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2024年06月01日 08:24 更新

結婚での姓の変更に「不便・不利益がある」―30代では7割超、「通称を使っても対処しきれない」と思う人は約6割に

現在の日本の法律では、結婚をしたら夫または妻の姓のどちらかを選び、夫婦は同じ姓を名乗るように定められています。多くの場合、妻が夫の姓を名乗っていますが、この現状について人々はどのように感じているのでしょうか? 内閣府が発表した「家族の法制に関する世論調査」をもとに、「夫婦同姓」に対する人々のホンネに迫ってみましょう。

全国の18歳以上5,000人に調査

内閣府では、家族や家族に関する法制度についての国民の意識を把握し、今後の施策の参考にするため、全国の18歳以上の日本国籍を有する人5,000人を対象に「家族の法制に関する世論調査」を実施しました。その結果、名字や姓、婚姻による姓の変更などに関する人々の意識や考え方が見えてきました。

約46%が姓は「先祖から受け継がれてきた名称」と認識

まず、「名字・姓はどういうものだと思うか」を聞いたところ、「先祖から受け継がれてきた名称」(45.8%)、「他の人と区別して自分を表す名称の一部」(42.9%)を挙げた人の割合が高くなりました。次いで「夫婦を中心にした家族の名称」(31.2%)、「単なる名称にとどまらない、自分が自分であることや人格の基礎」(18.5%)と続いています。

家族と名字・姓に対する意識
家族と名字・姓に対する意識
―内閣府「家族の法制に関する世論調査」より

また、これを年齢別に見ると、「先祖から受け継がれてきた名称」、「夫婦を中心にした家族の名称」を挙げた人は70歳以上で高く、「他の人と区別して自分を表す名称の一部」を挙げた者の割合は18~29歳で高くなっていて、年齢層による違いも見られました。

結婚での姓の変更に「不便・不利益がある」52.1%

婚姻によって名字・姓を変更した経験を持つ人に「名字・姓の変更によって何らかの不便・不利益があると思うか」を聞いた設問では、「何らかの不便・不利益がある」と回答した人は52.1%、「何らの不便・不利益もないと思う」と回答した人は47.5%でした。4.6ポイントの差で「不便・不利益がある」と回答した人の割合がやや多くなっています。

性別で見ると、「何らかの不便・不利益があると思う」と答えた人が女性は55.5%と、男性の48.3%よりも高くなりました。

年齢別に見ると、「何らかの不便・不利益があると思う」と答えた者の割合は18~29歳から50代にかけて高い傾向があります。特に30代では7割超、40代も7割近くに及んでいます。ちょうど子育てが忙しい世代で「不便や不利益がある」と感じる人が多いといえます。

婚姻による名字・姓の変更により生じる不便・不利益
婚姻による名字・姓の変更により生じる不便・不利益
―内閣府「家族の法制に関する世論調査」より

8割以上が「変更した側にのみ負担がある」と感じている

では、具体的にはどんな不便や不利益があるのでしょうか?

婚姻による名字・姓の変更に「何らかの不便・不利益があると思う」と回答した人(1,503人)を対象に聞いたところ、最も多かったのが「名字・姓を変更した側のみに名義変更の負担があるなど、日常生活上の不便・不利益がある」で83.1%でした。

そのほかとしては、「仕事の実績が引き継がれないなど、職業生活上の不便・不利益がある」(34.5%)、「実家の名字・姓を残せなくなることなどから、婚姻の妨げになる」(27.9%)、「自己喪失感が生じたり、プライバシーが公になったりすることにより心理的負担が生ずる」(13.5%)となっています。

不便・不利益の具体的内容
不便・不利益の具体的内容
―内閣府「家族の法制に関する世論調査」より

年齢別では30代、40代では「名字・姓を変更した側のみに名義変更の負担があるなど、日常生活上の不便・不利益がある」を挙げた人が9割に上りました。50代~70代以上では「仕事の実績が引き継がれないなど、職業生活上の不便・不利益がある」が約42%で高い傾向が見られます。

なお、性別による大きな違いはありませんが、「名字・姓を変更した側のみに名義変更の負担があるなど、日常生活上の不便・不利益がある」は男性で79.1%、女性で86.2%で、やや女性の方が高くなりました。

約6割が「通称を使っても対処しきれない不便・不利益がある」

さらに、婚姻による名字・姓の変更に「何らかの不便・不利益があると思う」と回答した人に、婚姻前の苗字・姓の通称使用について聞いたところ、「通称を使うことができれば、不便・不利益がなくなると思う」と回答した人の割合は37.1%、「通称を使うことができても、それだけでは、対処しきれない不便・不利益があると思う」と回答した人の割合は59.3%でした。

性別で見ると、男性は「通称を使うことができれば、不便・不利益がなくなると思う」が40.9%で全体より高く、女性は「通称を使うことができても、それだけでは、対処しきれない不便・不利益があると思う」と回答した人が61.8%で高くなっています。

年齢別では、40代で「通称を使うことができても、それだけでは、対処しきれない不便・不利益があると思う」が69.2%と特に高いことがわかりました。

婚姻前の名字・姓の通称使用
婚姻前の名字・姓の通称使用
―内閣府「家族の法制に関する世論調査」より

まとめ

四半世紀以上にわたり議論が続いている

すでに四半世紀以上にわたって議論されている選択的夫婦別姓制度の導入ですが、未だ決着する気配はありません。しかし、法務省によると、結婚後に夫婦のいずれかの姓を選択しなければならないと法律で規定し、夫婦同姓の制度を採用している国は日本だけというのが現実です。選択できないことによる「生きづらさ」を感じている人は多いことが、今回の調査結果からも改めて感じられました。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

■家族の法制に関する世論調査/内閣府
調査対象:全国18歳以上の日本国籍を有する者5,000人
調査時期:令和3年12月2日~令和4年1月9日
有効回答数:2,884人

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