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2023年06月21日 06:15 更新

<第一回>「性教育なんてできない」「学校でやって」親の苦手意識は、どうしたらいい?

性教育は親にとって敷居が高い印象があります。その重要性はわかりつつも、気恥ずかしさも相まって戸惑ってしまうこともあるでしょう。今回は絵本『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』の監修者で和光小学校・和光幼稚園前校園長の北山ひと美先生に「性教育、親の苦手意識」について聞きました

「性教育なんてできない!」親の性教育に対する苦手意識は、どうしたらいい?

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――子どもたちには性に関してポジティブに捉えてほしいと思いながらも、わたしたち子育て世代は、性教育というとどうしても苦手意識を持ってしまいます。
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子育て世代の人の多くは、小学校のころ体育館に集められてカーテンを締め切り、「女の子だけ別室で」月経の説明などが行われることがほとんどで、 性教育が“隠すこと” であるかのような扱い方のもと、教育されてきました。それもあって、性教育という言葉のイメージが 「2次性徴から始まる大人の世界の話でしょ」 という感じがありますね。

そのような環境で育ってきた大人が、苦手意識をもつのは当然のことです。恥ずかしい、おいそれと口にしてはいけないことについて、「子どもにどうやって性教育したらいいの?」と悩むのは無理もないでしょう。

しかし、わたしたちの考える性教育は、月経を教えるとか避妊方法を教えるとか限定的なものではなく、もっと包括的なものなのです。

まず、からだがある。そして、そのからだを肯定的に捉えて、「人とどうかかわっていくか」ということを全部含めたもの、それが包括的性教育であり、包括的性教育は、人間の生き方そのものにかかわる教育なんです。

現在では、2009年に『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』ができ、それが世界に広まっていき、それを元にした包括的性教育を行おうと、各国が努力しています。世界的に包括的性教育に力を入れていくという流れになってきています。

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――そうですね。からだの性差や避妊方法=性教育と捉えている大人は少なくないかもしれません。性教育に自信がない親は、子どもにどのように働きかけていったらよいのでしょうか?
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今回監修した『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』(後述)は、皆さんが思ういわゆる月経や避妊方法を教えるような性教育ではなく、人としての生き方そのもの――「自分自身を大事にして生きていくにはどうしたらいいのか」、小さい子どもも考えるヒントとなり、小さい子どもでも理解できる番組を作りたいという思いから作られたNHKのアニメーション番組が絵本になったものです。

子どもへの性教育に対して構えてしまっている保護者の方が「自分の言葉で伝えるのはハードルが高いけれど、この絵本を子どもと一緒に読んでみようかな」と、家庭での性教育スタートの第一歩にしていただけると嬉しいです。今は性教育を子どもでも理解できる内容に噛み砕いた絵本が多く出版されているので、まずは絵本を使ってお子さんと考える機会を設けられるといいですね。

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――かしこまって話すより、絵本だったら遊びのひとつや親子のコミュニケーションとして取り入れやすいですね!
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「家庭での性教育」と「学校での性教育」はどう違う?

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――苦手意識が払拭できず「家で性教育なんてできない!学校でやってよ!」と思う親御さんも多いと思います。学校ではなく、家庭だからこそできる性教育はあるのでしょうか?
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性教育を行う上で、実は日々の生活の何気ないことの中に大事なことがたくさんあります。

家庭での関係性もその一つ。
子どもにとっては親がロールモデルとなり、自分と同じ性の身近な大人(親)の振る舞いなどをあるべき姿として学習する――例えば、男の子であればお父さんがお母さんにかける言葉、女の子であればお母さんのお父さんへの接し方を見て、知らず知らずのうちにこのように振る舞うのだと刷り込まれ、学んでいるのです。

また、トイレ、お風呂、洋服選びなど日々の生活の中で営まれることも、立派な性教育です。
幼いころから、お風呂でからだを洗うときに「ここは大事なところだから自分で洗うのよ」と伝えられる、着る服は「あなた女の子だから/男の子だからこれよ!」と押し付けられず自分の意思で好きな物を選べる……など、子どものからだや意思が尊重されることは自分自身が大切にされていることを子ども自身が感じ取り、自分のからだは自分だけのものであるということを認識していくことにつながり、これは家庭でできることの一つでしょう。

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――では、学校で担う性教育はどんな部分なのでしょうか?
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性行為や避妊など、みなさんが思う「性教育」の部分は、家庭で行うのはなかなか難しさを感じることも少なくないでしょう。「親子でそんな生々しい話なんて……」と戸惑うのも当然です。だから、そこは学校の授業などで集団の中で学ぶのが重要となってくるのです。

二次性徴を迎える頃には、異性の親は直接からだ、性にまつわる話をしない方がいいでしょう。月経、精通の話などは同性の親から話をするべきですが、家庭の事情によっては同性の親が一緒に住んでいないなど、その条件がないこともあります。その場合は、親戚の方や学校の先生など、信頼できる方にお願いすることが大切です。この頃には、異性の親は一歩も二歩も引くことが必要となります。

思春期の性教育で、「学校に頼ってばかりもいられない、でも自分では伝えづらい」というのであれば、さりげなく「これ読んどいたら~」とそっと性教育の本を置いておく、なんていうのも一つの手ですね。興味があったり困ったりしたら読むだろうし、そのことについて詳しく知りたいと思ったら、信頼できる大人に自分から聞くでしょう。その時は「これ、絶対読んでね!」とか「読んでどうだった?」などと話題には出さないでおくといいでしょう。

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――家庭での性教育は、特に赤ちゃんのときからの日々の生活の中にあるということですね。そして思春期に差し掛かったら、周りに上手く頼りながら、子どもが信頼できる同性の大人の存在を確保しておきたいですね。
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(解説:北山ひと美先生、文・聞き手:mamaco)

※画像はイメージです

Eテレの番組が絵本に! 5歳児が主人公の『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』でまずは自分の心と体について親子で学ぼう!

アイラブみーカバー

「自分を大切にできる人になってほしい!」その願いは子を持つ親共通のもの。そして、自分を大切にすることこそが性教育のはじめの一歩につながります。一方で、家庭での性教育にはハードルの高さを感じてしまいますよね。そんな親御さんたちにぴったりな本が、6月21日発売の『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』です。

自分の心と体を大切にするってどういうこと?

■あらすじ
5歳の「みー」は今日も元気にお散歩中。道で出会った犬のワンまるを見て、なんで自分はパンツをはいているんだろう、と不思議に思います。
パパや、道ゆく人に聞いたり考えたりしながら、パンツをはく理由を探していくと、とある発見が......

NHK Eテレで放送中の番組「アイラブみー」のエピソード「なんでパンツをはいているんだろう?」が編集された本書は、5歳の主人公「みー」の体験を通して、自分の心と体を知り、大切にすることを一緒に学んでいける、わかりやすい絵本になっています。

巻末にある、北山ひと美先生や東京大学名誉教授汐見稔幸先生をはじめ「アイラブみー」の番組監修の先生方による解説やQ&Aは、読み応え抜群で思わずハッとするほど“気づき”にあふれています。

親子で楽しみながら「自分とは」そして「自分を大切にすることとは」ということを学び、子どもの自己肯定感を育みましょう。

アイラブみー中面
『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』(新潮社)より

書籍概要

■書名: アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん
■著者:絵/オバック、文/たけむらたけし
■監修:東京大学名誉教授 汐見稔幸、和光小学校・和光幼稚園前校園長 北山ひと美 ほか
■仕様: A4 変形(196mm×193mm)、 ハードカバー、オールカラー48ページ
■価格:本体1,600円+税
■ISBN:978-4-10-355181-2
■発売日:2023年6月21日
■発行元:新潮社

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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