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2022年12月12日 17:06 更新

助産師解説!乳腺炎の初期症状ってどんなもの?|しこり・張り・痛み・熱感の対処法

母乳育児をしていておっぱいに異変があると「乳腺炎」が心配になりますよね。ひどくなると大変と聞くこともありますが、初期にはどんな症状があるのでしょうか。助産師の坂田先生に、乳腺炎の初期症状となりかけのときの対処法を解説してもらいます。

乳腺炎の初期症状にはどんなものがあるの?

胸を押さえている女性のイメージ

まずは、乳腺炎の初期症状でよく見られるものを解説します。

発熱・しこり・痛み・赤み・熱感

乳腺炎の初期(うっ滞性乳腺炎)にみられる症状には、おもに以下のようなものがあります[*1]。

乳腺炎の初期症状

・乳房に腫れやしこりがある

・乳房に押すと痛いところがある

・乳房に赤くなっているところがある

・乳房が熱っぽい

・37.5℃以上の発熱を伴うこともある

乳腺炎の原因|食事は関係あるの?

おっぱいを触る赤ちゃん

乳腺炎はなぜ起こるのでしょうか。

乳腺炎の原因は「母乳が乳房に残ること」

乳腺炎は、おもに「母乳が乳房に長く溜まること」で起こります。これが起こりやすい状況には、

乳腺炎を起こしやすい状況

・授乳回数が少ない

・授乳間隔が空きすぎ

・何かの理由で赤ちゃんが母乳をうまく飲めていない

・ママや赤ちゃんの体調不良

母乳が出すぎている

急に授乳を止めた

・きついブラジャーやシートベルトなどで乳房が圧迫された

・乳首に白斑や水ぶくれなどのトラブルがある

・ママにストレスがあったり疲れたりしている

などがあります[*1]。

乳腺炎が起こりやすい時期

乳腺炎は、授乳中であればいつでも起こる可能性がありますが、産後2~3週目がもっとも起こりやすく、また大多数は産後6週間以内に起こると言われています[*1]。

乳腺炎になるタイミングは人それぞれですが、意外なところでは、里帰り出産から自宅に戻られたときに乳腺炎になる方もいらっしゃいます。

ご実家ではご家族のサポートがあり、育児に専念できる環境だったのが、自宅に帰られると少しずつ家事などを始められる方が多いです。その時に、疲労を感じたり、慣れない育児による睡眠不足などが重なって、乳腺炎になることがあるのです。

自宅への帰宅に合わせて、パパが育児休暇を取ったり、家事代行などのサービスの検討をしておくと良いでしょう。

食事はあまり関係なさそう

「甘いものや脂っこいものを食べるとおっぱいが詰まる」と言われることもありますが、これはあまり気にしなくて大丈夫。特定の食べ物を食べると乳腺炎になりやすくなるという医学的根拠はありません

ただ、おっぱいや赤ちゃんのためというより、ママの健康のためにバランスよく栄養を摂ることは大切です。

ストレスや疲れも原因のひとつ

乳腺炎を起こしやすい状況にもあった通り、「ストレスや疲れ」がたまっても乳腺炎は起こりやすくなります。

これは、ストレスがあると、

・乳房から母乳を押し出す「オキシトシン」というホルモンの効きが悪くなる

・母乳を分泌させる「プロラクチン」というホルモンが増え、母乳の量が増える

・母乳の量は増えるがうまく外に出せないので、乳房に溜まり過ぎてしまう

・免疫機能の低下が起こり、乳房のなかで炎症が起きやすくなる

という変化があるためと考えられています。

おしえてようこ先生!初期の乳腺炎の対処法

疑問がある女性のイメージ

乳腺炎の初期症状がみられたら、どうすれば良いのでしょうか。

授乳はストップすべき?

乳腺炎かもしれないと思っても
授乳は続けて大丈夫です。

むしろ、乳腺炎は「母乳が長く乳房に留まる」ことで起こるので、できるだけ赤ちゃんに母乳を飲み取ってもらったほうがいいのです。

授乳の仕方を見直す

赤ちゃんが効率的に母乳を飲めるよう、まずは授乳の仕方に気になる点はないかを確認しましょう。

ポイントは
「授乳姿勢」と「授乳の際の赤ちゃんの口元」です。

授乳姿勢のチェック

・ママは前かがみになっていないか(後ろに少しよりかかった体勢が良い)

・赤ちゃんは正面からおっぱいを口に含んでいるか

・抱っこしたとき赤ちゃんの顔と体がねじれていない

・赤ちゃんとママの間にすき間ができていないか(互いのお腹を密着させる)

赤ちゃんが不安定になっていないか(体全体を支えられているか)

授乳の際の赤ちゃんの口元チェック

・赤ちゃんが乳首だけくわえていないか(乳輪まで口の中に含んでいるか)

・赤ちゃんの下あごがおっぱいに触れているか

・赤ちゃんの鼻がふさがっていない

・赤ちゃんの下くちびるは外側にめくれているか(内側に巻き込んでいないか)

マッサージで乳輪のむくみをとる

乳房が張っていると乳輪までむくみ、赤ちゃんがうまく口に含めないので母乳を効率よく飲めないことがあります。

そんなときは授乳の前に「乳輪のむくみをとるマッサージ」を試してみましょう。

乳輪のむくみをとるマッサージの方法

1)乳首の根元周辺に、指の腹や先を当てる

2)痛みを感じない範囲でしっかりと、胸の奥に向かって圧力をかける

3)1分以上圧迫したら位置を変え、同様に乳輪全体を圧迫する

爪を短くした、清潔な手で行いましょう。
乳首や乳輪を直接触ると痛いようなら、ガーゼなどの上から行っても大丈夫です

授乳前に温める/授乳後は冷やしても

授乳前に温かいおしぼりなどで乳房を温めると母乳が出しやすくなります。このとき、「しこりのある部分から乳頭のほう」にむかって親指でやさしくマッサージするのもおすすめです。

また、乳房に熱感がある場合は、授乳と授乳の間に冷たいおしぼりを当てて冷やしてもOK。ただし、冷やし過ぎると母乳の出に影響することもあるので、アイスパックなどを使うときは直接肌に当てず、タオルなどで包んで軽く冷やせる程度に調節してください。

できるだけ無理しない

パパに抱っこされる赤ちゃん

ストレスや疲れはより乳腺炎を起こしやすくするので、おかしいなと思ったらできるだけ無理しないのも大切です。

普段から赤ちゃんの世話や家事などを家族に分担してもらったり、行政などの育児サービスを積極的に利用したりしましょう。

助産院や母乳外来にも相談してみて

初期の乳腺炎の改善や予防には、とにかく赤ちゃんに効率よく母乳を飲んでもらうことが大切です。でも、「授乳姿勢がしっくりこない」「赤ちゃんの飲み方がおかしい気がする」など、改善すべき点がわからないと、何にどう対処したらよいのかもわかりませんよね。

そういったときは、助産師など母乳の専門家に授乳の仕方をみてもらいましょう

赤ちゃんを連れての外出は大変ですが、訪問サービスのある助産院もあります。また、産後1年未満なら自宅で助産師などから授乳指導や乳房ケア、育児相談が受けられる「産後ケア(訪問型)」サービスを用意している自治体も増えてきました。

新生児訪問のときに相談してみても良いですし、その後に悩みが出てきた場合はすまいのある自治体に問い合わせて、こういったサービスを積極的に活用しましょう。

こんなときは医療機関での治療が必要

乳腺炎が悪化すると、
赤ちゃんにできるだけ母乳を飲んでもらうだけでは対処しきれず、抗菌薬などでの治療が必要になってきます。

以下のような場合は自分だけでなんとかしようとしないで、医療機関を受診してください。

・十分な授乳や搾乳をしてもしこり・赤み・痛みなどが改善せず、24時間以上症状が続いている場合

・胸の異常のほか、38℃以上の高熱など、インフルエンザのような症状もある場合

また、以下のような場合も受診して何か異常がないか調べてもらいましょう。

同じ場所が何度も乳腺炎になる

・熱はないが赤みが引かない

まとめ

授乳中の赤ちゃんとママ

乳腺炎の初期症状と対処法について解説しました。乳腺炎は産後1~2ヶ月以内に起こることが多いのですが、この時期以外にも授乳中はいつでもなる可能性があります。

おもに赤ちゃんに飲み取ってもらえなかった母乳が乳房に過度に溜まることで起こるので、「授乳姿勢」や「ラッチオン(吸着)」が適切かどうか見直すことで解決することが多いのですが、「ひどくなると受診が必要」になることもあります。

普段から、赤ちゃんにできるだけ効率よくおっぱいを飲んでもらえるように気を付けるとともに、悪化した可能性があるときは医療機関で治療を受けてくださいね。

(文:坂田陽子先生/構成:マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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