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2023年07月31日 09:00 更新

プロジェクトリーダーをしながら2週間ずつの産後パパ育休。まちづくりの課題も実感 #男性育休取ったらどうなった?

育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は2023年1月と2月に2回の育休を取ったパパとママに話を聞きました。

産後パパ育休を利用して2週間×2回の育休を取得

今回のパパ
佐藤 敦さん/42歳/株式会社日建設計 都市・社会基盤部門 都市開発部

●ご家族
妻:優子さん/33歳/会社員
長女:翠咲ちゃん/0歳4ヶ月

●佐藤家のパパ育休
2022年12月末に第1子が誕生。出産・退院後はパパが1回目の育休を取得するまでの間、産後ケアを行う病院に宿泊する。2022年10月より施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)※」を利用し、2023年1月と2月に約2週間ずつ、計4週間の育休を取得する。
※子どもの出生後、8週間以内に4週間まで休業取得が可能

お宮参りの日の一日スケジュール

2回に分けて育休を取りプロジェクトの推進に穴を開けない

――「産後パパ育休」を利用しようと思ったきっかけを教えてください。

敦さん 2022年の10月から新設された「産後パパ育休」は、男性が従来の育休とは別に、産後8週間のうちに4週間休業できる制度です。まとめて4週間の休みを取ることもできるのですが、2週間ずつに分けて取りました。僕は担当プロジェクトの中でも、リーダーとしてチームを引っ張らないといけない立場でもありまして。

――お仕事との兼ね合いで2週間ずつに分けたのですね。

敦さん どうしても、長期間まとめてプロジェクトから抜けることが難しかったのです。でも「産後パパ育休」を利用した2週間ずつくらいの取得方法であれば、チームメンバーからのサポートに頼りながら、何とか取得できそうだなと思いました。

――今までは分割取得ができませんでしたよね。

敦さん 実際にこの制度を利用して育休を取ったのは、社内でも僕が初めてです。とくに、役職や立場上、お仕事を抜けづらいという方は「産後パパ育休」を利用したほうが、取得日程を調整できるぶん取得しやすいかもしれません。僕もちょうど多忙な時期で、この制度がなければ育休を取得することは難しかったと思います。

――仕事を抜けにくいポジションの方でも育休を取得しやすくなったというのはいいですね。

敦さん 僕たちの実家はともに遠方なので、里帰りせずに都内で出産しようと決めていました。そうなると、普段の家事と産後のフォローのために僕の育休取得が必須になります。子どもが生まれるタイミングと、仕事のピークはコントロールしようがないところも大いにありますが、「産後パパ育休」をうまく活用して家事と育児の両方を妻と協力しながらすることができました。

――佐藤さんは都市開発プロジェクトのお仕事をされていますが、お子さんが生まれてから街を歩いてみて、気になることはありましたか。

敦さん もともと、誰にとっても優しい都市・まちづくりの重要性は唱えていましたが、ベビーカーを押しながら歩いたときの実感は、今までの認識と全く違いました。たとえば、駅のバリアフリー動線は、都内近郊では大体の駅で整備が進んでいますが、エレベーターは一カ所しかなかったりします。自分が使いたい改札口にその動線があるかというと、必ずしもそうではなく、駅の端から端に移動しないとバリアフリー動線にたどり着かないこともあり、まだまだ十分ではないなと感じます。

――ベビーカーを押して街を歩いてみると、意外と困ることがありますよね。

敦さん  そうですよね、歩道のほんの少しの段差も、子どもが生まれる前とは違って気になることもありますね。まちなかでは気軽に利用できる授乳室・オムツ替えスペースを整備した施設も増えてきたなと感じる反面、赤ちゃん連れでもちょっとした休憩ができる広場や公園など、パブリックな空間はまだまだ不足しているなと課題を感じることもあります。

産後はできる限りプロの力を頼りました

取材中もずっとゴキゲン! お気に入りのオモチャで音を鳴らしてくれました♡

――出産には立ち会われたのですね。

敦さん 年末年始直前の多忙なタイミングでの出産となりましたが、チームの若手メンバーのサポートのおかげで無事に立ち会うことができ、とても感謝しています。出産した病院には、可能な範囲で入院期間を6泊7日まで延ばしてもらいました。

――少し長めですね。

敦さん 里帰り出産ではないので、できる限り、産後の妻の負担を軽くできればと思いまして。また、妻の退院日から僕の1回目の育休を取得するまでの間、妻と娘には産後ケアを行っている別の病院にも宿泊してもらいました。出産後すぐに予約を入れて、4泊5日の産後ケアも受けました。

――奥様がいきなりワンオペにならないように配慮されたのですね。

敦さん そうですね。できるだけプロの力に頼ることで妻の負担を減らせたらと思いました。産後ケア施設は自治体がいくつか提携している病院・施設があって、その中から選ぶことができます。ただ、事前に仮予約をしていても、子どもが生まれるタイミングによっては希望の病院には入れないこともあります。

優子さん 内容が充実している施設はやはり人気ですね。私たちも第一希望の施設はタイミングが合わず利用できませんでしたが、出産した病院とは別に、産後ケアに特化した施設も活用できたことは、とてもありがたかったです。

――実際に産後ケア施設を利用して感じたメリットを教えてください。

優子さん 私のように出産した病院を退院した後も、まだまだ不安がたくさんある新米ママにとっては、プロがいてくれる産後ケア施設はとても心強いです。助産師さんが横にいますので相談できますし、体力的にも精神的にも少し休みたいと思うときは、赤ちゃんをちょっと預かってくれるような環境はとても安心できました。いったん落ち着いて、ご飯を食べて、赤ちゃんを育てるというリズムが作れたことが一番よかったです。

――体力に自信があって「自分は大丈夫だ」と思っていても、想像以上に出産・産後は大変だった……なんてことも考えられますよね。

赤ちゃんの手続きも内祝いも健診の予約も。頼りになるパパの働き

――退院して産後ケア施設を利用後、いよいよ赤ちゃんと3人の生活が始まったわけですが、最初は戸惑うこともありましたか。

敦さん 生まれる前から、区のパパママ講習に参加したり、動画でお風呂の入れ方を勉強したりして備えてはいましたが、やはり赤ちゃんの沐浴は大変でした。目に水がかかったらどうしようとか心配して。

――もう慣れましたか。

敦さん もう大丈夫ですね。娘の耳掃除や爪切りなど、細かい作業は、今も僕の担当です。

――そうなんですね! 夜間の対応はどのように分担していましたか。

優子さん 夜中は基本的に私がメイン担当で、疲れているときは夫にお願いしていました。でも、「産後パパ育休」の期間が終了して夫が仕事復帰してからは、「夜もよろしく!」と頼むのはちょっと私の気が引けてしまって。できる限り、夜は私が担当して、ときには夫を頼っています。

――最後に、男性育休を取ってよかったことをご夫婦にそれぞれおうかがいしたいです。

敦さん 男性目線でも、やはり出産・育児はとても大変だとわかりました。もちろん、育休期間を終えても「僕は仕事だから……」とはいきません。パパ・ママの2人の力でようやく育児と家事が両立できると痛感しました。
また、育休中はなにごとも初めての経験ばかりでしたが、仕事に追われることのない時間が確保できたので、家事・育児に腰を据えて対応出来ました。おかげで、内祝いの手配や粉ミルクの追加購入など先回りしてサポートできましたし、一時的なワンオペにも自信が持てるようになりました。

優子さん 出産するとすぐに育児が始まりますが、赤ちゃん中心の生活に慣れるまで時間はかかりますし、体力的にも精神的にも大変なので、なかなか赤ちゃんのお世話以外の細かいところまで頭が回らなくて。そんな時に、例えば「内祝いはこの中で考えているけど、どうかな」とか「今度の赤ちゃんの健診は〇日で予約しておこうか」など、夫が先回りして提案してくれたりサポートしてくれてありがたく感じました。

――かなり具体化させてから、相談を持ちかけてくれたのですね。

優子さん それを聞いて「そっか、そうだった!」って。夫は在宅で業務をしていても、ふと娘のことで「次はこれやらないと」「お風呂もそろそろ入れる時間かな」と声をかけてくれることがあって、そのたびに「ありがとう! ありがとう!」という気持ちになります(笑)。それでなんとか毎日をこなせました。だから、一緒にいてくれてありがたかったですね。

敦さん 赤ちゃんが生まれると、必要な届出もたくさんありますよね。出生届とか、今は赤ちゃんファーストなど各種手当・助成とか……。そういった細やかな手続きをするにしても、休みがあるとありがたかったです。
育休を取得して最もよかったと感じることは、子どものすべての「初めての瞬間」に立ち会えたことでしょうか。「初めて微笑むようになった」「泣く以外にあー!うー!と声を出すようになった」、「哺乳瓶でミルクを与える時に指を握ってくれるようになった」とか! そんな日常を大切に過ごすことができました。

最後にオススメのお役立ちグッズを聞きました。「おむつ用のゴミ箱は、重宝している育児グッズのひとつ。リビングに置いても全然匂いません!」

(取材・文:宮本貴世、撮影:尾藤能暢、イラスト:ぺぷり)

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