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2024年01月06日 08:31 更新

「かちかち山」のあらすじは3つに分けるとわかりやすい!うさぎの巧みなセリフをうまく表現してみよう

親子で楽しみたい物語をご紹介している本連載「親子のためのものがたり」。今回ご紹介するのは誰もが知っている「かちかち山」。タイトルにもなっているかちかち山のシーンはしっかり覚えていても、物語の始まりや結末は意外とあやふやだったりしませんか? あらすじや子どもに話すときのポイントをご紹介します。

「かちかち山」を子どもに聞かせよう!

日本の昔話の中でも有名な「かちかち山」。だれもが聞いたことのあるお話ではないでしょうか。『大辞泉』などにも「日本五大昔話」として載っている、室町時代末期から江戸時代初期に成立した代表的な物語のひとつです。また、大正時代から昭和時代にかけて活躍した児童文学者、楠山正雄も「日本十大昔話」に選出しています。

「かちかち山」のあらすじ

「かちかち山」は悪さをしたたぬきを懲らしめるお話です。たぬきの行いも残酷ですが、おじいさんのかわりにその仇討ちを買って出るうさぎも、なかなか残酷な方法で仕返しをします。大きなお子さん向けかもしれません。お話は3つに区切って考えると展開が覚えやすいですよ。

おばあさんがたぬきに殺されてしまう

かちかち山

昔々あるところにおじいさんおばあさんがいました。おじいさんが畑で働いていると、山からたぬきが出てきて作物を荒らし、おじいさんに石を投げつけます。困り果てたおじいさんが罠を仕掛けると、ついにたぬきを捕まえることができました。

おじいさんたぬきの足を縛り、担いで家に帰ります。そしてたぬきを天井の梁にぶら下げておき、おばあさん「帰るまでにたぬき汁を作っておいてくれ」と言い残し、また畑へ向かいました。

麦をつくおばあさんたぬきが声をかけます。

「おばあさん、お手伝いをするからこの縄を解いてください」
「どうしてそんなことができるかね。縄を解いてやったら逃げるつもりだろう」
「まさか、捕まって反省しました、どうか手伝わせてください」


その殊勝な様子からおばあさんたぬきを信じて、縄を解いてあげました。するとたぬき「さあ、お手伝いしますよ」と言うと杵を振り下ろし、おばあさんの頭を打ちました。おばあさんは倒れて死んでしまいました。そしてたぬきおばあさんを料理してたぬき汁ならぬ「ばばあ汁」を作り、自分はおばあさんに化けるのでした。

夕方になって、何も知らないおじいさんがにこにこしながら、家へ帰ってきました。するとたぬき「おじいさんお帰りなさい。たぬき汁を作って待っていましたよ」と言いました。何も知らないおじいさんはお膳の前に座って汁を食べます。それを見てたぬきは笑いながら正体を現しました。

「それはばばあ汁だよ」たぬきはそう言い、大きな尻尾を出して逃げていきました。

おじいさんはあまりのことに腰を抜かし、泣いていました。すると「おじいさん、どうしたのです」と言って、白うさぎが入って来ました。

「よく来てくれた、聞いておくれ、酷い目にあったよ」おじいさん。話を聞いたうさぎおじいさんを不憫に思い、こう言いました。「私がきっと仇を取りますから安心してください。たぬきを誘い出して報いを受けさせますよ」

\ココがポイント/
✅悪さをしておじいさんにつかまったたぬきだったが、逃げるためにおばあさんを騙して殺してしまう
✅おばあさんの死を悲しんでいるおじいさんのもとにうさぎがやってきて、自分が仇を取ると言う

マイルドな形にアレンジしたい場合

元々のお話では、たぬきがおばあさんを殺してしまうどころか、料理して「ばばあ汁」にしておじいさんに食べさせてしまうという、かなり残酷な場面が含まれます。「たぬき汁」にされそうになったたぬきがおばあさんを「ばばあ汁」にするというのは、話の構成としてはあり得ると言えますが、子どもに話しにくいかもしれません。

さらりと言ってしまうのもひとつですし、あるいはその部分はカットしてもよいでしょう。おじいさんの「たぬき汁」云々のセリフは無くし、たぬきはおばあさんを倒して(殺して)逃げ、帰ってきたおじいさんがおばあさん(の亡骸)を見つけるという展開にしてみてください。

たぬきを山に誘い出すうさぎ

かちかち山

ある日のこと、うさぎたぬきの巣穴のそばで柴刈りをしながら、栗をばりばりと食べています。するとたぬきが穴から這い出してきて、「うさぎさん、おいしそうな栗の実だね、私にもくれないか」と言いました。「あげるから、刈った柴を向こうの山まで運ぶのを手伝っておくれ」うさぎは答えます。

たぬきは栗欲しさに柴を背負ってうさぎの前を歩きだしました。向こうの山まで行くと、たぬきは振り返り「うさぎさん、栗をおくれよ」と言いますが、うさぎの答えは「もう一つ向こうの山まで行ったらね」。しかたなくまたたぬきは歩きます。

やがてもう一つ向こうの山まで行くと、たぬきはまた「さあ、栗をおくれよ」と言いますが、「もう一つ向こうの山まで行ったらね」とううさぎたぬきは少しでも早く着くようにと振り向くこともなくせっせと歩きました。

うさぎはその隙に火打ち石を出して、かちかちと火を切りました。たぬきは訝しげに尋ねます。

「うさぎさん、かちかちいうのは何だろう」
「この山はかちかち山だからさ」
「ああ、そうか」


そのうちに、うさぎのつけた火がたぬきの背中の柴に移ってぼうぼう燃え出しました。

「うさぎさん、ぼうぼういうのは何だろう」
「向こうの山はぼうぼう山だからさ」


そう言う間に火は背中に燃え広がってしまいました。たぬきが助けてと叫び駆け出すと、山風が後ろから強く吹きつけて、火が大きくなりました。たぬきは泣き声を上げ、穴の中に駆け込みました。うさぎは大きな声で「大変だ、火事だ」と言いながら帰っていきました。

\ココがポイント/
✅うさぎは栗でたぬきを釣って山へ誘い出した
✅たぬきが背負う柴にうさぎは後ろから火をつける
✅火打ち石の「かちかち」という音は何だとたぬきが聞くと、うさぎはここはかちかち山だからだと説明する

今度は海に行くうさぎとたぬき

翌日、うさぎたぬきのお見舞いにやって来ました。たぬきは背中に大火傷を負って寝込んでいます。「たぬきさん、火傷に一番効く膏薬を持って来たよ」うさぎは言って、唐辛子入りの味噌をたっぷりとたぬきの背中に塗りました。たぬきは痛がりますが、「はじめのうちはぴりぴりするけど、じきに治るよ」と言ってうさぎは帰っていきました。

それから数日後のこと。うさぎが次の計画を立てていると、たぬきが訪ねてきました。そこでうさぎ「たぬきさん、火傷が治ったようで何よりだ。山はやめて今度は海へ行こう、魚が捕れるよ」と言ってたぬきを海に誘います。そして、うさぎたぬきは一緒に海にでかけました。

うさぎが木の舟を作ると、たぬきは真似をして土の舟を作りました。それぞれ舟を漕いで沖へ出ると、うさぎが言います。「ここには魚はいないよ。もっと遠くまで行こう、競走だ」そして掛け声をして漕ぎ出しました。

「どうだ、木の舟は軽くて速かろう」うさぎが言えば、たぬき「なあに、土の舟は重くって丈夫だ」と言います。しかし、言い合ううちにだんだん水が染みて、土の舟は崩れ出しました。「大変だ、舟が壊れる、助けてくれ」たぬきは騒ぎますが、うさぎ「おばあさんを騙して殺し、ばばあ汁にした報いだ」と返します。たちまち舟は崩れて、たぬきは海に沈んでしまいました。

(おわり)

\ココがポイント/
✅やけどをしたたぬきを見舞ったうさぎは、軟膏と偽って唐辛子味噌をたぬきの背中に塗った
✅うさぎとたぬきは一緒に海に出かけ、うさぎは木の舟、たぬきは土の舟を作った
✅水にもろい土の舟は漕ぐうちに崩れていき、たぬきも一緒に沈んでしまった

子どもと「かちかち山」を楽しむには?

かちかち山

いかがでしたか? 悪いたぬきをうさぎが成敗するという物語。タイトルの由来にもなっている、うさぎの巧みな知恵が浅薄なたぬきとの対比をなしており、物語を面白くしています。

お話のあとでお子さんと会話をするときには、
・あなたが白うさぎだったら、同じように仕返しをする?
・たぬきは最後に反省したと思う?
・たぬきがかわいそうだと思う?

など聞いてみてはいかがでしょうか。

リアリティを持たせると残酷に聞こえるシーンもあるので、あまりおどろおどろしく読むとお子さんが怖がる可能性も。明るいトーンで話すように意識するとよいでしょう。

まとめ

日本の有名な昔話のひとつである「かちかち山」。物語が生まれた当時と現代とで価値観が異なる点もありますが、うさぎとたぬきのやりとりなどが子どもの好奇心を刺激するでしょう。親子で楽しんでみてくださいね。

(文:千羽智美)

※画像はイメージです

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