ライフスタイル ライフスタイル
2024年07月13日 08:54 更新

【子どもの自殺の実態とは】4割以上は自殺直前も以前と変わりなく学校に出席していた

2010年以降、国内での自殺者数は減少傾向にあります。その一方、小中高校生の自殺数は増加傾向にあり、2023年の集計では513人と高止まりを見せています。そこで今回は、こども家庭庁が実施した「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」で示された、子どもが自殺に至ったときの状況などの分析結果をお伝えします。

子どもの自殺に関して教育委員会などの報告書を収集・分析

全年齢と小中高生の自殺者数の推移
こども家庭庁「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」より

子どもの自殺が深刻な問題となっています。自殺者の総数は2010年以降減少傾向にあるのに対し、小中高生の自殺者数は増加傾向にあります。警察庁が発表した2023年の小中高生の自殺は513人。これは過去最高だった前年の514人に次ぐ数字であり、高止まりの状況です。しかし、これまで国の自殺対策は、自殺者の多くを占める中高年男性の対策に偏ってきたところがありました。

そうしたなか、こども家庭庁では子どもの自殺の実態解明や課題把握のため、「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究」を行いました。同調査では、都道府県教育委員会などが保有する事件の報告書などの過去5年分の提供を依頼し、272件の報告書を収集・分析してまとめています。

44%が自殺直前までいつもどおり学校に出席

まず、「生前に置かれていた状況」をいくつかの項目ごとに分析した結果を見てみましょう。各項目は以下の表のとおり。

生前に置かれていた状況の項目
生前に置かれていた状況の項目
―こども家庭庁「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」より

【家庭関係情報】では「親子関係不和」が17%で比較的多く、「家族からのしつけ・叱責」8%、「その他家族関係の不和」8%、「経済問題」8%などとなっています。最も多かったのは「その他」で37%を占めました。

【健康関連情報】では、「神経発達症」10%、「身体疾患・障害」9%、「その他の精神疾患」7%などが1割前後を占めましたが、やはり「その他」が28%で多い結果となっています。「その他」の内訳としては、不定愁訴(頭痛、腹痛、体調不良、不眠、情緒不安定など)が53名で最多でした。

【学校関連情報】では、「学業不振」17%、「学友との不和」14%、「定時制・通信制(高校)」14%、「不登校」12%などが多くなっています。その他」は22%で、内訳として最も多かったのは「部活動の問題」で、17名が該当しました。

---------------------
(注)これらの状況が自殺に直接結びついたかの判定は本調査では行われていません。

学校の出席状況
学校の出席状況
―こども家庭庁「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」より

さらに、【学校関連情報】に関連して、学校の出席状況をより詳細に分類・集計をした結果を見てみると、分析対象者の44%が自殺直前も以前と変わりなく出席していたことがわかりました。

自殺の恐れや変化に周囲が気付いていなかったケースが21%

周囲に気付かれていたか
周囲に気付かれていたか(自殺の危機、あるいは心身の不調や様子など何らかの変化、に対して)
―こども家庭庁「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」より

次に、生前に自殺関連行動などがあったかどうかを分析した結果を見てみます。すると、「自殺の危機も変化も気付かれていなかった」が21%、「何らかの変化は気付かれていた」が15%、「自殺の危機を気付かれていた(保護者または学校)」が13%、「自殺の危機に気付かれていた(友人ほか)」が5%という結果でした。

また、半数近くにあたる46%は、「自殺の危機(自傷・自殺未遂歴。自殺手段の入手や自殺の計画、もしくは自殺念慮と定義)、あるいは心身の不調や様子などなんらかの変化について周囲に気づかれていたかどうか」について未記載でした。

---------------------
(注)この結果が直接、自殺と関連があるかどうかの判定は本調査では行われていません。

4人に1人は自殺の前日~翌日に何らかの出来事あり

自殺の直前にあった(あるいは直後に予定されていた)出来事
自殺の直前にあった(あるいは直後に予定されていた)出来事
―こども家庭庁「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」より

さらに、自殺の直前にあった、あるいは直後に予定されていた出来事(学校生活に関わる行事や人間関係に関わる出来事、生活上の出来事)があったかどうかを分析したところ、「前日から翌日の間」が25%で4人に1人を占めました。「前後1週間以内」は8%、「前後3日以内」は6%、「前後1ヶ月以内」は3%、「特に出来事はなかった(と記載されている)」が1%でした。また、出来事について未記載だった割合が57%で過半数となっています。

出来事に関して記載があったなかでは、自殺の前日・当日・翌日に何らかの出来事があったケースが多いことがわかりました。

---------------------
(注)この結果が直接、自殺と関連があるかどうかの判定は本調査では行われていません。

最後の一歩を踏みとどまらせるためには

子どもの自殺の実態に迫るためには、大人とは異なる特有の苦しみや課題の存在をつまびらかにすることが求められます。まだ心身が成長途上にある年代だからこそ、大人が思いもよらない要因やきっかけで自殺という行為へと走らせてしまうことも考えられます。子どもが自殺に至る前に周囲の人間が異変に気付き、救いの手を差し伸べられることが少しでも増えることを、願わずにはいられません。

(マイナビ子育て編集部)

報告書概要

■こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書/こども家庭庁
分析対象:(1)警察庁の自殺統計原票データ、(2)消防庁の救急搬送のデータ、(3)学校や教育委員会、地方公共団体等が保有する自殺に関する統計及びその関連資料
調査実施機関:一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター

厚生労働省のサイトではSNSや電話で相談を受け付けている窓口を一覧にし、連絡先等を掲載しています。※子ども専用窓口あり。
▶厚生労働省:SNS相談
▶厚生労働省:電話相談窓口

また、こども家庭庁のサイトでも、相談窓口を検索することができます。
▶こども家庭庁:相談窓口を探す

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-