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2024年02月01日 07:07 更新

ブラックホールを飲み込める存在があるってホント? 本間教授の『深すぎてヤバい』宇宙の話2

謎多き存在である宇宙。「いつか宇宙旅行がしたい!」「大きくなったら宇宙飛行士になりたいな」と夢見る子も多くいます。そんな不思議な魅力に溢れる空間に、一際ミステリアスな存在があります。

今回は「ブラックホール」について、人類初ブラックホールの撮影に成功したEHTプロジェクト日本代表・本間希樹国立天文台教授の解説を、著書『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』よりお届けします。

知れば知るほど、奥深いですよ!

Q. ブラックホールって何? 実在するの?

(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

A. 重すぎて自分自身を支えられずに点になるまでつぶれてしまったふしぎな天体

宇宙でもっとも変な天体、ブラックホール。その正体は、重力が強すぎて光さえも抜け出せない天体です。

ブラックホールに入ったものは、光も含めて絶対に出てこないので、暗黒の天体となり、英語の名前の通り「黒い穴」のように見えます。

ブラックホールの本体は、驚くべきことに大きさのない点です(特異点とよばれます)。これは重力に耐え切れなくなった天体がつぶれてしまったものです。その大きさは無限に小さく、密度が無限に大きいので、現在の科学では何が起きているのか予想すらできない場所です。

その特異点を球状に取り囲むのが「事象の地平面」です。この内側からは光すら出てこないので、地平面内の出来事(事象)は絶対に見ることができません。

(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

まとめると、ブラックホールは中心の特異点とそれを包みこむ事象の地平面からなり、形としてはほぼ球形の天体ということになります。

ブラックホールのうち、太陽の数十倍以下の質量を持つ比較的軽いタイプのものは、太陽よりもずっと重い星が燃えつきるときにできます。燃料がなくなって、自分自身の体重を支えきれなくなると最終的に特異点になるまでつぶれてしまい、ブラックホールになります。

一方、銀河の真ん中には太陽の100万倍から100億倍の質量を持つ、「巨大ブラックホール」が1つだけあります。このような巨大ブラックホールがどのようにできるかは現在も謎として残されています。

ブラックホールにまつわる謎はまだまだ残されていますので、これからの研究の進展がとても楽しみですね!

✅なるほどメモ
巨大ブラックホールは、銀河が誕生してから今日の形に成長するまでに、なんらかの役割を担ったのでは、と考えられています。まだ銀河と巨大ブラックホールのあいだにどのような関係があるのか詳細は謎のままです。

Q. ブラックホールは他のブラックホールを食べるの?

A. ブラックホールがブラックホールを飲みこむと より大きなブラックホールになる

(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

なんでも飲みこんでしまう天体、ブラックホール。 なんだか底なしのお化けのようにも思えませんか?

そんなブラックホールに飲みこめないものはありません。いわば最強の天体であるブラックホールは、なんと他のブラックホールすらも飲みこんでしまいます。

小さいブラックホールがより大きなブラックホールに飲みこまれると、2つが合体してより重く大きなブラックホールになります。このような壮絶な合体は、重力波望遠鏡という最先端の装置で観測されます。

2つのブラックホールがおたがいのまわりを回るブラックホールの連星があると、連星が運動することで、 重力の強弱がさざ波のように伝わる「重力波」が放射されます。そのために、連星はエネルギーを失っていき、少 しずつ2つのブラックホールの距離が近づいていきます。2つのブラックホールが接するくらい近づくと、2 つが合体してより大きなブラックホールになるのです。

とくに合体する瞬間にとても強い重力波が出るので、合体現象を重力波望遠鏡でキャッチできるのです。

このような合体が初めてとらえられたのは2015年のことです。アインシュタインが重力波の存在を理論的に予想してから100年越しの初検出となりました。

その後も重力波の観測が世界で続けられていて、今ではこのようなブラックホールの合体は、宇宙のあちこちで起きていることが確認されています。

日本でも重力波望遠鏡「KAGRA (かぐら)」が試験運転中。今後このようなブラックホールの合体がさらにたくさん見つかると期待されるので、楽しみにしていてください!

重力波望遠鏡・KAGRA

▲クイズ! 重力波の観測には、なんでこんなに大きな施設が必要なの?
岐阜県・旧神岡鉱山の地下にあるKAGRA。 重力はとても弱い力なので、計測するには、大きな施設が必要です! KAGRAでは、3kmも離れた鏡のあいだをレーザー光が平均で約1000往復することで、宇宙から来るわずかな重力のさざ波を観測しています!
(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

✅なるほどメモ
ブラックホール連星の合体から出た重力波を初めて観測したのは、アメリカの重力波望遠鏡「LIGO」(ライゴ)。その功績により、研究チームの代表らが2017年のノーベル物理学賞を受賞しています。

※本記事は、『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』(著:本間希樹、イラスト:ポピコ、講談社刊)より抜粋・再編集して作成しました。

『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』(講談社)
¥1,540

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