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2023年04月07日 05:44 更新

志望校ってどうやって決めるの?【熱望校を探せ編】|低学年のための中学受験レッスン#11

通塾や長時間の家庭学習…。遊びたいざかりの小学生にとって、中学受験は過酷な試練の道ともいえますね。厳しい受験勉強の日々を乗り切るためには、「あの学校に行きたい」という明確な目標が欠かせません。そこで今回は、ベテラン受験指導者・宮本毅先生が「志望校」、それも「熱望校」と呼ばれる第一志望校の見つけ方についてお話しします。

「熱望校」を定義しよう

では、そもそも「熱望校」とはなんでしょうか?

たとえば、「高校でトップの生徒が医学部を目指す」という定番のシナリオをよく耳にしますよね。しかし、医師として人の役に立ちたいと高い志を持つ生徒がいる一方、「成績がいいからとりあえず医学部でも目指してみるか」という「消極的理由」で医学部を志望する成績優秀者がいるのも事実です。

このような消極的理由による進路の選択は、「熱望」とはいえません。

どうしてもこの学校に行きたい!

さて、私が考える「熱望校」とは「なにがなんでも行きたいと思える学校」ということです。

もうずいぶん古い話となりますが、私が自分の志望校を決めたのは小学4年生の時です。母親と一緒に自転車で学校を見に行き、二つある巨大な校庭と敷地内を流れる小川に心をわしづかみにされました。

「絶対にこの学校に入学する」そう心に決め、一心に勉強しました。小学生の頃に見たテレビ番組は「野生の王国」以外記憶にありません。マンガは一冊も欲しがりませんでした。そんなものに時間を取られているわけにはいかなかったからです。

何としても志望校に合格するんだという目標意識しかありませんでした。そのおかげで、受験勉強の期間、ツライと思ったことは一度もありませんでした。

「熱望校」というのは、その学校のことを考えるだけで心が躍り、高揚感とやる気がみなぎってくる学校を指すと私は思います。親ではなく、子ども自身がそう思える学校こそが理想の「熱望校」です。

熱望校と偏差値の関係

その学校が熱望校になるかどうかは、偏差値などはまったく関係ありません。

ときどき、偏差値表の60のラインに横線を引いて「このラインより下の学校を受けさせるつもりはありません」などとおっしゃる保護者の方がいらっしゃいますが、そういうご家庭のお子さんはたいていうまくいきません。なぜって、そこには子ども自身の意思が介入していないからです。

子どもは偏差値の意味なんてあまり理解していません。親が勝手に線を引いたところで、こどものモチベーションが上がるはずがないのです。親の決めた結婚相手と燃えるような恋なんてできないでしょう?それと同じことです。

子ども自身の「本気で行きたい」は何よりも強い動機づけ

子どものやる気を引き出したければ、ぜひ「熱望校」を見つけてください。それも子ども自身が本気で「行きたい」と思える学校をです。

私の教え子の中に早稲田佐賀を熱望して受験し、見事合格を勝ち取った生徒(女子)がいます。早稲田佐賀は九州、唐津にある早稲田大学の附属・系列校で、関東出身のその子は、現在、寮生活を続けています。

彼女は、「練習校・前受け校」として早稲田佐賀中を受験したわけではなく、「自ら熱望して」その学校を受験しました。

「親に頼らず、ひとりで生きていく力を身につけたい」と希望し、寮のある学校を熱望したのです。強い信念のもと進学したので、いまも校内の成績はトップレベルを維持しており、当然のように早稲田大学の希望学部の推薦を得て、来年には帰京する予定です。

ところが、彼女と同じ年に東京から早稲田佐賀へ入学した子の多くは、すでに自主退学して東京に戻ってきているそうです。早稲田の附属校だからと安易な気持ちで希望し、安易な気持ちで受験したため、親元を離れて寮生活を送ることに耐えられなかったのでしょう。せっかく多くの時間と労力をかけて中学受験したのに、何とももったいない話ですね。

まとめ:熱望校の探し方

じゃあ「熱望校」ってどうやって探し出せばいいのでしょう?

先にお話しした、早稲田佐賀に進学した女子生徒の保護者の方にお話を聞くと、

・寮での勉強時間がきちんと確保されている
・東京では出来ない経験をさせたい
・子どもの自立を促せる


の3つが同校を熱望するにいたった決め手だったそうです。

私の場合は、家から近い学校をいくつか実際に行ってみて、直感的に決めました。子ども自身の感覚は、やはり大切にしたいですね。通うのは本人ですから。

そして、偏差値にこだわらないのがよいでしょう。偏差値はしょせん、学力を無理やり数値化したうえでの分布を見ているにすぎず、本人にその学校が合うかどうかとは、あまり関係がありません。

最初から「偏差値の低い学校なんて通う価値ない」と親が洗脳してしまうと、子どもは偏差値でしか学校を見なくなります。もし、本人の個性に合う魅力的な学校があったとしても、偏差値が低いという理由だけで見つけられなくなってしまうのは残念です。

とりわけ、現在は少子化を見据えて、難関校とはいえない偏差値40~50代くらいの中堅校といわれる学校でも、非常に先進的な教育をとりいれる試みをおこなっていたり、子どもが意欲をもって通学できる工夫に力を入れていたりする学校が増えてきています。

受験人気が急上昇した結果、難関校を第一志望にし、中堅校を安易に滑り止めにしていた高偏差値の子が、不合格をもらってショックを受けるというようなことも実際に起こっています。

ぜひいろいろな学校に足を運んで、偏差値にとらわれず、「私にとっての一番」を見つけ出してくださいね!

とはいえ、熱望校がどうしても見つからないということも、往々にしてあります。実際には、そのほうが多いくらいでしょうね。次回は、熱望校以外の志望校の探し方について、描いてみたいと思います。

※記事内であげた実例については、保護者の方に許可を得たうえで執筆・掲載しています

中学受験ナビの連載『低学年のための中学受験レッスン』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ

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