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2023年08月04日 23:23 更新

妻に嫌われた? 妊娠判明から続く、気持ちのすれ違い【運命の人とレスになりました。大輔編vol.2】

最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。

あの夜の記憶がない

運命の女性・美咲と結婚した大輔。幸せの絶頂を感じていたが、美咲が妊娠すると思いもかけない拒絶を受けるようになり……。

妻に嫌われた? 久々に抱き合えて泣きそうだったのに【運命の人とレスになりました。大輔編vol.2】

やば……惚れ直しそう。
つわりに耐えながらも、仕事に家事に、頑張り屋さんの美咲。
俺との赤ちゃんを守ってくれる姿は、本当に最高の女性だと思う。

妊娠5ヵ月を過ぎた頃からは、体調も回復してきたみたいだ。
相変わらず、いや、前よりも綺麗になっているような気がする……。
妊娠初期は夜の誘いを控えていたものの、最近は体調も良さそうだし、以前みたいにイチャイチャしたい。
「医学的には問題ないみたいだよ。妊娠中のセックス」
なんて、ネットで検索した医師監修の記事まで出して誘ってみた。

でも……俺の心の叫びを聞いてくれ。
結構メンタルをやられてる……。
誘ってもほとんど断られるのが現状なんだよなあ。
この間なんて……。

「今日、どうかな?」
ベッドに横たわる美咲にそっとキスをした。
これは、俺たちにしかわからない「しよう」の合図だ。
「できないことはないけど……お腹の赤ちゃんが心配だし」
「そっか。じゃあ、やめとこう。美咲の体と赤ちゃんが一番大事だもんな」

美咲の体調と赤ちゃんが大切だから、断られても拗ねたりはしない。その程度には俺だって大人だ。
でも……なんか美咲の様子が変なんだよな。
断る理由は、赤ちゃんが心配だからだけじゃない気がする。
心当たりがあるのは……あの夜だよな。

数週間前。

「ただいま~。みさき~」
「きゃっ!」
「あ~癒される~……」
「ちょっと! 変なところ触らないで‼」
「変なところって~いつも触ってるとこじゃ~ん」
「大輔……飲みすぎだよ。ごめん、今そんな気持ちには……うっ」
「え? いいじゃ~ん」
「ちょ、やめ……」


そこからは、覚えていない。
どうしても外せない飲み会の席で、つい飲みすぎてしまって。
付き合いとはいえ、へべれけに酔っぱらった俺は、どうやら無理強いをするかたちになってしまったらしい。
未遂に終わったようだけれど、申し訳ないが、ほとんど覚えていないのだ。
あの日以来、美咲の様子が少しおかしいように感じる。

もしかして、美咲に嫌われた?

愛を伝えたいだけなのに

不安を払拭するためにも、俺はめげずに誘うようになった。
「今日、どうかな?」
「ごめん。今日はちょっと」
またか……。
なんだか、美咲が遠くに行ってしまった気がする。
まるで、営業のスランプの時のような感覚だ。
ツボを押さえたトークをしているつもりでも、手ごたえのないあの感じ……。
あんまり断られると、さすがにへこむ。
俺、美咲に嫌われちゃったのかな?
妊娠前のような愛を確かめ合うセックスをして、安心したい。
そう本気で悩んでいたある日のこと。

今日は日曜日だ。
「日曜日かぁ……」
おっと!
また心の声が漏れてしまった。
毎週日曜日は、「明日から頑張ろう!」の意味も込めてセックスをするのが習慣だったから、余計に寂しいや。
どうせ、今日も無理だよな。
諦めていたのに、美咲が思いもよらずOKしてくれた。
「今日はいいよ」
「え?」
「いつも断ってばかりでごめんね」
「いいの⁉」
あまりのうれしさに、思わず泣きそうになった。

だって数ヵ月ぶりだ。
久しぶりに裸で抱き合うと、心から安心した。
美咲の体は妊娠してから少し丸みを帯びてきて、胸も心なしか大きくなっているような気がする。

今夜は美咲に全身で愛を伝えるぞ、と意気込んでいたのもつかの間、
「痛いっ!」
「あ、ごめん」
「なんか胸が張ってるみたい……あんまり触らないでもらえるかな?」
「あ、そうなんだ……ごめん、痛くないようにするからさ……」

そこからは、微妙な時間が過ぎた。
ここは大丈夫か、苦しくないか、とアレコレ手探りで行為をしてみるも、美咲はあまり気持ちよさそうではない。まるでクライアントをもてなすような時間が過ぎた。
「ごめんね」
と謝る美咲に、
「なんで謝るの? 赤ちゃんを第一に考えようよ」
そうは言ったものの、明らかに美咲からは性欲を感じられないし、ムードもよくない……。
その日を最後に、俺はなんとなく、美咲とのセックスに対して消極的になった。

ごめん、今はそんな気分じゃない

あれから数ヶ月。
美咲が産休に入り、家にいるようになったある夜、
「ねえ、大輔……」
ベッドでスマホをいじっていると、いきなり美咲にキスをされた。
え? 嘘だろ?
美咲から誘ってくるなんて珍しい。
どういう心境の変化かわからないけど……
俺はとっさにこう口にしていた。

「美咲。ごめん。今はそんな気分じゃないんだ」

「え……?」

なんで? と美咲が聞く前に、遮るように背中を向けた。
別に美咲が嫌いになったとか、性欲がなくなったとか、そんなんじゃない。決してない。
ただ、妊娠後期に入ったあたりから、お腹がいっそう膨らんできて、美咲の体はさらに変化した。
そこに戸惑いを覚えなかったと言ったら、嘘になる。
それに今まで散々拒絶されて、いざセックスしてみても以前のような満足感には到底及ばず、お互い違和感を持ちながらやっていることがわかってしまった。
今は、そういう気分になれない。

……思えば、妊娠して以来、美咲から誘ってきたのは初めてだ。
傷ついているかもしれない。
でも、俺は嫌いになったわけではないんだ。
今は我慢の時。
産後、美咲の体調が落ち着けば、またいつものようにできるだろう。
それまでは、一緒に頑張ろうな。

そして、数週間後、美咲は産院で無事に元気な可愛い赤ちゃんを出産した。

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