします。その時に、迷惑動画について伝えておいてほしいことが3つあります。

ひとつ目は、「迷惑行為をしないこと」。当たり前すぎると思われるかもしれませんが、多発している現実があります。友人と出かけたときに「ちょっと悪いことしちゃおう」と思っても、踏みとどまれるような教育をしたいものです。できれば、友人の迷惑行為も優しく止められるようになるといいですね。

というのも、迷惑行為をした若者たちの多くは、名前や学校、住んでいる地域を特定されています。SNSだけにとどまらず、やがてトレンドブログやまとめサイトと呼ばれるWebサイトに掲載され、完全に消すことができない「デジタルタトゥー」としてネットに個人情報が残ってしまいます。退学に追い込まれた人、企業に訴えられた人、逮捕された人もいます。家族の個人情報まで暴かれることもあり、取り返しのつかない事態になりかねません。

親と子のネットリテラシー入門,鈴木朋子

2つ目は、「撮影、投稿しないこと」も大切です。迷惑行為をした場合、赤の他人が撮影して投稿するケースもありますが、ほとんどが友人による撮影です。投稿も本人ではなく、友人がしているケースが多いでしょう。仲間向けの投稿でもフォロワー数の多いアカウントに見つかれば、あっという間に拡散していきます。メッセージも要注意です。親友だけのグループだからと迷惑動画を送ったとしても、やがて関係性が変わり、誰かが流出させるかもしれません。撮影、投稿した人は個人情報が明らかにならないケースもあるのですが、それでも友人を追い込む行為をしてはいけませんよね。

そして、3つ目は「拡散しないこと」も重要です。SNSで回ってきた迷惑動画を転載したり、本人の身元を特定して拡散してしまうと、内容によっては罪に問われる可能性があります。いくら悪質な動画であっても、自分が制裁に加担する必要はないでしょう。もし知り合いの迷惑動画が回ってきたら、拡散はせず、周囲の大人に相談するように話してあげてほしいと思います。

まとめ

ここまで、迷惑動画は若者によるものが多いとお話ししてきましたが、大人が迷惑行為をするケースもあります。先日は大人の女性が線路に立ち入った動画をInstagramに投稿し、騒動へと発展しました。私たち大人が、子ども達のお手本になれるようなSNSの使い方を考えなければいけませんね。

(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)

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